異なる職種への転職、いわゆるジョブチェンジでは、実務経験をアピールするのが難しいため、ポータブルスキルや資格、年齢が重要です。転職には入念な準備が必要な一方、ジョブチェンジにより幅広い知識とスキルを習得すれば、キャリアアップにつながります。
この記事のポイント
- ジョブチェンジとは
- ジョブチェンジとは前職と異なる職種への転職を指します。未経験採用となるため、入念な対策が必要です。
- ジョブチェンジを成功させるには
- 自己分析と業界研究を進めて、資格やポータブルスキルを取得すると効果的です。
- ジョブチェンジのメリットとデメリット
- 幅広い知識とスキルが身に付きますが、転職直後は収入の低下や人間関係に悩むリスクがあります。
ジョブチェンジとは何か?
ジョブチェンジとは、これまでと同じ職種ではなく、未経験の職種に転職することを指します。ここでは、ジョブチェンジと一般的な転職との違いについて解説します。
職種を変えること
ジョブチェンジとは、英語で仕事を意味する「Job」と変更を意味する「Change」を組み合わせた和製英語で、主に職種の変更を指します。職種の変更は大まかに分けて、転職と社内異動の2パターンがあります。
- 転職のジョブチェンジ
社内にジョブチェンジ制度がない場合、他社の別職種に転職します。未経験のため、慣れるまでに時間がかかったり人間関係の構築に苦労したりする可能性もあります。 - 社内異動のジョブチェンジ
企業がジョブローテーション制度や社内公募制度を採用している場合、退職せずに職種変更が可能です。実績が生かせなかったり、人間関係のリセットが起こったりする可能性があるため、慎重な検討が求められます。
キャリアチェンジとの違い
ジョブチェンジと混同されやすい言葉に「キャリアチェンジ」があります。ジョブチェンジが同分野で別職種に転職するのに対し、キャリアチェンジは別分野の全く異なる業界に転職する場合を指します。
例えば、不動産業界から通信業界に移ったり、営業職からオペレーターに転職したりといったケースです。
キャリアチェンジは働く環境が大きく変わるため、これまでに得たスキルや専門知識が生かせるとは限りません。未経験の職種でゼロから経験を積む必要があり、給与や待遇面が低下するリスクもあります。
しかし、自己実現やビジネスパーソンとして成長のため、あえてキャリアチェンジに挑戦する人も少なくありません。
キャリアチェンジは、20代から30代の若年層に適していますが、40代以降でも管理職やマネジメント経験を生かした転職が可能です。完全な異分野への転職となるため、ジョブチェンジより大きな変化が伴います。
ジョブチェンジを成功させやすい人の特徴
ジョブチェンジを成功させるには、その人自身の特徴が大きく影響します。スキルや資格、年齢や自己分析の精度など、他人から見て分かりやすい判断条件が重要です。
ポータブルスキルに優れている
ポータブルスキルとは、職種特有の専門的なスキルではなく、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキルです。
一般社団法人人材サービス産業協議会(JHR)が開発した「ポータブルスキル見える化ツール」を活用すれば、ポータブルスキルが測定でき、それを生かせる職務や職位が分かります。若年層よりミドルシニア層の利用を想定したツールです。
ポータブルスキルは「仕事のし方(対課題)」と「人との関わり方(対人)」に2種類に分けられ、さらに9つの要素に分類されます。
【仕事のし方】
- 現状の把握
取り組むべき課題やテーマを設定するために行う情報収集やその分析のし方 - 課題の設定
事業、商品、組織、仕事の進め方などの取り組むべき課題の設定のし方 - 計画の立案
担当業務や課題を遂行するための具体的な計画の立て方 - 課題の遂行
スケジュール管理や各種調整、業務を進める上での障害の排除や高いプレッシャーの乗り越え方 - 状況への対応
予期せぬ状況への対応や責任の取り方
【人との関わり方】
- 社内対応
経営層・上司・関係部署に対する納得感の高いコミュニケーションや支持の獲得のし方 - 社外対応
顧客・社外パートナーなどに対する納得感の高いコミュニケーションや利害調整・合意形成のし方 - 上司対応
上司への報告や課題に対する改善に関する意見の述べ方 - 部下マネジメント
メンバーの動機付けや育成、持ち味を生かした業務の割り当てのし方
出典:厚生労働省「ポータブルスキル見える化ツール(職業能力診断ツール)」
ジョブチェンジ先に関連する資格を持っている
ジョブチェンジの際に転職先の業務に関連する資格を持っていると、転職に有利です。資格取得に向けて勉強中でもスキル取得の意欲と前向きな姿勢が評価されるケースがあります。
また、副業としてジョブチェンジ先の業務に携わっていると、経験を買われて職種変更がスムーズに進む事例も少なくありません。
20代の若手である
20代の人材は体力があり、ジョブチェンジ後も働ける期間が長いため、採用されやすい傾向があります。新しい環境への適応が早く、専門的な知識やスキルを柔軟に吸収できる人材といえるでしょう。
また、若年層の第二新卒は社会人として基本的なビジネスマナーが身に付いており、教育コストを抑えられるのも有利です。
自己分析や業界理解ができている
ジョブチェンジの成功には正しい自己分析と転職先の業界理解が欠かせません。自身の年齢や学歴、資格、スキルから総合的に判断し、どのくらいの市場価値があるか分析する必要があります。
同時に、業界理解の情報リサーチを進め、自身と合う企業を探しましょう。分析が不十分で自己評価が高過ぎたり低過ぎたりすると、ミスマッチを起こしやすくなります。
ジョブチェンジを成功させるポイント
ジョブチェンジが成功しやすい特徴を備えているだけでは、確実な成功にはつながりません。ここでは、ジョブチェンジに向けて取り組む準備や対策方法を解説します。
事前の準備を念入りに行う
ジョブチェンジはこれまでの仕事と関係の薄い他職種に転職するため、事前の準備は入念に行いましょう。以下の手順で準備を進めるのがおすすめです。
- ジョブチェンジの目的を明確にする
- ジョブチェンジの方法を考える(現職で働きながら活動、退職後に活動)
- スケジュールを決める
- 必要なものをそろえる(履歴書や職務履歴書、スーツなど)
ジョブチェンジの目的の明確化は特に重要です。異職種に就く際に何が必要で何が足りないか、条件を洗い出し、不利な要素を減らしましょう。
自身のスキルを磨く
これまでの実務経験が生かしにくい職種にジョブチェンジする際は、転職先で役立つ資格やスキルを磨いておくことが重要です。
特に、ジョブチェンジする職種に関連する資格取得は有効といえるでしょう。実務経験や受験資格を問わない基礎的な資格について、期限を設定して勉強すると効果的です。
どの業種や職種でも活用できるポータブルスキルは、細分化された9項目について自身の現状を確認し、具体的な強みをチェックしましょう。
面接対策を行う
ジョブチェンジは未経験の職種に挑戦するため、面接で志望理由や意欲を伝えることが転職成功につながります。具体的な目的と取り組み内容を短時間でアピールできるように、面接対策は必須です。面接では以下の3点を明確に伝えましょう。
- ジョブチェンジの理由や目的
- 取得している資格や勉強内容
- 柔軟な対応力を示すポータブルスキルの高さ
自身の目指す将来像や実現するための取り組みはもちろん、実際に働く場面での対応力や適性が伝われば、異職種からのジョブチェンジでも採用担当者に信頼してもらえます。
ジョブチェンジのメリット
異なる職種に就くジョブチェンジには、いくつかのメリットが考えられます。未経験職種で得られる新しいスキルや目的達成への高いモチベーションが維持できるといった点です。
キャリアアップのチャンスになる
ジョブチェンジによって新しいスキルを学ぶ機会が得られます。複数の分野で専門的なスキルや知識を得ると、幅広い見識をもとにそれぞれを組み合わせた応用が可能です。
例えば、営業職から専門職にジョブチェンジした場合、営業のノウハウと専門知識から高度で難しい業務をこなせる人材になれるかもしれません。複合的な実務経験で幅広いスキルを習得すると、キャリアアップの可能性も広がるでしょう。
やりたい仕事に就ける
ジョブチェンジを決意する理由は、本当にやりたい仕事に就きたいという強い思いです。現在の仕事が自分に合わないと感じたり、新たな分野に憧れを抱いたりしたとき、ジョブチェンジは人生を大きく変えるチャンスとなるでしょう。
誰もが最初から自分の希望する職業に就けるとは限りません。理想的な職業を発見する可能性もあります。現在の仕事を続けながら準備を進め、やりたい仕事へ就けるのがジョブチェンジのメリットです。
モチベーションの向上につながる
新しいことへの挑戦を通じて、新鮮な刺激を受けられます。未知の知識やスキルを学ぶ機会も多く、成功や失敗を重ねながら次のステップへ進むことで、やりがいを感じる場面が増えるでしょう。
以前からやりたかった仕事に就いてキャリアアップを目指すなら、大きなモチベーションの向上が期待できます。
知っておきたいジョブチェンジのデメリット
働く環境が大きく変わるジョブチェンジには、メリットだけでなく、デメリットも存在します。これまでの経験が生かせない可能性があり、新しい仕事について最初から学び直す手間が必要です。
仕事に慣れるまで時間がかかる
新しい職種では、これまで知らなかった知識やスキルが求められます。業務の全体像を把握するまで時間がかかり、同年代の人と同じレベルで働くには多くの学習や準備が必要です。
ただし、ポータブルスキルを持つ人は、仕事の進め方や人との関わり方に柔軟に適応できるため、こうしたハードルを早期にクリアできる可能性があります。
環境の変化に伴うストレスが大きい
ジョブチェンジで変わるのは職種だけではありません。職場の人間関係がリセットされ、新たな環境で構築し直す必要があります。業務について学びながら、同僚や上司の性格を把握し、職場に早く馴染むための努力をしなければなりません。
また、未経験者採用のため、年収が減るリスクがあります。収入の変化により生活スタイルの維持が難しくなると、ライフプランの見直しを迫られることもあるでしょう。さらに、環境の変化で起こるストレスへの対応も求められます。
入念に準備をしてジョブチェンジを成功させよう
ジョブチェンジは異なる職種への転職を意味し、実務経験を生かした同じ職種への転職より難しい傾向があります。収入が下がるリスクがあり、転職先で人間関係を構築し直す必要があるため、デメリットは無視できません。
一方、多様な分野で働くことから幅広いスキルや専門知識が身に付き、複合的な業務を担える人材になれるのがメリットです。キャリアアップの可能性も広がるでしょう。
ジョブチェンジの成功には入念な準備が必要です。実務経験をアピールしにくいため、資格取得やポータブルスキルの高さで転職成功につなげましょう。
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