給料の前借りをするメリット・デメリット!NGだった場合の対処法も

一時的にどうしてもお金に困っている際は、給料の前借りを検討するのも一つの考えです。お金が必要な理由次第ではありますが、会社から前借りできる可能性があります。給料前借りのメリット・デメリットや、できなかったときの対処法を解説します。

給料の前借りとは

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(出典) photo-ac.com

給料の前借りは大きく2種類に分けられます。緊急時の対応やパート・アルバイトの前借りについても解説していきましょう。

前借りには2つの意味がある?

給料の前借りには2つのパターンがあります。すでに働いた分を給料日から前借りしてもらうケースと、まだ働いていない分の給料を前借りしてもらうケースです。

既に働いた分の前借りに関しては、一部の例外を除き、特に法律でルールが定められているわけではありません。前借りできるかどうかは会社次第です。

一方、まだ働いていない分の前借りに会社が応じると、会社は労働基準法第五条違反に問われる恐れがあります。「前払いしたのだからきちんと働いてもらう」という形になり、第五条で禁じられている強制労働に該当しかねないためです。

したがって、まだ働いていない分の前借りはできない可能性が高いでしょう。すでに働いた分の前借りができるかどうかは、会社に確認する必要があります。

参考:労働基準法 第五条 | e-Gov法令検索

緊急時の前借りは可能?

労働基準法第二十五条では、前借りに関するルールが明記されています。『従業員に急を要する理由がある場合は、会社が前払いに応じる義務がある』という規定です。

ただし、このルールはすでに働いた分の前借りにのみ適用されます。まだ働いていない分の給料は、たとえ緊急時であっても会社に前払いの義務はありません。

なお、急を要する状況に該当するのは、出産・結婚・病気・災害などです。すでに働いた分の給料に関しては、これらの理由で従業員が前借りを希望すれば、会社は支払いに応じなければなりません。

参考:労働基準法 第二十五条 | e-Gov法令検索

パート・アルバイトも対象

給料の前借りができるのは正社員だけではありません。労働基準法第二十五条の「緊急時の前借り」では、基本的には契約社員・パート・アルバイトも前借りできます。

パートやアルバイトが緊急時の前借り以外で対応してくれる会社を探す場合は、『前給制度』を利用できるかチェックしてみましょう。前給制度とは、企業と金融機関が提携して行っている前借り(給与前払い)の制度です。

会社に前給制度の利用申請をしておけば、パソコンやスマホから簡単に前借りを行えます。場合によっては即日で振り込んでもらうことも可能です。飲食業・コールセンター・リゾートバイトの仕事なら、前給制度を利用できる会社が多く見受けられます。

給料を前借りするメリット

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給料の前借りにはどのようなメリットがあるのでしょうか。一般的な借金と比較した場合のメリットについて解説します。

働いた分の前借りなら利息がかからない

給料を前借りするメリットの1つに、利息がかからないことが挙げられます。基本的には働いた分の給料を、本来の支給日前に受け取ることになるため、給料日の支払いと同じ扱いにすることが可能です。

お金を工面するために会社以外から借金をする場合は、一般的に利息が発生します。金利10%で10万円を借り入れた場合、1万円多く返さなければならないため、利息がかからないことは大きなメリットといえるでしょう。

ただし、会社が提携する「前給制度」によっては、1回ごとに利用料がかかるケースがあります。どのようなルールになっているのかを、事前にきちんと確認しておきましょう。

返済方法を選べる

給料を前借りした場合は、予定通りに給料をもらった後、借りた分を自分で返済するのが基本です。会社が勝手に給料から天引きすることはありません。

労働基準法第十七条では、『前貸の債権と賃金を相殺してはならない』と規定されています。従業員に貸したお金と給料を、会社が勝手に相殺するのは認められていないのです。

ただし、給料から天引きすることについて会社と従業員との間で合意があれば、会社は給料から貸した分を差し引くことができます。「前給制度」は差し引きした金額が支給日に支払われることが多く、「前給制度」の利用申請時には、どのような返済方法となるのかを確認しておきましょう。

参考:労働基準法 第十七条 | e-Gov法令検索

給料を前借りするデメリット

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給料の前借りにはメリットだけでなくデメリットもあります。リスクを知った上で前借りするかどうか検討することが大切です。

社内での信用が落ちる可能性

給料を前借りするデメリットとしては、社内での信用が落ちかねないことが挙げられます。どのような理由であれ、借金をする人はお金にだらしない印象を与えてしまうでしょう。

急な出費の発生に備え、多くの人は日頃から貯金をしています。会社からお金を借りようとする人は、金銭管理がいい加減で無計画にお金を使う人だと思われやすくなるのです。

社内での勤務態度や業績が良くても、前借りするといくらか信用が落ちてしまう可能性があることは知っておきましょう。給料の前借りを繰り返す人は金銭面での信用がなくなり、一定回数以上の前借りを断られる可能性もあります。

次回から使える額が減ることになる

給料の前借りで一時的に金銭的余裕ができたとしても、借りたお金は返さなければなりません。大半のケースでは、次回の給料から支払うことになるでしょう。

例えば会社から10万円を前借りした場合、給料が20万円なら次回の給料は10万円しか残らないことになります。家計のやりくりに困る恐れがある点が、給料を前借りするデメリットの1つです。

前借りした分が減った給料で家計をやりくりできなければ、給料の前借りを繰り返すことにもなりかねません。きちんと計画を立てた上でお金を借りる必要があります。

前借りしたいときのポイント

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前借りを希望する際に気を付けるべきポイントを紹介します。以下に挙げる注意点を押さえておけば、スムーズに借り入れしやすくなるでしょう。

まずは直属の上司に相談

会社に前借りをお願いしたい場合、まずは直属の上司に相談するのがおすすめです。前借りができる会社なのか、どのような流れで手続きを進めればよいのかなど、分かる範囲で教えてもらえるでしょう。

小規模な会社なら社長に直接お願いできますが、規模が大きい会社の場合は総務や経理を通すのが一般的です。担当者は企業により異なるため、1人で判断せず上司に聞いてみましょう。

派遣社員の場合、相談するのは派遣先の会社ではなく、所属している派遣会社です。派遣元の責任者や経理担当者に相談しなければなりません。

前借りの理由は正直に

前借りをお願いする際に添える理由は正直に伝えましょう。葬式や出産など人の命が関わるようなことで嘘をついた場合、後から辻褄が合わなければ社内での評価がマイナスになる恐れもあります。

すでに働いた分の給料を前借りするケースでは、緊急時なら会社は申請に応じなければなりません。正直に理由を伝えればお金を貸してもらえるはずです。

法律上の緊急時に該当しない理由で申請する場合も、企業によっては前借りに応じてくれるケースがあります。いずれにしても、お金に困っている理由を正直に話すことが重要です。

前借りができなかったときの対処法

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給料の前借りができない場合の対処法を紹介します。とりあえず急場をしのぎたいときにおすすめの方法です。

「従業員貸付制度」を活用

企業によっては、福利厚生の一環として従業員貸付制度を導入しているケースがあります。従業員貸付制度とは、自社の従業員に会社がお金を貸してくれる制度です。

貸付金の原資は会社の利益から捻出されるため、お金を借りても翌月の給料に影響を与えません。前借りに比べ利用用途が幅広く設定されている点もメリットです。

給料の前借りを考えているなら、自社の福利厚生に従業員貸付制度があるか確認してみましょう。カードローンやクレジットカードより借り入れのハードルが低く、最初に検討する借り入れ方法としておすすめです。

ただし、一般的な借金と同様に利息が発生するため、総返済額は借りた金額以上になります。利用するにあたり、社内審査を通過しなければならないことにも注意が必要です。

カードローンを利用する

給料の前借りができなかったときは、カードローンの利用も検討してみましょう。お金を借りたことを会社に知られたくない場合におすすめの方法です。

近年は初月に利息が発生しないサービスもあり、借り入れる金額を抑えれば利息ゼロで急場をしのげる可能性があります。クレジットカードより利息が低い点もカードローンのメリットです。

大半のカードローンは、申し込んだ日や翌日に融資を受けられます。従業員貸付制度に比べると審査が厳しくなる点や、借入可能金額が大きいため借り過ぎてしまう点に注意しましょう。

クレジットカードで先延ばしにする

返済をできるだけ先延ばしにしたい場合は、クレジットカードを活用するのも1つの方法です。融資のタイミングによっては、翌々月まで返済を延ばせる可能性があります。

「とにかく一時的にお金に困っており、来月以降なら給料で返せる」というケースなら、クレジットカードで急場をしのぐのがおすすめです。

クレジットカードのデメリットとしては、カードローンより利息が高くなることが挙げられます。先延ばしになった返済を忘れてしまうと再びお金に困りかねないため、計画的に利用することも重要です。

緊急時には一言相談してみるのもアリ!

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給料の前借りには、すでに働いた分を前払いしてもらうパターンと、まだ働いていない分を借りるパターンがあります。前者は緊急時なら応じてもらえるはずですが、後者は労働基準法に抵触するため前借りできないでしょう。

前借りのメリットには、利息がかからないことや返済分を給料から天引きしてもらえることが挙げられます。会社に前借りの制度がない場合は、従業員貸付制度やカードローンの利用も検討してみましょう。

小西道代
【監修者】All About 労務管理ガイド小西道代

労務トラブルを未然に防ぐ社会保険労務士・行政書士。行政書士法人グローアップ代表、社会保険労務士法人トップアンドコア役員。大学卒業後、日本マクドナルドに入社。幅広い年齢層と共に働くことで、法律や制度だけではない労務管理・組織運営に興味を持ち、弁護士事務所等で経験を積む。自身も喫茶店を経営した経験から、労務トラブル予防の労務相談を得意とする。
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