「セルフハンディキャッピング」は、一般の人でもやってしまいがちな行動・言動です。基本的な定義や、種類を解説します。デメリットとメリット、克服するためのコツも確認しましょう。どのような例が該当するのか、具体例も紹介します。
セルフハンディキャッピングには2種類ある
セルフハンディキャッピングは、アメリカの心理学者が提唱した「自分で自分にハンデをつける行為や状況の選択」を指す概念です。主な行動・言動には、2種類のタイプがあります。それぞれの特徴と、分類について確認しましょう。
できない原因を作る「獲得的セルフハンディキャッピング」
獲得的セルフハンディキャッピング(acquired self-handicapping)は、本来やらなければならないことがあるときに不適切な行動をしてしまう状態、または努力を放棄する状態です。
自ら積極的にハンデをつけようとするため、「できない原因を作っている」とも見られます。
やらなければならないことがあると衝動的に別のことをしてしまったり、わざと努力を放棄して手を抜いたりといった行為が、主な獲得的セルフハンディキャッピングです。
ハンデがあると発言する「主張的セルフハンディキャッピング」
主張的セルフハンディキャッピング(claimed self-handicapping)は、「自分にはハンデがある」と主張する行動です。実際にハンデをつけているかどうかは問いません。
主張の内容はさまざまです。睡眠不足や体調不良、トラブルの発生など言い訳になる内容を主張し、失敗するかもしれないと予防線を張ります。
わざと自分でトラブルを起こし、その上で主張をするケースもあるでしょう。身体的・精神的な問題だけでなく、「努力をしていない」「勉強をしていない」といった発言も含まれます。
セルフハンディキャッピングのデメリット
自らハンデを生み出すような行為をすると、問題も起こります。具体的に何が問題となるのでしょうか?該当する行動・言動があるときに、起こりがちなデメリットを紹介します。
低評価を招く恐れがある
セルフハンディキャッピングは、周囲からの評価を下げてしまう可能性があります。実際に不適切な行動をしてしまう場合、仕事や勉強が進みません。提出しなければならないものがあれば、間に合わなくなるでしょう。
慌てて間に合わせたとしても、素晴らしい結果にはほとんどならないはずです。最終的に、評価が下がります。
言い訳が多い場合も、評価を下げる原因です。結果が出ていれば問題ないケースもありますが、全員が納得する言い訳を毎回考えられるとは言い切れません。本当に努力しているのか、疑われる可能性もあるでしょう。
信頼感・好感度を下げる恐れがある
不適切な行動や言い訳は、信頼感・好感度を下げる可能性があります。ただし、実際に問題のある行動をしていたとしても、周囲に言わないのであれば知られることはほとんどありません。結果が伴っていれば、特に問題はないでしょう。
問題は、不適切な行動を取ってしまい、著しく結果が悪くなってしまう場合です。毎回提出物が納期に間に合わなかったり、出来上がったものの完成度が低かったりなどの問題が続くと、信頼感を失う可能性はあるでしょう。
言い訳をしてしまうケースでは、「言い訳が多い」「実は万全なのにうそをついているのではないか」と疑われ、信頼感・好感度が下がるリスクがあります。
セルフハンディキャッピングにメリットはある?
自らハンデをつけてしまう行為に、メリットはあるのでしょうか?考えられる利点を紹介します。セルフハンディキャッピングをしていても特に問題が起きていない場合は、メリットの影響が大きいかもしれません。
過度な自信喪失・挫折を防止できる
精いっぱい努力した上でチャレンジし、失敗してしまうと挫折感が大きくなります。自分の能力が足りなかったのではないかと、自信を喪失するきっかけにもなるでしょう。
セルフハンディキャッピングには、「努力を避ける」という面もあります。全力を出さず、何らかの言い訳を用意しておくと、大きな挫折感や過度な自信喪失に陥るリスクが軽減されるでしょう。
挫折感によってつらい思いをしやすい人は、自分の中で言い訳を用意しておく方が、心の安定を保てる可能性もあります。
自分への評価を保てる可能性がある
セルフハンディキャッピングによって「やるべきことを後回しにする」「努力を放棄する」といった行動に出ると、ほとんどの場合素晴らしい結果にはつながりません。
しかし、「事前に何らかの言い訳をする」だけであれば、結果には影響しないでしょう。しっかり結果を出していれば、評価を落とさずに済みます。
また、周囲が「○○のトラブルによって力が出せないかもしれない」という言い訳を信用してくれれば、万が一失敗しても評価に影響はほとんどないでしょう。
セルフハンディキャッピングの具体例
どのような行動・言動が、セルフハンディキャッピングに該当するのでしょうか?行動と言動に分けて解説します。当てはまる場合は、自分でハンデを生み出しているかもしれません。
重要な仕事の前に別の行動をしてしまう例
重要な仕事の前に、以下のような行動をしてしまう場合、セルフハンディキャッピングに該当する可能性があります。
【主な具体例】
- 明日の早朝から出張の予定があるのに、徹夜でゲームをしてしまう
- 重要な会議の前日に、わざと風邪をひきそうな行動を取る
- 納期の直前に遊びに行ってしまい、提出が間に合わなくなる
- 来月査定があるのに、急にやる気がなくなって努力を放棄する
重要な仕事を進める際、本来不都合になるような行動を取る人は少ないでしょう。しかし、無意識に「失敗の原因を自分の能力以外に求めたい」と考えていると、衝動的に別のことを始めてしまいます。
予防的な言い訳の例
セルフハンディキャッピングには、予防的な言い訳もあります。主な具体例を見てみましょう。
【主な具体例】
- 大切な発表の前に「さっきから頭痛がしていて、うまく話せないかもしれない」と周りに伝える
- 仕事の結果が良くないと予想できるときに、「今回は家庭の事情もあって仕事に集中できなかった」と同僚に話す
- 営業の進捗状況を聞かれて、「取引先の担当者がかなり難しい人で、今回は無理かもしれない」と話す
- 普段から「僕はあんまり努力できるようなタイプじゃないんだよね」と公言する
どのパターンも、失敗したときに「体調不良」「やむを得ない事情」「最初から努力をしていない」など、自分の能力以外に原因があると言い訳ができます。言い訳をして、失敗したときの予防線を張るタイプが該当するでしょう。
セルフハンディキャッピングの主な原因
いつも全力を出せなくなるような行動や、言い訳をしてしまう場合、何らかの原因があります。主なケースと、理由を解説します。
自己防衛や過去の経験によるリスク回避
セルフハンディキャッピングをしてしまう原因として、自分を守りたい気持ちや過去の経験が影響しているかもしれません。
やむを得ない事情で全力を出せなかった場合、起こってしまったトラブルが失敗の原因として心に整理がつきます。事前に言い訳をしておくと、周囲に「なぜ失敗したのか」と責められるリスクが下がります。
過去に「やむを得ない事情で失敗しても周囲に理解された」「能力が出せない状況でもそれが当然だと受け入れられた」という経験があると、毎回できない理由を作ってしまう癖がつく可能性があるでしょう。
謙遜の意味で自分を下げている
謙遜や自己否定によって、セルフハンディキャッピングに似た行動をしてしまっている可能性もあります。「とても緊張していてうまく伝えられないかもしれない」のような事前の言い訳は、失敗したときの予防だけでなく、謙遜を表す表現としても出てくるものです。
また、自分を否定してしまう癖がある人も、「自分の能力はそれほど高くないので失敗するかもしれない」といった言動をすることがあります。
謙遜や自己否定で言い訳をするタイプは、周囲から「セルフハンディキャッピングをしている」と見られるかもしれません。実際は努力をしていたとしても、周囲に伝わりにくくなる可能性があるため、避けた方がよいでしょう。
セルフハンディキャッピングを克服するコツ
セルフハンディキャッピングを繰り返すと、評価の低下や周囲からの信頼を失うリスクもあります。克服するために何をすればよいのか、把握しておきましょう。改善のコツを紹介します。
自分自身の成長・能力向上を意識する
自分自身が成長し、能力を向上させたいと真摯に考えていれば、セルフハンディキャッピングを行う必要はほとんどありません。
「失敗の原因はトラブルや体調不良にあると思い込む」「周囲に言い訳をしておき、失敗しても責められないように防衛する」といった行為は、主に他者からの評価を気にしていると発生しやすくなります。
まずは、他者の評価ではなく、自分自身の成長を目的とするようにしてみましょう。純粋に自身の能力向上に目を向けるようにすると、セルフハンディキャッピングも少なくなっていくはずです。
自分の行動を客観的に分析する
自分がセルフハンディキャッピングを行っているかどうか、常に意識しながら行動する人は多くありません。ふと気付くと、大事なときに別のことをしてしまったり、無意識に言い訳のような言動をしてしまったりすることもあるでしょう。
克服したいと考えているのであれば、自分の行動・言動を客観的に分析し、なぜそのような行動をしてしまうのか考えてみることが大切です。自己分析や、自己肯定感を高めるためスキルを身に付けるのもおすすめです。
意識的に「今の行動はセルフハンディキャッピングではないか」と注意していれば、対策が取れます。自分の気持ちを整理し、不適切な行動・言動を取ってしまう原因を突き止めるきっかけにもなるでしょう。
小さな成功体験を積み重ねる
過去の失敗や、努力せずとも成功したという体験が、セルフハンディキャッピングを引き起こしている可能性もあります。努力した上での失敗を過度に恐れている自覚がある場合は、「成功する体験」を積み重ねて不安を取り除きましょう。
急に大きな成功体験を手に入れるのは、難しいかもしれません。努力をして、失敗してしまったときの反動も気になります。
最初は、自分が成功できそうな範囲で、何かにチャレンジしてみましょう。趣味や仕事、日常的な行動など、何でも構いません。
「目標を達成できた」「努力を積み重ねられた」という体験が、自らにハンデを設ける行為を減らしてくれるはずです。
セルフハンディキャッピングを克服しよう
セルフハンディキャッピングには、やるべきことを後回しにするといった行動が含まれます。デメリットも多いため、できる限り改善を心掛けましょう。
セルフハンディキャッピングをしてしまっている自覚がある場合は、意識して自分を変えていく必要があります。
例えば、転職をしようと考えているのになかなか踏み出せなかったり、つい後回しにしてしまう癖があったりするときは、自分の行動を自覚して努力するのがポイントです。
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