正社員登用とはどんな制度?必要な条件や登用される人の特徴を解説

正社員登用制度が気になる人は、制度について理解を深めておくのがおすすめです。求人情報で見るべきポイントも押さえておけば、正社員になる確率を高められるでしょう。正社員登用制度とはどのような制度なのか、現状や一般的な条件について解説します。

正社員登用制度とは

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(出典) pixta.jp

正社員になる方法の1つとして、正社員登用制度のある求人への応募が挙げられます。実態や一般的な条件など、まずは正社員登用制度の基礎知識を理解しましょう。

非正規雇用者を正社員に雇用転換する制度

正社員登用制度とは、非正規雇用で働く従業員を正社員に登用する制度です。最初はパート・アルバイト・契約社員で入社しても、正社員登用制度がある企業なら正社員になれる可能性があります。

正社員登用制度の積極的な導入は企業の義務です。「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」の第3条に、正社員登用の積極的な推進が記載されています。

正社員登用制度と意味を混同しやすいのが、無期転換ルールです。無期転換ルールとは、 同一の企業との間で有期労働契約が5年を超えて更新された有期雇用労働者が企業への申し出により無期雇用に転換できることを指します。

正社員登用制度では雇用形態が非正規雇用から正規雇用に切り替わりますが、無期転換ルールの場合は、非正規雇用のまま無期労働契約に切り替わります。

出典:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 第三条 | e-Gov法令検索

正社員登用の現状

厚生労働省による「労働経済動向調査」を見ると、正社員登用制度の実態が分かります。2022年2月から2023年1月までの1年間において、正社員登用制度のある企業は約77%でした。

一方、この期間に登用実績があった企業の割合は約44%に上ります。制度を導入している全ての企業において、正社員登用が実際に行われているわけではないのです。

正社員登用の実績がない理由として最も多いのが、「正社員を募集したにもかかわらず応募がなかった」というものです。非正規雇用のまま働き続けたい人が一定数いることが分かります。

出典:労働経済動向調査:結果の概要 令和5年2月 | 厚生労働省

正社員登用制度の一般的な条件

正社員登用制度には法的なルールがないため、登用に至る条件は企業により異なります。一般的な基準の例は次の通りです。

  • 一定期間にわたり働き続けている
  • 勤務態度や成果が一定の基準を満たしている
  • 上司からの推薦を受ける
  • 正社員になればより企業に貢献できると評価される

また、企業によっては正社員登用試験を実施しているケースもあります。最初に適性検査・筆記試験・論文などで判断し、その後に上司や役員による面接が行われるのが一般的です。

正社員に登用される人の特徴

スーツを整える

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正社員登用制度により非正規雇用から正規雇用に切り替わる人には、共通した特徴があります。正社員に登用されやすい人の特徴を理解し、制度を利用して正社員を目指す際の参考にしましょう。

正社員になりたい意思がある

日頃から正社員への意欲を示している人は、正社員に登用されやすい傾向があります。正社員登用を希望しているかどうか分からない人より、正社員になることへの強い意思を表明している人の方が、企業としても声をかけやすいでしょう。

ただし、本人がいくら正社員を希望していても、正社員登用の条件を満たしていなければ声はかかりません。正社員への意欲を持つと同時に、条件を満たすための努力を怠らないことも重要です。

日々の業務に対して努力する姿勢を常に見せながら、正社員になりたい理由も明確に示し続けることが、正社員登用の実現につながるといえるでしょう。

社内での人間関係が良好

正社員に登用される人の特徴としては、社内で良好な人間関係を築けている点も挙げられます。正社員として活躍するためには、社内外の関係者とともに円滑に仕事を進めるスキルが欠かせません。

非正規雇用として働いている間は、特に正社員や上司との関係を良好に保つことが重要です。正社員や上司とスムーズにやりとりできていれば、正社員に登用されても周囲と良好な関係を保てる人だと判断されやすくなります。

正社員登用制度で正社員を目指すなら、パートやアルバイト同士で固まって行動するのではなく、正社員や上司とも積極的にコミュニケーションを図るとよいでしょう。

マネジメントや育成のスキルが高い

社内にパートやアルバイトなどの非正規雇用者がいる場合、正社員は非正規雇用者の管理を任されるケースも多いものです。マネジメントスキルが高い人は、正社員になっても非正規雇用者をうまく管理できるでしょう。

また正社員には、非正規雇用者の育成を期待されるケースもあります。育成スキルが高いことも、正社員に登用される人が持つ特徴の1つです。

非正規雇用で働いているうちから、後輩の教育に積極的に関与していれば、マネジメントや育成のスキルが高いと判断されやすくなります。マネジメントスキルが高い場合は、正社員登用の際に管理職候補として期待されるケースもあるでしょう。

正社員登用ありの求人で見るべきポイント

考え事をする男性

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正社員登用制度を導入しているからといって、理想の働き方を実現できるとは限りません。正社員登用制度のある求人が気になっている場合は、以下に挙げる3つのポイントをチェックすることで、入社後のトラブルを回避しやすくなります。

正社員登用の条件

正社員登用制度を導入している企業の求人を見る際は、正社員に登用される条件や基準が記載されているか確かめましょう。大半の企業は具体的な条件や基準を示していません。

求人票のスペースの問題から記載されていないだけなら、面接で聞くことで分かるケースがあります。正社員を目指していることを伝えた上で、面接官に直接聞いてみましょう。

正社員登用の条件や基準を社外秘としている場合、求人で条件や基準が公表されることはありません。このケースでも、面接時に直接確認すれば、可能な範囲で教えてもらえる可能性があります。

過去の実績

正社員登用制度を掲げている企業であっても、制度自体が形骸化しており、正社員登用の実態がないケースがあります。面接時に過去の実績を聞き、制度が運用されているか確かめることも大切です。

企業によっては、正社員登用制度を悪用し、人材募集におけるアピール材料としか考えていない場合もあります。優秀な人材を非正規雇用のまま雇い続けようとする、悪質なケースです。

面接時に過去の実績を確認する場合、唐突に聞くと面接官に悪い印象を与えかねません。制度に関する話題の中で、最近正社員登用された人についてさりげなく聞いてみるのがおすすめです。

正社員の給与や待遇

正社員登用制度のある求人でチェックすべきポイントとしては、登用後の給与や待遇も挙げられます。正社員になれたからといって、必ずしも希望する給与や待遇になるとは限りません。

正社員の給与や待遇は、企業により大きく異なります。例えば、労働時間が長くなっても各種手当や福利厚生を受けられなければ、給与が上がってもそれ以外のメリットがほとんどないというケースもあり得るのです。

企業によっては正社員にサービス残業を強いる場合もあり、必ずしも正社員の方が非正規雇用者より好待遇というわけではありません。正社員登用後に変更される雇用条件に関しては、面接時にきちんと確認しましょう。

正社員登用ありの求人で迷ったら?

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正社員になることには、人によってはメリットだけでなくデメリットもあります。非正規雇用のまま働く方が自分に合っているというケースもあるため、正社員登用制度のある求人への応募に迷う場合は、メリットとデメリットを比較して判断しましょう。

正社員のメリットとデメリットを比較する

正社員登用制度で正社員になる主なメリットとデメリットを以下にまとめました。

【メリット】

  • 安定した収入を得られる
  • 非正規雇用時に比べ給与が上がる
  • 昇給や賞与の機会を得やすくなる
  • 福利厚生がより充実する
  • 社会的信用度が高まるためローン審査などに通りやすくなる

【デメリット】

  • 残業や休日出勤が多くなる
  • やりたい仕事ができるとは限らない
  • より責任が大きい業務を任されるようになる
  • 副業を認められないケースがある
  • 企業によっては異動や転勤を命じられる

メリットよりもデメリットの方が大きいと感じる場合は、わざわざ正社員登用制度のある求人を選ばなくてもよいでしょう。

正社員登用は辞退も可能

転職活動を進めている時点で正社員登用制度がある求人なのか否か判断できない場合は、とりあえず応募してみるのも1つの方法です。働いているうちに正社員登用の条件を満たしても、提示された雇用条件に納得できない場合は辞退できます。

その企業の正社員がどのように働いているのかは、実際に入社してみなければ正確なところは分かりません。非正規雇用者として働きながら、その企業で正社員を目指したくなれば、改めて条件や基準を満たすために頑張ればよいでしょう。

正社員登用の打診を断る場合、早めに辞退の意思を伝えなければ、トラブルに発展するケースもあります。正社員になることを望まない状況で正社員登用を打診されたのであれば、決断を長引かせないことが重要です。

正社員になるその他の方法

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正社員登用制度を利用することだけが、正社員になる方法ではありません。以下に挙げる2つの方法もチェックし、自分に合ったやり方を探しましょう。

正社員募集の求人に応募する

正社員登用制度がある企業に入社できても、正社員になるまでには一定の期間を要します。また、制度があるからといって、必ず正社員になれるとも限りません。

今すぐ確実に正社員になりたいなら、正社員募集の求人に応募しましょう。正社員募集の求人なら、採用されれば正社員としてすぐに働けます。

正社員募集の求人を探す場合は、国内最大級の求人サイト「スタンバイ」を活用するのがおすすめです。全国の求人が数多く掲載されているため、正社員の仕事も見つけやすいでしょう。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら

紹介予定派遣を利用する

正社員になる方法の1つに、紹介予定派遣もあります。紹介予定派遣とは、将来的に正社員や契約社員として直接雇用されることを前提に、派遣社員として一定期間働くことです。

紹介予定派遣なら、最長でも6カ月後に正社員になれる可能性があります。派遣会社から求人を紹介されるため、自分で仕事を探す時間や手間がほとんどかかりません。

正社員になる前に職場の雰囲気や業務内容を確認できる点も、紹介予定派遣のメリットです。正社員を募集していない企業で働けるケースもあります。

正社員登用ありの求人にチャレンジしよう

スマホを操作する会社員

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正社員登用制度とは、非正規雇用で働く労働者を改めて正社員に登用する制度です。パート・アルバイト・派遣社員からでも、正社員になれる可能性があります。

正社員登用制度のある求人を見る際は、登用の条件や過去の実績、登用後の給与・待遇をチェックすることが重要です。正社員のメリットとデメリットも理解し、正社員登用制度を設けている企業に応募するか判断しましょう。