基本給はどう決められる?基本給が低いデメリットを知っておこう

転職活動を始めようと考えているなら、基本給について理解を深めておきましょう。基本給が低い場合のリスクを知っておけば、仕事探しを有利に進めることが可能です。基本給の意味や、基本給が低いことで起こり得るデメリットについて解説します。

基本給とは?

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(出典) photo-ac.com

基本給とは何を指すのか、具体的な意味を解説します。一般的に基本給はどう決められるのかも覚えておきましょう。

文字通り基本となる賃金を指す

基本給とは、文字通り賃金のなかの基本的な部分のことです。法律的な定義はなく、日常的な言葉として用いられる中で慣習化したものだとされています。

同一の賃金体系が適用される従業員全員に支給される部分が、基本給です。住宅手当・通勤手当・インセンティブなど、従業員によって支給額が違う部分は、基本給には含まれないのが一般的です。

ただし、企業によっては一部の手当を基本給に含めているケースもあります。基本給の範囲は会社の就業規則に明記されており、転職先の基本給の範囲も面接時に確認すれば教えてもらえるでしょう。

基本給の決め方

基本給の決め方に明確な基準はなく、会社ごとの裁量に任せられているのが現状です。一般的には、「仕事給式」「属人給式」「総合給式」のいずれかで決められています。

仕事給式とは、従業員の能力や成果を反映させる決め方です。欧米で広く採用されており、仕事ができる人ほど給与を多くもらえる仕組みとなっています。

年齢・学歴・勤続年数を主な基準として基本給を決める方法が、属人給式です。年功序列型とも呼ばれ、同じ会社に在籍している期間が長いほど給与も多くなります。

総合給式は、仕事給式と属人給式をミックスさせた決め方です。年齢・勤続年数を基準に、個人の能力や仕事の成果も考慮して基本給を決めます。日本の多くの企業で採用されている方法です。

月給・固定給などの違い

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基本給と意味を混同しやすい言葉に、「月給」「固定給」「手取り」があります。それぞれの言葉をしっかりと理解し、求人を見る際の参考にしましょう。

月給との違い

基本給は、各種手当やインセンティブを含まない、賃金の基本となる部分です。一方の月給は、一般的に毎月決まった金額が支給される手当を、基本給と足したものになります。

役職手当・住宅手当などが、毎月固定で支給される手当の代表例です。残業手当・通勤手当など月ごとに金額が変わる手当は、月給には含まれません。

企業によっては、基本給と月給を同じ意味で用いているケースもあります。例えば、求人で月給25万円と記載されている場合は、手当を含めた金額なのかどうか確認する必要があるでしょう。

固定給との違い

基本給と似た意味の言葉としては、固定給もあります。固定給とは、基本給に役職手当・住宅手当・固定残業手当などの変動しない手当を加えたものです。

残業手当・休日手当といった、月ごとに金額が変動する手当は、固定給には含まれません。月給も変動する手当は含まれないため、固定給と月給はほぼ同じ意味の言葉と捉えてよいでしょう。

月給と同じく、企業によっては基本給と固定給を同じ意味として使っていることがあります。固定給で賃金を記載している求人を見る際は、手当が組み込まれているのかチェックすることが大切です。

手取りとの違い

手取りとは、賃金のうち従業員が実際にもらう金額のことです。会社から手渡しで受け取った分の金額や口座に入金された金額が、手取りの金額になります。

手取りの計算式は『(基本給+各種手当)-(税金+社会保険料)』です。会社が従業員に支給する金額から、税金と社会保険料を差し引いた金額が、手取りとして従業員に渡る金額となります。

賃金から天引きされるお金の種類は、税金は所得税・住民税、社会保険料は健康保険料(介護保険料含む)・厚生年金保険料・雇用保険料です。所得税のみ概算した税額が天引きされており、納めすぎた分があれば年末調整で戻ってきます。

手取りの金額は、税金と社会保険料が差し引かれる前の約8割になるのが一般的です。家計のやりくりを考える際は、基本給や手当の合計から手取りを計算する必要があるでしょう。

基本給はどこから「低い」といわれる?

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基本給が低いかどうかを見極めるには、どうすればよいのでしょうか?仕事を探す際に意識したいポイントを紹介します。

明確な目安はない

基本給が低いといわれる明確な目安はありません。基本給はあくまでも給与の一部であり、手当を加えれば給与自体が増えるためです。

例えば、基本給15万円+固定手当5万円と固定手当なしの基本給20万円は、固定給で比較すると金額は同じです。基本給だけでは、給与や手取りの低さを判断できません。

業種や職種により、給与の平均値が大きく異なる点もポイントです。ある企業の基本給が低いと感じる場合でも、給与の平均値が低い業種の企業なら、基本給も妥当なラインに落ち着いている可能性があります。

時給換算で確かめる

基本給の明確な目安はなくとも、給与自体が低いかどうかは時給換算で確かめられます。基本給に固定手当をプラスした固定給や月給を所定労働時間で割れば、時給の目安を知ることが可能です。

気になる企業の求人から時給を換算できたら、法律で地域ごとに決められている最低賃金時間額と比べてみましょう。時給換算した金額の方が低ければ、給与が低いと判断できます。

そもそも、企業は最低賃金以上の賃金を、従業員に支払わなければならないことが法律で定められています。時給が最低賃金を下回っている企業は、法律を守っていないことになるため、応募先の選択肢から除外するのが無難です。

参考:
最低賃金額以上かどうかを確認する方法|厚生労働省
地域別最低賃金の全国一覧|厚生労働省

基本給が低い場合のデメリット

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基本給が低い場合は、以下に挙げるようなデメリットやリスクがあることを覚えておきましょう。求人を見る際に役立てられる、主なデメリットを紹介します。

残業代・休日手当が低くなる

基本給が低い場合は、残業代や休日手当も低くなってしまう恐れがあります。残業代や休日手当は、基本給を含めた基礎賃金にもとづいて算出されるためです。

例えば、残業代は『1時間あたりの基礎賃金×時間外労働時間×割増率』で求められます。基礎賃金が低くなるほど、残業代も低くなる仕組みとなっているのです。

基礎賃金には、基本給以外に役職手当・職能手当なども含まれるため、基本給が低いからといって必ずしも基礎賃金が低くなるわけではありません。

しかし、基礎賃金が基本給のみの場合、基本給が低ければ残業代や休日手当も低くなってしまいます。

ボーナスの額が低くなる

ボーナスが出る企業への応募を検討している場合も、基本給が低いなら注意する必要があります。

ボーナスの金額の計算方法は企業ごとに違いますが、多くの企業は『基本給をもとに計算』していることが多いためです。

固定手当を含んだ月給や固定給が高くても、その中の基本給が低ければボーナスの額も低くなります。求人でボーナスを確認する際は、手当を除いた基本給がいくらなのかもチェックしましょう。

手当が減った場合に手取りが大幅ダウン

企業側は簡単に基本給を下げられません。一方、各種手当は法律上の定めがなく、独自のルールで定めることができます。

基本給が低い場合は、何らかの理由で手当をカットされたときに、手取りが大幅にダウンしかねません。一定の賃金を確保しておきたいと考えるなら、基本給が低いことは大きなリスクとなります。

基本給20万円で手当なしの求人と、基本給18万円+手当5万円の求人を比べた場合、手当が減ったときのリスクを考慮するなら基本給20万円の方が安心できるでしょう。

基本給が低い場合の対策法

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転職先候補の基本給が低い場合の対処法を紹介します。基本給は高いのに越したことはありませんが、低くても対策次第で何とかなることを確認しましょう。

副業を考える

志望する企業や、勤務中の企業の基本給が低いと感じる場合、副業を考えてみるのがおすすめです。会社が副業を許している場合、夜間や土日を活用して副業に取り組めば収入アップにつながります。

簡単に始められるものからスキルが必要なものまで、副業にはさまざまな種類があるため、自分に合ったものを探してみましょう。

ただし、副業の収入が一定金額を超えた場合、会社員でも確定申告が必要になります。収入に応じた所得税を支払わなければならないことも、覚えておきましょう。

給与アップの交渉をする

転職後に基本給が上がらない場合は、会社に給与を上げてもらえないか交渉するのも1つの方法です。交渉次第で、個別に給与を上げてもらえる可能性があります。

給与アップの交渉は、同じ業界やキャリアの平均給与に比べて、明らかに低いと分かる場合に行うのがポイントです。会社に対する自分の貢献度も説明する必要があります。

自分の客観的な市場価値を把握するために、転職エージェントに登録して専門家に見てもらうのもおすすめです。会社と交渉する際の有力な材料になるでしょう。

給与内訳に注目した転職

転職先を探す際は、仕事内容や待遇と併せて、給与の内訳をきちんとチェックすることも大切です。

給与自体が高くても基本給が低ければ、残業代が少なくなったりボーナスが減ったりするリスクを減らせます。どのような手当があるのかも、より詳しく確認できるでしょう。

再就職後に副業をしたり給与アップの交渉をしたりする方法もあるものの、基本給は最初から高いのに越したことはありません。入社してから後悔しないためにも、給与内訳に注目した転職を意識しましょう。

働きに見合った給与がもらえる会社を選ぼう

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基本給は、毎月固定で支給される賃金の基本となる部分です。基本給に固定手当を足したものが月給や固定給と呼ばれます。基本給+諸手当から税金や社会保険料を引いたものが手取りです。

基本給の低さに明確な目安はありませんが、時給換算すれば最低賃金との比較で基本給の低さをある程度判断できます。基本給が低いと残業代やボーナスが少なくなることもあるため、転職先を探す際は基本給もきちんとチェックしましょう。

小岩 和男
【監修者】All About 労務管理ガイド小岩和男

就業規則など社内諸規程作りのプロフェッショナル。人事労務コンサルタント・特定社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー(AFP)。企業人時代を含め通算24年の人事コンサルを経験。一部上場企業から新設企業までを支援。セミナー講師、雑誌・書籍の執筆実績も多数。
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著書:
ぜんぶわかる人事・労務
図解即戦力社会保険・労働保険の届出と手続きがこれ1冊でしっかりわかる本