スキューバダイビングインストラクターになるには?必要な資格も紹介

スキューバダイビングインストラクターとは

スキューバ

(出典) photo-ac.com

スキューバダイビングインストラクターとは、スキューバダイビング(空気タンクなどの自給式水中呼吸装置を利用するダイビング)のライセンスを取得したい人や、ダイビングを体験してみたい人を指導する職種です。

日本国内では、スキューバダイビングを楽しんだりスキューバダイビングの指導をしたりするために、公的資格や法的規制は特にありません(オーストラリアではライセンスを持たない人のダイビングは禁止されています)。しかし、スキューバダイビングは、適切な技術を身に付けていないと命に関わる重大な事故が発生しかねないスポーツでもあります。

そこで現在、複数のダイビング関連の民間団体が、ダイビングの技術を証明するための資格や、インストラクターを目指せる資格を独自に発行しています。スキューバダイビング用器材のレンタルやダイビングの手配を行うダイビングショップでも、ショップ利用者に対して、いずれかの認定資格の提示を求めるのが一般的です。

スキューバダイビングを楽しむには、いずれかの団体の認定資格を所持していることが事実上の必須条件となっています。その認定資格の取得を手助けし、ダイビングの技術を教えているのがスキューバダイビングインストラクターなのです。

仕事内容

スキューバダイビングインストラクターの代表的な仕事には、次のようなものがあります。

ダイビングライセンス取得のための指導

スキューバダイビングのライセンスを発行している団体は、国内だけで30ほども存在しており、団体によって資格の名称や発行条件、ダイビング可能な水深などが異なります。このような複雑な状況を受けて、共通の基準を設けようとライセンス発行団体が集まって設立したのが、「Cカード協議会」です。

各団体のライセンスの呼称や発行基準はそのままに、各団体のライセンスのうち同程度の技量を証明していると思われるものをグループ分けして、「Cカード」という認定証を発行しています。Cカードを持っていることで、どの団体の資格を所有していても、世界中のダイビングショップで共通のサービスを受けられるのです。

ダイビングショップに所属するインストラクターは、Cカード発行の前提となる各団体のライセンスを取得するための講習会などを行っています。講習内容は、勤務するダイビングショップと提携しているライセンス発行団体のカリキュラムに準拠しており、海で実技を指導するだけでなく、水深の深い専用プールで指導したり、ダイビングに必要な知識を座学として講義したりすることもあります。

ダイビングの付き添いやガイド

ライセンスを持っていない人が潜る体験型ダイビングに付き添ったり、既にライセンスを持つダイバーのためにダイビングスポットの見どころをガイドしたりするのも、スキューバダイビングインストラクターの仕事です。

海で業務する日は、朝に天気図をチェックすることから仕事が始まります。当日の天候と潮の流れなどを考慮してから、顧客を受け入れるか否かを決定するのです。受け入れ可能な場合は、顧客を集合場所まで迎えに行ったり来店を促したりするために連絡を取ります。

続いてダイビングスポットまで顧客を乗せるボートや船と、貸し出すダイビング器材などを点検します。各顧客のダイビング記録(ログ)やライセンスをチェックして、顧客のダイビング技術を把握しておくことも事故防止のために重要です。

顧客がショップに到着したら、海上からエントリーするボートダイビングを行う場合はボートや船でダイビングスポットへ案内します。到着後に改めて天候の状況を判断し、各顧客の技量や体調に合わせて適切なサポートや指導を行います。

指導の中身については、顧客が持つライセンスの内容や天候、潜る場所により異なりますが、ダイビング中の事故を起こさないための指導が最優先です。ダイビング終了後は、ダイビングの記録である「ログ」を付けます。ログに記録された顧客のダイビング内容(潜った水深や回数など)は、ダイビングライセンスやインストラクターライセンスを取得するための要件となります。ログ付け後は、貸し出した機材を整備して現場での業務を終えるという流れです。

陸上業務

スキューバダイビングインストラクターは、海に出ることだけが仕事ではありません。ダイビングインストラクターの仕事の6~7割を陸上での業務が占めるといわれています。ダイビングショップはスタッフ数が少ない小規模な店舗も多く、店舗運営に必要な業務はインストラクターも含めたスタッフ全員の仕事とされていることも多いのです。

そのようなケースでは、顧客の送迎サービスを行うダイビングショップの場合、送迎の手配や、レンタル用のダイビング器材の整備、ダイビング用品の販売などもインストラクターが担当します。個人がダイビングをするために必要な器材は、ウェットスーツ(もしくはドライスーツ)、潜水可能な残り時間などを計算するダイビングコンピューター、フィン、マスクなど10種類以上あり、購入すると総額15万~30万円にもなります。

ダイビングショップが旅行会社を兼ねて着地型ツアー(ツアー開催地で申し込む旅行プラン)を販売している場合には、旅行関連資格を持つインストラクターがツアーコーディネートなどを担当していることも少なくありません。

副業としてのインストラクター業務

ダイビングインストラクターは海に出る回数が多いため、肉体的に負荷が高く、収入も他職種の平均額に比べて多いとはいえません。専業の職とするには相当な覚悟が必要です。そこで、インストラクター資格の取得後に、週末の副業として顔なじみのショップで非常勤のスキューバダイビングインストラクターをしている人もいます。

ライセンス講習でメインの講師を任されることは少ないものの、アシスタント業務やダイビングスポットのガイドをする機会はあるので、スキューバダイビングの素晴らしさを広める充実感を味わえるでしょう。

職場の種類と業務

スキューバダイビングインストラクターとして働く人の多くは、ダイビングショップに勤務しています。ダイビングショップでの仕事は、器材のレンタルやダイビング地点までのコーディネート、海のガイド、ダイビングの技術指導などを事業とする店舗や会社です。

ショップはその所在地によって力を入れる業務内容が異なっており、勤務するインストラクターが担当する仕事の内容にも影響するケースが多いようです。

都市型ショップ

ダイビングスポットから離れた都市部に所在しています。ダイビングライセンスの講習や技術指導のほかに、現地までの送迎プランやダイビング器材の販売に力を入れているショップが多いという特色があります。

都市部ではダイビング初心者の人口が多くライセンスの取得講習の申込を多く見込めますが、講習の中身は他店と差別化できる要素が少ないため、価格競争によって単価が下落傾向にあり競争が激しいのです。そのため、講習費用以外で稼ぐ必要があり、勤務するインストラクターは講習や技術指導のほかに、器材販売にも力を入れなければならない事情があります。

なお、ダイビング技術は同じインストラクターから継続的に教わった方が効果が高いとされます。都市型ショップのインストラクターは、顧客から継続的に指名してもらえるという特徴もあり、顧客の上達を感じられることがインストラクターとしてのやりがいにつながることも多いようです。

現地型ショップ

沖縄をはじめとして、ダイビングスポット近くに店舗を構えています。現地型のショップには、付近の海の様子や地形、見どころを熟知しているという強みがあります。体験型ダイビングの付き添いや、既にライセンスを持っている人向けにダイビングスポットを案内する業務に力を入れている店が多いようです。

そのため、現地型ショップに勤務するインストラクターは、海に出る仕事に割く時間が比較的多い傾向にあります。顧客には現地の海のファンも多く、中級以上の技術を持ったダイバーを固定客として見込めるでしょう。

国外ショップ

海外のダイビングスポットに所在するショップも、スキューバダイビングインストラクターが活躍できる場所のひとつです。日本人のインストラクターが在籍する店では、日本人の旅行客をメインの顧客層としている場合もあります。

ダイビングライセンスの取得講習やダイビングスポットのガイドを行うほか、旅行会社を母体とする店舗では、着地型ツアーとしてダイビングのプランを入れているケースも少なくありません。着地型ツアーを取り扱うショップだと、インストラクターもツアーに関する対応を担当する可能性があるでしょう。

なお、オーストラリアやヨーロッパなど、国や地域によっては所定のライセンスがない人にダイビングや道具のレンタルを禁止している場合もあります。事前に仕事をしたいエリアについてリサーチが必要です。

スキューバダイビングインストラクターになるには

スキューバダイバー

(出典) photo-ac.com

スキューバダイビングインストラクターになるには、認定団体のインストラクター試験に合格しなければなりません。各団体によりインストラクター試験の詳細は異なりますが、どの団体であってもいきなりインストラクター試験を受験することはできず、ダイバーとしての技術を証明する資格を取得した後で、段階的にインストラクター資格を取得していくことになります。

なお、スキューバダイビングインストラクターになるために必須ではありませんが、国家資格である「潜水士資格」を併せて取得する人もいます。潜水士は、水中での工事や掘削など、潜水を伴う業務を行うための資格です。潜水士試験の受験に年齢・健康状態以外の制限はないので、職務可能な範囲を広げて安定した収入を得たい場合などは取得を検討してみるのもよいでしょう。

スキューバダイビングインストラクター資格の概要

インストラクター資格について、世界のダイバーの6割がライセンスを取得しているという認定団体「PADI」を例に説明します。

PADIではインストラクターになるために、IE(Instructor Examination)という試験を受けます。受験資格は、PADIで別途「ダイブマスター」資格の認定を受けてから6カ月以上たっていて、例えば以下の要件のような条件に当てはまる人です。

  • 100ダイブ以上のログの経験を持っている人
  • インストラクター開発コース(IDC)修了日から1年以内の人

認定には座学・筆記試験・実技など4セクションの受講・受験が必要で、全セクションへの参加には108,350円の費用がかかります(2022年)。

なお、PADIで初心者がダイビングを楽しむための資格として設けているのが、「オープン・ウォーター・ダイバー(18メートルまで潜水可能)」です。インストラクターをはじめとするプロを目指す資格として「テクニカル・ダイバーコース」「プロレベル・コース」などもあります。

スキューバダイビングインストラクターがライセンス取得講習で指導する顧客は、初心者向け資格の取得を目指している人が大半です。

スキューバダイビングインストラクターの将来性について

スキューバダイバー

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スキューバダイビングインストラクターが活躍できる場所は、国内から海外まで多岐にわたります。資格を取得して働くからには、「長く続けたい」「安定した収入を得たい」と思う人が大半でしょう。スキューバダイビングインストラクターに将来性はあるのでしょうか。

長く続けられるかは体力次第

マリンスポーツの代表格であるスキューバダイビングは将来、需要がなくなることは考えにくいといえます。ただ、体力的・精神的に大変な仕事であるため、いつまで続けられるかは本人次第でしょう。

特に、ダイビングツアーや体験ダイビングでは、自分の安全性を確保しつつ、初めてダイビングをするゲストをガイドしなければならないため、かなりのハード業務となるでしょう。加えて、常に命の危険と隣合わせであることから、30代前後でリタイアを考える人が多いようです。

業界の傾向としては人手不足になりやすく、相応の資格保有者であれば就職には困らないと推測されます。健康状態が良好で、体力的・精神的にも自信がある人であれば、長く仕事を続けられる可能性が高いでしょう。

海外のリゾート地でも働ける

スキューバダイビングインストラクターの需要は、日本国内のみにとどまりません。東南アジアを始めとするリゾート地では、日本人向けのガイドやツアーを募集しています。

日本人観光客を相手にする場合、高いレベルの外国語能力は不要なケースが大半です。スキューバダイビングインストラクターの資格を通じて、「海外で働いてみたい」という夢が実現する可能性が高いでしょう。

スキューバダイビングインストラクターの中には、気力・体力が十分な20~30代に海外で経験を積み、自分のショップやスクールをオープンする人もいます。アジアの一部の地域は物価が安いため、日本で起業するよりも初期投資が低く抑えられます。

将来は経営者の道も

スキューバダイビングインストラクターの収入はほかの職種に比べて低く、インストラクター業務のみで安定継続収入を得ていくのは難しいといえます。

インストラクターになりたてのうちは日々の業務をこなすことで精一杯かもしれませんが、ガイドの仕事に慣れた5年後、10年後を見据えながら仕事をしていく必要があるでしょう。

収入が低いうえに、体力と良好な健康状態が求められることを考えると、30~40代がひとつの区切りです。マリンスポーツに一生関わっていきたい人は、ダイビングショップ・スクールの経営者の道を選択するのが望ましいでしょう。

ショップ・スクールの経営とは、スキューバダイビング用品の販売やレンタル、ツアーの規格など、スキューバダイビング全般に関わる運営を行うことです。インストラクターから独立する人の場合は、事業として最小限の規模で起業し、ダイビング仲間を顧客にして徐々に規模を拡大していくケースが多い傾向があります。

ダイビングスクールを開講する場合は、インストラクター資格を持つ指導員の所属が不可欠である点に留意しましょう。

スキューバダイビングインストラクターの求人傾向

地上のダイバー

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スキューバダイビングインストラクターの求人は、インストラクター資格さえ持っていれば業務未経験者でも応募できるものが多いようです。

主要な勤務先であるダイビングショップはインターネット上で求人を公開しているケースもあります。現地型ショップは、地域の求人誌や実店舗にも求人情報を載せているため、日頃から幅広く情報収集をしておく必要があるでしょう。

なお、インストラクター以外の職種でスキューバダイビングインストラクターの資格を活かせる職種としては、ダイビングツアーの企画営業などもあります。

※文中に記載の各種数値・内容は、2022年5月時点のものになります。

出典:
PADI「ダイビングインストラクター試験(IE)要項/日程/合格者」
Cカード協議会(レジャーダイビング認定カード普及委員会)