視能訓練士は、視能検査や視能矯正、ロービジョンケアなどを通じて、眼科医を支える職業です。視能訓練士が担う役割や業務内容、社会人が資格を取得する方法を解説します。
視能訓練士とは?
目の健康に関わる職業の1つに「視能訓練士」があります。視能検査や視能訓練などを担う専門技術職で、従事するには視能訓練士国家試験に合格しなければなりません。役割や仕事内容、活躍できる場所について理解を深めましょう。
目の検査や訓練を行う専門技術職
視能訓練士は、1971年に制定された国家資格です。視能訓練士国家試験に合格して視能訓練士免許を取得しなければ、視能訓練士を名乗れません。視能訓練士法では、以下のように定義されています。
第二条 この法律で「視能訓練士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、視能訓練士の名称を用いて、医師の指示の下に、両眼視機能に障害のある者に対するその両眼視機能の回復のための矯正訓練及びこれに必要な検査を行なうことを業とする者をいう。
視能訓練士は、精密光学機器などを使って患者の目の構造や機能を調べ、診察する医師に患者のデータを提供します。弱視や斜視、視覚障害がある人に対しては、視能訓練やケアなども行います。眼科医療には欠かせない存在であり、眼科医の右腕といってもよいでしょう。
視能訓練士が活躍できる場所
公益社団法人日本視能訓練士協会の「視能訓練士実態調査報告書 2020年」(調査期間:2019年8月1日~2019年9月30日)によると、視能訓練士の勤務先で最も多いのが眼科診療所(医療法人および個人)でした。病院勤務では、眼科に所属する人が51.9%を占めます。
- 眼科診療所:36.6%
- 私立病院:17.1%
- 国公立医療機関:14.1%
- 準公立医療機関:12.3%
- 私立大学病院:7.1%
- 国公立大学病院:3.6%
- その他:4.4%
眼科医1人につき、2~3人の視能訓練士が必要といわれていますが、2人未満の人員しか確保できないところも少なくありません。高齢化の進展や眼科医療の進歩に伴い、今後も視能訓練士の需要は増えていくと予想されます。
参考:視能訓練士実態調査報告書 2020年|公益社団法人 日本視能訓練士協会
視能訓練士の主な業務内容
視能訓練士は目の健康を守るスペシャリストです。視能検査や視能訓練はもちろん、視覚に障害がある人のケアから健診業務までを幅広く担います。視能訓練士の主な業務内容をチェックしましょう。
視能検査
視能検査とは、視能の状態を調べる各種検査を指します。私たちに最もなじみがあるのは視力検査ですが、ほかにも以下のような検査があります。
- 視野検査
- 屈折検査
- 色覚検査
- 眼底検査
- 眼鏡処方検査
- 画像診断検査
視能訓練士はさまざまな検査器具の使い方を覚え、的確に検査を行わなければなりません。検査データは、医師の診断や治療方針の決定に使われます。
視能訓練
眼鏡をしても十分な視力が得られない「弱視」や、一つの物を両眼で同時に正確な位置で見ることが難しい「斜視」などの症状がある患者に対しては、正常な視能を獲得するための視能訓練を行います。
主な訓練対象は、低年齢の子どもです。視覚が発達する年齢は限られており、訓練を行う時期が早ければ早いほど、良い結果が得られると考えられています。
医師と相談しながらトレーニングプログラムを計画した後、特殊な眼鏡やアイパッチなどを使って、視能を鍛えていきます。
ロービジョンケア
ロービジョンケアとは、視覚に障害がある人へのケア全般を指す言葉です。子どもの弱視や斜視は訓練による改善が期待できますが、疾患や外傷によって視能に障害が生じた人の場合、訓練での回復は困難です。
視覚に障害がある人は、「まぶしくて見えにくい」「色の違いがよく分からない」「視野が狭くて歩きにくい」などの症状に悩まされるケースがあります。
視能訓練士は、残された視機能を使って快適な日常生活を送れるように、本人をさまざまな方面からサポートします。
- 光学的補助具の選定
- 日常生活を送る上でのアドバイス
- 視覚リハビリテーション施設の紹介
健診業務
健診には、視能検査の項目があります。視能訓練士が視能検査に加わると、異常の検出精度が上がり、早期治療を施せるのがメリットです。
実際、視能訓練士が3歳児健康診査に参加したことで、これまで見つけるのが困難だった症例の発見につながった事例があります。
3歳児健康診査や就学時健康診断、学校健診といった子ども向けの健診だけでなく、職場健診や生活習慣病予防健診でも視能検査を行います。
社会人が視能訓練士を目指すには?
社会人が視能訓練士を目指す場合、視能訓練士国家試験の受験資格を得るところからスタートします。指定の視能訓練士養成所で必要な知識や技術を学んだ後、視能訓練士国家試験を受け、合格後に視能訓練士の免許申請を行う流れです。
視能訓練士国家試験への合格が必須
視能訓練士になるには、視能訓練士国家試験に合格しなければなりません。受験には要件があり、学歴が高卒以上の社会人であれば、指定の視能訓練士養成所で3年以上修業する必要があります。
大学や短大、または看護師・保育士の養成機関で2年以上修業した人で、履修科目の条件を満たしている場合は、指定の視能訓練士養成所で1年以上修業すれば受験資格が得られます。独学や通信講座のみでは、視能訓練士を目指せない点に留意しましょう。
試験は年に1回のみで、試験科目は「基礎医学大要」「基礎視能矯正学」「視能検査学」「視能障害学および視能訓練学」です。
視能訓練士の免許申請を行う
視能訓練士として仕事をするには、住所地の保健所(一部の県は県庁)で免許申請を行い、厚生労働省で管理する有資格者の籍簿に登録される必要があります。
申請時は、9,000円の登録免許税(収入印紙)がかかります。申請は随時可能ですが、できるだけ早く行うのが望ましいでしょう。免許申請を行わず、登録前に業務に従事した者は行政処分の対象です。
自治体にもよりますが、免許申請から交付までに2~3カ月を要します。就職や転職などで免許証がすぐにでも必要な人は、厚生労働省の「医師等免許登録確認システム」にて登録済証明書を発行しましょう。
厚生労働省 Ministry of Health, Labour and Welfare 医師等免許登録確認システム
資格を取得してスペシャリストの道を歩もう
視能訓練士として活躍するには、国家試験を受験し、視能訓練士の免許を取得する必要があります。国家試験の受験資格を得るまでの道のりは長く、人によっては3年以上の修業期間を要するでしょう。
免許を取得すれば、生涯にわたって視能訓練士を名乗れます。眼科医を支える目のスペシャリストとして、着実にキャリアを積んでいけるでしょう。
視能訓練士に興味がある人は、求人検索サイト「スタンバイ」で仕事内容や待遇、勤務先などをチェックしてみてはいかがでしょうか?