税関職員になるには?具体的な仕事内容と経験者の本音で実情を確認!

税関職員とは

会計作業をしている手元

(出典) photo-ac.com

税関職員とは、輸出入の通関や密輸入の取り締まり、関税や消費税などの徴収のために主要な空港や港に設置されている税関において、国家公務員として安全で公正な貿易の実現に携わる仕事です。

具体的な仕事内容について

税関は、輸出入に関する業務を扱っています。違法な貿易や違法な物品の輸入を取り締まる公安的な役割から、通関業者の申告した物品に適正な関税を課すための判断や徴税などの税に関する業務、円滑な貿易を実現するために必要なルールの運用まで、その役割は非常に多様です。

税関業務の幅広さが分かりやすく表れているのは、空港の入国カウンターでの手荷物検査でしょう。担当しているのは税関職員です。銃や薬物など違法な物品の密輸を取り締まる監視業務と、一定額に達した土産物に課される税の徴収業務を併せて実施しています。荷物の受け取りレーンなどで見かける麻薬探知犬も、税関職員のハンドラーとともに取り締まり業務に従事しています。

物品を輸出入する場合に必要な「通関」も、税関の仕事です。輸出入をしようとする者(通関業者)が提出した申告書を審査して法律上の問題がないかを確認し、時には実際の物品を抜き打ちでチェックします。

通関業務も入国カウンターでの手荷物検査と同様に、違法な物品の取り締まりと、関税や消費税などの徴税の適正化を目的に行われる仕事です。輸入品に課せられる関税は基本的に通関業者の申告をもとに税率が決まるため、税関職員による申告書の確認や税率判断は、輸入額が大きい日本の税収を左右する重要な業務になっています。

ほかに船舶検査や航空機検査なども税関が担当しており、密貿易や違法物品の抑止だけでなくテロの水際防止の役割も担うようになってきました。

総合職で採用された場合、活躍の場は国内にとどまりません。多国間貿易の円滑化を図るため、WTOをはじめとした国連機関や各国大使館などで勤務するケースもあります。また、多国間での貿易ルールづくりに参画することになれば、業務の幅はさらに広がることになるでしょう。

通関士との違い

「通関士」は、輸出入の手続きを行うプロフェッショナルです。海外に貨物を輸出(あるいは海外から輸入)するときは、法律で定められた方法にのっとって税関長に申告し、許可を得なければなりません。

輸出入者に代わり、煩雑な手続きから輸出入に関する通関業務まで、貿易に関するあらゆる業務を代行するのが通関士の仕事です。

通関士と税関職員との大きな違いは、通関士が「申告する側」であるのに対し、税関職員「申告を受ける側」である点です。両者はどちらも貿易取引に関わる仕事ではありますが、立場は全く逆といえるでしょう。

なお、通関士という名称を名乗れるのは、国(財務省・税関)が主催する通関士試験にパスした人だけです。通関士は「国家資格を持つ人」、税関職員は「国のために働く人」なので、そもそもの属性が全く異なるといえます。

税関職員になるには

バインダーの資料に記入する

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税関職員になるには、国家公務員試験に合格したうえで、選考を経て採用される必要があります。税関職員は、各地の税関を束ねる幹部候補である「総合職」と、現場のエキスパートを目指す「一般職」に分かれており採用方法もそれぞれ異なります。

試験と採用選考の概要

総合職になるには、まず国家公務員試験の「総合職試験」に合格する必要があります。同試験は大学学部卒業者と大学院修了者に受験資格があり、一次試験と二次試験に分かれています。試験合格後、さらに財務省関税局で行われる採用選考に合格すると晴れて総合職になることができます。しかし、総合職は税関職員の中でも極めて人数が少なく、令和3年3月1日時点でわずか177人を数えるだけの狭き門です。

一般職になるには、国家公務員試験の「一般職試験」に合格後、各地の税関で行われる採用選考に合格する必要があります。一般職試験の受験資格は高校卒業者と大学学部卒業者に与えられます。採用後は、大卒程度試験の合格者は約2か月間、高卒者試験合格者は約6か月間の採用職員研修を受けることになります。

税関職員のキャリアパスは?

税関職員のキャリアパスは総合職で採用されたのか、一般職で採用されたのかによって異なります。

総合職の場合は、財務省関税局のポストを経て税関長などを目指すことになります。また、海外勤務や留学、各官庁への出向を経て、貿易を円滑に行うための各種政策の立案などを担当することもあります。

一般職の場合、通関業務など現場を知るエキスパートとして、各地の税関の中堅幹部クラスを目指します。各地の税関に中途採用された場合も同様です。

税関職員に向いている人

考え事をする男性

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日本に侵入してくる脅威を水際で食い止める大切な仕事です。税関職員を目指す人は、自分にその適性があるのかどうかをチェックしてみましょう。

正義感が強い

税関職員の重要な仕事のひとつが、海外からもたらされる違法な物品・食物・薬品等を取り締まり、持ち込ませないようにすることです。

実際のところ、日本にも数多くのコピー品・模造品・違法薬物・違法植物等が持ち込まれます。税関職員が「このくらいいいだろう」「自分には関係ないし、いいだろう」などとモラルの低い考え方をする人だと、日本国内に違法なものがどんどんと入ってきてしまいます。

税関職員として任された任務を全うするためには、「日本の水際は自分たちが守る」「違法な物は、絶対に持ち込ませない」という強い気持ちと、正義感が必要となるのです。

学ぶことが苦にならない

税関の仕事は幅広く、職場が変わるたびに覚えることが増えます。絶えず新しい知識やルール、法律を学び続けることが必要なため、知識欲の強い人、学ぶことにどん欲な人は税関職員に向いているといえるでしょう。

また、税関は国内と国外とを結ぶ場所であり、海外の人と接することも少なくありません。税関業務を円滑にこなすためには、多様な言語に対応できる語学力が求められます。実際に税関では、職員に対してさまざまな言語の語学研修を行っているようです。

異なる言語を身に付けるためには、継続的な学習が欠かせません。「スキルアップのためならどんな勉強も苦にならない」と思える人は、税関職員として本領を発揮できるでしょう。

国際感覚が豊か

税関では多くの外国人と触れあう機会があるため、国際的な視点で物事を見たり考えたりする意識が必要です。日本の常識にとらわれず、多様な価値観を受け入れられる人は税関職員に向いているといえるでしょう。

また、税関職員の活躍の場は国内の税関だけにとどまりません。場合によっては世界各国にある日本大使館・領事館で勤務したり、国際機関に派遣されたりするケースもあります。世界の文化に知見が広くあらゆる業務に柔軟な思考で対応できる人は、税関職員という役職を離れ、グローバルに活躍する機会を与えられるでしょう。

税関職員経験者へのインタビュー

対面打ち合わせ

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スタンバイでは、実際に税関職員として働いていた人に、「仕事のやりがい」「努力したこと」「将来性」についてインタビューを実施しました。

インタビューの対象者

男性(神奈川県在住)
実務経験年数:1年

Q1.税関職員のやりがいを教えてください

私は税関職員として、麻薬探知犬のハンドラーの仕事をしておりました。税関職員は空港勤務になる人や、税関の事務職になる人などさまざまです。そんな中、私は麻薬探知犬の調教師であるハンドラーに配属されました。この仕事の一番のやりがいは、人々の安全並びに国家の安全を守ることです。

また、麻薬の発見を逃してしまう犬を実際の現場に出すことになったら、全ての責任はその判断をした人間にあります。そこには責任とプレッシャーがありましたが、優秀な麻薬探知犬を調教することが出来れば、それが国家の安全に繋がり、人々の平和に繋がります。こういった点も大きなやりがいのひとつです。

依然として、外国から麻薬が送り込まれていますが、そういった現状を変えることが麻薬探知犬のハンドラーの魅力だと思います。

Q2.税関職員になるために努力したことを教えてください

税関職員になる為には国家公務員試験に合格しなければなりません。国家公務員試験の為に、試験の1年前から1日平均で8時間以上勉強しました。税関職員になる為の試験は科目が非常に多く、苦労しました。

主要な試験科目は、民法、憲法、行政法等の法律科目、ミクロ経済、マクロ経済といった経済科目、その他にも判断推理・数的推理といった数学的な科目があります。その他の科目も合わせると、合計で20科目以上あります。それでも日々勉強することによってなんとか合格することが出来ました。また、税関職員は現場で英語能力が必要とされると聞いたので、英語の勉強もやっていました。私の周りにも英語を熱心に勉強している方が多く、英語を自由自在に喋れる方もいらっしゃいました。

Q3.税関職員の将来性についてどう思いますか?

税関職員は将来性のある職業だと思います。人の命にも関わりかねない重要な役目のため、仕事がなくなることはないでしょう。なおかつ、現在日本に訪れる外国人の数がとても増えています。数年後には、東京オリンピックが開催されますので、空や海の安全が守られる必要性が出てきます。その為には、人手が必要なので採用人数も増えていくのではないでしょうか。

税関職員の仕事は生活になくてはならない職業です。また今後、今まで以上に世界のグローバル化が進んでいく中で、これまで日本に来たことがなかった国の人たちが来るようになるかもしれません。そうした中で必要とされてくるのが税関職員です。私は心からそう思います。

税関職員の収入

年収計算

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国家公務員は給与に関して、一律で同じ基準が適用されるため、任地や職種区分などの条件が同じであれば税関職員とほかの国家公務員の収入は原則として変わりません。

新卒事務員の令和3年度大学卒初任給は205,990円でした。一般職採用の場合、各地の税関で採用されるため採用地によって給与が左右されます。

なお人事院の調査によると、令和3年4月1日時点の全国家公務員の平均年齢は42.7歳、各種手当を含めた平均月収は414,729円でした。このデータは総合職と一般職の区別をしないデータですが、年齢と同じくらいの数字が国家公務員の月収の目安になる、という考え方が古くからあるようです。

税関職員の求人について

パソコンとスマホ

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国家公務員である税関職員の求人は、一般の転職サイトには掲載されていません。一般職を希望するなら各地の税関のWebサイトを、総合職を希望するなら税関公式サイトをチェックすると詳しい採用情報を見ることができます。2016年に初めて行われた中途採用も、全国9カ所の税関のサイト上で募集されました。また、国家公務員試験の情報は人事院のサイトで確認できます。

出典:
税関 
人事院「国家公務員試験採用情報NAVI」
人事院「民間給与の実態~令和3年職種別民間給与実態調査の概要〜」