給与をもらいながら休暇が取れる有給休暇は、繰り越しが可能です。いつまで繰り越しができるのか、基本ルールや計算例を解説します。繰り越しをする際の注意点や、うまく取得するコツも確認しましょう。有給休暇が残ったときの対処方法も紹介します。
有給休暇繰り越しのルールと上限
有給休暇は繰り越しできますが、ルールがどうなっているのかや、付与日数・上限については分からない人もいるでしょう。せっかく付与された休暇を消滅させないためにも、繰り越しがいつまでなのか確認しておくことが大切です。
有給休暇は翌年度まで繰り越しが可能
有給休暇は、発生した日から2年で消滅します。労働基準法第115条では請求の権利について定められており、有給休暇が請求できるのも2年です。
つまり、付与された日から1年間で使い切れなかった有給休暇は、翌年度まで利用できます。1年で全てを使い切る必要はないため、無理なく取得の調整が可能です。
ただし、期限までに使い切れない場合、再度の繰り越しはできず、有給休暇は消滅します。
付与日数は労働条件によって変化する
有給休暇の付与日数は、労働条件によって決まっています。雇用契約の労働日数・勤続年数によって、それぞれ付与日が定められており、全員一律ではありません。
また、実際の出勤状況によっては、有給休暇がもらえないケースもあります。雇い入れの日から起算して6カ月継続勤務し、出勤が全所定労働日の8割以上であることが付与条件となっているので、注意しましょう。
繰り越しの日数は付与日数と連動しており、その年に付与された有給休暇は、全て翌年度まで繰り越しが可能です。付与されている日数により繰り越される日数も変わりますが、付与日数は最大20日間のため、基本的には上限も20日となります。
有給休暇の付与日数と繰り越しの計算例
有給休暇の付与日数や繰り越しは、どのように計算されるのでしょうか?それぞれ、一例を出して解説します。自分の有給休暇の付与日数や繰り越し状況を把握して、計画的な取得を心掛けましょう。
有給休暇付与日数の計算例
有給休暇の付与日数は、それぞれケース別に細かく設定されています。労働時間や勤続年数によって、付与日数は固定です。
例えば、フルタイム勤務で半年勤務すると、10日付与されます。勤続年数が増えるほど日数も増えていき、6年半以上継続して勤務している場合では、20日付与されます。
短時間労働者の場合、1週間の所定労働日数、または1年間の所定労働日数によって、付与日数が変わるのが特徴です。
例として、1週間の所定労働日数が4日の場合、半年での付与日数は7日です。勤続年数が増えるほど付与日数が増え、6年半以上継続して勤務していると15日付与されます。
出典:次年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省
有給休暇繰り越しの計算例
有給休暇の繰り越しは、以下のように計算できます。例えば、フルタイムで働く人が、毎年12月1日に有給休暇が付与されるケースで考えてみましょう。
入社が2024年6月1日だとすると、勤続6カ月後の2024年12月1日に10日間の有給休暇が付与されます。そのうち、5日間を取得すると残りは5日です。2025年12月1日には勤続年数が1年半になるので、11日間が付与されます。
繰り越しした5日と、新しく付与された11日で計16日です。ここからまた5日間を取得すると、11日分は繰り越しされます。
もし、繰り越し済みの有給休暇が使い切れないほど残っている場合は、付与日から2年以内に取得しないと消滅するため注意しましょう。
有給休暇を翌年に繰り越す際の注意点
有給休暇は、付与された年に使い切ることもできますが、翌年に繰り越しも可能です。すぐに使い切らずに残しておくと、何か問題はあるのでしょうか?繰り越しの際の注意点を解説します。
付与された日がいつなのか確認しておく
有給休暇の付与日や、取得状況は人によって異なります。どこまでが繰り越し可能なのか、把握しておかなければなりません。
付与日は、一般的に入社から6カ月が経過した日となっていますが、会社のルールで全員統一されているケースもあります。有給休暇が消滅する付与日を確認しておかなければ、いつまでに使い切らなければならないか判断が難しいでしょう。
会社で使用している勤怠管理システムや給与明細で、詳細を確認できるケースもあります。ただ、付与日や消滅する有給休暇について詳しく聞きたい場合は、社内の担当者に確認するのが確実です。
出典:年次有給休暇制度について |厚生労働省|都道府県労働局|労働基準監督署
有給休暇の買い取りはできないケースもある
もし繰り越しができず消滅してしまうときは、余裕を持って有給休暇の申請を行いましょう。従業員が有給休暇を申し出た場合、会社は拒否できませんが、期限までの日数が足りないときは消化し切れない恐れもあります。
消化できない分を買い取ってもらいたいとしても、有給休暇の買い取りは違法となるため、原則できません。付与日から2年が経過し、消滅した有給休暇の買い取りは可能ですが、会社に義務はないため断られる可能性もあります。
就業規則で、消滅する有給休暇の扱いがどうなるのか、あらかじめ確認しておく必要があるでしょう。
有給休暇の残日数を把握しうまく取得するには
仕事の量や会社の体制によっては、計画的な休暇の取得が求められます。自分自身で残日数を把握し、消滅しないように取得するには、どうすればよいのでしょうか?主な方法を紹介します。
有給休暇取得の状況を控えておく
有給休暇の残日数の詳細について、会社が従業員に伝える義務はありません。ルール通りに付与し、必要なときに取得できる状況であれば、義務を果たしていることになります。
確認すれば答えてもらえる可能性は高いものの、自分で取得状況を控えておくのがベターです。繰り越しできる分と、消滅する分が明確に分かっていれば、消滅しないように使い切る計画が立てられるでしょう。
特に2019年4月からは、年10日以上の有給休暇が付与される対象者に対して、会社が時季を指定して年5日の休暇を取得させるよう義務付けられました。そのため、いっそう計画的な取得が求められるでしょう。
会社が就業規則やシステム上で、有給休暇の付与日・取得状況を確認できるようにしている場合は、活用するのがおすすめです。
出典:年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説|厚生労働省|都道府県労働局|労働基準監督署
半休や時間単位の休暇を活用する
会社の導入状況によっては、半休や時間単位の有給休暇が取得できるケースがあります。もし、1日単位での休暇取得が難しい場合は、制度が導入されているか確認してみましょう。
時間単位での有給休暇取得制度の導入には、就業規則への記載と労使協定の締結が必要です。導入状況が分からない場合は、就業規則を確認すると判断ができるでしょう。
なお、時間単位での取得は、年5日の範囲に限られます。全ての有給休暇を時間単位で取得することはできず、原則は1日単位の取得のため、一部の措置であることは理解しておきましょう。
出典:仕事休もっ化計画|厚生労働省|都道府県労働局|労働基準監督署
有給休暇が残ってしまう場合の対処法
有給休暇を、全て使い切る義務はありません。状況によっては、残ってしまうケースもあるでしょう。消滅する有給休暇がある場合、どのような対処ができるのか解説します。
事前に会社と相談し計画的な取得を心掛ける
従業員側から申し出れば、有給休暇の取得は可能です。会社は時季変更権(年次有給休暇の取得を従業員が申請したとき、会社がその取得時期を変更できる権利)を持っているものの、取得の拒否はできないこととなっています。
しかし、年5日の取得義務を除いて、従業員側の都合で使い切らない場合には罰則はありません。もし全てを使い切りたいと考えているなら、会社や同僚と時期を相談した上で、計画的に取得するのが基本です。
従業員には全員取得の権利があるため、ある程度全員の希望を聞いた上で、日程を調整する必要もあるでしょう。毎回、自分の希望だけが優先されるとは限りません。他の人も有給休暇をスムーズに取得できるよう、余裕を持って相談しましょう。
消滅前の取得や買い取りを打診する
仕事が忙しく有給休暇を使っている暇がない場合、消滅の時期が近づいてしまう可能性もあります。
どうしても使い切れないときは、長期休暇を取得してもよいか相談も可能です。日程・時期の都合上、難しいときには買い取りの打診もできます。
しかし、休暇の日数が多い場合には、代わりの人員を準備するなど協議が必要になり、話し合いが長引くリスクは高いでしょう。必ずしも、買い取りができるとも限りません。できるだけ、計画的な取得を目指す方がよいでしょう。
なお、休暇の取得を断られる場合は、会社の対応が違法となる可能性も考えられます。有給休暇が使えないときは、社内の相談窓口や労働基準監督署への相談も検討しましょう。
休暇が取りやすい職場に転職を検討する
会社の体制によっては、年5日の取得義務を除いて、ほとんど有給休暇が使えない可能性もあります。もし休暇が取れるよう訴えてみても変化がなく、人間関係が悪化するようであれば、転職も検討しましょう。
業界や会社の体制によって、休暇が取得しやすいところもあります。人数が多く、1人が休んでもカバーしやすい会社であれば、申し出もしやすいでしょう。
有給休暇取得率を公開している会社もあるため、応募前に確認するのもおすすめです。転職先候補を決めるときは、有給休暇の取得率だけでなく、さまざまな面を考慮して働きやすい職場を見つけましょう。
有給休暇の繰り越しに関するQ&A
有給休暇には、さまざまなルールがあります。取得する上で、把握しておいた方がよいものも多いでしょう。気になる疑問と回答を、Q&A方式で紹介します。
有給休暇は繰り越し分から消化される?
有給休暇には、すでに繰り越しが終わっている分と、当年度に付与された新しい分があります。両方が残っている状態で休暇を取得すると、繰り越しが終わっている分から消化されるため、急いで全てを消化する必要はありません。
例えば、1年に20日の休暇が付与される場合、2年間で20日を使い切れば、消滅させずに残日数も確保できます。
「何かあったときにまとめて有給休暇を活用したい」と考えているなら、1年で付与された分全てを使い切ってしまうのではなく、2年間で計画的に使うのもおすすめです。
ただし、消滅が近づいた時点で残っている日数が多いと、うまく休暇の予定が組めないことも考えられます。そのため、直前ではなく、早めに申請を済ませるよう心掛けましょう。
アルバイト・パートでも繰り越しは可能?
アルバイト・パートであっても、有給休暇の付与対象です。繰り越しのルールも同じで、付与されてから2年は使えます。
ただし、付与日数は労働時間によって決まっているため、フルタイム勤務より少ない日数です。付与されている日数が分からない場合は、会社に確認してみましょう。
有給休暇を取得する権利はアルバイト・パートにもあり、請求すれば会社は拒否できません。消滅する前に使い切れるよう、会社と相談しましょう。
有給休暇の繰り越しと消滅時期を把握しておこう
使い切れなかった有給休暇は、翌年度まで繰り越しが可能です。しかし、繰り越しできるのは1回のみのため、付与から2年後には消滅してしまいます。
もし有給休暇が残ってしまい、どうしても使い切れないようであれば、休みが取りやすい会社への転職を検討するのもよいでしょう。「スタンバイ」でも、さまざまな業界の仕事を探せます。
まずは、福利厚生の充実度や労働条件、自分に合う仕事内容など、気になる条件で求人を探してみましょう。