家族手当とは、家族がいる人に支給される金銭を指します。企業によって扱いが異なるので、どういった制度なのか疑問に思う人もいるでしょう。家族手当の対象範囲や支給額の例、よく似た制度との違いなどを解説します。
この記事のポイント
- 家族手当とは
- 企業が独自に定めている制度で、従業員の経済的な負担を助けるためのものです。
- 金額の相場は
- 家族手当がいくら支給されるかは、家族構成や配偶者の収入の有無などによって異なるケースが一般的です。
- よく似た制度
- 扶養家族や児童手当は家族手当と似た名前ですが、対象の範囲や支給元などが異なります。
家族手当とは?制度の概要を確認
家族がいる従業員を対象に支払われる手当を、家族手当といいます。企業によって、異なる金額や条件になっていることが特徴です。まずは、どのような制度なのか詳しく見ていきましょう。
家族がいる従業員を対象にした福利厚生
家族手当は、家族がいる従業員に支給される福利厚生の一種です。家族を養う従業員の、経済的負担の軽減を目的としています。
企業が定めた条件に当てはまる従業員に支給され、家族構成などによって、支給される金額に違いがあるケースが少なくありません。
また、家族手当は給与所得に含まれ、課税対象となります。社会保険料を決める際の基準になる、標準報酬月額にも関係してくる点を押さえておきましょう。
支給金額や条件は企業が独自に決定
家族手当は法定外福利厚生なので、企業によって支給の有無や条件が異なります。従業員・その家族のワークライフバランスの充実や、意欲向上などのために設けられており、全ての企業で実施されているわけではありません。
法定外福利厚生とは、法的に定められた手当以外の福利厚生のことです。社会保険や労働保険などが、法定福利厚生に該当します。
家族手当以外の法定外福利厚生には、住宅手当や食事手当、従業員を慰労するための社員旅行などがあり、企業によって名称や中身はさまざまです。
家族手当の支給条件や割合
企業によって家族手当の支給条件は異なりますが、一般的にはどのような従業員が対象なのでしょうか?ここでは、支給条件や割合について紹介します。
一般的な支給条件
扶養家族(配偶者と子ども)がいる従業員を、家族手当の対象としていることが一般的です。以下、よくある条件の一例を見ていきましょう。
- 配偶者や養育が必要な子どもがいる
- 同じ暮らし、生計をともにしている
- 子どもの年齢が18歳以下、両親の年齢が60歳以上
- 配偶者の所得が配偶者控除・配偶者特別控除の範囲内
いくつかの条件を組み合わせている場合が多く、家族の人数によって支給額が変わる場合もあれば、人数に関係なく一律の場合もあります。
家族手当制度を導入している企業の割合
人事院が公表している「令和6年職種別民間給与実態調査の結果」を見てみましょう。この調査は、企業規模50人以上・事業所規模50人以上の全国の民間事業所を対象にしています。
- 家族手当制度を設けていると回答した企業:74.5%
【家族手当を支給している企業の規模】
- 500人以上:74.1%
- 100人以上500人未満:76.5%
- 50人以上100人未満:69.9%
この結果から、企業規模が小さいと家族手当がない可能性が高いと分かります。一方で、企業規模が大きくても、約26%の企業は家族手当を設けていません。
出典:令和6年職種別民間給与実態調査の結果 表12 家族手当の支給状況|人事院
家族手当の相場
家族手当は企業独自の制度なので、内容もそれぞれです。家族手当がある企業の従業員は、どの程度の金額を受け取っているのでしょうか。公的なデータをもとに、相場について解説します。
平均支給額は家族の人数によって異なる
家族手当の相場を知るには、東京都労働相談情報センターによる「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」を見ると参考になります。こちらは、従業員が10〜299人の都内にある中小企業を対象として行われた調査です。
家族手当を支給している企業の中で、家族の人数によって家族手当の金額を変えている企業は、88.3%でした。
平均支給額は配偶者が1万356円、第1子が5,255円、第2子が4,858円、第3子が4,859円です。家族の人数が多いほど、総支給額が上がる傾向です。また、一律支給の場合の平均支給額は、9,924円となっています。
出典:中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版) | 調査・統計 | TOKYOはたらくネット
企業規模が大きいほど高くなる傾向
厚生労働省が公表している「令和2年就労条件総合調査」によると、家族手当・扶養手当・育児支援手当などの平均支給金額は1万7,600円です。
【企業規模別の平均支給額】
- 1,000人以上:2万2,200円
- 300~999人:1万6,000円
- 100~299人:1万5,300円
- 30~99人:1万2,800円
規模が大きいほど、金額も高い傾向です。また、同調査では、さまざまな手当の平均支給額を確認できます。生活手当の中では単身赴任手当・別居手当が最も高く、平均支給額は4万7,600円でした。
出典:令和2年就労条件総合調査 結果の概要 賃金制度|厚生労働省
家族手当の申請方法
結婚・出産によって家族が増えたときは、担当窓口に申し出て手続きをしましょう。スムーズに申請できるように、一般的な流れや注意点を紹介します。
就業規則で条件を確認
家族手当の内容は企業が独自に決めるため、まずは条件を確認しましょう。場合によっては、家族手当が設けられていないこともあります。
就業規則を見ると各種手当の有無や詳しい条件、支給額などが分かります。就業規則に定められているものは、労働条件や規律などです。
各種手当についてだけでなく、労働時間や休暇、不正への対応などに関する情報を知りたいときなどにも活用できます。
就業規則は、雇用主と労働者のトラブルを避けるために作成され、従業員がいつでも見られるようにしてあります。内容に不明点がある場合は、上司や人事部などに確認しましょう。
家族手当申請書や証明書などを提出
一般的には、企業から提供される申請書に必要事項を記入して、担当窓口に提出します。窓口は企業によって異なりますが、通常は総務部や人事部などです。
申請書の種類は「家族手当申請書」「家族異動届」などが該当しますが、呼び名や書式が異なる場合があるので、不明な場合は担当者に確認しましょう。
記入する内容は、家族の氏名や年齢、続柄(妻・子といった申請者との関係)などです。また、配偶者の収入証明書などが必要になることもあります。
家族構成が変わったら手続きが必要
結婚や子どもの誕生などで家族手当を受けることになった際だけでなく、家族構成が変わって支給条件から外れた場合も手続きが必要です。
自発的に連絡しないと、企業の担当者は知るすべがありません。例えば、離婚や別居などで生計をともにしない家族ができた場合は、速やかに報告しましょう。
報告を忘れて、不正受給しないように注意が必要です。故意に不正受給した場合は、返還請求や懲戒処分などの対象になるでしょう。
家族手当とよく似た制度との違い
家族手当以外にも、家族がいる人がもらえる手当があります。家族手当と混同しやすい、扶養手当や児童手当との違いを見ていきましょう。
扶養手当・育児支援手当
扶養手当は、扶養している家族がいることを条件にしています。育児支援手当は「18歳までの子どもがいる従業員」など、企業が支援対象の年齢を定めていることが特徴です。
どのような名称になっているかは、企業によって異なります。条件はさまざまですが、税法上の扶養家族に該当する家族と暮らしている場合に、支給されるのが一般的です。
例えば、未就学児や定年で収入がない家族などがいる従業員が、対象となります。自力で生活できる家族に、金銭を支援する意味は薄いので、除外されます。
家族手当の場合、扶養されているかどうかにかかわらず、支給されるケースもゼロではありません。配偶者や子どもの収入に関係なく、家族がいる従業員に一律で支給すると定めている企業もあるでしょう。
児童手当
児童手当は、国や自治体が支給する制度です。会社が独自に設けている家族手当とは、供給元が異なる点が大きな違いです。
子どもが生まれたら、居住している自治体に申請しましょう。支給対象となるのは、以下の児童です。
”児童(0歳から18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子をいいます。以下同じ。)を養育している方“
また、支給額(月額)は、子どもの年齢によって異なります。
- 3歳未満:1万5,000円
- 3歳以上:高校生年代までは1万円
どちらの場合も、第3子以降は3万円が支給されます。例えば、3歳・4歳・5歳の子どもがいる家庭の月額は5万円です。
家族手当の今後について
企業によって福利厚生に違いがありますが、さまざまな理由から、家族手当の在り方が見直される可能性があります。家族手当は今後、どうなっていくのかを見ていきましょう。
ライフスタイルや社会の変化がカギ
女性の社会進出により、男性だけが家族を養う従来のスタイルが変化しつつあり、公平性のある福利厚生が求められています。
政府は、配偶者手当の在り方を検討するように呼び掛けています。企業は、家族手当が働き控えにつながらないように、注意しなければなりません。
また、家族がいる人とそうでない人の収入に大きな差が生まれると、家族がいない人のやる気をそぐという見方もできます。
今後は扶養家族の有無などに関係なく、個人の能力や実績などに応じて、支給される手当が増える仕組みなどが求められるでしょう。
見直しを検討している企業の割合
家族手当は、従業員の経済的な負担を抑えるためのものなので、急になくなっては困ると感じる人は多いはずです。どの程度の企業で見直しが検討されているのか、見ていきましょう。
人事院が公表している「令和6年職種別民間給与実態調査の結果」によると、家族手当の見直しを検討している企業は全体の15.3%です。
福利厚生が貧弱になると、人材の応募や定着に悪影響を及ぼす場合があります。これからは、子どもに対する手当の充実だけでなく、親の介護を支援するような制度の改革も求められるでしょう。
出典:令和6年職種別民間給与実態調査の結果 表12 家族手当の支給状況|人事院
家族手当の有無や金額を確認しよう
家族手当は福利厚生の一種であり、企業によって支給条件や範囲、金額などが異なります。配偶者の所得や子どもの年齢などで、対象範囲を決めている場合もあるでしょう。
家族がいる人は、給与が増える可能性があるので、勤務先の就業規則を確認し確実に申請することが大切です。また、企業によっては、扶養手当・育児支援手当などを設けている場合があるため、併せて確認しましょう。
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