固定給とはどんな給与体系?メリット・デメリットや注意点を解説

固定給とはどのような給与体系のことをいうのでしょうか。なんとなくイメージできても、詳しい仕組みについて分からないという人も多いかもしれません。メリット・デメリットのほか、残業代の計算方法や注意点などについて解説します。

固定給とはどういう給与体系?

給与明細

(出典) pixta.jp

給与体系にはさまざまな種類があり、固定給もその1つです。どのような仕組みなのか、詳しく解説します。

決まった期間で一定額が支払われる給与体系のこと

固定給とは、決まった期間で一定の金額が支払われる給与体系のことをいいます。月給制や時給制などの種類があり、基本的に一定期間の労働に対する対価としての額が固定され、変動しないのが特徴です。

一般的には、基本給に通勤手当や住宅手当などの諸手当が加算されて支給されます。なお、実際に「手取り」として受け取るのは、固定給から社会保険料や税金を差し引いた額です。

歩合給との違い

歩合給は、仕事の成果に応じて支払われる給与体系です。歩合給には大きく分けて、「固定給+歩合給」と「完全歩合制」の2種類があります。固定給+歩合給とは、固定給に仕事の成果に応じた金額が上乗せされる仕組みです。

主に出来高制を取り入れた営業職などに用いられます。完全歩合制は、個人事業主のみに適用されるもので、仕事の出来高に応じた報酬が支払われる仕組みです。

歩合給は、仕事の成果が収入に直接反映するため、モチベーションアップにつながります。しかし、成果を出せなければ給与は減ってしまうので、収入が安定しない点はデメリットといえるでしょう。

固定給の給与体系

固定給とひと言でいっても、さまざまな給与体系が存在します。

  • 月給制:1カ月単位で給与の額が決まっている。完全月給制・日給月給制・月給日給制がある。完全月給制は遅刻・早退・欠勤があってもその分が差し引かれない。日給月給制は1日単位の給与が決まっており、勤務した日数分を1カ月にまとめて支給する。月給日給制は1カ月単位の固定給から、欠勤などによって労働しなかった分が差し引かれる仕組み。
  • 時給制:1時間単位で支給される額が決まっており、労働した時間分の給与が支払われる。
  • 週給制:1週間単位で支給される額が決まっている。支給されるのも週ごとになるのが特徴。
  • 日給制:1日単位で支給される額が決まっている。日雇いの労働者やアルバイトに用いられることが多い。
  • 年俸制:年単位で支給される額が決まっている。年収の額が保証されるのがメリット。
  • 業務単位:1つの業務ごとに支給される額が決まっている。習い事の講師などの給与体系として用いられることが多い。

固定給のメリット・デメリット

給料袋と積まれたブロック

(出典) pixta.jp

固定給には収入が変動しないというメリットがある一方で、デメリットも存在します。具体的に見ていきましょう。

メリットは「安定性」

固定給の特徴は、仕事の成果にかかわらず、安定して給与を得られることです。また、原則として月給制の場合、会社の休日や祝日などで月内の実働時間が少ない月でも給与の額が減ることはありません。

年収の目安も把握しやすいため、結婚・出産などのライフプランも立てやすくなるでしょう。給与の額に変動はないといっても、成果を上げれば昇給などの形で反映されます。

しかし短期的な変動はないことから、仕事に対して中長期的に取り組みたい人のほか、歩合制にプレッシャーを感じる人にも向いています。

デメリットは「モチベーション低下につながる」

業績がすぐに給与に反映されないことをデメリットに感じる人もいるでしょう。いくら成果を上げても給与が変わらないため、モチベーションを維持できなくなる可能性があります。

急にまとまった出費が必要になった場合にも、成果を出して収入をアップさせるのは困難です。成果主義の人にとっては、物足りなさを感じる給与体系といえるでしょう。

また、固定給でも年俸制の場合は、毎年契約を更新することになるので、収入が安定しているというメリットは感じにくいかもしれません。

固定給でも残業代は支払われる?

残業代

(出典) pixta.jp

給与の額に変動がないと聞いて、残業した分の手当が支払われるのか不安になる人もいるかもしれません。固定給の場合の残業代について解説します。

固定給でも残業代は支給される

固定給でも、残業すればその分の手当を支給されるのが原則です。労働基準法第32条では、休憩時間を除いた1日の労働時間を8時間までと定めています。

その日の労働時間が8時間を超えた場合、雇用主は労働者に対し、割増賃金として残業代を支払わなければなりません(労働基準法第37条)。

ただし、固定給にあらかじめ残業手当が含まれているなど、支給されないケースもあるので注意が必要です。

出典:労働基準法 第32条・第37条 | e-Gov法令検索

固定給の残業代の計算方法

固定給の残業代は、「時給に割増率を掛けた金額×残業時間」で計算します。割増率は、労働基準法第37条で25%以上50%以下と決められており、各企業がその範囲内で任意に規定するのが一般的です。

1カ月の残業時間が60時間を超えた場合は、50%以上の割増率になります。また、交通費などの通勤手当は残業代の計算には含まれません。

月給制の場合は、まず1時間当たりの賃金を割り出してから計算します。仮に、月給20万円・所定労働時間8時間・所定労働日数20日の人が2時間残業した場合の計算式は以下の通りです。割増率は25%として計算します。

  • 1時間当たりの賃金:20万円÷(8時間×20日)=1,250円
  • 残業代:1,250円×1.25×2時間=3,125円

出典:労働基準法 第37条 | e-Gov法令検索

残業代が支給されないケースも

固定給でも、管理職や裁量労働制が適用されている場合は基本的に残業代が支払われません。裁量労働制とは「みなし労働時間制」とも呼ばれる制度で、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ決められた一定時間を働いたと見なすものです。

適用される職種が限られており、事業所の外での業務が多い営業職、研究職・一部プログラマー・弁護士などの専門職、企画・立案・分析などを行う労働者が対象となります。

裁量労働制で働いていても、週40時間の法定労働時間を超える分や休日・深夜に労働した場合は残業代の請求が可能です。また、管理職も深夜に働いた場合は、深夜手当として残業代を請求できます。

固定給の注意点

通帳と給与明細

(出典) pixta.jp

固定給制で勤務する場合の注意点についても知っておきましょう。ポイントを2つ挙げて解説します。

固定残業代が含まれていないか確認する

給与に固定残業代が含まれていないか確認しましょう。固定残業代とは、あらかじめ一定の残業時間を想定し、固定給の一部として支給される残業代のことです。

例えば、毎月10時間分の固定残業代が含まれている場合、10時間までの残業代は別途請求できません。しかし、想定していた残業時間に満たなくても減給されることはないため、メリットもあるといえます。

固定残業代自体は違法とならないものの、制度を悪用するブラック企業もあるので注意が必要です。

最低賃金額以上か確認する

固定給が安すぎるときは、地域の最低賃金を下回っていないか確認しましょう。最低賃金は時間によって定められているため、日給制や月給制の場合は時給に換算することで確認できます。

  • 時給制:時給≧最低賃金の額(時間額)
  • 日給制:日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金の額(時間額)
  • 月給制:月給÷1カ月の平均所定労働時間≧最低賃金の額(時間額)

なお、日給や月給には職務手当のように仕事と直接関連のある固定の手当は含まれますが、通勤費や残業代は含まれません。

出典:最低賃金額以上かどうかを確認する方法|厚生労働省

出典:地域別最低賃金の全国一覧|厚生労働省

固定給の仕組みを知ろう

通帳をチェックする

(出典) pixta.jp

固定給とは、月給制や時給制など、決まった期間で一定額が支払われる給与体系のことです。固定給には安定した給与を受け取れるというメリットがある半面、仕事で成果を出しても短期的には収入が上がらないなどのデメリットもあります。

そのため中長期的に仕事に取り組みたい人や、成果を出さなければならないというプレッシャーを感じたくない人には向いている給与体系といえるでしょう。

固定給でも原則として残業代は支払われますが、トラブルを防ぐためには、あらかじめ固定残業代が含まれていないか確認しておくことが大切です。

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