失業手当をもらえる条件とは?給付までの手続きや注意点を解説

転職を考えている人の中には、当面の生活費として失業手当の受給を検討している人もいるでしょう。そんな人に向けて、失業手当の受給条件や期間、金額などを解説します。失業手当について理解し、安心して転職活動を進めましょう。

失業手当とは

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(出典) photo-ac.com

そもそも失業手当とは、どのような制度なのでしょうか?概要や目的を解説します。

退職後に支給される給付金

失業手当は会社を退職した後、転職活動を行う人に支給される給付金のことです。退職後収入が途絶えることにより、失業者の生活が困窮してしまわぬように設けられています。

支給額は年齢や会社在籍時の年収によって変わりますが、おおよそ前職の月収の半分から8割程度です。会社都合、自己都合どちらによる退職でも受給できることが特徴です。

ただし、退職をした人なら誰でも受給できるわけではなく、受給するには一定の条件を満たす必要があります。

雇用保険被保険者が対象

前提として、失業手当を受け取れるのは雇用保険に加入していた人です。雇用保険は、一定の条件を満たす非正規雇用労働者や、正社員なら必ず加入する保険です。

失業者の生活を安定させる以外にも、雇用機会の増大や労働者の能力の開発なども目的としています。

一般的に失業手当と呼ばれているものは、基本手当のことです。基本手当以外にも、技能習得手当や傷病手当、就業促進手当などがあります。

それぞれの手当には、受給条件が設けられています。心身や家族の状況に特に問題がない場合は、基本手当をもらうことを考えておけば問題ないでしょう。

失業手当を受給できる条件

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雇用保険の被保険者期間が12カ月以上ある

失業手当をもらうには、離職日からさかのぼった2年間のうち、12カ月以上雇用保険に加入している必要があります。

つまり、新卒で入社して数カ月で退職した人は、失業手当をもらうことができません。あと数カ月で条件が満たせる場合は、それまで待つのも1つの手段です。

しかし上記は、給料やスキルアップなどを求めて転職するなど、自己都合による退職をした人の条件です。

自己都合でも、労働契約の更新の希望が叶わなかった場合や父母の介護などやむを得ない理由で退職をした人は、『特定理由離職者』に該当します。また、会社の倒産などによる不可抗力で離職した人は、『特定受給資格者』となります。

特定理由離職者と特定受給資格者の受給条件は、離職日から過去1年間に、雇用保険に6カ月以上加入していることです。一般の離職者の場合と比べ、条件が緩和されています。

就職の意志があり活動している

失業手当は、働く意志があるにもかかわらず、職に就けていない人を支援するためのものです。

そのため、退職後しばらくゆっくりしようと思っている人や、留学などに行く予定の人は、失業手当を受け取れません。

就職の意志があり活動していることは、ハローワークなどでの求職活動をもって判断されます。具体的には、ハローワークなどでの就職の相談や、面接などへの申し込みなどです。

就職できる能力がある

就職する意志だけでなく、すぐに働ける状態であることも条件です。

例えば、ケガや病気、妊娠などですぐに就業できない場合は、たとえ働く意志があったとしても失業手当の受給対象外です。

しかし、働ける状態に戻った場合は、失業手当を受給できます。働ける状態に戻ってから手当を受給したいとき、1年間の受給期間が過ぎてしまう場合は延長手続きが必要です。

失業手当を受け取る流れ

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失業手当を受け取る流れを解説します。用意する書類には、普段使わないものも含まれています。スムーズに受給できるよう、必要な書類や手続きをしっかりと把握しましょう。

求職申し込みを行い離職票を提出

会社を退職すると、後日会社から『離職票』が送られてきます。離職票は、失業手当を申請するのに必要な書類なので、大切に保管しましょう。

離職票が届いたら住所地を管轄しているハローワークへ行き、求職申し込みをした後、離職票を提出します。求職申し込みの際は、離職票のほかに以下の書類を用意しましょう。

  • マイナンバー確認書類
  • 身分証明書
  • 縦3cm×横2.4cmの写真2枚
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

ここまでの手続きをが完了すると、受給資格が決定します。

求職活動を行い失業認定を受ける

受給資格が決定したら、すぐに手当がもらえるわけではありません。ハローワークから失業の認定を受けることで、手当がもらえます。失業認定日は求職申し込み時に伝えられるので、認定日が来たらハローワークに行きましょう。

認定日はおおよそ1カ月に1度ありますが、その間に求職活動を2回以上行う必要があります。認定日には、失業認定申告書に求職活動の内容を記載し、ハローワークに提出しましょう。

ハローワークの職員と面談を行い、失業の認定を受けることで、継続して手当を受け取れます。なお、ハローワークでの職業相談も求職実績に認められるので、認定を受けた後に併せて行うと効率的です。

受給開始後も継続的な求職活動が必要

失業手当は、約1カ月のスパンで失業の認定と受給を繰り返します。失業の認定がされてから、通常5営業日後に手当が口座に振り込まれます。

受給を開始した後も、次回の認定日までに2回以上の求職活動が必要です。求職活動に当たる内容は、以下の通りです。

  • 求人への応募
  • ハローワーク等主催の職業相談への参加
  • ハローワーク等主催のセミナーや講習会への参加
  • 就職に向けた資格試験の受験

認定と受給のサイクルは、所定給付日数に達するまで繰り返されます。

失業手当はいつからいつまでもらえる?

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失業手当は、いつまでももらえるわけではありません。また、退職理由によって受給のタイミングが変わります。失業手当の受給期間やタイミングについて、見ていきましょう。

支給開始日は退職理由によって異なる

退職理由によって、失業手当の支給開始日が異なります。退職理由は、『自己都合』と『会社都合』の大きく2つに分けられ、自己都合の中にはさらに特定理由離職者が存在します。

一般的な自己都合による退職の場合、失業手当の支給開始日は、おおよそ申請してから2カ月後です。自己都合の場合、給付制限という期間が設けられるためです。

そのため、自己都合で退職する人は、2カ月間は収入が途絶えることになるので注意しましょう。

なお、待機期間が『2カ月間』となるのは令和2年10月1日以降に離職した人であり、それより前に離職した人、5年間に2回以上自己都合で退職している人、自分に責任がある重大な理由により退職した人は『3カ月間』となる点には注意が必要です。

会社都合や特定理由退職の場合は、1週間の待機期間が終わり次第支給が開始されます。

参考:「給付制限期間」が2か月に短縮されます|厚生労働省

受給期間・金額は年齢や雇用保険加入年数による

失業手当の受給期間には、所定給付日数という上限が設けられています。所定給付日数は、以下の通り雇用保険の加入期間によって決まっています。

  • 1〜10年未満:90日
  • 10〜20年未満:120日
  • 20年以上:150日

失業手当の金額は日当ベースで計算され、金額を決めるのは年齢と前職の給与です。基本的には、前職の給与日額の5〜8割の金額がもらえます。

しかし、日当には年齢ごとに上限が設けられており、全体的に年齢が高いほど上限が高くなっています。一般的に年齢が高い人の方が、家族がいるなどの関係で生活費が多く必要であることなどが理由として考えられるでしょう。

受給期間は原則離職日の翌日から1年間

失業手当の受給期間は、離職日の翌日から1年間と決められています。まだ所定給付日数が残っていても、受給期間を過ぎると手当を受け取れないので注意しましょう。

そのため、退職をしたらできるだけ早く受給の申請をすることをおすすめします。特に自己都合による退職の場合、給付制限により2カ月間は手当を受け取れません。

手当を満額受け取るためには、待機期間も考慮した上で早めの申請を心掛けましょう。

参考:「給付制限期間」が2か月に短縮されます|厚生労働省

受給期間を延長できる条件

受給期間は1年間ですが、その間にケガや病気などをして受給資格を満たせなくなった場合は、どうすればよいのでしょうか?

離職日の翌日から1年間のうち、30日以上職に就けない状態になった場合は、受給期間の延長が可能です。受給期間を延長したい場合は、延長申請を行うことで、働けなくなった日数分受給期間を延長できます。

ただし、延長できる期間は最大3年間です。また受給期間を延長しても、所定給付日数が増えるわけではない点も留意しておきましょう。

早く仕事が決まれば就職促進手当がもらえる

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失業手当をもらい始めてから早く仕事が決まった場合、就職促進手当がもらえます。手当の種類や、受け取るための条件を解説します。

就職促進手当の種類

「失業手当は受給完了までもらい続けないと、損をしてしまうのではないか」と心配になる人もいるでしょう。しかし、仕事が早く決まった場合は就職促進手当がもらえるため、必ずしもそうとはいえません。

就職促進手当には、以下の3つの手当が存在します。

  • 再就職手当
  • 就業促進定着手当
  • 就業手当

『再就職手当』は、失業手当の受給資格者が安定した職に就いた場合に、残りの支給額の6〜7割を手当として支給するものです。

再就職手当を受け取った人が同じ職場で半年以上勤務を続け、かつ前職より日当が低い場合は、さらに『就業促進定着手当』をもらえます。

『就業手当』は、再就職手当の受給条件を満たせなかった人に向けた手当のことです。

再就職手当を受け取る条件

就職促進手当をもらうとしたら、多くの人は再就職手当をもらうことになるでしょう。再就職手当をもらうには、以下8つの条件を満たす必要があります。

  • 再就職先で雇用保険に加入している
  • 待機期間を満了している
  • 過去3年以内に、再就職手当か常用就職支度手当をもらっていない
  • 受給資格が決定する前に内定をもらっていない
  • 再就職先が前職と無関係である
  • 失業手当の給付日数が1/3以上残っている
  • ハローワークまたは人材紹介会社経由での就職である
  • 再就職先で1年以上の雇用が見込まれる

条件が8つと聞くとハードルが高いと思うかもしれませんが、真面目に求職活動をしていれば、各条件をクリアすることは難しくありません。

失業手当に関する注意点

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失業手当を受け取る際の注意点を3つ解説します。思わぬところでルール違反にならないよう、あらかじめ把握しておきましょう。

アルバイトをしたい場合は勤務条件に注意

結論からいうと、アルバイトをしていても失業手当の受給は可能です。しかし、いくつか注意点があります。中でも勤務時間は、手当の金額に関わるため重要です。

アルバイトをする場合、できるだけ1日の勤務時間を4時間以上にすることをおすすめします。4時間未満の場合は、給料の額に応じて手当が減らされてしまうためです。

ただし、4時間以上働いた日は支給対象とならず繰り越し扱いとなりますが、手当の給付金額は減りません。また、『1週間に20時間以上』働くと雇用保険の加入対象、つまり就職した状態とみなされるため、手当がもらえなくなる可能性があります。

アルバイトをしたことは、認定日に必ず申告をしましょう。申告が漏れていると、不正受給と判断される可能性があります。

認定日の変更はできない

月に1度の認定日は、自分で決めることもできなければ、後から変更することもできません。認定日にハローワークに行かなかった場合、失業の認定を受けられず、手当を受給できないので注意が必要です。

次回の認定日は失業認定申告書に記載されていますが、頻繁に確認するものではないため、スケジュール帳にメモをするなどして忘れない工夫をしましょう。

ただし親族の冠婚葬祭や面接など、やむを得ない理由で認定日の来庁が難しい場合は、前日までにハローワークに連絡をすれば、認定日を変更してもらえる可能性があります。

配偶者の扶養に入れない場合がある

退職後に「失業手当をもらいながら配偶者の扶養に入ろう」と思っている人もいるかもしれません。配偶者の扶養に入っている場合でも、受給資格を満たせば失業手当の受給は可能です。

しかし、受け取る失業手当の金額によっては、配偶者の扶養に入れない可能性があります。一般的に、配偶者の扶養に入るには、1年間の収入が130万円未満である必要があるのです。

失業手当をもらいながら扶養にも入れるかどうかは、配偶者が加入している保険や福利厚生にもよるので、詳しいことが知りたい場合は担当者に確認しましょう。

転職を考えているなら失業手当の給付条件を確認

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失業手当は、転職活動をしようと思っている人にとっては強い味方です。収入がない状態では転職活動にも集中しづらいので、金銭的な安心感があることは心強いでしょう。

しかし、失業手当には受給資格や期間に関するルールがあります。特に新卒で入社してすぐに退職を考えている人は、失業手当を受給できない可能性があります。

手当を受け取りながら転職活動を考えている場合は、退職時期を検討する必要があるでしょう。失業手当の受給期間は原則退職後1年間なので、特別な理由がない限りは早めに申請することをおすすめします。

小西道代
【監修者】All About 労務管理ガイド小西道代

労務トラブルを未然に防ぐ社会保険労務士・行政書士。行政書士法人グローアップ代表、社会保険労務士法人トップアンドコア役員。大学卒業後、日本マクドナルドに入社。幅広い年齢層と共に働くことで、法律や制度だけではない労務管理・組織運営に興味を持ち、弁護士事務所等で経験を積む。自身も喫茶店を経営した経験から、労務トラブル予防の労務相談を得意とする。
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