面接で応募者の強みをアピールする『自己PR』を求められたときは、何を答えればよいのでしょうか?なぜ自己PRが必要なのか、面接官は何を見ているのか、基本的なポイントを解説します。自己PRをするときの注意点や、長所の探し方も見ていきましょう。
面接で自己PRを聞かれる理由
面接では、応募者の『自己PR』を聞かれることがあります。仕事には直接関係ないように思う人もいるかもしれませんが、何のために自己PRを求めるのでしょうか?面接官の目的を知って、対策をしておきましょう。
応募者の人柄を知るため
自己PRには、応募者の得意なことや好きなことが含まれます。これまで頑張ってきたことや、印象に残った経験を話すことで面接官に人柄が伝わるでしょう。
例えば、『10年間柔道部に所属し、大会にも出場した』という経験からは、体を動かすことが好きで、長期間部活に対して真面目に取り組んできた姿勢がうかがえます。
『パソコンが趣味でIT系の資格を取得した』という経験からは、IT系の分野に興味を持っていることが分かります。このように、得意な分野を知るだけで、その人の人柄が見えてくるのです。
企業との相性を探るため
自己PRには、仕事に生かせる内容も含まれます。必要な適性や能力を備えているか、面接官が自己PRの内容から判断することもあるでしょう。
『語学に興味を持っていて留学経験がある』という自己PRは、外国人と接する機会の多い企業で役立つでしょう。事務職に応募している場合、『前職での事務経験』は強みになります。
そのほか、すでに働いている社員とコミュニケーションがうまくいくかも重要なポイントです。
自己PRでアピールすべきポイント
面接の自己PRでは、何をアピールすればよいのでしょうか?面接官が応募者の何を見ているのか、考えることが大切です。
自分が持っているスキル・実績
スキル・実績は、自己PRの場面で伝えましょう。所有している資格や仕事での実績は、採用に大きく影響します。
例えば、英語のスキルはTOEICの点数でも表せます。経理や簿記のスキルも、事務職では役立つでしょう。資格やスキルを生かして今までどのような仕事をしていたか伝えるのも、自己PRになります。
仕事上の実績は、数字の裏付けがあると説得力が増すはずです。管理職として売上の達成に貢献したという内容であれば、部下に対する管理能力もアピールできるでしょう。
応募企業・職種との相性
例えば、応募先の企業がペット関連の事業を行っているとしたら『いろいろな生き物の飼育経験があり、動物が好き』という自己PRは効果的です。日々の業務の中で動物に触れ合う機会が多い場合は、今までの経験が生きてくるでしょう。
しかし、営業職の採用を目指す場合に同じ自己PRをそのまま使うと、効果が薄れます。『ペットを介して多くの人と知り合うことができ、イベントを主催した経験がある』という内容であれば、コミュニケーション能力をアピールできます。
企業の業務内容や、職種に合わせてアピールするポイントを変えることが大切です。
人柄が分かるエピソード
面接官は、応募者の人柄から仕事の適性や企業との相性を探ります。人柄が分かるエピソードを盛り込むと、性格や雰囲気を知ってもらうきっかけになるでしょう。
特に、学生やアピールできる仕事上の実績が少ない段階での転職では、人柄を伝えることが大切です。
趣味や勉強に対する姿勢は、性格や人柄を伝えるときに役立ちます。自分の長所に具体性を持たせるためにも、エピソードを盛り込みましょう。
『資格を保有している』だけではなく、『その資格を取得するためにどのような努力をしたのか』を盛り込むと、性格や考え方が分かりやすくなるはずです。
面接での自己PRの仕方
面接での自己PRは、構成や根拠を意識しましょう。どのような構成で話すと伝わりやすいのか、主なパターンを紹介します。入社後に生かせる内容を自己PRとして選ぶのも重要です。
自身の強みなど結論から話す
自己PRで伝えたいことは、『自分の強み』です。面接官に結論が伝わるよう、最初に話しましょう。
保有している資格をアピールしたい場合、『私はこのような資格を保有しています』という結論から話すと相手にはっきりと要点が伝わります。
結論を話した上で、自分の長所が仕事に役立つ理由やエピソードを話していきましょう。
なお、伝えたい結論によって構成は変わります。資格自体ではなく『真摯に取り組む姿勢』をアピールしたいときは、資格を取得するために勉強した時間や、コツコツと取り組むことの大切さから話し始めるのもよいでしょう。
PRする点の根拠を示す
面接官と応募者は、履歴書と面接中の対面のみの関係です。『私には素晴らしい能力があります』とアピールするだけでは、信用は得られないと考えておきましょう。
面接では、自己PRを通して自分を売り込む力が求められます。セールスのときに、『この商品がなぜ素晴らしいのか』を説明するのと同じ要領です。面接官を納得させる根拠を用意しましょう。
主な根拠は、数値や資格です。商品を販売するときでも『この商品はこれだけ多くの人に購入されている』とアピールするだけで、根拠がついてきます。
数値的な根拠が示せないときは、具体的なエピソードを話しましょう。前職で顧客を獲得したときの話では、どのように考え、どう行動したのかを伝えます。ただ「顧客を獲得するために頑張った」と言うよりも説得力が増すはずです。
入社後に強みをどう生かすか
面接官が知りたいのは、応募者の自己PRが仕事に生かせるかどうかです。たとえ素晴らしい特技や長所であっても、仕事の上で生かせない能力であれば採用にはつながりにくいでしょう。
『リーダーシップがある』という自己PRであれば、仕事にどのように生かせるかを考えます。積極的に企画立案をする、アルバイトをまとめていきたいなど仕事に関係する内容につなげましょう。
職場での業務内容を挙げて、具体的に話すのがポイントです。面接官も、採用後の姿を想像しやすくなるでしょう。
知っておきたいNGな自己PR
自己PRの仕方によっては、面接官に疑問を抱かせる可能性があります。せっかく自分の強みを話すのであれば、採用につながるようにしたいものです。避けた方がよい自己PRとはどんなものなのか、見ていきましょう。
具体性・根拠がない
自己PRには、根拠が必要です。『英語を話せます』とアピールした場合、前職での実績やTOEICの点数が根拠になるでしょう。『1年間の留学経験がある』というのも根拠の1つです。
学歴や前職の仕事内容を見たときに想像しにくい自己PRは、本当なのか面接官には判断ができません。面接官が求めているレベルと、本人が想定しているレベルが異なる可能性もあります。
そのほか、仕事とは無関係な身体能力をアピールするなど、「それがどう仕事に役立つのか」と悩むような自己PRは避けましょう。本当の特技をアピールするとしても、『その特技を身に付けるために行った努力』など、具体的なエピソードを話すことが重要です。
自己PRを盛り込みすぎる
面接での自己PRは、基本的に1つの内容を話しましょう。いくつもの話を盛り込むと、結論がぼやけてしまいます。
また、一度に複数の話をすると、どうしても話が長くなるはずです。面接の自己PRは短時間でまとめる必要があるため、長い話をするのもよくありません。
さらに、接点のない長所を伝えようとすると、途中で話が変わってしまいます。
例えば、『コミュニケーション能力の高さ』と『IT系のスキルがある』を一緒に伝えようとすると、どちらをアピールしたいのか判断しにくくなるでしょう。伝えたいことを明確にするには、できるだけエピソードを1つに絞るのがポイントです。
応募企業にマッチしていない
応募先によって、求める人物像は異なります。業務内容や社風に合う人材が、その企業にとっての『能力が高い人』です。
例えば、『コンピューターのプログラムを組める』というスキルは就職にも役立ちます。しかし、応募先が『飲食店の管理職スタッフ』の場合、企業の求める人物像とは合いません。
自分が一番得意なことをアピールするのではなく、企業に必要とされていることを自己PRに盛り込みましょう。飲食店の管理スタッフなら、『部下の統率経験』や『接客スキル』などが自己PRにつながるはずです。
もし得意なことをそのまま自己PRに使いたいときは、『プログラムを組める』という特技だけでなく、習得するまでの過程や考え方を強みとしてアピールするのもよいでしょう。
面接で自己PRをする際の注意点
面接の自己PRでは、いくつか注意しておきたいことがあります。面接官によい印象を持ってもらうためにも、話す内容には気を配りましょう。特に気を付けたいポイントを紹介します。
履歴書の内容と異なる話はしない
面接官は、履歴書の内容を一通り読んでいます。全てを覚えているとは限らないものの、面接の話と履歴書の内容にズレがあると疑問を感じるはずです。
履歴書に自己PRを書き込んでいる場合、面接でも基本的に同じ内容を意識しましょう。自己PRは、『応募者にとって一番アピールしたい内容』です。
違う話をすると、面接官が「履歴書に書いた自己PRは本当なのか」と疑問を抱く可能性があります。もし内面に変化があり、履歴書と異なる内容を話す場合は、理由を添えて別の強みに気付いたことを告げると違和感がありません。
基本的に、エントリーシートや履歴書は応募先に提出してしまいます。どの企業に何を提出したのか、コピーを取っておくと間違いがないでしょう。
だらだらと長く話さない
自己PRを要約するのも、面接では重要なポイントです。長い話では、要点が分かりにくくなります。また、企業側から時間を制限されることも多いでしょう。
自己PRの時間の目安は、数十秒から1分程度です。制限時間がないときでも、1分前後が適切な長さでしょう。
ただし、面接官から「5分以内」と指定されることもあります。少し長めの時間を指定されることも想定して、いくつか構成を考えておくことが重要です。
『強みとしてアピールできるスキルや実績』『実績を得たエピソード』などを交えて、要点が伝わるよう簡潔にまとめましょう。
面接前にチェック!PRすべき点の探し方
自分の強みをはっきりと自覚するには、自己分析が必要です。これまでの経験から、面接で話したいことをまとめておきましょう。面接前にできる長所の探し方を紹介します。
成功・失敗したことを思い出す
自己PRは、必ずしも成功体験のみから生まれるものとは限りません。失敗の経験からは問題を解決する能力や、トラブル時の対応能力が生まれます。
応募先に対して何がアピールできるのか考えるときは、これまでの成功・失敗を思い出してみましょう。前職でのクレーム対応や仕事上のミスなど、強みとは一見関係ない失敗体験も自己PRを考える上では重要です。
クレーム対応が起こる前提として、『顧客を怒らせてしまった』というトラブルがあります。しかし、仕事をしていく上で避けては通れない問題です。
クレームが発生したとき、顧客に対して真摯に対応し怒りを収めてもらったという体験は、今後の仕事でも役立つ強みになるはずです。
身近な人に聞いてみる
自分の強みや長所は、なかなか気付きにくいものです。身近な人に相談することも、自分の長所を見つける方法の1つです。
家族や友人など、身近な人はあなたの性格や得意なことも知っています。自分では大したアピールポイントではないと考えていても、周囲の考え方は違うこともあるでしょう。
周りから見て、魅力的に映ることが強みや長所です。身近な人に話を聞いて、言われたポイントを深堀りしましょう。
企業が求める人材から導く
せっかく自己PRの内容を思いついても、企業の求める人物像とズレがあるとほとんど意味がありません。応募する企業がどんな人材を求めているのか、まずは考えてみましょう。
いくつかの長所があったとしても、面接で自己PRにかけられる時間は1分程度です。ピックアップした長所の中から、企業に合うものを選びましょう。
職種や業務内容によって、必要な適性やスキルは変わります。例えば、接客業なら『人と話すのが好き』『社交性がある』などの長所が自己PRにつながるはずです。
アピールすべきポイントを押さえた自己PRを
面接で自己PRを求められたときは、『自己PRの根拠を示すこと』や『企業が求める人物像にマッチした長所を選ぶこと』を意識しましょう。仕事で役立つ内容になっているかがポイントです。
また、自己PRを簡潔にまとめることも重要です。伝えたいポイントを要約し、短時間でまとめます。自分の強みは何なのか、入社後にどう生かせるのかを明確にアピールしましょう。面接官の心に響く自己PRができれば、内定への後押しになるはずです。
若者の就職支援を専門とするキャリアカウンセラー。アメリカの大学を卒業後、アクセンチュアを経てリクルートに入社し100社以上の新卒・中途採用のコンサルティングを経験。独立後は採用と就職活動の双方を知る「若者就職支援のプロ」として官公庁や人材企業の若年就労支援プロジェクトに携わる。全国の大学で教員やキャリアカウンセラー向けの研修を行うなど、若者支援者の養成にも力を入れている。
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著書:
美文字履歴書の書き方&マナー