仕事は休む権利がある!休むべき症状と休む方法、適切な理由を解説

社会人になると周囲の目が気になって、仕事を休みたいと思ってもなかなか休みづらいものです。しかし休むことは法律で決まっている、労働者の正当な権利です。心身に負担がかかっているサインである休むべき症状や、休む方法について解説します。

仕事を休みたいときは遠慮しないで休もう

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(出典) photo-ac.com

仕事を休みたいと感じたときは周囲の人に遠慮せず、堂々と休みましょう。休みを取って自分の健康状態を改善するのは大切なことです。休むべきかどうかの判断が難しければ、ツールを使って客観的に判断してみるのもいいでしょう。

仕事を休むのは悪いことではない

仕事を休むのは悪いことだと考えたり、無意識のうちに周囲の目を気にして休めなかったりする人もいるかもしれません。しかし、労働基準法で定められた有給休暇や会社ごとに規定されている休暇・休職制度があるように、仕事を休むことは労働者に認められた正当な権利です。

また、定期的に休みを取ることで、心身共に回復して、より持続的に仕事に取り組めるでしょう。仕事への意欲や効率が上がることで業績がアップし、会社により大きな利益をもたらすこともできるため、休むのは大切なことなのです。

参考:「第三十九条(年次有給休暇)」労働基準法 | e-Gov法令検索

仕事を休みたい気持ちは心のSOS

仕事を休みたいという気持ちは、無意識のうちに心が発するSOSかもしれません。自分は大丈夫だと思っていても、実際には切迫した状況に陥っている場合もあります。

休みたいと思ったときには、自分の心を守るために勇気を持って仕事を休みましょう。疲労やストレスが溜まっているときや生活習慣が乱れているときはもちろん、簡単な思考ができなくなっている場合も注意が必要です。

その状態のまま仕事を続けてしまうと、つらい状態や病気が長引いてしまう恐れもあります。

チェックリストや相談窓口を活用しよう

疲労やストレスの蓄積で危険な状態に陥っていても、自分ではなかなか判断が難しいものです。仕事を休むべきかどうかの判断の参考にするために、チェックリストを用いてセルフチェックを行うとよいでしょう。

厚生労働省の『労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト』を基に作成された、『働く人の疲労蓄積度セルフチェック(働く人用)』なら、20個の質問に答えるだけでセルフチェックできます。

また、全国の労働基準監督署など379カ所(令和4年4月1日現在)に設置されている総合労働相談コーナーは、予約なしで無料相談できます。

ほかにも、働く人の『こころの耳相談』なら、電話やSMS、メールで無料相談できます。電話相談時間は月曜日・火曜日の17〜22時および土曜日・日曜日の10〜16時です。

参考:
働く人の疲労蓄積度セルフチェック(働く人用)|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト(自殺対策を含む)|厚生労働省
総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省
相談窓口案内|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト|厚生労働省

 

仕事を休むときの連絡方法

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仕事を休むときは、会社にどのように連絡すればよいのでしょうか。休むときに連絡する相手とタイミング、伝えるべき内容について解説します。

休む連絡は誰にいつまでに?

仕事を休むときは、必ず直属の上司に事前に連絡をしましょう。万が一当日の朝に休むことが決まった場合は、電話で伝えるのが一般的です。

なるべく迷惑をかけずに連絡するために、始業の10〜15分前など上司が会社に到着している時間に電話をかけることが大切です。休む報告をするのではなく、事情を伝えた上で、休みたいという相談の姿勢で伝えましょう。

上司に連絡がつかない場合は、総務や人事の担当者に電話して休むことを伝えるとよいでしょう。また、必要に応じて同僚にも連絡を入れましょう。

仕事を休むときの伝え方

仕事を休むと連絡するときは、休む理由をはっきりと伝えることが大切です。関係者が納得できるような理由であれば、嫌な顔をせず了承してもらえるでしょう。

休むのは悪いことではありませんが、仕事を休むと同僚や取引先といった関係者に影響を与えることになります。トラブルを防ぐためにも、自分が請け負っている仕事の引き継ぎをしっかりと行っておくとよいでしょう。

また、仕事を休むときは緊急時の連絡手段を確保しておくことも必要です。予期せぬトラブルが発生した場合や事務連絡のため、自身の連絡先は明確にしておきましょう。

仕事を休んだときのマナー

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有給休暇や会社の休暇制度・休職制度は労働者に認められた正当な権利ですが、休みの日や翌日の振る舞いには注意が必要です。休むときも社会人として適切なマナーを守りましょう。

SNSでの発信は控える

仕事を休んだときは、SNSでの発信は控えた方が無難です。以前から決まっていた長期の休暇であれば問題ありませんが、前日や当日に決まった急な休みや、体調不良を理由に休んだ場合、SNSで発信していることは不自然に感じられます。

職場の同僚に不快感を与えないように、SNSでの発信は控えましょう。同僚にSNSを教えていなくても、特定される可能性を考え積極的な発信は控えておきましょう。

休み明けにお礼を伝える

休み明けに出社したときは元気よく挨拶し、上司や同僚にお礼を伝えましょう。急に休んだ場合には、迷惑をかけたことについてお詫びし、代わりに仕事を負担してくれたことについて感謝の気持ちを伝えるのがおすすめです。

具体的な言葉にして感謝の気持ちを伝えることで、職場の雰囲気を壊すことなく仕事に戻れます。復帰後は意欲的に取り組む姿勢を見せることも大切です。

有給を取得するのもひとつの手

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仕事を休む方法としては、有給休暇を取得する方法が代表的です。有給休暇の概要に加えて、取得するための条件について解説します。

有給を取得するための条件

仕事を休む場合、有給休暇を取得するのが有効な手段です。入社後半年以上、継続して雇用されていて、全労働日の8割以上出勤していれば有給休暇を取得できます。取得可能な日数は、継続して勤務している期間および所定労働日数・所定労働時間によって変わってきます。

有給休暇を取得する際には休む理由を伝える義務がありません。家でゆっくり過ごしたり旅行に出かけたりと好きなように過ごしましょう。

有給休暇は原則として、労働者が申請した日に取得可能です。ただし事業の運営に影響を与える場合は、会社側が時季変更権を行使して日程を変更できます。繁忙期は避けて申請するとよいでしょう。

参考:
「第三十九条(年次有給休暇)」労働基準法 | e-Gov法令検索
労働者の方へ | 年次有給休暇取得促進特設サイト | 働き方・休み方改善ポータルサイト|厚生労働省

前日や当日に有給を申請する場合

有給休暇は前日までならいつでも申請できますが、トラブルを避けるために早めに申請しておきましょう。会社によっては1カ月前までの申請が必要といったルールが決まっている場合もあります。

前日や当日の朝に有給休暇を申請することも可能ですが、急な休暇取得は同僚に迷惑をかけることになります。また、当日に申請した場合、会社が申請を認める義務はありません。ただし一律に拒否できるわけではなく、個別の判断が必要です。

精神的につらいときは医師に相談しよう

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仕事に行くことが精神的につらいときは自分一人で抱え込まず、医師に相談することが大切です。早期の受診によって症状の長期化を防げるだけでなく、精神的な問題が原因なら休職することも可能です。休職のメリット・注意点についても解説します。

うつ症状がないかセルフチェック

精神的につらい時期が長く続く場合、うつ病にかかっている恐れがあります。診断してもらうには病院に行く必要がありますが、事前にチェックリストなどを使ってうつ症状の深刻度を確認してみましょう。

たとえば、直近の2週間でどれだけ長く悩まされているか段階別に回答し、悩みの注意度を簡易的にチェックできるものもあります。

ただし、チェックリストは医師による診断の代わりにはなりません。セルフチェックの結果に問題がなくても、不安な点があれば医療機関を受診しましょう。

精神的な問題なら休職できるケースも

精神的につらい症状がある場合は、休職するのもひとつの手です。休職制度は労働基準法で規定されているものではなく、会社ごとに就業規則の『休職に関する事項』で定めることができます。

休職には病気休職や事故休職などがあり、業務外の理由で一時的に働けなくなったとき、長期的に仕事を休むことが可能です。また労働基準法第19条(解雇制限)で規定されている通り、仕事が原因のケガや病気の療養のための休職期間および復職後の30日間は解雇できないので、安心して治療に専念できるでしょう。

休職中は、仕事や日々のストレスから離れて心身を休めましょう。体調が落ち着いてきたら復職に向けた準備のほか、新しいスキルを身につけたり転職活動に取り組んだりすることも可能です。

落ち着いた環境で新しいスタートを切れるので、精神的につらいときは休職という選択肢もよいでしょう。

参考:「第十九条(解雇制限)」労働基準法 | e-Gov法令検索

休職には医師の診断書が必要

休職するためには医師による休職診断書の提出が必要なケースが一般的です。就業規則で確認してみましょう。かかりつけの病院で発行してもらうほか、常時50人以上の労働者が在籍する事業場なら産業医に診断してもらうことも可能です。

休職診断書の発行には時間がかかります。休職を検討している場合はなるべく早めに医療機関を受診するとよいでしょう。また、診断書を発行してもらうときに、数千円から1万円ほど発行手数料がかかります。手数料は病院によって異なるので、事前に確認しておきましょう。

休職したら傷病手当金の申請を

休職中は、ほとんどの場合給与が支給されません。休職中に経済的困窮に陥らないために、傷病手当金を申請しましょう。加入している健康保険によっては、月給のおよそ2/3を最長で1年半の間受給できる可能性があります。

ただし、傷病手当金の受給には下記のような条件があります。

  • 勤務先の健康保険に加入していること
  • 休職中に給与が支給されていないこと
  • 業務外でのけがや病気を療養するための休職であること
  • 休職が必要な状態であること
  • 3日連続で休職していること

休職中に給与がもらえず、連続3日ケガ・病気で休職している場合、4日目から傷病手当金がもらえます。申請の際は、医師の意見書と傷病手当金申請書が必要です。傷病手当金申請書には事業主記入欄があるので、会社の総務あるいは人事部に記入してもらいましょう。

申請から受給開始まで1〜3カ月ほどかかるため、休職が決まり次第、早めに申請することが大切です。

参考:病気やケガで会社を休んだとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

休職中の注意点

休職することで心身共に回復できるというメリットは大きいですが、休職中の注意点が2つあります。

1つ目の注意点は、休職中に有給休暇は取得できないことです。休職が決まる前は取得可能ですが、休職中は労働の義務がないため有給休暇の取得ができません。退職や転職を検討している場合は、休職前に有給休暇を消化しましょう。

もう1つの注意点は休職中も社会保険料を支払う必要があることです。休職中は厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料・住民税を給与から天引きすることができないため、自分で払うか、会社に一旦立て替えてもらうなどの必要があります。事前によく確認しておきましょう。

休職に関してトラブルが発生した場合は会社や労働組合の相談窓口、あるいは産業医に相談しましょう。

事前に伝えておくべき仕事を休む理由

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会社を休む場合はなるべく早く連絡しておくことがマナーです。事前に休みを取ることを伝えておく必要がある、5つの理由について紹介します。

冠婚葬祭

1つ目は、冠婚葬祭です。親戚や友人の結婚式・葬式を理由に休む場合は快く了承してもらえる場合が多いでしょう。

法事も休む理由としては受け入れられやすい理由です。法事の場合は、四十九日や一周忌、三回忌のように一定の期間ごとに行われるため、予め日程を伝えていれば、繰り返し休むことになってもとがめられることはないでしょう。

冠婚葬祭や法事で会社を休む場合は、参加を証明する書面の提出が必要なこともあるので、就業規則で確認しておきましょう。

家庭の事情や子どもの学校行事

2つ目に、親戚の集まりや子どもの学校行事など家庭の事情で休む場合も事前に伝えておくとよいでしょう。

子どもの学校行事に合わせて休みを取る場合は、事前に予定が分かるので早めに伝えておく必要があります。また、日程がわかっている大事な家族行事なら事前に伝えておきましょう。

健康のための通院や定期検診

3つ目は健康管理のための定期検診です。仕事に精力的に取り組むためにも健康管理は大切です。役所が行っている健診は平日にしか受診できないことが多いので、上司も受け入れやすいでしょう。

定期的な通院ではなく突発的な体調不良である場合も、わかり次第、病院に行くためと伝えておけばスムーズです。病院に行った証明となる書類は保管しておいて、必要に応じて会社に提出しましょう。

公的な手続きや点検の立ち会い

公的な手続きや点検の立ち会いといった理由もあるでしょう。行政上の手続きは平日にしか受け付けていないことが多いため、休みを認められやすいはずです。ただし、マイナンバーカードの導入によって、時間を問わずコンビニやネット上で手続きできることもあるので、全日休みか半日休みかといった判断が必要です。

火災報知器やガス・電気・水道の点検のほか、Wi-Fiや光回線の導入工事は立ち会いが必要なケースがあります。短時間で済む用事の場合、終わり次第出勤するなど、仕事の忙しさなどに応じて臨機応変に対応しましょう。

資格試験や免許の更新

最後に、資格試験を受けたり、免許を更新したりするために休むこともあるでしょう。資格試験は自分の都合で日程を変更できません。本業に役立つ資格を取得するためなら、了承されやすいでしょう。

免許の更新も行政手続きと同様に、平日の日中にしか受け付けていないことが多いものです。会社や同僚、取引先に迷惑のかからない日程を選んで休みをとりましょう。

当日仕事を休むときに使える適切な理由

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当日になってから急に仕事を休まなければならなくなるケースもあります。当日の朝に休む旨を伝える場合は、どういった理由が適切なのでしょうか。

自身や家族の急な体調不良

当日の朝に休むことを連絡する場合は、自身や家族の体調不良が理由だと受け入れられやすいでしょう。出社しようとしていたが難しかった旨を具体的に伝えることが大切です。

両親や子どもの看病をするために仕事を休むこともできます。夫婦共働きの場合や病院に連れて行く必要がある場合は受け入れられやすいでしょう。

親の介護や身内の危篤

身内が危篤状態に陥ったときや事故に遭ったときに仕事を休んでも、誰かにとがめられることはないでしょう。具体的な状況や休む日数は、落ち着いてから伝えても問題ありません。

親など家族の介護が必要な場合も仕事を休むことが可能です。急な都合でヘルパーさんが来られなくなったなど、事情を伝えて休みをもらいましょう。

思わぬ事故や貴重品の紛失

緊急性が高い問題や突発的な事故が発生した場合も、休みをもらうことが可能です。思わぬ事故に巻き込まれた際や財布や鍵などの貴重品を紛失してしまった際は、休むことを伝えましょう。

復帰後は具体的な事情や対応を伝えて、お詫びすることも大切です。

会社が合わなければ転職も考えよう

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心身の不調を感じたら、早めに休みを取ることが大切です。しかし、復帰後も同じ状態が続くようなら、退職・転職を考えましょう。

仕事を休みたいと感じることには、何らかの原因があります。それは自分自身の問題ではなく、会社側や労働環境に問題があることも少なくありません。

同僚との人間関係や労働時間といった環境は人に大きな影響を与えるため、別の会社に転職するだけで問題が解決するケースもあります。仕事を休みたいと感じる自分を責めずに、一度環境を変えてみてはいかかでしょうか。

小岩 和男
【監修者】All About 労務管理ガイド小岩和男

就業規則など社内諸規程作りのプロフェッショナル。人事労務コンサルタント・特定社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー(AFP)。企業人時代を含め通算24年の人事コンサルを経験。一部上場企業から新設企業までを支援。セミナー講師、雑誌・書籍の執筆実績も多数。
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