退職は何日前までに伝えるべき?交渉をスムーズに進めるコツを紹介

退職の意思は、何日前までに会社に伝える必要があるのでしょうか?転職先の都合で、入社日まで間がないケースもありえます。退職の意思を伝える時期の目安や、伝え方を見ていきましょう。また引き止めにあったときの対処法や、交渉のコツも解説します。

退職は何日前までに連絡が必要?

カレンダーを見ながら退職届を用意する

(出典) photo-ac.com

退職を考えている場合、いつ上司に伝えればよいのでしょうか?転職先が決まってからの報告で間に合うのか、主な目安と法律上の取り決めを解説します。何日前までに退職の意思を伝えるべきなのか、知っておきましょう。

法律上は原則14日前まで

従業員が退職を希望する場合、民法では14日前までの報告を義務づけています。遅くとも14日前までには、退職の希望を伝えましょう。

なお、やむを得ない事情がある場合や、会社と従業員の間で同意がある場合は日数を問わず法律違反にはなりません。

お互いが同意していれば、当日中でも退職は可能です。会社は法律上、14日以上の引き止めはできませんが、突発的な退職は上司や同僚に迷惑をかけてしまいます。お互いの都合を考えた上での相談が大切になるでしょう。

参考:民法 | e-Gov法令検索

就業規則でルールが異なることも

会社の就業規則で、退職を何日前までに報告するか決まっているケースもあります。就業規則がある場合、法律とどちらが優先されるのでしょうか?

基本的には法律が優先されますが、常識的な範囲では、就業規則が有効となる可能性もゼロではありません。とはいえ、6カ月前、1年前など、従業員に対する制限が過剰に大きい場合は無効と考えられるでしょう。

どちらにしても、退職・転職時には社会保険の切り替えなど必要な手続きがあります。会社とトラブルになると手続きがスムーズにできない可能性もあるため、可能な範囲で就業規則を守るよう努力しましょう。

契約社員も同じ流れなのか?

就業規則を見せる女性

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契約社員は、あらかじめ期間を定めて雇用されています。途中での契約終了は、可能なのでしょうか?退職できるケースと、有期雇用に特有の手順を解説します。まずは、どのような契約になっているか、契約書を確認しましょう。

原則契約期間中の退職はできない

契約社員などの有期雇用者は、契約期間が1年以内の場合だと、原則的に契約終了まで退職できないルールになっています。特別な事情がない限り、一方的な退職はできません。

このとき、万が一会社側が訴える自体にまで進むと、損害賠償の請求もありえます。契約途中での退職は、きちんと会社に同意を取りましょう。または、契約終了日以降を退職日として申し出ます。

契約期間が1年を超える場合は、1年が過ぎた時点でいつでも退職できるルールです。雇用契約の内容と、契約開始から1年を超えているか確認しておきましょう。

契約を更新しない意思表示が必要

契約社員の場合、更新ごとに契約更新手続きを行います。契約終了に合わせて退職を考えている場合は、契約更新をしない旨を会社に伝えておきましょう。

伝える時期は、法律で定められている14日以上前か、就業規則を確認します。契約社員向けのルールが設定されている場合もあるため、会社への確認が確実です。

会社側としては契約更新を考えている可能性があります。トラブルを防ぐためには、早めの申し出が望ましいでしょう。

退職を伝える相手と方法

上司に相談する社員

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会社では、誰に退職の意思を伝えるべきなのでしょうか?一般的な相談相手と、伝え方を紹介します。特別な事情がない限り、直接会って話をするのがマナーです。メールや電話で済ませることがないよう、注意しましょう。

最初に退職意思を伝えるのは直属の上司

会社では、直属の上司が部下を管理しています。勤務スケジュールや人員配置も、直属の上司が管轄しているはずです。

退職の意思は、まず直属の上司に伝えましょう。会社の上層部や人事部に話すよりも、現場の状況をより深く把握している直属の上司の方が、退職時期の相談や、引き継ぎのスケジュールも話しやすいでしょう。

直属の上司へ相談する前に同僚や他の役員などに退職について話すと、トラブルの原因になる可能性もあります。

出勤時や退勤前に上司に声をかけ、時間を取ってもらえるタイミングで退職の意思を伝えます。

意思表示は口頭でも認められる

原則、退職の意思表示は口頭で問題ありません。意思表示をした段階では、会社側から引き止めや退職時期の延長を打診される可能性もあります。まずは口頭で話すだけでも、大きな問題はないでしょう。

ただし、就業規則で書類の提出が決まっている場合、退職希望を伝えるときに書類提出も必要です。どちらにしても、「退職の希望を聞いていない」といったトラブルを防ぐために、最終的には文書で意思表示することが望ましいでしょう。

退職届を提出した記録が残っていれば、退職日の予定や退職の意思を伝えた日付が分かります。お互いの勘違いでトラブルにならないよう、なんらかの書類を渡すことやメールを送るなど考えましょう。

退職までの流れ

退職届と社員証

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退職までにどのような流れで交渉や準備をするのか、具体的なタイムスケジュールと手順を見ていきましょう。ただし、仕事内容や自分と同じ仕事に携わる従業員の有無など、状況によっても引き継ぎにかかる時間は変化します。

上司と相談し退職日を決定

退職の意思を伝えるのは、法的には14日前までに伝えれば問題ありませんが、退職希望日の2~3カ月前など、可能な限り早めであるほうが双方にとって良い場合もあります。2~3カ月あれば、業務の引き継ぎや、残った有給休暇の消化などが問題なく行えることが一般的なためです。また、就業規則で決まっているなら、会社のルールに合わせます。

上司に相談する際は、退職時期をはっきり伝えておきましょう。特に転職が決まっている場合は、両方の都合を確認した上で退職日・入社日を確定すると、トラブルを防げるでしょう。

退職届を作成し提出

退職予定日が決まったら、退職届を作成します。遅くとも退職の2週間前までには、提出を済ませておきましょう。法律では退職届の正式な書き方は決められていませんが、就業規則でフォーマットに指定がある場合は規則に従います。

退職届の提出先は、上司または人事部です。退職の相談をするときに、提出先を確認しておきましょう。

退職届の文面は、下の通りです。白封筒も準備し、封筒の裏面には自分の名前を記入しましょう。

退職届
私儀
このたび、勝手ながら、一身上の都合により○年○月○日をもって、退職いたします。

以上

○年○月○日(提出日)

部署名
名前(押印)

会社名
代表取締役 社長 ○○殿

退職の準備と業務の引き継ぎを行う

退職の意思を伝え、予定を決めたら準備を始めましょう。退職前の主な準備は、引き継ぎ作業です。

新しく業務を行う担当者に、手順や業務内容を伝えます。普段の業務の合間に、マニュアルを作成しておくとよいでしょう。

そのほか、取引先や社内に退職を伝えておく相手がいればあいさつをします。引き継ぎにかかる時間は会社や業務内容によって異なりますが、基本的には1〜2カ月で終わるようスケジュールを組んでおきましょう。

普段の業務をこなしながら引き継ぎをするため、退職までは忙しくなります。有給休暇を消化する場合は取得日数も考慮して、具体的な日程を考えましょう。

引き止めにあった場合はどうする?

資料を見せながら話をする社員

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退職の意思を伝えて、引き止めにあった場合はどう対処すればよいのでしょうか?引き止めの方法によって、対応は変わります。それぞれのケースについて見ていきましょう。

年収アップや異動を打診された場合

待遇改善を条件に引き止めにあった場合、具体的な内容を確認することが大切です。退職をあきらめてから、実際の条件が守られないと大きな問題になります。

正式に契約が行われるのかという点も重要です。口約束では、「努力はしたけれど改善が難しかった」と、現状のままになるケースもありえます。一時的なボーナス支給や異動が実現したとしても、好待遇がずっと続くとは限りません。会社の姿勢を見極め、条件がよい場合は退職を取りやめる選択もできます。

必要な人材だといわれた場合

退職を申し出たときに、「高く評価しているから辞めないでほしい」と訴えられる場合もあります。誰でもほめられると気分がよくなるはずです。

しかし、退職の意思が固まっている場合は、心を動かされないように注意しましょう。上司の評価が原因で退職を決めたのでない限り、評価が変わっても大きな変化はありません。

退職を思いとどまったとしても、具体的な待遇改善や働きやすさにつながらない場合もあります。自分の考えをもう一度振り返り、気持ちが変わらないなら退職の旨をはっきり伝えることが大切です。

強引な引き止めにあった場合

強引に引き止められた場合は、第三者への相談を検討しましょう。法律上、有期雇用を除いて14日以上前に退職の意思を伝えた場合は、自由に退職できることとなっています。

退職届の受理を拒否しているのが直属の上司の場合は、本社や人事部など別の部署に相談しましょう。会社自体が退職を拒否している場合には、労働基準監督署や弁護士にも相談できます。

どうしても会社が認めない場合は内容証明で退職届を提出し、証拠を作っておきましょう。法律上、意思を伝えた14日後に労働契約が終了します。会社との話し合いが基本ですが、難しい場合は第三者を交えて話すのも有効です。

退職交渉を円滑に進めるコツ

スマホとスケジュール帳

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退職の交渉は、申し出る時期や退職理由によってスムーズに進む可能性があります。できるだけ会社とトラブルにならないように退職するには、どのようなスケジュールを組むとよいのでしょうか?一般的な例を紹介します。

繁忙期を避けたスケジュールにする

会社からの引き止めを避けるには、早めの告知と繁忙期を避けた日程を選ぶのがおすすめです。繁忙期に社員が抜けると仕事が回らなくなることもあるため、退職日の延長を打診される可能性が上がります。

普段の業務に加えて引き継ぎ作業で仕事が増えると考えると、退職する側にとっても繁忙期の退職はデメリットがあるでしょう。引き継ぎをしっかり行うためには、時間が取りやすい時期を選ぶのが最適です。

早めの告知と引き継ぎに時間をかけることは、会社からの印象アップにもつながります。上司や同僚への気遣いが、円満退職を可能にするはずです。

スケジュールに余裕を持って退職日を決める

前章でも書いたように、退職の相談を早いうちにしておくと、会社側も準備ができます。可能であれば、できるだけ早く申し出ましょう。

引き継ぎ期間や新しい人材を確保する時間があれば、無理な引き止めにあう可能性も少なくなります。

納得感のある退職理由を用意する

退職の理由を聞かれたら、なるべく相手が受け入れやすい理由を答えましょう。転職の場合は、「新しいジャンルの仕事に挑戦したい」といった、現職では実現できない前向きな理由が適しています。

そのほか、引っ越しを伴うケースや家庭の事情が影響している場合は、会社側も無理に引き止めにくくなります。事実であれば、やむを得ず退職することを伝えましょう。会社の悪口や、待遇に不満があるなどの理由は避けた方が無難です。

待遇に不満があるといえば、改善を条件に引き止めにあう可能性があります。会社の悪口で相手が気を悪くすると、引き継ぎや有給休暇の取得に支障が出る恐れもあるでしょう。

有給休暇を消化したい場合は最初に共有

有給休暇の取得は労働者の権利ですが、退職前の取得はあらかじめ相談しておきましょう。有給休暇の取得によって、引き継ぎのスケジュールや退職日に影響する可能性があります。

退職の相談時に有給休暇を取得したいことを伝え、上司の同意を取っておきましょう。もし上司が拒否する場合は、ほかの部署や役職者に相談する方法もあります。

有給休暇が取得できれば、転職の準備もしやすいでしょう。なるべくトラブルを避けるために、会社とスケジュールについて話し合うことが大切です。

スケジュールに余裕を持ち退職を伝えよう

退職届を準備する

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退職を伝える時期は、法律で退職日の14日以上前と定められています。しかし、引き継ぎや有給休暇の取得を考えると2~3カ月前が目安です。やむを得ない事情を除いて、早めに報告することで、会社に迷惑をかけず円満に退職できます。