給料が下がった場合、生活にも影響があります。もし突然給料が下がってしまったら、どうすればよいのでしょうか?対処の方法や、転職時の注意点を解説します。給料が下がるデメリットや、手取りが下がってしまうケースも確認しましょう。
給料が下がったときの対処法
何らかの理由で給料が下がってしまったときは、何か対処できるのでしょうか?給与明細を見て減額が気になった場合、まず何をすればよいのか解説します。
給料が下がる理由を確認
通常、毎月支給が決まっている基本給を労働者の合意なしで下げることはできません。労働契約法では、合意なく労働者の不利益になる労働契約変更はできないこととなっています(第8条・第9条)。
それでも給料が下がったのであれば、何らかの理由があるはずです。まずは、会社側に理由を確認しましょう。
合理的な理由と労働者の同意がある場合、減給は可能です。就業規則に定められた適切な範囲での減給や、会社側に合理性が認められるケースでは、個別の同意がなくても減給はやむを得ないと判断されるでしょう。
合意なしに契約変更ができないとはいえ、やむを得ないケースに該当する場合、むやみに拒否すると会社との関係が悪化するリスクも考えられます。
出典: 労働契約法 第1章 第8条・第9条 | e-Gov法令検索
納得できない場合は交渉を
理由を聞いた上で、納得できない場合は交渉が可能です。突然給料が下がってしまうと、生活にも影響する可能性があります。
もし上司や窓口の担当者が交渉を受け付けてくれない場合は、労働組合・労働基準監督署などに相談してみましょう。
相談の際は、何を目的とするのか明確にしておくのがおすすめです。下がった分の給料を支払ってもらい退職したいのか、以前の給料で働き続けたいのか、目的によって交渉の方向性は異なります。
会社側にきちんとした理由がある場合は、組合や労基署に相談しても交渉が難しい可能性もあります。会社の言い分をしっかり確認し、外部の意見も参考にした上で交渉を進めるようにしましょう。
転職を視野に入れる
転職を検討する際、会社との交渉が難航する、または大幅に給料が下がる場合は、転職も一つの選択肢となります。納得できる条件を提供する会社への転職を考えれば、給料が下がったまま働き続けるよりも有利です。
特に、会社の業績が悪化しており、今後さらに悪化する見込みがある場合には、早めに転職を検討することが賢明です。
会社に問題がある場合や、正当な理由があっても給料の大幅な減額により退職せざるを得ない場合には、会社都合での退職と認められる可能性があります。このような状況では、早期に失業保険を受けやすくなり、転職先にもやむを得ない退職であることを伝えやすくなりますので、会社や労働基準監督署に相談することをお勧めします。
転職先を急いで見つけたい場合、求人サイトの利用が便利です。仕事の合間や、有給休暇を取得した際にも、スムーズに仕事探しができます。スタンバイで求人を探し、納得できる労働条件の仕事を見つけましょう。
転職する場合の注意点
給料が下がり、転職を決意した場合は、できるだけ早く次の仕事を見つけたいことでしょう。しかし、慌てて決断するのではなく、転職を成功させるための行動を取る必要があります。主な注意点と、失敗しにくくなるコツを確認しましょう。
年収水準が高い業種・職種を選ぶ
給料が下がったことに不満を感じている場合、転職先は年収水準が高い業種・職種を選ぶのがおすすめです。元々水準が高い業種・職種であれば、収入面での不満を感じにくく、転職成功の可能性も上がるでしょう。
特に、現在年収水準が低い業種で働いているのであれば、上がり幅も大きくなります。2023年に国税庁が公開した「令和4年分民間給与実態統計調査結果について」によると、金融業・保険業は655万7,000円、情報通信業は632万4,000円が1年間の平均給与です。
対して、農林水産・鉱業は336万6,000円、宿泊業・飲食サービス業は268万2,000円と低い水準となっています。年収水準の高い業種・職種に就くには専門知識が求められることも多くありますが、可能であれば仕事を選ぶ際の参考にしましょう。
給料だけにとらわれないこともポイント
給料の減額に問題を感じているとしても、転職で収入面だけにとらわれるのはおすすめできません。適性のない仕事や、忙しすぎる仕事に就くと、ストレスがたまってしまう可能性もあります。
また、業種・職種の年収傾向は年々変化しています。業界の発展・衰退により、今後大きな変化があるケースも考えられるため、転職時点の傾向だけでなく、今後の予測も加えて検討するようにしましょう。
まずは最低限必要と感じる生活資金がどの程度であるか把握し、仕事への興味・関心や、企業の福利厚生などを全般的にチェックし、転職先を探すことをおすすめします。
給料が下がるデメリット
固定の給料が下がると、毎月の収入が減る以外にもデメリットがあります。自分にとってどのような不利益があるのか把握するためにも、給料の減額で起こり得るデメリットを確認しておきましょう。
賞与・残業代なども減る
基本給が下がると、賞与や残業代にも影響が出ます。特に、残業代は基本給をベースに金額が決まっているため、影響が出やすいでしょう。
賞与の計算を「基本給○カ月分」のように設定している会社では、基本給が下がると連動して下がります。評価や本人の成績によって金額が決まるケースや、基本給を下げた代わりに賞与・手当を上げるケースもあるため、算出方法を確認しておきましょう。
また、基本給を下げなければならないほどの経営状況であれば、業績の低下により賞与自体が支給されない可能性もあります。そのほか、退職金の計算に基本給が関係している場合は、退職金にも影響が出るでしょう。
給料・給与の違いを知っておこう
給料は原則、基本給を意味します。給与は残業代や手当を含んだ総支給額です。基本給が下がってしまうと、固定で支給される部分が少なくなり、後日問題が起きるケースも考えられます。
会社から同意を求められた場合は、他の方法はないのか、なぜ基本給を下げることになったのかを詳しく確認し、納得した上で手続きを進めましょう。
基本給以外の全てが変動するわけではありませんが、内訳によっては今後大きく収入が落ち込む可能性もあります。
生活に困るケースも
基本給が下がると、ほとんどの場合収入が少なくなります。それまで安定して支給されていた収入が減ると、生活にも影響があるでしょう。
基本給が下がった分を残業代でカバーしようとしても、仕事がなく残業を断られるときは増やせません。残業が難しい状況では、収入の減少は避けられないでしょう。
支給されている手当が多く現時点では生活に困らない場合でも、注意は必要です。例えば、業績の良しあし・勤務日数・個人の成績によって支給される手当は、毎回支給されるとは限りません。
手当だけを当てにしていると、支給がなかったときに生活が苦しくなるリスクがあります。本来、基本給だけで生活できる方が、従業員にとっては有利です。
手取りが下がるケースもチェック
給料や手当に変動がない、または昇給していても、手取りが下がるケースはあります。基本給の減額以外で、実質の手取りが下がるケースを確認しましょう。手取りの減少が困る場合は、残業の調整や、新たな手当を支給してもらえるようスキルアップも必要になります。
社会保険料が増額したケース
社会保険料が増額され、基本給や手当に変動がない場合、手取りが減ります。場合によっては、昇給していても手取りが減るケースもあるでしょう。
社会保険料は基本的に4~6月の収入を基に標準報酬月額を算出し、決定されます。該当期間に残業が多い場合、普段の収入は変わっていなくても社会保険料が増額する可能性があります。
そのほか、4~6月以外の月も含め全体の所得が増えたケースや、交通費が増えたケースでも社会保険料の算出に影響を与えるため、注意が必要です。また、社会保険料率の改定により、負担割合が増えるケースも考えられます。
源泉徴収税額・住民税が上がったケース
給料が以前と同じでも、源泉徴収税額や住民税が上がることはあります。場合によっては、給料が増えているのに手取りが減るケースもあるでしょう。
例えば、毎月の源泉徴収税額は収入だけでなく扶養人数でも変化します。親族が扶養を外れると、源泉徴収税額が増えるのです。
住民税は、前年度の所得によって変動します。前年、給与収入以外に副業収入や一時所得があり、確定申告をしているケースが該当するでしょう。
住民税が特別徴収になっていると、給与収入から引かれることとなり、手取りが減ってしまいます。
給料が下がったことに関するQ&A
突然給料が下がったときは、違法性の有無や拒否しても問題ないかが気になるかもしれません。疑問点を解消するためのQ&Aを確認しましょう。
突然給料が下がった場合、違法性はある?
給料の減額には、労働者の同意が必要です。基本給を含む労働契約の変更には、労働者の同意が必要であると労働契約法でも定められています。
ただし、就業規則上のルールや、変更によって追加されたルールであれば、個別の合意は必要ないケースもあるため確認しておきましょう。合理性があるかどうかが判断基準となりますが、労働者側の問題行為による減給や、人事評価による正当な昇給・降給は認められています。
そのほか、最低時給を下回るような減給の打診は、合意の有無を問わず違法です。また、著しく不利益な変更に同意するよう迫るなど、強制的で法的根拠もない減給も違法になるケースがあります。
出典:労働契約法 第1章 第8条・第9条 | e-Gov法令検索
給料の減額は拒否できる?
給料の減額は、必ず合意しなければならないというものではありません。納得いかない場合は、拒否もできます。どうしても納得がいかず、今後も同じ職場で同じ給料のまま働き続けたい強い意思があれば、会社との交渉に加えて労働基準監督署や弁護士への相談も検討しましょう。
しかし、減額を打診されている以上、会社側にも何らかの事情があると考えられます。減額後の給料しか振り込まれなくなり、会社との関係性が悪化するリスクもあるため、強い思い入れがなければ転職を検討する方がよいでしょう。
早いうちに転職を検討すれば、会社ともめずに好条件で次の仕事を探せる可能性もあります。ストレスなく交渉を進めたいときは、減額を受け入れた上で他の条件を提示することも考えましょう。
給料が下がったら社会保険料も下がる?
給料が下がったときに社会保険料が下がるかどうかは、減額の幅によって変わります。社会保険料の算出基準となる標準報酬月額は、収入に応じておおむね1万~6万円刻みで等級が設定されており、等級が変わらない程度の減額であれば変更はありません。
等級が変わる場合、「定時決定」と「随時改定」のどちらに該当するかで、今年度の社会保険料が下がるかどうかが判断されます。
変動月からの3カ月間に月17日以上出勤しており、降給による給料の減額で社会保険料の標準報酬月額が2等級以上変わっている場合、随時改定の対象です。随時改定では、変更後の報酬を得た月を1カ月目として、4カ月目に社会保険料の改定が行われます。
大きな差がない場合は定時決定の対象となり、翌年の4~6月に標準報酬月額が算出され、社会保険料が下がることになるでしょう。
出典:令和6年度保険料額表(令和6年3月分から) | 協会けんぽ | 全国健康保険協会
給料が下がったときは冷静な対応がポイント
会社勤めをしていると、給料が下がることもあり得ます。特に、人事評価による査定での増減は多いでしょう。
もし心当たりがなく、不当な減額だと感じる場合は、理由を確認した上で交渉も可能です。交渉が難しいときは転職も検討しましょう。
特に、下げ幅が大きく生活が厳しいときは、転職した方が良い条件で働ける可能性が高くなります。