退職理由の伝え方とは?上司や同僚など相手別に考えるべきポイント

一度勤めた会社は必ずしもずっと勤めるわけではなく、途中で退職する人もいます。退職するには理由を申し出る必要がありますが、その際にはどんな点に気を付ければよいのでしょうか?退職理由や伝え方のポイントを紹介します。

退職を考える主な理由とは?

「退職願」と書かれた封筒

(出典) photo-ac.com

会社勤めをしていると、いろいろな理由から退職を考えるケースがあります。まずは、退職理由としてよく挙げられるケースをチェックしてみましょう。

職場の人間関係

退職理由になりやすいのが、職場の人間関係です。自宅の次に過ごす時間が長い職場での人間関係は、精神状態に大きな影響を与えます。人間関係がうまくいかず職場での人付き合いがストレスになると、仕事に行くことすらつらくなるでしょう。

パワハラやいじめなど具体的なトラブルがあれば、精神を病んでしまうこともあります。会社としての対応や解決が望めない場合、大事に至る前に退職を決意する人も少なくありません。

また、トラブルまで発展しなくても上司や同僚との相性が合わず、異動なども難しい場合、退職して人間関係の一新を求める人もいます。

仕事のやりがい

仕事を継続していく上で、やりがいや達成感を得られるかは重要なポイントです。自分の仕事に納得でき上司や周囲から正当に評価されれば、達成感につながります。また、会社の事業に貢献できていると実感できれば、やりがいを感じられるでしょう。

しかし、仕事を正当に評価してもらえなかったり、簡単な仕事しか与えられなかったりすると、「何のためにこの会社で働いているのだろう」と思ってしまうかもしれません。自分がそこで働く意味を見いだせなくなると、退職の気持ちが大きくなってしまうのです。

給与・休暇など待遇や環境面

人間関係や仕事内容と並んで、重要なのが待遇です。給与や休暇などに不満がある場合、退職して環境を変えたいと考える人が多いでしょう。

給与が低いと、仕事に対するモチベーションの低下につながります。給与は生活に直結している問題でもあり、将来的に昇給の見込みが小さいと感じれば、退職を考える理由の1つになりえます。

また、残業や休日出勤が多いと私生活にも影響が出ます。自由に休暇を取れず仕事に拘束される時間が長くなると、何のために働いているのか分からなくなるときもあるでしょう。「もっとよい環境の職場に転職したい」と考えるのも、無理はありません。

上司に退職を伝える際のポイント

外のベンチに腰掛けて、ノートPCを開き悩む女性

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退職を決断したら、上司にその意思を伝えなければなりません。上司に退職を伝えるときは、どんなポイントを押さえておけばよいのでしょうか?

できるだけ早めに意思を伝える

退職の希望日が決まったら、できるだけ早めに伝えましょう。退職者が出れば代わりの人材を確保したり、引き継ぎをしたりする期間が必要になります。会社側が対応するスケジュールも考え、3カ月前をめどに遅くとも1カ月前までには伝えるのが一般的です。

会社の就業規則には、退職時にいつまでに申し出なければならないか定められているケースが多いため、あらかじめチェックしておきましょう。

また、プロジェクトが佳境になっている時期を避けるなど、あまり忙しくないタイミングを見計らうのもポイントです。組織変更・人事異動が発表された直後などは、さらなる人員調整で迷惑をかけることになるため、なるべく避けましょう。

まず伝える相手は直属の上司

退職の意思は、まず直属の上司に伝えます。直属の上司とは、自分に対して直接仕事の指示をしたり、勤務を管理したりする人のことです。

多くは係長や課長などの役職者になりますが、役職まで付いていなくともチームのリーダー的な存在がいる場合には、その人に伝えましょう。直属の上司を飛ばして、その上位の人に伝えるのはマナー違反になるため、注意しなければいけません。

伝えるときには、直属の上司に「ご相談がありますので、お時間をいただけますでしょうか?」とアポを取ります。2人で直接ゆっくり話せる時間を作ってもらい、退職の意思を伝えましょう。

強い意志を持って伝える

退職を申し出るときには、強い意志を持って伝えることが大切です。会社としては、社員が退職すると新たな人をそこに配置する必要が出てきます。また、引き継ぎや教育についても考えなければなりません。社員1人とはいえ、退職者が出るのは痛手となります。

状況によっては、強く引き止められるかもしれません。説得されても流されないよう強い意志を持ちましょう。引き止めてもらえることに対する感謝を伝えつつ、それでも退職の意志は固いことを冷静に伝えるのがポイントです。

納得してもらいやすい退職理由と伝え方

青いファイルを持ち微笑むスーツを着た女性

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退職理由は人それぞれですが、同じ理由でも伝え方によって受け取る側の印象が変わります。納得してもらいやすい退職理由の例や、伝え方を見ていきましょう。

スキルアップなどポジティブな理由

納得してもらいやすい理由として、スキルアップや新たなキャリアを求めるなど、ポジティブな理由があります。このまま今の立場で仕事を続けていてはできないことを求めて、退職を決意したと理解してもらえれば、引き止めにくくなるでしょう。

例えば、「これまで仕事をしてきた中で得たものを、転職や独立でさらに活かしていきたい」「今まで〇〇を経験してきたが、今後は新たに△△にチャレンジしたい」などが挙げられます。ほかの場で活躍したいという気持ちが伝わるよう、上手に退職理由をまとめましょう。

介護・結婚など個人的な理由

個人的な理由で退職を希望していると、会社側は引き止めにくくなります。例えば、親の介護が理由の場合、仕事との両立は難しいと考えられるため簡単に引き止めることができません。

また、遠方に住む相手と結婚したり、自営業の結婚相手の仕事を手伝ったりするケースも、引き止められる可能性は低くなります。

しかし、介護や結婚といった理由を全くのうそで使うのは避けておくのが無難です。もし何らかのきっかけでうそがばれてしまったら、思わぬトラブルになるかもしれません。実際に似たような事情がある場合には、上手に伝えることで納得してもらえるでしょう。

ネガティブな理由はプラスに言い換える

退職理由がネガティブなものである場合、なるべくプラスに言い換えるようにしましょう。ネガティブな理由をそのまま伝えると、話を聞く側の上司もよい気持ちにはなりません。

例えば、人間関係で悩み周囲とうまく意思疎通できないことが退職理由の場合、「コミュニケーションを取りやすい環境で、心機一転頑張りたい」など、ポジティブな印象がある言葉に言い換えましょう。

給与や待遇で不満がある場合も直接的な言い方ではなく、「仕事に対する評価が目に見える環境に身を置きたい」など、表現に注意するだけで印象が変わります。

NGな退職の伝え方もチェック

からっぽの給料袋を持った困り顔の女性

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退職の伝え方によっては、相手によい印象を与えなかったり引き止められたりするかもしれません。NGな伝え方にならないようにするには、どんな点に気を付ければよいのでしょうか?

基本的に会社への不平・不満は伏せる

「どうせ退職するのだから、会社に対する不平や不満を言ってしまいたい」という気持ちになるかもしれませんが、基本的には伏せましょう。

不平や不満を正直に上司に伝えた場合、「改善するから会社に残ってほしい」と引き止められてしまうかもしれません。明確な理由を伝えることで、会社側に交渉の余地を与えてしまうのです。

また、上司の心証が悪くなり、必要以上に話がこじれてしまう可能性があります。退職が受け入れられても、退職するまでの間働きづらくなってしまうという事態になりかねません。

退職を悩んでいる風にしない

上司に伝える際、「退職しようかと思っているのですが…」など、あいまいな言い方をするのは避けましょう。退職を悩んでいるような印象を与えると、上司は引き止めにかかるかもしれません。

あくまでも自分の気持ちとしては、退職が決定事項であるという印象を与えるよう、意識して伝えましょう。「突然で申し訳ありませんが、退職させていただきたいと考えております」などの表現にすればOKです。

また、次の会社が決まっている場合は入社日を伝えることで、引き止めを回避できます。

同僚など周りへの伝え方とタイミング

足を組んで腰掛けたスーツの男性

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退職の意向を会社に受け入れてもらったら、次は適切なタイミングで同僚など周囲へも伝えなければいけません。周囲への伝え方やタイミングについて解説します。

伝えるタイミングは上司と要相談

退職を周囲に伝えるタイミングは、上司と相談して決めるのがポイントです。退職を決意した時点で、ある程度親しい人には伝えたいと考える人もいるでしょう。しかし、どこから話が漏れるか分からないため、むやみに伝えるのはNGです。

退職が決まったからといって自分勝手に周囲に話すと、想定外のタイミングでうわさが広まってしまうかもしれません。場合によっては、直接聞いた人とまた聞きになってしまった人の間で、人間関係が悪化してしまう可能性もあります。

引き継ぎの開始時期など会社としてのスケジュールも考慮し、伝えるタイミングは上司と話し合っておきましょう。

退職理由は詳しく伝えなくてOK

退職することを伝えると、退職理由や退職後はどうするのか聞かれることもあるでしょう。しかし、聞かれたからといって必ずしも詳しく答える必要はありません。

「家庭の事情」や「スキルアップのため」など、あくまでさらっと大まかな理由が伝わる言い方になるよう、工夫しましょう。転職先が決まっている場合も、社名を言いたくない場合は伝えなくてOKです。「〇〇業界で働く」など、具体的な企業名を含まない言い方をすると角が立ちません。

退職理由が噂話として広まったりしないよう、伝え方と伝える相手には注意が必要です。

辞める時でも会社の悪口は言わない

辞めることが決まっていても、会社の悪口を言うのは避けましょう。以前から仕事の愚痴を言い合っていた相手だとしても、退職する自分と今後も働いていく同僚とでは立場が変わってしまいます。

会社の悪口を聞くと、新たな場所に行く人から自分の居場所をけなされているような気持ちになるかもしれません。

また、転職先の会社のよいところを、今の会社と比較して話すのもNGです。最後に人間関係を悪化させることになりかねないため、注意しましょう。

「転職対策」履歴書には退職理由はどう書く?

履歴書とボールペン

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退職してから新たな会社に就職したい場合、履歴書に退職したことを記載する必要があります。そんなとき、退職理由はどう書けばよいのでしょうか?

基本は「一身上の都合」

自己都合で退職した場合、履歴書に書く退職理由は基本的に「一身上の都合により退職」という定型文で書きます。自己都合とは自分から退職を申し出たケースのことで、介護や結婚などの家庭の事情のほか、人間関係やスキルアップなどさまざまな理由が含まれます。

詳しい理由を履歴書にまで書く必要はありませんが、面接では詳細を聞かれる可能性があるため、答える準備はしておきましょう。

また、契約社員や派遣社員など契約時に雇用期間が定められている場合の退職は、「契約期間満了につき退職」と記入します。

病気による退職は完治まで併せて明記

病気が原因で退職するのも自己都合退職の1つです。病気治療でブランクが長くなった場合は、書き方を工夫する必要があります。退職理由が病気の場合は、「病気治療のため退職」と正直に記載するのがおすすめです。

なお、次の会社では、病気が完治しているかどうかを気にする可能性が高くなります。そのため、病気治療を退職理由として記載する場合には、完治までセットにして明記しておくのがおすすめです。「〇月〇日現在、完治」と付け加え、入社後の勤務には支障がないことをアピールしましょう。

退職理由が会社都合の場合

自ら退職を申し出たケースではなく会社都合で退職になった場合には、そのまま「会社都合により退職」と記載すればOKです。

会社都合による退職には、倒産や業績悪化によるリストラなど、会社側の事情で労働契約が解除になったケースがあります。ただし、倒産する前やリストラされる前に、自分から退職した場合には自己都合です。

ほかにも賃金の未払いや大幅な減少、パワハラやセクハラの被害者になり、退職せざるを得なくなった場合も、会社都合にあたります。

円満退職をするなら理由も上手に伝えよう

「ありがとう」と書かれたカード

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職場の人間関係やスキルアップのためなど、さまざまな理由で退職を考える人は少なくありません。退職の意思はまず直属の上司に伝え、同僚や周囲に伝えるタイミングは上司と相談した上で決めましょう。

円満退職を目指すなら、退職理由の伝え方にも配慮が必要です。会社としては社員を失うことになるため、自分の思いばかりを伝えるのは得策ではありません。上司に納得してもらえるような理由を考えることが大切です。

鬼沢健士
【監修者】All About 暮らしの法律ガイド鬼沢健士

慶應義塾大学卒業。平成24年、茨城県取手市「じょうばん法律事務所」を開設。主に労働者側の労働事件(不当解雇など)や、インターネット詐欺被害救済(サクラサイト、支援金詐欺など)を取り扱う。
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