近年、育児と仕事を両立しやすい環境を整えるために、育児休業制度が充実してきました。パパママ育休プラスも、その1つです。制度の概要・申請方法・具体的な適用例のほか、給付金や延長方法などについても解説します。
この記事のポイント
- パパママ育休プラスの内容
- 両親どちらも育児休業を取得することで、1歳2カ月まで休業期間を延長できます。
- パパママ育休プラスの適用例
- ライフスタイルに応じて、「夫婦が交代で」「夫婦が同時期に」「夫婦が間を空けて」「産後パパ育休と併用して」などの取得パターンがあります。
- 育児休業給付金や社会保険料の免除などの制度
- パパママ育休プラスを取得する際も育児休業給付金の受給や社会保険料の免除などが受けられます。
パパママ育休プラスとは?
まずは、パパママ育休プラスの制度の内容について見ていきましょう。取得できる期間など、詳しい仕組みについて解説します。
育児休業期間を延長できる制度
パパママ育休プラスは、父親と母親の双方が取得することによって、育児休業期間を最長で2カ月間延長できる制度です。通常の育児休業の場合、取得できる期間は子どもが1歳の誕生日を迎えるまでですが、この制度を利用すると1歳2カ月まで延長させることができます。
ただし、父親と母親それぞれの育児休業期間が延長されるわけではないので、注意しましょう。制度を利用した場合も、それぞれが取得できる育児休業期間は最大1年間です(妻は出生後の産休8週間を含む)。
なお、制度の対象となるのは、原則として1歳未満の子どもを養育する男女の労働者です。契約社員など期間の定めのある労働者も、条件を満たしていれば取得できます。
出生時育児休業(産後パパ育休)との併用も可能
パパママ育休プラスは、出生時育児休業(以下、産後パパ育休)との併用も可能です。産後パパ育休とは、2022年の改正育児・介護休業法で新設された制度です。
産後パパ育休を利用すると育児休業とは別に、子どもの出生から8週間以内に、父親が最長4週間までの休業を2回に分けて取得できます。
産後パパ育休を取得することで、出産直後から育児に関われるほか、出産後の妻の体調回復をサポートできるのがメリットです。組み合わせて利用することで、父親の育児休業を有効に活用できるでしょう。
パパママ育休プラスの適用例
パパママ育休プラスは、夫婦の働き方やライフスタイルに合わせて取得することがポイントです。取得の適用例を、パターン別に解説します。
夫婦が交代で取得する場合
まずは、夫婦がそれぞれの育児休業期間をずらして、取得する方法を見ていきましょう。夫婦が交代で取得する場合、妻が先に取得するケースと、夫が先に取得するケースがあります。
【妻が先に取得するケースの具体例】
- 妻:出産後8週間の産休を取得→育児休業を取得(最長で子どもが1歳になる前日まで)→夫が取得したタイミングで職場復帰
- 夫:妻が職場復帰するタイミングで交代して取得
【夫が先に取得するケースの具体例】
- 妻:出産後8週間の産休を取得→職場復帰→子どもが1歳になる日より前に夫と交代して取得
- 夫:妻の産休が終了した翌日から取得→妻が取得したタイミングで職場復帰
夫が先に取得する場合、妻の育児休業開始は子どもの1歳になる日より前であることが要件となります。
夫婦が同時期に取得する場合
次に、夫婦の育児休業期間を重ねて取得する方法です。夫婦が同時に休業する場合、期間中の世帯収入が一時的に下がることを、デメリットに感じる人もいるかもしれません。
しかし、2人で育児に取り組むことで、子育ての負担を軽減できるというメリットがあります。特に、双子や第2子の出産など子育てに手がかかり、夫婦の協力が必要な場合に有効です。
【具体例】
- 妻:出産後8週間の産休を取得→育児休業を取得(最長で子どもが1歳になる前日まで)
- 夫:妻の産休が終了した翌日から、任意のタイミングで開始。妻の職場復帰後、子どもが1歳2カ月になる日まで取得
夫が育児休業をスタートさせるタイミングによって、夫婦2人が一緒に育児に取り組む期間が変わります。
夫婦が間を空けて取得する場合
祖父母など、夫婦以外に子どもの面倒を見てくれる人がいる場合は、両親が間を空けて交代で育児休業を取る方法もあります。
【具体例】
- 妻:出産後8週間の産休を取得→育児休業を取得→職場復帰
- 夫:妻の職場復帰後、いったん間を空けて子どもが1歳になる日より前から取得
なお、妻の育児休業期間の開始が1歳の誕生日以前であれば、夫が先に取得し、間を空けて妻が取得することも可能です。
産後パパ育休を併用して取得する場合
産後パパ育休と併用すると、夫が妻の出産後すぐに育児休業を取得し、職場復帰後に再び取得することも可能です。
【具体例.1】
- 妻:出産後、8週間の産休を取得→育児休業を取得(最長で子どもが1歳になる前日まで)
- 夫:出産後、8週間以内に産後パパ育休を取得(最長4週間)→職場復帰→妻と交代し再び取得
【具体例.2】
- 妻:出産後、8週間の産休を取得→育児休業を取得(最長で子どもの1歳になる前日まで)
- 夫:出産後、8週間以内に産後パパ育休を取得(最長4週間)→妻の育児休業と同時期に取得
パパママ育休プラスを取得するには?
ここでは、取得するための条件について確認しておきましょう。併せて、申請に必要な書類も紹介します。
取得条件
取得するには、以下の条件を満たしていることが必要です。
- 両親がどちらも育児休業を取得する
- 子どもが1歳になる日までに夫婦のどちらかが育児休業を取得している
- 本人の休業取得開始予定日が、子どもの1歳になる日より前である
- 本人の休業取得開始予定日が、配偶者の育児休業の初日以降である
法的な配偶者だけでなく、子の認知が行われている場合は事実婚の配偶者に対しても適用されます。なお、育児休業を取得できるのは、雇用されている労働者です。そのため、夫婦のどちらかがフリーランス・個人事業主の場合は、対象外となります。
申請に必要な書類
少なくとも取得開始日の1カ月前までに、取得を希望する旨を申し出る必要があります。申請の際は、以下の書類を用意しましょう。
- 育児休業給付金支給申請書:19欄の「配偶者の育児休業取得の有無」、20欄「配偶者の雇用保険被保険者番号」に記載する。配偶者が雇用保険の被保険者ではない場合(公務員など)は20欄の記載は不要
- 続柄が記載された世帯全員の住民票の写し:事実婚の場合は民生委員の証明書などが必要
- 配偶者が育児休業を取得していることを確認できる書類:育児休業給付金支給申請書に配偶者の雇用保険被保険者番号が記載されており、育児休業給付受給の有無が確認できるときは不要
パパママ育休プラスでも給付金は受給可能
パパママ育休プラスを取得する場合でも、条件を満たしていれば育児休業給付金を受給できます。以下、受給の条件や給付金の金額について見ていきましょう。
育児休業給付金の受給条件
パパママ育休プラスで給付金を受給するためには、育児休業給付金の支給要件を満たしていることが必要です。
- 雇用保険に加入していること
- 1歳未満の子どもの養育のために育児休業を取得していること
- 育児休業取得の開始日前の2年間に、勤務日が11日以上ある月(ない場合は勤務時間が80時間以上の月)が12カ月以上あること
- 育児休業取得中の1カ月の就業日数が10日以下であること
- 有期雇用契約の人は、養育する子どもが1歳6カ月に達する日までに契約が満了することが明らかでないこと
育児休業給付金の金額
育児休業給付金の金額も、通常の育児休業の場合と同じ計算式で求められます。
【支給額計算式】
- 育児休業開始時の賃金日額(日給)×支給日数×67%(育児休業開始後181日目以降は50%)
支給額の算出方法は、夫も妻も同じです。ただし、1カ月に受給できる金額には、支給率に応じた限度額が定められています。
- 支給率67%:上限額31万5,369円、下限額 5万7,666円
- 支給率50%:上限額23万5,350円、下限額 4万3,035円
パパママ育休プラスQ&A
制度を有効活用するために、よくある質問も確認しておきましょう。最後に、取得中の社会保険料や育休期間の延長について解説します。
社会保険料は免除される?
パパママ育休プラスが適用されている期間は、社会保険料が免除されます。月額保険料が免除となるのは、「育児休業を始めた月から、育児休業が終わった日の翌日が属する月の前月まで」です。
【月額保険料例】
- 10月1日〜10月31日(翌日11月1日)まで取得:10月の保険料免除
- 10月10日〜12月10日(翌日12月11日)まで取得:10〜11月の保険料免除
なお、同じ月に育児休業の開始日と終了日がある場合、14日以上取得していれば、社会保険料は免除される決まりです。
また、賞与保険料は、賞与が支給された月の月末を含み、暦日で1カ月以上取得した場合のみ免除されます。
【賞与保険料】
(賞与支払日が7月1日の場合)
- 7月10日から暦日で1カ月以上取得:7月の賞与保険料免除
- 7月10日から暦日で1カ月以下取得:免除なし
育休期間の延長は可能?
1歳2カ月までに保育所が見つからない場合は、以下の条件を全て満たすことで、最長2歳まで育児休業期間を延長できます。
- 育児休業が終了する予定日までに保育所への入所申し込みをしていること
- 保育所の入所希望日が、育児休業が終了する予定日の翌日が属する月であること
- 育児休業が終了する予定日以降、当面保育の実施が行われないこと
また、保育所が見つからないケース以外にも、育児休業の終了予定日に以下のような事由が発生した場合には延長の申請が認められます。
- 子どもの養育を予定していた配偶者の死亡・疾病・負傷
- 子どもの養育を予定していた配偶者との別居
- 子どもの養育を予定していた配偶者が6週間以内(多胎妊娠の場合は14週間以内)に出産予定、または産後8週間以内
パパママ育休プラスを上手に活用しよう
パパママ育休プラスを活用すると、通常子どもが1歳になるまでの育児休業期間を、1歳2カ月まで延長できます。また、通常の育児休業制度と同じように、育児休業給付金の支給や社会保険料の免除などを受けられます。
仕事と育児の両立には、子育てを支援する制度を上手に活用することが大切です。さまざまな適用例があるので、ワークライフバランスやライフスタイルに合わせて活用してみましょう。