治験バイトはどんな仕事?メリット・デメリットや応募する方法を解説

治験バイトとは、承認前の薬の臨床試験の被験者になる仕事です。一般的なバイトとはどのような違いがあるのでしょうか?応募の方法やメリット・デメリットのほか、よくあるQ&Aについてもチェックしておきましょう。

治験バイトとはどういう仕事?

治験

(出典) pixta.jp

「治験バイト」という言葉は知っていても、詳しい内容については分からないという人も多いのではないでしょうか?治験バイトについて詳しく解説します。

正しくはバイトではなく有償ボランティア

治験とは、病気に対する医薬品の効果や、人に使用する場合の安全性を調べるために行う臨床試験を指します。

臨床試験を受けると謝礼金が支払われるため、「治験バイト」と表現されるケースがありますが、正しくはバイトではなく「有償ボランティア」です。

そのため、謝礼金はバイト代ではなく、治験に参加することで課される日常生活への制限や、時間・交通費などの負担に対する負担軽減費に該当します。また、リスクに対する対価でもありません。

治験を依頼するのは製薬会社ですが、実際には病院で実施されます。なお、治験を実施する病院にも、以下のような要件があります。

  • 医療設備が整っていること
  • 治験に責任を持つ医師・看護師・薬剤師がそろっていること
  • 治験内容審査のための委員会を利用できること
  • 緊急の場合の処置を速やかに行えること

出典:1.「治験」とは|厚生労働省

通院と入院の2種類がある

治験には、「通院タイプ」と「入院タイプ」の2種類があります。それぞれの特徴は、以下の通りです。

  • 通院タイプ:決められた日に病院に行き、投薬・検査を受ける。拘束時間や行動制限が少ないが、謝礼金は低い傾向。内容によっては健康な人も参加可能。治験期間は1~3カ月になるのが一般的。
  • 入院タイプ:1日~1カ月入院しなければならない。入院中の食事は無料で提供され、謝礼金は高め。拘束時間が長く行動制限もあるため、参加するための日程を確保するのが難しい。年齢・健康状態によっては参加できない場合もある。

治験バイトの謝礼金の相場

謝礼金の額は、治験の内容によって以下のように異なります。

  • 通院:1回当たり7,000~1万円
  • 入院:1泊当たり1万~3万円

一般的に、謝礼金は治験が完了した後に支払われます。謝礼金は病院から支払われるため、案件によって支払い方法やタイミングが異なるので、事前に確認が必要です。

なお税務上、謝礼金は雑所得に該当します。給与所得がある場合、年間の謝礼金の額やその他の雑所得との合算が20万円を超えると、確定申告・納税が必要になるので注意しましょう。

出典:確定申告が必要な方|国税庁

治験バイトのメリット・デメリット

点滴

(出典) pixta.jp

治験バイトは、他のバイトに比べて謝礼金が高い傾向にあるといったメリットがある半面、承認前の薬の臨床試験に参加するため、副作用の可能性といったデメリットもあります。参加する前に、メリット・デメリットもしっかり確認しておきましょう。

治験バイトのメリット

治験バイトは、被験者の体への負担を考慮して、一般的なバイトの報酬と比べて謝礼金が高額になるケースがあります。入院の場合は、栄養管理された食事を提供されるので、日頃の食生活が乱れがちな人は、見直すきっかけにもなるでしょう。

新しい薬・治療法の被験者になることで、これまでの治療では効果が得られなかった症状・疾患が改善される可能性があります。

また、治験前・治験中は医師からの診察を定期的に受けるため、自分の健康状態を無料で把握できるのもメリットの1つです。治験の結果次第では、新しい薬・治療法の承認につながるので、社会への貢献度も高いといえます。

治験バイトのデメリット

治験は、厚生労働省の「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP)」に基づいて実施されるものです。とはいえ、承認前の薬・治療法を試す内容のため、副作用のリスクはあります。

入院タイプの場合、日程の調整が難しいだけでなく、スマホといったデジタル機器の使用をはじめ、外出できないなど日常生活の行動に制限が課されます。

通院タイプも平日に実施されるので、仕事を休まなければならなかったり、何度も来院・検査が必要になったりするケースもあるでしょう。

また、薬の効果を客観的に判断するために、薬効成分を含まないプラセボ(偽薬)や、似たような効果のある別の薬を処方されるケースもあります。

治験バイトの流れ

握手をする医者とビジネスマン

(出典) pixta.jp

治験バイトは、一般的な求人サイトでは募集されていません。応募方法や基本的な流れを確認しておきましょう。

募集サイトに登録する

治験バイトに応募するには、製薬会社などの委託を受けた企業・団体が参加者を募集する専門のサイトに、登録しなければなりません。

登録に当たっては、氏名・住所・年齢のほか、身長・体重・アレルギーや基礎疾患の有無・服用中の薬など、健康状態に関する情報も必要です。

登録が完了したら説明会に参加して、治験に参加するリスクや謝礼金などについての説明を受けます。この時点ではまだ参加が決定しているわけではないので、説明を聞いた上で検討しても問題ありません。

健康診断に合格したら治験スタート

治験を開始する前に、健康診断を受けて、基準を満たしているか確認するケースがあります。合否判定までに、数日から数週間かかるのが一般的です。診断の結果、適格だと判断されれば治験がスタートします。

開始前にも内容についての説明があるので、この時点で不安になった場合には、参加への同意を取り消すことも可能です。治験の内容は案件によって異なりますが、基本的には薬の投与・採血や採尿・脈拍や血圧のチェックなどを行います。

なお、開始後でも、やめたいときは基本的にいつでも中止が可能です。ただし、一部例外もあるので、事前に確認しておきましょう。全て完了したら、協力費用として交通費などの謝礼金が支払われます。

治験バイトに関するQ&A

薬を処方する医者

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治験バイトに関するQ&Aをまとめました。トラブルを防ぐためにも、参加を決める前にしっかりチェックしておきましょう。

治験の掛け持ちは可能?

複数の治験の掛け持ちはできません。1度治験に参加すると、休薬期間として4カ月は間を空けなければならないことが、国によって定められています(4カ月ルール)。これは、薬が体内から完全に排出されるまでに4カ月かかることが理由です。

治験に参加した人の健康・安全を守る目的のほか、薬の効果を正しく判断するためにも、休薬期間を設ける必要があります。仮に4カ月たたないうちに、再び治験に参加して副作用が出たとしても、原因を正しく判断できません。

治験の内容は、「臨床試験受託事業協会」によって管理されており、掛け持ちや休薬期間を無視した参加ができないようになっています。

もし休薬期間中の参加が判明すると、その時点で強制終了となり、謝礼金が支払われない場合もあるので注意しましょう。

参加できる条件は?

治験への参加条件は内容によって異なりますが、一般的に成人であれば可能となっています。近年、成人年齢は18歳になりましたが、身体的な負担を考慮して20歳から可能とするケースが多いと考えてよいでしょう。

年齢的な要件を満たしているほか、特定の疾患のある人が対象だったり、ぜんそく・アトピー症状がある人は対象外だったりなど、健康状態を条件として設定している場合もあります。

また、直前に採血・献血・輸血をしていないことも条件の1つです。なお、生活保護受給者は原則として参加できません。

副作用が出たらどうする?

体に不調が現れた場合は、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP)」で定められたルールに基づき、適切な処置が行われます。治験を実施した医療機関は、副作用が生じたらすぐに中止し、健康を回復するための処置をしなければなりません。

治験中だけでなく、後日副作用が出た場合も、同様に対応してもらえます。回復のための通院・入院に要する費用は、治験を依頼した製薬会社が負担するのが基本です。

万が一、障害を負ったり死亡したりした場合の補償金や、療養のために会社を休業した場合の休業補償金も支払われます。副作用かどうかは厳格に確認されますが、治験との因果関係が証明できないものに対しても、補償される可能性はあるでしょう。

出典:2.治験のルール「GCP」|厚生労働省

治験バイトの内容を正しく把握しよう

医師とビジネスマン

(出典) pixta.jp

治験バイトは、正しくはバイトではなく有償ボランティアです。謝礼金が高い傾向があるため、参加を希望する人もいるかもしれません。

しかし、治験に参加するためには、年齢・健康状態などの条件を満たす必要があるので、事前にしっかり確認しておくことが必要です。

また、副作用のリスクや日常生活への影響といったデメリットもあります。内容を正しく理解した上で、参加を検討することが大切です。