ツアーガイドになるには?詳しい仕事内容と持っておきたい資格を解説

ツアーガイドとは

バス

(出典) photo-ac.com

ツアーガイドは、ツアー参加者が現地の文化や歴史、生活習慣を理解し、より有意義な時間を過ごせるよう、情報を伝え、案内します。ツアーガイドには、大きく分けて以下の3種類があります。

海外ツアーのガイド
海外で、主に日本からの旅行者を、主に日本語で案内するガイド。

国内ツアーの日本語ガイド
日本国内で、主に日本の旅行者を日本語で案内するガイド。

国内ツアーの外国語ガイド
日本国内で、海外からの旅行者を外国語で案内するガイド。

どの種類のツアーガイドも、現地の地理や観光情報、生活事情に通じていることはもちろん、参加者がどんな体験を期待しているか、どんなサポートを必要とする傾向かを把握している必要があります。

1の「海外ツアーのガイド」は、国や地域によっては資格が必要な場合もあります。資格取得には国籍・年齢の要件が定められていることや、無資格でガイドを行った際の罰則が定められていることもあるため、制度をよく確認することが必要です。

2の「国内ツアーの日本語ガイド」は、資格など、規定はとくにありません。それだけに、ガイドの質を高める努力がより必要であるともいえます。

3の「国内ツアーの外国語ガイド」は、2017年6月時点では、国家資格である「通訳案内士」の資格を取得し、都道府県知事の登録を受けていることが必要です。登録せずに有償でガイドを行うと、50万円以下の罰金が科されます。ただし、急激に増加する訪日外国人に対応するため、通訳案内士制度の見直しを図る動きが出ており、今後変更となる可能性があります。

ツアーガイドに期待される役割は幅広く、空港・駅・ホテルなどへの送迎や、観光名所の解説などは、重要ですが一部にすぎません。貴重品の紛失や盗難、けがといったトラブル時のサポートから、おいしいお店やおみやげのアドバイスまで、参加者が安心して楽しく過ごせるよう、心配りをします。

ツアーガイドの仕事内容は

飛行機

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ツアーガイドの仕事内容は、担当するツアーによってさまざまです。ツアー参加者の現地到着から現地出発まで、数日間にわたり付き添う場合もあれば、半日や数時間といった比較的短い時間、ガイドを行う場合もあります。空港や駅、ホテルなどへの送迎のみ担当するケースもあります。

いずれの場合でも、必須となるのは時間管理能力でしょう。国内・海外を問わず、交通機関の到着時間によって、早朝や深夜に送迎を行うことは珍しくありません。さらに、道の渋滞、交通機関の遅延、荷物紛失、迷子など、さまざまな理由で予定どおりにいかないことが多いです。その反面、参加者が乗る予定の飛行機や電車に遅れることは許されません。

交通状況や天候をはじめとする最新情報を収集し、ある程度余裕をもって時間配分をしつつ、参加者に目を配り、観光ガイドも行う、というように、同時にさまざまなことを気にかけながら行動するツアーガイドの仕事は、マルチタスクであるといえそうです。

また、他人の時間に合わせることが仕事の基本なので、自身の生活時間は不規則になりがちです。それでも、睡眠をしっかりとり、早朝でも深夜でも身だしなみをきちんと整えておかなければなりません。時間管理能力は、仕事だけでなく、自身の生活時間においても必要です。

ツアーコンダクター(添乗員)が同行しているツアーの場合は、旅程の管理などを行う必要はありませんが、旅程や観光の内容は一緒によく確認し、旅行がスムーズに進むよう、協力することが必要です。ツアーコンダクターが同行しないツアーでは、旅程がスムーズに進んでいるか、参加者全員がそろっているか確認するなど、管理業務もこなす場合があります。

観光案内だけでなく、さまざまなトラブルへの対応を期待されることも多いです。トラブルの内容に応じて、警察や病院など、適切な相談先に連絡することや、相談時のやりとりなどを代行することもあります。そのため、海外ツアーのガイドの場合はとくに、現地の言語に堪能であること、現地の生活情報に通じている必要があるでしょう。

なお、シーズンのオンとオフが極端なエリアでは、ツアーガイドの仕事が季節限定となることがあります。旅行者が訪れてはじめて成り立つ仕事なので、オフシーズンは収入面で厳しい状況になるため、その間の生活をどう立てるかをよく考えておく必要があります。

また、旅行業界全体にいえることですが、ツアーガイドは、国際・政治情勢や、自然災害などの影響を受けやすい仕事です。国や地域によっては、市民生活は平穏に見えても他国と戦争状態にある場合もあります。非常事態にあたっては、ツアー参加者の安全確保をいかにサポートするかを想定しておく必要があります。情勢の不安定な地域によっては、テロや災害などが発生し、その日を境に仕事が激減する可能性もあることを認識し、備えておく必要があるでしょう。

ツアー参加者には、残念ながら現地のルールを守らない人や、無理な要求を通そうとする人もゼロではありません。ガイドとしてできるかぎりの仕事をして「おもてなし」することと、無理な要求を断ることを区別して、線引きをする強い姿勢も必要になるでしょう。大変なことが多い反面、トラブルを無事におさめたときや、参加者に感謝されたとき、またたくさんの出会いがあることには、大きなやりがいと喜びを感じられるようです。

ツアーガイドになるには

パスポートとペン

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国内で、日本の旅行者のガイドをする場合は、旅行会社に入社して、経験を積むことが多いです。近年は、旅行専門学校などで旅行業に関する知識をつけてから就職するケースが多いようです。

国内で、海外からの旅行者を外国語でガイドする場合は、国家資格である「通訳案内士」の試験に合格し、都道府県知事の登録を受ける必要があります。合格には高度な語学力が必須のため、通訳専門学校などで訓練を受けてから受験する人もいます。

海外で主に日本からの旅行者をガイドする場合は、国や地域によっては資格が必要なこともあります。現地の制度をよく確認することが必要です。ワーキングホリデーの協定国のなかには、オーストラリアをはじめ、現地の会社で研修を受けてツアーガイドとして仕事をすることが可能な国もあります。ただし、ワーキングホリデー制度の利用者は語学力や現地の法律知識などが十分でないことも多いことから、不当な労働条件を強いる会社もあります。経験者に話を聞くなど、事前の十分な情報収集が必要です。

会社に所属せず、個人ガイドとして独立をめざす人もいます。個人ガイドして仕事を得ることは、インターネットなどを使用すれば不可能ではありません。ただし、安定的に仕事を得るには、旅行代理店などと業務委託契約をするといった、旅行業者との信頼関係作りも重要となるでしょう。

ツアーガイドにあると望ましい資格は

国内を日本語で案内する場合はとくに資格は必要ありませんが、海外からの旅行者を外国語で案内し、報酬を得る場合は、国家資格「通訳案内士」の取得と都道府県知事の登録が必要です。

通訳案内士の試験は、年齢、性別、学歴、国籍などに関係なく受けることができます。2017年4月現在の登録者数は約2万2,000人で、これまでの合格者の最年少は13歳、最年長は80歳ということです。外国語の種類は、英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、タイ語の10言語となっています。試験は筆記と口述に分かれています。

筆記は、受験者が選択した外国語のほか、「日本地理」「日本歴史」「産業・経済・政治及び文化に関する一般常識」が日本語で問われます。口述では、筆記で選択した外国語を用いて、通訳案内の現場で必要とされるコミュニケーションを図るための実践的な能力について判定されます。通訳案内士は、語学力だけでなく、地理、歴史、産業、経済、政治、文化など幅広い知識、教養をもって日本を紹介する、重要な役割を担っているといえます。

海外で、主に日本からの旅行者をガイドする場合は、国や地域によっては資格が必要なこともあります。資格取得には国籍・年齢の要件が定められていることや、無資格でガイドを行った際の罰則が定められていることもあるため、海外でのガイドを行いたい場合は、その国や地域の制度をよく確認することが必要です。報酬を得て日本の旅行者を案内するのにふさわしい、きちんとした日本語を話せることも重要でしょう。

ツアーガイドの求人は

スマホを見て悩む女性

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ツアーガイドの求人はインターネットの求人サイトや、旅行会社のウェブサイトなどでも見つけられます。アルバイトやパート、派遣社員、正社員など、雇用形態はさまざまです。

時給制の場合、その日の業務内容によっては短時間しか仕事がなく、収入がわずかになることも考えられます。日給制の場合でも、飛行機や交通機関の遅延などによって待機時間が長くなり、拘束時間に見合わない収入になることがあります。しっかりと生計を立てられるだけの収入になるかは、応募の際によく確認しておきましょう。

※文中に記載の各種数値・内容は、2017年7月時点のものになります。

出典:
通訳案内士試験概要|日本政府観光局(JNTO)