「リセット癖」は、近年注目を集めている言葉です。どのような意味を持つ言葉なのでしょうか?基本的な概要と、リセット癖を持っている人の特徴を紹介します。リセットによるメリット・デメリットや、改善の方法も確認しましょう。
「リセット癖」とは何?
主に人間関係を構築する上で、「リセット癖」と呼ばれる行動・心理状態があります。言葉の意味や、リセットをしたくなる原因を探ってみましょう。
前触れなく人間関係をリセットしたくなる
「リセット」は、「最初から全てをやり直す」という意味を持つ言葉です。英語の「reset」とほぼ同じ意味で、一般的には機械の初期化を表す言葉として広まっています。
リセット癖は、「機械の初期化と同じように、最初から全てをやり直そうとする癖」です。主に人間関係を衝動的に断ち切る行動や心理状態を指し、「人間関係リセット癖」や「人間関係リセット症候群」とも呼ばれます。
人間関係以外にも、「今までの結果を突然なかったことにしたくなり実行してしまう」状況も、リセット癖に該当するでしょう。
突然仕事や趣味を辞めてしまったり、電話番号やメールアドレスを変えて関係者と連絡を断ったり、SNSアカウントを削除したりなどの行動が「リセット癖」です。ほとんどの場合、前触れなく急に思い立つケースが多く、周りからは突然姿を消したように見えます。
考えられる原因について
人間関係やそれまでやってきたことを全てリセットしたくなる原因は、さまざまです。一般的には、気の使いすぎや人間関係におけるストレスが関係していると考えられるでしょう。
また、本人の性格・性質的に、全てを最初からやり直したくなる傾向がある可能性もあります。飽き性で新しい関係・環境に興味を持ちやすい、深い関係を築くのが苦手など、性質的な問題も原因として考えられるでしょう。
直接的な関わりや性質とは別に、インターネット・SNSなど人間関係が複雑になりやすいツールを利用する機会が増え、関係の維持に労力を使うために突然リセットしたくなる人が増えているのではないかという考え方もあるようです。
リセット癖を持つ人の特徴
なぜ、人間関係や環境のリセットをしたくなるのでしょうか?リセット癖を持っている人にありがちな特徴を紹介します。
性質を理解し、ストレスがたまらないよう気を付ければ、突然リセットしたくなる衝動を抑えるきっかけになるかもしれません。
自分が好きではない
自分が好きではない場合、すぐに環境を変える癖がついてしまうケースがあります。例えば、素の自分を出せずに無理をしているとストレスがたまり、今の人間関係を断ち切りたい衝動が生まれるかもしれません。
「今の自分に納得できない」というパターンも考えられます。「本来もっと自分は評価されるべきだ」「環境を変えれば良い関係性が築けるかもしれない」と考えて、人間関係をリセットするタイプです。
どのパターンであっても、素の自分を好きになれないままだとリセットを繰り返す原因になります。
1人でいる方が気楽だと感じる
元々1人でいる方が気楽だと感じる人は、不定期に人間関係や環境をリセットしたくなります。特に、無理をして人間関係を継続している人は、不意に全てを断ち切りたくなってもおかしくありません。
普段から周囲に気を使い、1人で過ごしたいと考えているような状況では、ストレスもたまりやすいでしょう。
たとえ友人や知人との関係が良好でも、1人で過ごす時間に強い魅力を感じてしまう場合、突然音信不通になり周囲を驚かせてしまうといった傾向もあります。
完璧主義な面も
完璧主義の傾向があると、「やり直したい」という思いにとらわれがちです。長く関係を続けていくと、ずっと完璧に振る舞えるとは限りません。たまには失敗もあり得ます。人間関係の悪化や、思い通りの結果が出ないこともあるでしょう。
完璧主義の人は、失敗した事実を受け入れたくありません。失敗した自分を見られたという恥ずかしさや、失敗の事実を消したいという気持ちから、人間関係をリセットしたくなります。
全ての関係を断ち切って新しい環境をつくると、これまでの失敗や悪い結果を知られることはほとんどありません。嫌なことや失敗がある度に、転職や引っ越しを重ねてしまうケースが該当します。
人間関係をリセットするメリット
人間関係を断ち切る選択は、多くの人が日常的に直面するものです。人間関係のリセットには、メリットもあるのです。主なメリットとその特徴を紹介します。
合わない相手との縁を切れる
合わない相手と出会ってしまった場合、人間関係をリセットすると縁を切れます。嫌な人と関わらずに済む点は、メリットです。
1対1の関係性であれば該当する人との関係を切るだけで問題ありませんが、ほとんどの場合そういうわけにはいきません。
例えば、仕事関係の相手であれば、仕事を辞めたり、間接的な知り合いと連絡をしないようにしたりといった行動も必要になってきます。完全に縁を切ると広範囲に影響を及ぼすことがあり、これが人間関係の完全なリセットにつながることがあるでしょう。
新しくやり直す機会ができる
「トラブルによって評価が下がってしまった」「人間関係の構築がうまくいかなかった」という場合、新しい環境でやり直しができるのは大きなメリットです。
良好な人間関係は残しても問題はありませんが、関わりが薄くなると自然に疎遠になっていきます。新しく築いた人間関係が優先され、結果的にこれまでの関係が全てリセットされる可能性もあるでしょう。
新しく出会った人は、今までの評価や人間関係を知りません。うまく付き合っていこうとする気持ちがあれば、やり直しもしやすいでしょう。
人間関係をリセットするデメリット
人間関係のリセットには、デメリットもあります。特に、癖のように繰り返してしまうと、デメリットの部分が強くなるでしょう。リセットを繰り返した場合に陥りやすい状況と、デメリットを解説します。
深い人間関係を構築できない
全ての人間関係をリセットする場合、長い付き合いの人がいなくなります。短期間では、なかなか深い人間関係を構築できません。良好な関係を築いても、再度リセットするとゼロからやり直しです。
一部の人間関係が残っている場合であっても、仕事や趣味が次々に変わると、関わる機会は少なくなります。
コミュニケーションに不安がないとしても、浅い関係性の相手が増えると、気軽な頼み事や交流は難しくなるかもしれません。
孤立してしまう
人間関係のリセットを繰り返すと、親しい相手がいなくなり孤立を招く可能性があります。新しい環境で、毎回必ず気が合う人とコミュニケーションが取れるとは限りません。
1人が気楽で困っていないとしても、孤立によるデメリットはあります。友人・知人・身内などを緊急連絡先として設定してほしいと依頼されても、誰もいない場合答えられなくなってしまいます。
急なトラブルで代理を頼みたいときも、親しい相手が誰もいない状態であれば、難しくなるでしょう。
リセット癖を直す方法はある?
人間関係や環境のリセットを繰り返してしまう場合、治すことはできるのでしょうか?改善のためにできる対策を紹介します。
1つのコミュニティに固執しない
人間関係や環境を完全にリセットする行為は、特定のコミュニティにのみこだわると発生しがちです。居場所を複数持っていると、息抜きができる瞬間もあります。息抜きの手段があれば、ストレスもたまりにくいでしょう。
コミュニティの狭さも、リセット癖につながっているかもしれません。関わる人数が少ないほど、1人に対する思いが深くなり、固執してしまいます。ちょっとしたトラブルでも深刻に捉えてしまい、全てを断ち切りたくなるでしょう。
できるだけ多くの関係性を持ち、1つの場所で小さなトラブルが起きても動揺しない環境をつくっておくことが改善につながります。
嫌なこと・不安は紙に書き出す
全てをリセットしたくなるほどの気持ちは、不安から生まれている可能性もあります。嫌なことがあると衝動的にリセットしたくなったり、不安が積み重なってストレスがたまってしまったりという場合は、「自分の不安を客観的に考える対策を取る」のがおすすめです。
まず、嫌なことや不安は、紙に書き出してみましょう。気持ちが落ち着くまで待ち、時間を空けてから再度書いたものを確認するのも有効です。
原因となっている状況を客観的に見ると、冷静になれます。冷静になると、「全てをリセットするほどではない」と気付くこともできます。問題の解決策を考えるきっかけにもなるでしょう。
相談できる人をつくる
相談できる相手がいると、嫌なことがあったときや、人間関係に疲れたときに話を聞いてもらえます。落ち着いて考える時間ができ、本当の原因を探るきっかけにもなるでしょう。
しかし、すでにリセット癖がある場合、人間関係を切ってしまっているため、簡単に相談相手が見つかるとは限りません。
友人・知人への相談が難しい場合は、身内や心理関連の相談に乗ってくれる施設に頼るのもよいでしょう。そのほか、仕事関係のハラスメントの場合、社内・社外の相談窓口もあります。
生活サイクルを見直す
「気分が落ち込む」「衝動的な行動に出てしまい後悔する」というケースが増えている場合は、生活サイクルの見直しも検討しましょう。
ストレスがたまると、人間関係や仕事に対してネガティブな気持ちになる可能性もあり、リセット癖につながっているかもしれません。
もし睡眠不足や乱れた食生活など、心当たりがある場合は改善を心掛けましょう。仕事がハードで生活が乱れやすい場合は、ワーク・ライフ・バランスの取れる職場へ転職を検討してもよいかもしれません。
リセットではなく状況に合った選択を
リセット癖は、衝動的に人間関係・環境などを変えたくなり、実際に行動してしまう癖を指します。何かある度に転職を重ね、関わった人たちとの関係を切ってしまうと、そのうち孤立してしまう可能性もあるでしょう。
「今すぐ仕事を辞めたい」「今の人間関係を全部断ち切って新しい環境に変えたい」と思う癖がある場合は、本当にそうするべきなのかじっくり考える時間を設けることをおすすめします。
どうしても今の環境に耐えられない、人間関係が悪化していて改善の見込みがないといったケースでは、転職によって環境を変える選択も可能です。じっくり考えてみても環境を変えたい場合は、「スタンバイ」で新しい仕事を探してみるのもよいでしょう。