欠勤とはどのような休みなのでしょうか?欠勤の意味や、有給休暇・公休など他の休みとの違いについて解説します。欠勤した場合、どのように処理されるのかも併せて見ていきましょう。
欠勤とはどのような意味?
ひと言で休みといってもさまざまな種類があり、扱い方も会社によって異なります。その中でも、欠勤とはどのような休みを指すのでしょうか?
自己都合の急な休み
欠勤とは従業員が何らかの理由で所定労働日に出勤しないことです。ただし法律で定められている休日ではないため、明確に定義が決まっているわけではありません。
一般的には急な体調不良・けが・事故・家族の看護など、従業員本人によるコントロールが難しい理由で、やむを得ず出勤できなくなる場合に欠勤として扱われることが多いようです。
欠勤は労働契約違反
労働者が欠勤し出社しない場合、会社の指揮命令下で働けないため、労働契約違反に当たります。
労働契約法第6条では「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する」と定められています。
この条文によると、労働契約とは社員が会社の指揮命令下で働くことを約束し、会社がその対価として賃金を支払うことです。労働契約において出勤は社員の義務ですが、欠勤は権利ではありません。
他の休みとの違い
休みは欠勤以外にもあります。欠勤とその他の休みはどのように違うのでしょうか?「有給休暇」「公休」「休職」との違いをチェックしましょう。
有給休暇との違い
有給休暇とは労働基準法第39条で定められている、賃金が支給される休みのことです。会社は法律に従って、社員に有給休暇を付与しなければいけません。加えて、1年に5日は従業員に取得してもらう義務があります。
原則として有給休暇を取得するときには事前申請が必要です。申請すれば理由を問わず休暇を取得できます。
欠勤との違いは賃金の支給対象となる点や事前申請する点です。欠勤は原則として賃金が支払われず、また急きょ発生する休みのため事前申請ができません。
公休との違い
公休とは会社が定めた休日のことです。土曜日・日曜日・国民の祝日のほか、会社の創立記念日など、会社が独自に定めた休日も公休に含まれます。
公休日については、社員に出勤義務はありません。あらかじめ決められた会社全体の休日です。
一方で欠勤は個人的な理由で労働者が急きょ休むことであるため、同じ休みであっても、会社全体の休みか、個人的な休みかで違いがあるといえます。
休職との違い
休職とは病気やけがなどで長期的に働けない状態になったとき、労働契約を維持しつつ、一時的に労働義務を免除または禁止する制度です。通常は事前に上司や人事部門と相談し、適切な手続きを行った上で長期間の休みを取ります。
対する欠勤は、休みの期間や理由を説明するタイミングが休職とは異なります。体調不良やけが、家族の病気など、欠勤は急きょ発生するコントロール不能な休みのため、当日、理由を説明するケースが多いでしょう。
欠勤するとどうなる
社員が欠勤すると、賃金はどのように扱われるのでしょうか?処理の仕方と併せて、欠勤した後の対応について見ていきましょう。
原則として賃金は支払われない
働いたら支払う、働かなければ支払わないという「ノーワーク・ノーペイ」の原則は、民法第624条の「労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない」という定めを根拠としています。
ノーワーク・ノーペイの原則により、欠勤するとその分の賃金は支給されません。有給休暇のように賃金の支給を定めている休みではないため、欠勤すると日数に応じて賃金が減る可能性があります。
欠勤控除を適用する
欠勤控除とはノーワーク・ノーペイの原則に基づく考え方で、社員が働かなかった日数分の給与を、所定の給与から差し引くことです。月給制の場合、欠勤控除の金額は所定の賃金と労働日数を基に計算します。
計算式は「欠勤控除額=月の給与額÷月の所定労働日数×欠勤日数」です。例えば月給26万円・所定労働日数20日間・欠勤日数3日間である場合、以下のように計算します。
- 26万円÷20日間×3日間=3万9,000円
欠勤控除として3万9,000円が差し引かれ、22万1,000円が支給される計算です。
有給休暇とするケースもある
会社によっては、欠勤を有給休暇として後日処理できるケースがあります。有給休暇は原則として事前申請が必要ですが、会社の慣習や就業規則次第では事後申請が可能です。
これまでどのように処理されてきているか、後日でも有給休暇にできる旨の記載が就業規則にあるかなどを確認しておくと安心です。
休日出勤や残業との相殺はNG
やむを得ず欠勤したけれど、給与は減らしたくないという場合に、休日出勤や残業で欠勤した分を相殺したいと考える人もいるのではないでしょうか。
しかしながら、相殺による処理はできません。休日出勤手当や時間外手当を支給する必要があるためです。
仮に、1日欠勤したときの8時間分の勤務時間を、毎日2時間ずつ残業して4日間で相殺しようとするケースで考えてみましょう。1日8時間・週40時間以内の法定労働時間を超えて働く場合、会社は社員に時間外手当を支給しなければいけません。
このケースでも2時間×4日分の時間外手当が必要なため、欠勤との相殺は不可能です。
欠勤するときの注意点
急に会社を休まなければいけない事態は誰にでも起こる可能性があります。このとき注意したいのは、周囲への配慮や社会人としての責任です。具体的な注意点をチェックしましょう。
欠勤理由を明確に伝える
欠勤するときには「発熱した」「けがをした」「事故に遭った」など、理由をはっきりと伝えることが重要です。本来であれば出勤しなければいけない日であるため、周囲への配慮として欠勤の理由を伝えます。
またできるだけ早い段階で連絡することも配慮の一環です。前日から具合が悪いなら、その日のうちに伝えておくとよいでしょう。当日の場合でも、休まなければならないと分かったタイミングで連絡します。
無断欠勤を避ける
連絡せずに欠勤する「無断欠勤」を避けることも、注意点の1つです。個人的な理由で休むにもかかわらず連絡をしないでいると、責任感のなさから信用を失いかねません。就業規則に定められていれば、減給されることもあります。
無断欠勤の原因が、事故・天災・メンタルの病気・ハラスメントでない場合には、解雇事由にもなり得るでしょう。
事前に欠勤について知っておこう
欠勤とは個人的な理由で急きょ会社を休むことです。病気やけがなどにより、やむを得ず会社を休まなければならないことは誰にでも起こり得ます。
勤務先によって欠勤の扱いは異なるため、これまでの慣習や就業規則の規定をあらかじめ確認しておくと安心です。
また欠勤したときには、周囲への配慮を忘れないようにしましょう。自己都合による休みのため、早めに連絡し、休みの理由も伝えます。責任感ある社会人として、連絡せずに欠勤する無断欠勤を避けるのもマナーです。