年齢を理由に企業を退職する定年退職は、全国的に導入されている制度です。原則60歳以上が定年年齢となっていますが、法改正によって定年後も働く人が増えてきました。定年退職後のライフスタイルや、仕事を続けたい場合の就職先の探し方を解説します。
この記事のポイント
- 定年退職とは
- 定年制度は多くの企業で導入されており、定年年齢や退職日は企業によって異なります。
- 定年退職後は
- 再雇用制度や継続雇用制度の利用やそのまま定年退職する、他企業への就職などの選択肢があります。
- 定年退職後の収入源は
- 退職後は退職金・年金・貯蓄が収入源となります。再雇用制度の利用や他企業への就職による収入も見込まれます。
定年退職の定義とは
よく耳にする「定年退職」という言葉ですが、実際にはどのような制度なのかご存知でしょうか。詳しく知らない人も多い定年退職の定義を解説します。
一定の年齢になることが退職理由となる制度
定年退職とは、文字通り従業員が一定の年齢に達したことを理由に退職となる制度です。あくまでも義務ではないため、定年退職を導入するかどうかは企業次第となっています。
厚生労働省が集計した2023年の「高年齢者雇用状況等報告」では、全国の企業で定年制を導入している割合は96.1%となっています。定年退職には、「定年退職制」と「定年解雇制」の2種類があるのが特徴です。
定年退職制では、会社の定めた定年年齢を迎えると本人の意思と関係なく自動的に労働契約が終了します。一方定年解雇制では、基本的には労働者の意思表示によって解雇となる点が定年退職制との違いです。
定年退職は何歳?タイミングはいつ?
定年退職の年齢は、原則60歳以上にすることが高年齢者雇用安定法で定められています。そのため多くの企業が60歳を定年年齢としているものの、企業によっては65歳などタイミングが異なるケースもあるのです。
定年となる年齢だけでなく、定年退職となるタイミングも企業によって異なります。定年年齢になったその日や定年年齢を迎えた年の年度末など、退職日の決め方もさまざまです。
退職のタイミングにはほかにも月末や給与の締日などがあり、企業の任意で決められます。定年年齢や退職のタイミングは就業規則に記載されているため、事前に確認しておきましょう。
出典:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和四十六年法律第六十八号)
高年齢者雇用安定法によって働き方に変化も
少子高齢化が進んでいる現在では、働き手となるシニア層を確保するため2021年に高年齢者雇用安定法が改正されました。この法律は、高齢者が活躍する環境を整えることを目的としたものです。
高年齢者雇用安定法では、定年制の廃止や定年退職年齢の引き上げなどを推奨しています。定年年齢を70歳まで引き上げたり新たな制度を導入したりと、70歳まで継続して働けるようになっているのが特徴です。
継続雇用制度を導入する企業も増えているため、年金支給が始まる65歳まで安定して働き続けられます。このように、社会状況の変化によってシニア層にも新たな働き方が生まれているのです。
出典:高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~|厚生労働省
定年退職後の3つの選択肢
退職を迎えた後はどのように過ごせばよいのか想像できない人も多いかもしれません。退職した後の代表的なライフスタイルを3つ紹介します。
再雇用制度や継続雇用制度を利用する
定年を迎えた後も仕事を続けたいと考えているなら、現在働いている企業の制度を利用するのも選択肢の1つです。再雇用制度や継続雇用制度を利用することで、同じ職場で仕事を続けられます。
名前の通り、一度退職した従業員を再び雇用し直すのが再雇用制度です。改めて企業側と契約することになるため、再雇用にあたって業務内容や給与などのさまざまな条件を調整できます。
企業によってはそういった制度がないケースもあるため、事前に就業規則を確認しておく必要があります。また、賃金や雇用条件が以前と変わることがあるため気を付けましょう。
そのまま定年退職をする
長く仕事をしてきたからこそ、もう仕事はしなくてもよいと思っている人も少なくないようです。働き続けたいという意思がなければ、そのまま定年退職をする方法もあります。
余裕を持って退職するためには、すでに十分な資産が形成できているか、まとまった年金額があるかも重要なポイントです。退職後のリタイアを考えている人は、働いているうちから資産形成に取り組んでおきましょう。
ただし、年金が支給される年齢は65歳からとなっているため、60歳で退職する場合はすぐに年金を受け取れないことになります。支給が始まるまではそれまでの貯蓄や退職金を生活費にあてるのが一般的です。
別の企業に再就職する
元の職場で働き続けるだけでなく、一度定年退職した後に再就職を目指す選択肢もあります。定年後も仕事を続けたい人にとっては、別の企業に就職するのもおすすめです。
定年後に再就職する場合、正社員としての採用は難しくなる可能性もあります。賃金水準も下がってしまう傾向にありますが、これまでと違う環境で新しい分野にチャレンジできるのがメリットです。
近年はシニア層の採用を積極的に行っている企業もあり、定年退職後の再就職を支援している企業も存在します。シニア層が活躍しているかも加味しながら、自分に合った求人を探してみましょう。
定年退職後の収入源とは
退職後のことを考えたときに、金銭面で不安になる人も多いのではないでしょうか。定年退職後に、主な収入源となるものについて説明します。
退職金
退職後の主な収入源となるのは、退職時に支払われる退職金です。退職金を支給することは法律で定められてはいないため、企業によっては退職金がないか額が少ない可能性もあります。
退職金の金額は、勤続年数の長さに応じて算出されるのが一般的です。ただし、計算方法や金額は企業によって異なるため就業規則をきちんと確認しておきましょう。
退職金を生活費にあてる予定でいる場合、退職金が思ったより少ないとその後の予定が崩れてしまいかねません。厚生労働省がモデルとして就業規則を定めているため、目安としておおよその金額を計算してみるのもおすすめです。
厚生年金
65歳から支給される厚生年金も、定年退職後の収入源となります。年金が受給できるのは原則65歳からとされていますが、開始年齢は60歳から75歳の間で自由に決めることが可能です。
受け取り時期を65歳より早めることを繰り上げ受給といい、逆に65歳より遅らせることを繰り下げ受給といいます。受給開始年齢によってもらえる年金の額が異なるため、慎重に時期を決めましょう。
繰り下げ受給を行うことで、通常よりも増額された年金を受け取れるのがメリットです。ただし繰り下げ期間中は年金が支給されないため、早めに年金をもらいたい人は減額されても繰り上げ受給を選ぶ方法もあります。
定年退職後の再就職先の探し方
別の企業への再就職を考えている場合、新たに再就職先を選ぶ必要があります。自力で再就職先を見つけるのに不安があるなら、効果的な探し方をチェックしましょう。
求人情報特化型の検索エンジンを活用する
再就職先を探しているなら、さまざまな求人情報を掲載している検索エンジンを活用するのがおすすめです。求人情報に特化したサイトであれば、求人の種類も多いためシニア向けの仕事も探しやすくなっています。
正社員や契約社員などさまざまな形態の求人がそろっているため、自分の希望する働き方を選べるのもメリットです。近年は、シニア層を対象とした求人サイトも数多く存在しています。
国内最大級の仕事・求人情報一括検索サイト「スタンバイ」は、日本全国の求人を網羅しているのが大きな特徴です。自分に向いた再就職先を探しているなら、シニアを対象とした求人を検索してみましょう。
シルバー人材センターを活用する
シルバー人材センターとは、高齢者向けの職業を紹介している公共団体のことです。全国の地方自治体に設置されているため、会員登録を行うことで最寄りの人材センターを利用できます。
紹介している仕事は、主に官公庁や企業から受注しているのがポイントです。あまり負担にならない軽作業が多く、短期の仕事がほとんどなので長く働ける職場を探している人には適していない可能性があります。
シルバー人材センターには、60歳以上で就業意欲があり、健康状態に問題がない人であれば問題なく登録可能です。直接出向いて話を聞けるのがメリットですが、会費を納める必要があるため注意しましょう。
定年退職後のライフプランを立てよう
60歳以上になった社員が年齢を理由に退職する定年退職は、多くの企業で導入されている制度です。定年後にどうすればよいのか迷っている人も少なくありません。
企業によっては再雇用制度が存在するため、同じ職場で定年後も働き続けることが可能です。新しい再就職先を探すなら、求人サイトや人材センターを活用してみましょう。
もちろん、定年を迎えてそのままリタイアする選択肢もあります。退職金や年金が主な収入源になるため、働いている間に生活費がどれくらいかかるかを把握して資産形成を始めるのもおすすめです。