面接マナーの基本。好感を持たれる自己紹介やよく聞かれる質問を紹介

面接で好印象を与えるためには、入念な対策が不可欠です。事前にやっておくべきことや基本マナーを知っておけば、スムーズに準備を進められるでしょう。よく聞かれる質問や適切な回答、好感を持たれるマナーなど、面接対策の必須知識を紹介します。

面接前に準備をすること

手帳を片手にパソコンを操作する人

(出典) photo-ac.com

面接前の準備ではどのようなことをしておけばよいのでしょうか。不安を解消できる代表的な準備について解説します。

企業・仕事内容について再確認

面接を受ける前に、企業や業界の情報を再確認しておきましょう。面接では応募者に関することだけでなく、企業や業界について質問されることもあります。

面接先のコーポレートサイトには必ず目を通し、企業理念や経営戦略などについて掲載されている情報を頭に入れておくことが重要です。社長や役員のブログ・SNSがある場合は、読んでおけばより深く理解できるでしょう。

求人情報で仕事内容の詳細を再確認する作業も必須です。企業が応募者に求める資格・適正・経歴を確かめておけば、面接で聞かれそうな内容の傾向を予想できます。

持ち物や服装のチェック

面接に持っていくかばんは、黒や紺など落ち着いた色のビジネスバッグにしましょう。スマホで時間を確認するのは印象を悪くしかねないため、腕時計を用意しておくとよいでしょう。

応募書類が必要なら、封筒に入れてクリアファイルに挟んで持参します。筆記用具は企業側が用意してくれることもありますが、自分でも持っておいたほうがよいでしょう。

面接時の服装は、特に指定がなければ性別にかかわらずスーツが基本です。その場合、グレーや紺などのオーソドックスな色が好印象です。

見た目で最も気を付けたいポイントは清潔感です。シャツのシワやパンツの折り目、髭や爪といった部分で、清潔な印象を与えられるように準備する必要があります。

面接で好感を持たれる基本のマナー

椅子に座るスーツ姿の男女の足元

(出典) photo-ac.com

企業は面接時のやり取りだけでなく、あらゆる角度から応募者をチェックしています。どこにいても好感を持たれる基本マナーを知っておくことが大切です。

余裕を持って到着をする

時間厳守は社会人として最低限の常識です。面接時間の15分前を目安に余裕を持って到着しておきましょう。

交通渋滞が予想されるケースでは、会場の近くまで早めに移動しておくのが理想です。渋滞で遅刻した場合、対策を取らなかったことで印象を悪くしてしまう恐れがあります。やむを得ず遅刻しそうな状況なら、早めに連絡を入れましょう。

早過ぎる到着も企業に迷惑をかけかねません。会場の準備ができていない場合、企業側に気を遣わせてしまうことがあるためです。早く到着した場合は、会場の近くで時間をつぶしましょう。

受付や控え室での態度も要注意

面接会場では既に見られていることを意識しなければなりません。会場に到着したら改めて身なりを整え、受付では面接に来た旨や自分の名前をはっきりと丁寧に伝えましょう。

移動中に企業の社員と会ったときは、わざわざ呼び止めて挨拶したり話しかけたりする必要はありませんが、無視せず軽く会釈をするのがよいでしょう。

控え室での態度にも注意が必要です。喫煙は控えスマホの電源を終始オフにしておきましょう。出入り口付近の下座に着席し、かばんはテーブルやいすではなく床に置くのがマナーです。

話し方や表情も意識する

面接時では話す内容だけでなく話し方も意識しましょう。話す際はハキハキとした声で聞き取りやすい適度な速さで話すのがポイントです。声が小さくなったり早口になったりすると、伝えたいことが伝わりにくくなってしまいます。

正しい言葉遣いや適切な敬語を使うことも重要です。質問をよく聞いた上で、やり取りがしっかりと成立するように返答しましょう。

表情も気を付ける必要があります。目線を落としたり険しい表情になったりすると、自信がないなどマイナスの印象を持たれてしまいかねません。

目線は面接官に向け会話の内容に相応しい表情を意識しましょう。場面に応じた笑顔は好印象を与えます。

面接の入室・退室方法

ドアノブに手をかけている

(出典) photo-ac.com

面接室の入室時と退室時は、それぞれにマナーがあります。ビジネスシーンでも使える入退室の正しいマナーを押さえておきましょう。

面接の入室方法

面接室に入る前に、3回ノックをします。面接以外のシーンでも、日本では一般的に入室時のノックは3回、空室確認時は2回といわれています。

ノック後に返事が聞こえたら、「失礼いたします」と言ってからドアを開けます。入室後は後ろ手ではなく、ドアの方を軽く向いて静かにドアを閉めましょう。

ドアを閉めた後は面接官に向き直り、「よろしくお願いいたします」と述べて約30度のお辞儀をします。いすの横に移動し、姿勢を正して立ったまま待ち、声がかかったら約15度のお辞儀をしてから浅めに腰掛けましょう。かばんはいすの横に置きます。

複数のいすがあるケースでは、出入り口から最も遠い位置にあるいすが上座です。指示がない場合は下座のいすを選びましょう。

面接の退出方法

面接終了後はいすの横に立ち、「本日はお忙しい中お時間を割いていただきありがとうございました」と述べ、約45度の深いお辞儀をします。

ドアの前まで移動したら面接官に向き直り、「失礼いたします」と述べて再度約45度のお辞儀をしましょう。全てのお辞儀では、顔を上げた後に面接官と目を合わせます。お辞儀をした後はドアを開けて退出し、静かに閉めましょう。

面接が終わった後はほっとするため、気が抜けてしまいがちです。退出時まで面接官に見られていることを忘れずに、緊張感を保ったまま振る舞いましょう。

面接でよく聞かれる基本の質問

履歴書とボールペン

(出典) photo-ac.com

面接では面接官からさまざまなことについて質問を受けます。よく聞かれる代表的な質問の種類と回答について紹介します。

自己紹介

面接が始まると、最初に自己紹介を促されるのが一般的です。自分の強みをアピールする自己PRと違い、自己紹介はあくまでも自分の情報を伝えるために行います。

自己紹介で伝えるべきことは、氏名・職歴・実績、現在(もしくは退職前)の所属企業や職種などの基本情報です。最後に締めの言葉を述べ、トータルで1分程度にまとめます。

それぞれの項目はできるだけ手短に伝えるのがポイントです。実績を盛り込む場合は、単なる自慢話で終わるようなことではなく、仕事とのつながりが分かる経験を述べましょう。

志望動機

企業に入社したいと思ったきっかけを問うのが志望動機の質問です。志望度の高さや応募者のキャリアプラン、ミスマッチはないかなどを確認する目的もあります。

志望動機を説明する際に重要なのが、企業を選んだ根拠です。企業の特徴と自分の経験、将来のビジョンを結び付け、ビジョンを抱いた理由も説明し熱意を伝えます。

志望動機の質問では、企業についてどの程度知っているのか聞かれることもあるため、企業研究をしてしっかりと頭に入れておきましょう。

自己PR

自己PRの質問では、応募者のスキルが企業に適しているかを判断します。具体例を通して応募者の性格や考え方を知ることも自己PRの質問をする目的です。

自己PRでは多くの強みを浅く紹介するより、特定の強みを掘り下げて説明する方が、志望度の高さを伝えやすくなります。

強みの説明内容は、主張・根拠・具体例の順で構成しましょう。強みに関連したエピソードを具体例で詳しく示せば、スキルや人柄、価値観を分かってもらいやすくなります。

自己PRの内容を考える際は、企業が求めている人物像を把握して、それと照らし合わせて強みをアピールすることで高評価につながります。

前職の退職理由

前職の退職理由を質問する面接官は、「すぐに辞めないか」「真剣に仕事をしてくれるか」といったことを知りたいと考えています。質問に答える場合は、嘘をついたり前職や前職場の否定をしたりするのではなく、前向きな理由を伝えることが大切です。

転職回数が多い場合は、高確率でその理由を聞かれるでしょう。転職を繰り返している事実は認めた上で、これまでのキャリアに一貫性があることを説明するのがポイントです。転職を繰り返していることを、前向きな理由で説明しましょう。

待遇や勤務条件

希望年収を聞かれた場合、特に年収にこだわりがない場合は現在の年収を伝え、希望の年収がある場合は根拠も併せて伝えましょう。

残業や休日出勤ができるか問われたら、可能な範囲で正直に伝えることが重要です。

転勤が可能かどうか聞かれた場合は自分の意向を伝え、条件付きで可能な場合は「介護をしているため通勤できるエリアなら可能」などのように、理由を添えて伝えます。

面接の回答に困る質問例と対策

バインダーに挟んだ用紙に記入する人

(出典) photo-ac.com

面接官に聞かれる質問の中には、回答しにくいものも含まれることがあります。主な質問例と適切な答え方を知っておきましょう。

自分の短所

「短所を教えてください」と聞かれたら、長所にもつながるような返答をするとよいでしょう。例えば、「こうだと決めた物事に対して、時間を忘れて熱中してしまうことがある」という答えは、言い換えると集中力があることにつながります。面接官に悪い印象だけが残るような短所は選ばないようにしましょう。

自分の短所を述べる際は、結論・エピソード・改善策の順に説明しましょう。改善に向けて努力していることを説明しながら、最後は前向きな発言で終わることが大切です。そうすると、自分を客観的に分析できていることや、自分の傾向・対策が分かっていることを伝えられます。

なお、「短所はありません」と答えるのはNGです。

ほかの企業の選考状況

ほかにも面接を受けている企業があるか聞かれた場合は、企業数や選考状況を正直に答えても構いません。ただし、自分から他社の企業名まで伝えるのは控えましょう。

数社に応募していることを述べた上で、会社選びに一貫性があることも説明すれば、手当たり次第に応募しているわけでないことが分かってもらえます。

「他社から内定をもらった場合に当社のオファーは辞退しますか?」と質問されたら、「御社が第一志望です」と答え、第一志望ではない場合でも、面接では前向きな姿勢を見せることが重要です。

プライベートについて

「最近はどのようなことに関心がありますか?」「趣味を教えてください」といったプライベートに関する質問は、形式的な回答しかしない応募者の本音を引き出そうとしている可能性があります。

できるだけ自己PRにつながる内容を伝えましょう。自慢話になったり極端な考え方を伝えたりするのはNGです。

出生地・人生観・家庭環境・尊敬する人物などを聞かれた場合、無理に答える必要はありません。本人に責任がないことや本来自由であるべきことは、面接で聞くべきではないと厚生労働省がルール化しています。

面接終盤の逆質問例

面接を受けるスーツ姿の女性

(出典) photo-ac.com

応募者の意欲を知る目的や、コミュニケーション能力を確認する目的で、面接の終盤に「何か質問はありますか?」と逆質問を受けることがあります。応募者が逆質問で聞くべき内容と避けるべき内容を確認しましょう。

入社後に求められる能力

逆質問では、事前に企業が求めている能力について調べておき、その中で入社後に業務で必要となる具体的な能力を聞くのも一つです。入社までに必要な能力を高めておきたい意欲を伝えられるため、志望度の高さをアピールできます。

質問する際は、自分の強みの話を交えると能力や実績を再認識してもらえ、面接官によい印象を持ってもらえる可能性があります。

逆質問の機会を自己PRにもつなげましょう。

企業の展望

企業が考えている今後の事業戦略を聞くのもよいでしょう。企業の展望と自分のビジョンを照らし合わせれば、入社後にキャリアアップが可能か確認できます。

事業戦略と絡めて人事戦略や職場改革の方針も聞くことで、福利厚生や残業時間などを事前にチェックできる場合もあります。

企業の展望を聞く際は、質問だけで終わらず面接官からの回答を受けた後に自分の意欲を伝え、会社に貢献できる人材であることをアピールしましょう。

NGな逆質問

事前に調べれば分かることを逆質問で聞くのは避けましょう。事前に企業研究を行っていないことが明らかになってしまうため、入社意欲を疑われてしまいます。

逆質問ではコミュニケーション能力も見られています。「はい」「いいえ」で終わる質問よりも、面接官から有意義な情報を得ることができる質問をするのがよいでしょう。

給与や福利厚生について質問するのも避けた方が無難です。待遇だけを気にしているのではないかと思われると、印象が悪くなってしまいます。

面接後にメールを送る場合

スマホを片手にキーボード操作をする人

(出典) photo-ac.com

面接後はお礼メールや辞退メールを送るケースもあるでしょう。それぞれのポイントや例文を紹介します。

お礼メール

企業へ送るお礼メールは、必ず送らないといけないものではありません。しかし、面接の機会を設けてくれた感謝の気持ちを伝えることで、好印象を持ってもらえる可能性もあります。お礼メールを送る場合の例文は次の通りです。

 

件名:【営業部希望 (氏名)】本日の面接のお礼

△△株式会社 総務人事課 □□様

お世話になっております、本日面接をしていただきました(氏名)と申します。

本日は面接のお時間を割いていただき、ありがとうございました。

□□様のお話を伺い、貴社の質の高いサービスを理解でき、改めて貴社への入社意欲が高まった次第です。

取り急ぎ、面接のお礼を申し上げたく、メールをいたしました。ご多用と存じますので、ご返信は不要です。本日は誠にありがとうございました。

辞退メール

面接後に辞退を伝える場合は、電話とメールのどちらでも構いません。メールで伝えるならできるだけ早く送りましょう。

当日中に見てもらえるよう、先方の営業時間内に送信するのがマナーです。書き方の参考になる例文を下に紹介します。

 

件名:【内定辞退のご連絡】(氏名)

△△株式会社 人事担当 鈴木様

この度、内定のご連絡をいただきました(氏名)と申します。

先日は面接のお時間をいただき、誠にありがとうございました。

お時間をいただいたのにもかかわらず、この様なご連絡になってしまい大変心苦しいのですが、この度の内定を辞退させていただきたくご連絡を差し上げた次第です。

総合的に検討させていただいた結果、辞退の結論に至りました。どうぞご了承くださいますようお願い申し上げます。

末筆ながら貴社のご発展を心よりお祈り申し上げます。

 

 

万全の態勢で面接に挑もう

3人の面接官と女性

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転職の面接でよく聞かれる質問は、自己紹介・志望動機・自己PR・退職理由・待遇です。自分の短所や他の企業の選考状況など、回答しにくい質問を受けることもあります。

好印象を与えるためには、逆質問の対策も練っておかなければなりません。事前の準備やシミュレーションをしっかりと行い、万全の態勢で面接に挑みましょう。

寿マリコ
【監修者】All About ビジネスマナーガイド寿マリコ

コミュニケーションでまごころを伝える、ビジネスマナーの専門家。池坊短期大学教授。日本女子大学大学院人間社会研究科博士課程修了。勤務校でビジネスマナーやコミュニケーション、就職の面接対策講座を担当。企業や官庁関連機関で就労支援講座を行う。
All Aboutプロフィールページ

著書:
VUCA時代をよりよく生きるためのキャリア形成とコミュニケーションスキル(ナカニシヤ出版)
心地いい人がしている、人づきあいに役立つ習慣術(ぱる出版)
新社会人のためのビジネスマナー講座(ミネルヴァ書房)