アルバイトの給料は銀行振込で支給されるのが一般的ですが、一部では手渡しも行われています。アルバイト先で給料を手渡しされて、驚いた経験がある人もいるのではないでしょうか?給料を手渡しされる理由や、メリット・デメリットについて解説します。
アルバイトの給料を手渡しする理由や仕事の特徴
現在多くの企業では、アルバイト・パート・社員など雇用形態を問わず、給料の支給に銀行振込が採用されているでしょう。しかし一部の企業では、依然として手渡しの習慣が残っています。企業が給料を手渡しする理由と、手渡し支給になりやすい仕事の特徴を見ていきましょう。
なお、正規時間の労働についての報酬以外に残業代や手当・ボーナス等がありますが、本記事では会社から支払われる金額を『給料』として解説していきます。
銀行振込の手間がかからない
基本給の違いや、各種手当・残業の有無などによって、会社から支払われる金額は従業員それぞれに異なります。
それら全てを1つ1つ間違いのないように銀行振込するのは、なかなかに神経を使う作業といえるでしょう。また、振り込む際には手数料もかかります。
企業が給料を手渡しする理由として、銀行振込の手間や手数料の出費を抑えようとしていることが考えられるでしょう。
給料を手渡しするには現金を用意する必要があるため、従業員数の多い大企業ではほとんど見られませんが、個人経営の小規模企業などでは行われているようです。
短期雇用や日雇いの職場に多い
給料を銀行振込する場合、月半ばや月末などの締め日に1カ月分の勤務時間を給与計算し、源泉徴収などの差し引きを行った後、それぞれの口座に振り込むのが一般的です。
雇用期間が数日程度と短期だったり、1日限りのアルバイトだったりと、月単位で締める必要がない労働契約の場合、口座を経由せずに手渡しで給料が支払われることがあるでしょう。
給料の支払いを銀行振込にするためには、従業員1人1人の口座番号を管理しなければなりません。従業員の入れ替わりが激しい短期・日雇いの職場では、その手間を避けるために手渡しを採用している場合もあるでしょう。
給料の手渡しは違法ではない
現在、ほとんどの企業では銀行振込で給料が支払われています。そのため、「給料の手渡しは違法ではないのか」と不安に思う人も少なくないでしょう。
結論からいえば、給料の手渡しは違法ではありません。むしろ労働基準法第24条では、給料の支払いは手渡しで行うことが原則とされているのです。
従業員側が合意した場合のみ、銀行振込による給料の支給が可能と定められています。『給料が手渡し=問題のある企業』というわけではないので、不安に思う必要はありません。
参考:賃金関係|厚生労働省
アルバイトの給料を手渡しされるメリット
振込手数料や個人情報管理の手間の削減など、給料の手渡しについては企業側のメリットだけでなく、受け取る側の従業員にも、いくつかの利点が存在します。
手渡し支給ならではのメリットについて解説しましょう。
振込ミスが起こらない
銀行振込で給料を受け取る場合、従業員側が誤った口座番号を伝えてしまったり、会社側で入力ミスが起こったりなどのトラブルが生じる可能性があります。すると、給料日に給料を受け取れないという事態になりかねないでしょう。
手渡しの場合、会社で現金を直接受け取ることになるので、そうしたトラブルは起こりません。万が一、金額に誤りがあったとしても、その場ですぐに確認して指摘すれば、即時対応してもらうことができるでしょう。
出金の手数料がかからない
口座に振り込まれた給料を引き出す際、手数料がかかる場合が少なくありません。特に、コンビニに設置されているATMを利用するときは、一部の例外を除いて数百円程度の手数料がかかることが一般的です。
1回1回で見れば大した金額ではありませんが、積み重なれば無視できない出費になっていきます。
その点、手渡しでの受け取りであれば、口座からお金を引き出すこと自体が必要ありません。出金のたびにかかる手数料を削減できるというのも、給料の手渡しが持つ利点の1つでしょう。
支出の管理をしやすい
給料を手渡しで受け取ることで、支出の管理がしやすくなるというメリットがあります。
銀行振込で給料を受け取ると、使いたいときに使いたいだけ預金を引き出すという状態になりやすいものです。しっかり収支を管理していないと、自分が1カ月で何にいくらお金を使っているのかが把握できず、浪費につながることも少なくないでしょう。
手渡しの場合、1カ月分の給料全額が一度に手元にやってくるので、そのうちのいくらを何に使うかという仕分け作業を行いやすくなります。
アルバイトの給料を手渡しされるデメリット
給料の手渡しには、デメリットも存在します。会社から給料を手渡しされたときに、気を付けるべきポイントをまとめました。
持ち歩く際に紛失・盗難のリスクがある
給料を手渡しで受け取る最大のデメリットは、銀行振込にはない紛失・盗難のリスクが生じてしまうことでしょう。
1カ月分の給料となれば、週に数日のアルバイトであっても数万円の金額になるはずです。手渡しの場合、数万〜数十万円の現金を、会社から自宅・銀行まで持ち歩かなければいけなくなります。
現金の入った給料袋を途中で落としてしまったり、盗難に遭ったりする可能性もゼロではありません。給料を手渡しする企業が減っているのは、そうしたトラブルから自社の従業員を守るためでもあるでしょう。
使いすぎの原因になることも
給料を手渡しで受け取ることで、無駄遣いが増えてしまう人もいるでしょう。特に、手元にあるお金を使い果たしてしまうタイプの人は要注意です。
手渡しの場合、給料の全額が一気に手元にやってくるので「もう少し使っても大丈夫だろう」と財布のヒモが緩くなりやすいものです。
現金払いをしたいとき、銀行振込であればその都度預金を引き出しに行く必要が生じますが、手渡しの場合はそれがありません。手間が少ないことが裏目に出てしまうパターンといえます。
預金時に手間がかかる
手渡しされた給料のうちいくらかを貯金したいと思ったとき、現金のまま自宅に保管する人はあまりいないでしょう。大抵の場合、銀行口座に預け入れることになるはずです。
銀行振込の場合、使わない分は引き出さなければよいだけです。しかし、手渡しの場合は貯金したい分の現金を持って、ATMの設置場所まで出向かなければなりません。
口座への預け入れ時には手数料がかからないことがほとんどですが、預金に手間がかかるという点はデメリットの1つといえるでしょう。
税金面で注意が必要
アルバイトの給料を手渡しで受け取ったとき、特に注意してほしいのが税金に関する事柄です。個人で確定申告を行わなければならない場合もあるため、しっかりと知識を持っておきましょう。
源泉徴収されているか要チェック
会社から受け取る報酬の総額である給与は所得の1種であり、所得税がかかります。この所得税は、銀行振込か手渡しかにかかわらず、源泉徴収として給与からあらかじめ天引きされている場合がほとんどです。
しかし、中には源泉徴収を行わないまま、従業員に給料(給与)を手渡しする会社も存在します。会社から手渡しで給料(給与)を受け取った際は、会社側できちんと源泉徴収されているかどうか、念のため確認するようにしましょう。
源泉徴収されていない場合、給料(給与)を受け取った人が確定申告を行い、所得税を納めなければなりません。
ただし、家族の扶養家族になっている人は、給与収入が103万円以下であれば扶養控除の対象となるので、源泉徴収されていなかった場合でも確定申告は不要です。
確定申告を怠ると脱税になる場合も
アルバイトの給料が手渡しであっても、所得に対する納税の義務は変わりません。誰かの扶養家族になっている場合でも、1年間の給与収入が103万円を超えているなら、源泉徴収されていない場合、確定申告を行って所得税を納める必要があります。
対象者であるのに確定申告を行わず、納めるべき税金を納めなかった場合、『無申告』状態にあると見なされ罰則を科される可能性があるでしょう。無申告加算税が課せられ、より多くの税金を支払わなければならなくなります。
給料を手渡しで受け取る際は、税金まわりの事柄には特に注意を払うようにしましょう。
給料の手渡しにはメリットもデメリットもある
近年では給料の手渡しを行う企業は少なくなりましたが、手渡しによる給料の支給自体に違法性はありません。1日や1週間程度の短期雇用の場合、口座番号管理の手間を省くといった利便性の面から、手渡しが採用されている場合もあるでしょう。
手渡しの場合、給料の全額が現金として手元にやってくることになるため、メリットとデメリットの両方が生じます。うっかり紛失したり、ついつい使いすぎたりしてしまわないように、十分気を付けて管理するようにしましょう。
就業規則など社内諸規程作りのプロフェッショナル。人事労務コンサルタント・特定社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー(AFP)。企業人時代を含め通算24年の人事コンサルを経験。一部上場企業から新設企業までを支援。セミナー講師、雑誌・書籍の執筆実績も多数。
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