入社した企業に生理休暇があるなら、制度の仕組みを理解することが重要です。取得条件や理由の伝え方のコツを押さえておけば、利用時の不安を解消できるでしょう。生理休暇を取得できる条件や、取得時の注意点について解説します。
この記事のポイント
- 生理休暇とは
- 生理休暇とは、生理による症状がつらくて働けない女性のために設けられている法廷休暇です。
- 有給扱いになる?
- 生理休暇は、有給・無給の扱いについて法律で特に決められていません。生理休暇が有給になるかどうかは、職場の方針次第です。
- 生理休暇を利用できる条件
- 生理休暇は本人からの申請のみで取得でき、取得日数の制限はありません。時間単位や半日単位で取ることも可能です。
生理休暇とは
生理休暇という制度の存在は知っていても、内容を詳しく把握していない人は多いかもしれません。まずは生理休暇の基本を押さえて、使うときの参考にしましょう。
生理によって就業が困難な女性に対する措置
生理休暇とは、生理による症状がつらくて働けない女性のために設けられている休暇のことです。月経で仕事をすることが困難な女性であれば、誰にでも認められています。
生理休暇は正社員だけに認められている権利ではありません。契約社員・パート・アルバイトなど、非正規雇用労働者でも請求できます。
ただし、生理であるという理由だけで、必ず休みを取れるわけではありません。生理の症状がつらすぎて、どうしても仕事ができないケースでのみ利用できると覚えておきましょう。
労働基準法で規定されている
生理休暇は、労働基準法の第68条にはっきりと書かれているものです。条文を確認しておきましょう。
(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)
第六十八条 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。
会社の就業規則に生理休暇の項目がない場合も、従業員が請求したら会社側は拒否できません。休暇を与えなければならないことが法律で義務づけられているためです。
実際は使っていない人が多い?
生理休暇は働く女性に与えられた、れっきとした権利です。しかし、生理時の体調不良に悩まされる女性は少なくない現状に反して、実際に活用できている人が多いとはいえません。
厚生労働省の調査によると、2019~2020年に請求した女性労働者の割合は1%を下回っています。請求件数が少ない理由として挙げられるのは、『気軽に休める雰囲気ではない』『男性につらさを分かってもらえない』『請求するのが恥ずかしい』などです。
とはいえ、実際に請求を受けた企業の割合は、2015年の2.2%に対し2019~2020年には3.3%まで上がりました。生理休暇を取得する人が徐々に増えてきており、働く女性の権利として認知され始めていることが分かるでしょう。
参考:「令和2年度雇用均等基本調査」結果を公表します P26|厚生労働省
生理休暇は「法定休暇」の1つ
労働者がもらえる休みの種類は、大きく「法定休暇」と「特別休暇」に分けられます。生理休暇はこのうち、法定休暇にあたるものです。特別休暇との違いや、有給・無給の扱いについて確認しておきましょう。
特別休暇との違い
法律で定められた法定休暇には、年次有給休暇・産前産後休暇・育児休暇・介護休暇などがあります。労働基準法第68条で定められた生理休暇も、法定休暇の1つです。
一方で特別休暇は、法律で定められているわけではなく、企業が独自の裁量で与えるかどうか決める休暇を指します。慶弔休暇・夏季休暇・リフレッシュ休暇・裁判員休暇などが、代表的な特別休暇です。
法定休暇の1つである生理休暇は、働く人からの請求があれば会社は拒否できません。ただ、就業規則に定める義務は特にないため、入社してしばらく存在を知らなかった人もいるでしょう。
法定休暇ではあっても、働く人に積極的に提示するかどうかは企業によって違ってきます。
無給扱いの企業もある
法定休暇の取得を検討する際、多くの人が気にするポイントが「有給扱いになるかどうか」ではないでしょうか。法定休暇のうち年次有給休暇だけは、確実に有給で取得できます。
年次有給休暇以外の法定休暇は、有給・無給の扱いについて法律で特に決められていないため、有給で取得できるとは限りません。生理休暇も有給で取得できない可能性があることになります。
生理休暇が有給になるかどうかは、職場の方針次第です。利用を検討する際は、自社の就業規則を見て有給・無給のどちらかを確認する必要があります。
生理休暇を利用できる条件
生理休暇をもらうには、実際にどのような手続きが必要なのでしょうか。申請の方法と取得できる日数について解説します。
本人からの申請だけでOK
生理休暇は、生理の症状がつらすぎて仕事ができない場合に取得できます。しかし、症状からくるつらさや、働けない状況を具体的に証明するのは難しいでしょう。
そのため、生理休暇は従業員本人からの申請のみで取得できることになっています。生理により働けないことを、診断書をはじめ何らかの形で証明する必要はありません。
そもそも、生理からくる体調不良について会社が従業員に深く追求することは、セクハラとみなされる可能性があります。
各種休暇を取得するにあたり、企業によっては事前申請が必要になることもあるでしょう。しかし、生理休暇に関しては理由が突発的に起こることもある生理現象のため、当日の申請も認められています。
取得日数の制限はない
労働基準法第68条では、取得日数に関する決まりを特に定めていません。従業員から生理休暇の請求を受けたら、会社は取得日数に関係なく休暇を与える必要があります。
「月1日まで取得できるものとする」といったルールを、就業規則で定めることも不可能です。仮に就業規則で取得日数に制限がかけられていたとしても、請求する側は何日でも取得できることを主張できます。
生理休暇は、時間単位や半日単位で取ることも可能です。例えば、午前中に生理痛で体調が悪くなったケースでは、会社に申請すれば午後からの仕事を休めます。
生理休暇を利用する際のポイント
法律で誰にでも認められるとはいっても、不安が多く利用に踏み切れない人もいるかもしれません。中でも気になる伝え方や有給への影響、NGな行動について解説します。
気になる場合は伝え方に工夫を
生理休暇は生理で仕事が難しい人に認められている権利です。会社で制度がきちんと提示されている場合はなおさら、胸を張って使ってよいものと考えて問題はありません。
ただし、会社からの理解が得られなさそうなケースや、甘えているのではないかと思われたくないケースもあるでしょう。気になることがある場合は、症状の伝え方に工夫が必要です。
例えば、直属の上司が男性なら生理痛の苦しさを理解してもらえない恐れがあるため、女性の上司に相談してみましょう。本来なら証明は必要ありませんが、理解を得やすくするために、医師の診察を受けて診断書を提出しておくのも1つの方法です。
有給休暇への影響も考えよう
生理休暇を取得しすぎた場合、通常の有給休暇を利用できなくなる恐れがあります。1カ月に休む日数が多くなりそうなら、有給休暇への影響も考えなければなりません。
労働基準法第39条では、出勤率が8割以上なければ原則として有給休暇をもらえないと定められています。例えば年次有給休暇のベースとなる期間に月の平均労働日数が25日なら、月平均5日を超えて休むと有給休暇を取れなくなる恐れがある計算です。
会社には、従業員の生理休暇を出勤日扱いにする義務はありません。有給休暇をもらえない事態を防ぐためにも、生理休暇が出勤日として数えられるかどうかも確認しておきましょう。
不正利用は懲戒の対象に
生理休暇を不正に使ってしまうと、懲戒処分の対象になる恐れがあります。生理による体調不調がきつくてどうしても働けないとき以外は、利用しないよう注意しましょう。
不正取得にまつわる過去の判例では、「3カ月程度の休職処分であれば有効」と判断されたケースがあります。これは生理休暇を取った人が、休んだ日の夜に遠出をした事例です。
不正利用により懲戒処分を受けると、ほかの女性労働者も信用を失って生理休暇を使いにくくなりかねません。正当な理由がある場合にのみ使い、休みをもらったらしっかり休養に充てましょう。
生理休暇は働く女性の権利
生理休暇は法律で定められた権利です。生理による症状がつらすぎて仕事ができなければ、雇用形態や就業規則への記載の有無を問わず誰でも取得できます。本人からの申請だけで利用が可能です。
休みを取りにくい職場で働いているなら、理由の伝え方を工夫する必要があります。休みすぎると有給休暇が取得できなくなる可能性も考え、事前にしっかり確認した上で正しく利用しましょう。