助産師とは

助産師のイメージ

助産師は、助産所や産婦人科などで、おもにお産の介助を行います。日本では、昭和20年代はじめまで、お産を介助する人は「産婆」という職業名で人々に頼りにされていました。その後「助産婦」という名称や教育・免許制度を経て、現在は「保健師助産師看護師法」のもと、国家試験に合格して厚生労働大臣の免許を受けた人が「助産師」と認められています。海外では男性の助産師も活躍していますが、日本では助産師になれるのは女性のみです。

現代では、産科医師のいる病院での出産が多く、助産師の90%近くが総合病院や大学病院、産院、産婦人科・小児科病院などの医療機関に勤務しています。一方、助産所を開所しているか、助産所に勤務している助産師も、6%程度います。

母体が正常な妊娠経過にあれば、助産師も産科医師と同様に、妊娠中の診断やお産の介助が可能です。経過や状況に応じて必要な医療措置が受けられるよう、医療機関との連携のもと、助産所や自宅での出産を希望する女性をサポートしています。

勤務の場が医療機関であれ、助産所であれ、助産師は母親の「産む力」、赤ちゃんの「産まれてこようとする力」を可能なかぎり引き出し、お産をサポートします。また、無事に出産が終われば、そこから始まる赤ちゃんの世話や授乳を両親が協力してうまく行えるよう、アドバイスを行います。

助産師の仕事は、文字どおり「お産を助ける」ことですが、お産にまつわることだけにとどまりません。母子のケアはもちろん、思春期や更年期を含む中高年期など、女性がその生涯で迎えるさまざまな身体と心の変化、不妊や性感染症、月経障害といった不調、また、女性に対する暴力などについてもケアを行います。広く深く、知識と経験が求められる仕事です。

助産師の職場や仕事内容

助産師の職場は、総合病院や大学病院、産院、産婦人科・小児科病院などの医療機関が90%以上です。助産所を開業・勤務、自治体の保健センターなどでの勤務のほか、出張で助産などを行う助産師もいます。

医療機関の場合、その規模や方針にもよりますが、妊娠期間中の検診は医師が担当し、ある程度妊娠週数が進んだところで、助産師が母親と顔を合わせ、母親がどのようなお産を希望しているか、「バースプラン」を話し合うという流れが多いようです。助産師が主体となって、出産予定の母親たちにお産の流れや妊娠中の生活について話す「母親学級」や、父親も参加してお産や子育てを一緒に考える「両親学級」を開催する医療機関もあります。

お産までに母親と助産師が顔を合わせるのは数回のみという場合もあります。また、バースプランを話し合った助産師が、お産時に介助を担当するとは限りません。そのため助産師は、短いやり取りのなかでも信頼関係を築けるよう努めます。近年は、分べん室でアロマをたいたり、好きな音楽をかけられたりと、母親がリラックスした状態で出産に臨めるようさまざまな工夫をしています。また、緊急時の医療体制や助産師のチーム体制が整っていることからも、病院での出産を希望する母親は多いようです。

一方助産所は、医師の診察を受けるよう定められた週数の検診以外は、助産師が妊娠期間を通じて母親の状態や胎児の発育や発達を見守り、お産に至る場合が多いようです。数カ月におよぶ妊娠期間中、母親と助産師がじっくり信頼関係を築くことができる点は、助産所での出産を選ぶ母親にとって魅力の一つです。ただし助産師は、へその緒の切断、緊急時の手当てなどは行えますが、帝王切開や促進剤の使用などの医療行為は行えないため、嘱託医(医療機関)を定め、連携することが義務づけられていて、緊急事態に備えます。

医療機関や助産所以外では、自治体の保健センターなどで新生児訪問といわれる家庭訪問を担当する助産師もいます。自治体によって異なりますが、生後1か月ごろに、赤ちゃんの発育状態や、母親の心身の状態を確認し、保健指導を行います。近年、ニュースになることも多い虐待や、産後うつなどの兆候をいち早く捉え、適切な対応に結びつけることも、助産師の重要な仕事です。

産後、母親が抱えがちな悩みの一つが授乳です。体質によって、母乳が出にくかったり、出過ぎたりもします。乳腺炎になれば、痛みや高熱で赤ちゃんの世話もままならない場合もあります。助産師は、赤ちゃんの体重の増減を確認し、必要に応じて人工乳を補うことや、どれくらいの量を足せばよいかを助言します。また、赤ちゃんが飲みやすい授乳体勢を指導することもあります。授乳は、人によって数年におよびます。その間におきるさまざまな乳房のトラブルに対処したり、卒乳や断乳の相談に対応したり、乳房のマッサージをすることもあります。乳房のマッサージには技術と経験が必要なため、母乳外来や助産院で、母乳育児のサポートを専門に行う助産師もいます。

職場や勤務形態によっても異なりますが、助産師の仕事は夜勤があることが多いです。夜や明け方にお産が進むことも多く、入院中の母子のケアなどもあるため、食事や休憩を決まった時間に取れないこともあります。交代制の勤務では、睡眠も不規則になりがちです。

また、お産では予期せぬ状況が起きることがあります。母や子が命を落とすこともありえます。妊娠が判明した人のなかには、さまざまな事情で中絶を選択せざるをえない場合もあります。助産師は、精神的につらい場面に立ち会うことも多い仕事です。それらを受け止め、命に向き合うために、広く深く、知識と経験が求められます。

それでも、命の誕生の瞬間に立ち会う感動は、助産師にとって大きなやりがいにつながるようです。また、母と子の成長をサポートし、お産にとどまらず「生まれ、成長し、老いること」に寄り添う助産師の仕事は、多くの人に必要とされる仕事であるといえるでしょう。

助産師になるには

助産師になるには、まず看護師国家試験に合格していることが必要です。そのうえで文部科学大臣の指定する学校で、1年以上助産に関する学科を修めるか、厚生労働大臣の指定した助産師養成所を卒業することなどが、助産師国家試験の受験資格となります。

受験資格を得るための教育課程はさまざまで、大学の助産コース、大学院、大学別科、専修学校などがあります。実習も非常に重要で、助産所や病院はもちろん、小中学校の思春期教育、不妊や更年期などの身体の変化や不調に対するケアなどの実習が課される場合もあります。実習が必須なことからも、独学では受験資格は得られません。

助産師国家試験の合格率は、例年95%以上となることが多く、99.9%となる年もあります。非常に高い合格率ですが、難易度が低いわけではありません。助産師国家試験の受験資格が得られる学校への入学、入学後の学習や実習、レポートなどが非常に難しいといわれており、むしろ国家試験を受験するまでのほうが困難であるといえるでしょう。試験は毎年1回、2月に行われます。厚生労働省によって施行されるため、試験の詳細は厚生労働省のサイトを確認してください。

資格取得後の採用について、一般的に医療機関の採用試験は、エントリーシート、書類審査と面接という流れが多いようです。公務員型の公立病院の場合は、そのほかに小論文(作文)が課されます。

ただし、近年は公立病院の独立行政法人化が進んでいます。独立行政法人は2種類で、特定地方独立行政法人と一般地方独立行政法人があります。一般地方独立行政法人の場合は、病院の名称が慣例的に公立病院となっていても、職員の身分は公務員ではありません。公務員としての勤務を希望している場合は、その医療機関の運営母体を確認する必要があります。

助産師と保健師の違い

助産師の資格は「保健師助産師看護師法」に基づいています。この法律の名称で助産師と並記されている「保健師」は、助産師と同様、看護師の資格を持っていることが資格取得の条件となります。

助産師がおもに母子、女性の保健指導を行うのに対し、保健師は、企業や自治体などで、働く人や地域の人々に保健指導を行います。また、助産師は日本においては女性に限定されているのに対し、保健師は男性もなることが可能です。

なお、看護師資格と同時に助産師・保健師の資格が卒業時に取得可能な大学はあります。ただし、必要な科目を履修するには人数や成績などの制限もあり、それぞれについての実習もあるため、時間的にも無理が生じやすく、かなり希少なケースといえるでしょう。

求人の給与情報から集計した助産師の年収帯

夜勤の有無などによっても大きく異なりますが、ある求人データによると、400万円台が最も多く、次いで500万円〜700万円台が多くなっています。資格取得の困難さ、専門性の高さ、業務の厳しさなどからも、収入は高くなる傾向です。

地方独立行政法人に移行した公立病院(非公務員型)の新卒給与の例を挙げると、4年制大学卒で、夜勤などの手当てを含み約27万円というデータがあります。このほかに、約4か月分のボーナスの支給実績があるようです。新卒者の給与としては、少なくない額だといえます。それだけの大きな責任と緊張感のある仕事であるともいえるでしょう。

助産師の求人傾向

一般的な求人サイトでも求人情報が得られます。助産所や各医療機関のオフィシャルサイトなどでも確認できます。医療機関も助産所も地域に根ざしていることから、ハローワークも求人情報を得やすいでしょう。不規則で厳しい「夜勤なし」をアピールポイントとする求人や、保育所を併設して子育て支援をうたう医療機関もあり、働きやすさを重視する傾向が見られます。助産師は、その専門性や業務の幅広さから求人情報は見つけやすいといえるでしょう。

出典:
日本助産師会
東京都助産師会
地方独立行政法人の医療機関一覧
京都市立病院