結婚ハラスメントとは?起きる原因・対処法や加害者にならない方法も

結婚するか否かという選択は当然ながら、個人の自由であり、仕事とは関係のない要素です。しかしビジネスシーンにおいて、本来は不要な結婚に言及する「結婚ハラスメント」に悩む人も少なくありません。起きる原因や対処法を押さえておきましょう。

結婚ハラスメントとは?

上司に背を向ける女性社員

(出典) pixta.jp

結婚ハラスメントとはその名の通り、結婚に関して他者に不快感を与える言動をすることです。主に未婚者に対する嫌がらせ行為であり、男女問わず起こる可能性があります。

まずは、結婚ハラスメントとはどういうものか、基本的なところを知っておきましょう。

未婚者への嫌がらせのこと

結婚ハラスメントとは、結婚の話題に関する嫌がらせ行為であり、一般的には未婚者を対象としたハラスメントです。マリッジハラスメントとも呼ばれる行為で、社会的な問題として知られています。

本来、結婚は個人の自由であり、生涯独身で過ごす人も珍しくありません。しかし、結婚するのは当然といった価値観を持っている人が、一定数存在するのも事実です。

そういった価値観を前提として、他者に結婚に関する考えを押しつけたり、未婚であることを批判したりする行為が、結婚ハラスメントと呼ばれています。

被害者は女性だけではない

結婚ハラスメントの被害者として、多くの人は女性を思い浮かべるかもしれません。しかし、実際には男女問わず被害者が存在します。

女性の場合には、いわゆる結婚適齢期といった考え方を前提として、未婚であることに言及して問題になるケースが少なくありません。

一方、男性の被害者の多くは結婚しないと一人前と認められない、結婚していないから責任感がないなど、根拠のないレッテルを貼られるケースが見受けられます。

組織によっては、独身だからという理由だけで、男性の仕事や査定に影響が出るといったハラスメントが問題視されています。

結婚ハラスメントは法令違反になる場合も

結婚に関するハラスメントには、さまざまなケースが考えられますが、悪質な場合は法令違反になる恐れもあります。具体的には、民法の第709条にある「他人の権利の侵害」に該当し得るため、損害賠償の対象となる可能性があり、十分注意しなければなりません。

また、結婚に関する話題は出産についても言及される可能性が高いといえます。性別やこれらを理由に労働者が不利益を被った場合、男女雇用機会均等法に抵触する恐れもあります。

たとえ悪意がなくとも、法令違反と判断される場合もあるため、ビジネスシーンにおいては基本的に結婚に関する話題は控える方が賢明です。

参考:  民法 | e-Gov法令検索 

第1節 性別を理由とする差別の禁止等|雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律|e-Gov 法令検索

結婚ハラスメントが起きる原因と具体例

女性の肩に手を置く男性

(出典) pixta.jp

結婚ハラスメントが起きてしまう原因としては、悪気のないケースも多くあります。人によってはマウンティングの場合も考えられます。それぞれ具体例を見ていきましょう。

悪気のないおせっかい

結婚ハラスメントは、加害者の無自覚な「おせっかい」により、発生するケースが多くあります。親切心から結婚に関するアドバイスをする人もいますが、相手にとって必要な情報とは限らず、ただの嫌がらせにしか感じられない場合も珍しくありません。

実際には、単なる価値観の押し付けだったり、自分の生き方や考え方を否定する内容だったりすることも多いので、ハラスメントの一種と見なされる可能性があります。

マウンティングの場合もある

結婚を、いわゆる「マウンティング」の道具に使ってしまう人も少なくありません。結婚することが人生において重要と考える人の中には、他者に自分の状況の優位性を暗にアピールする人も存在します。

例えば、結婚をしていない同僚や友人などに対して、わざわざ「結婚しないの?」「誰か紹介しようか?」といった発言をすることで、不快感を与えるケースです。

結婚に関して意図的に相手をあおるような言動をするのは、明らかに嫌がらせ行為といえるでしょう。大勢の人がいる前でそういった発言をした場合、法令違反となる可能性があります。

結婚ハラスメントの具体例

結婚ハラスメントの具体例としては、上記のように未婚の相手に対して「結婚しないの?」といった旨の発言をしたり、相手の意思を無視して出会いの場をセッティングしたりする行為などです。

「結婚していないと一人前ではない」といった旨の発言をはじめ、さまざまな言葉によるハラスメントがあります。

また、独身の立場であることを理由として、企業側が残業や休日出勤などを要請するのも、結婚ハラスメントの一種と見なされています。

ビジネスシーンにおいて、社員が結婚しているか否かは関係ない要素です。プライベートな事情を背景として就業時間を変更したり、業務を課したりするのは、労働関連の法令にも関わる問題といえます。

結婚ハラスメントへの対処法

悩む女性

(出典) pixta.jp

結婚ハラスメントの被害に遭った場合の対処法としては、相手にせず受け流すのを基本としつつ、必要に応じて価値観の違いを明確に伝える方法があります。状況が改善しない場合には、社内外の相談窓口を頼るのも大切です。

相手にせず受け流す

ビジネスシーンで結婚に関する話題が始まったら、適度に受け流すのがおすすめです。仕事には関係がないので、聞いているふりをしながら適当に相づちをしておくなど、まともに相手にしない方が無難といえます。

無理に反論すると、相手も感情的になって反論してくる場合もあり、不毛な争いに発展してしまう可能性があります。適度に「そうですね」「ご縁があれば」といった発言にとどめるとよいでしょう。相手の意図に乗らず、うまくかわすことが大切です。

価値観の違いを伝える

結婚ハラスメントの加害者は、結婚はするものという価値観を持っており、なかなか自分とは異なる価値観に考えがおよばないケースが多くあります。相手の発言を受け流しても効果がない場合には、自分の結婚観や人生観などを明確に伝えることも重要です。

それでも食い下がってくる場合には、結婚に関する話題は業務には関係のないことや、プライベートに関する助言やアドバイスには応じない旨をはっきりと示しましょう。相手とは考え方が異なる点を、しっかりと伝えるのがポイントです。

社内外の相談窓口に相談する

あまりにも結婚ハラスメントがひどい場合には、上司や人事部門などに相談し、対応してもらうことが大切です。

社内にハラスメントに関する相談窓口がある場合は、積極的に利用するとよいでしょう。1人で悩まずに、まずはハラスメントの事実を公にする必要があります。

それでも解決されない場合は、社外の相談窓口や専門家などへの相談を検討しましょう。社内外を問わず、ハラスメントに関する相談をする場合には、証拠を残しておくことが重要です。

嫌がらせ行為があった日時や場所、誰にどのようなことを言われたかなどを記録しておき、提示できるようにしておきましょう。

結婚ハラスメントの加害者にならないためには

男女のビジネスパーソン

(出典) pixta.jp

結婚ハラスメントは、自身が意識しないうちに加害者として、他者に迷惑をかけてしまう可能性もあります。加害者にならないためには、どのようなことに注意するとよいのでしょうか。押さえておくべきポイントを紹介します。

相手を尊重する

自身が自覚しないうちに、相手に結婚ハラスメントをしてしまうケースもあるでしょう。まずは、普段から結婚に関する話題では、安易に同調しないことが大切です。

相手に自分の考え方を押しつけるのはもちろん、周囲の結婚ハラスメントに当たる発言に対し、笑う・相づちを打つといった行為も避けるようにしましょう。

また、結婚に対する価値観は、人それぞれであることを認識する必要があります。どういった人生を歩むのか、どのようなライフプランを立てるのかは個人の自由なので、他者が口を出すべき内容ではないと、心にとどめておきましょう。

結婚に対する価値観は人それぞれ

男女のビジネスパーソン

(出典) pixta.jp

結婚に関する言動で相手に不快感を与える結婚ハラスメントは、近年とりわけ問題視されています。男女問わず被害者も多く、内容によっては法令違反となる恐れもあるので、十分注意しなければなりません。

基本的に結婚に関する話題には関わらないことが大切です。ハラスメントの被害に遭った場合には、上司や人事部門などに相談しましょう。状況に応じて、外部の専門機関や専門家に相談するのも有効です。

同時に、自身が結婚ハラスメントの加害者にならないように注意する必要もあります。結婚に関する価値観は人それぞれなので、相手の考え方を尊重しつつ、他者と良好な関係を築くことが大切です。