仕事を辞めるのにベストなタイミングは?損しない時期を見計らおう

転職のために会社を退職するときは、収入面での損や面倒な手続きを避けるために、ベストなタイミングを見極めることが大切です。転職活動から退職予定日までのスケジュールを把握することで、円満かつスムーズに退職できるでしょう。

退職までのスケジュールを把握しておこう

退職届

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退職にベストなタイミングを見極めるには、まず退職までの流れを把握しておく必要があります。転職活動のスタートから退職するまで、スケジュールの目安を紹介します。

転職活動で内定が出るまでに1〜3カ月

退職に向けた準備は、まず転職活動から始めるのが賢明です。転職先が決まっていない状態で退職すると、無職の期間が生じてしまうためです。

無職になると、役所やハローワークで諸手続きを行うほか、社会保険料を全額自己負担する必要があるなど、デメリットが大きくなります。そのため、在職中に転職先を決めた上で退職するのが無難でしょう。

転職活動で内定が出るまでには、1〜3カ月かかるのが一般的です。転職理由の明確化やエントリーシートの提出などの準備に1カ月、面接を複数回受けて内定が出るまでに2カ月程度かかります。

ただし、転職先の希望条件によっては個人差があるほか、仕事の都合に合わせて面接の日程を調整するのは大変なものです。

また、年代によって転職の難易度も異なります。転職の方向性が定まっていない人は、通常よりも早く準備を始めるとよいでしょう。

退職の意思は1カ月前に伝えよう

転職活動で内定が出たら、次は退職の手続きを進めます。退職の手続きは1カ月ほどかかり、転職活動も合わせると長くて4カ月ほどかかるのが一般的です。

退職予定日の1カ月前になったら、直属の上司に退職したい旨を伝えましょう。法律上では、2週間前までに意思を伝えれば問題ありません。

しかし、法律上では問題ないとはいえ、実際には業務の引き継ぎや貸与物の返却など、諸手続きに時間がかかるものです。円満に退職するには、1カ月前を目安に退職の意思を示すのがよいでしょう。

会社によっては、就業規則で1カ月以上前に退職の意思を伝える必要があると規定されているケースもあります。

参考:民法第627条 | e-Gov法令検索

退職日を決めるポイント

スケジュール帳

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退職日を何となく決めてしまうと、スムーズに退職できなくなってしまうものです。退職日を決める上で考慮したい、基本的なポイントについて解説します。

年次有給休暇を消化できる日程を組もう

労働者には、勤務期間に応じて『年次有給休暇』を取得する権利があります。さらに雇用主には、年に10日以上の有給休暇が付与されている労働者に対して『5日以上の有給休暇を与える義務』があります。

取得できるにもかかわらず取得しないのはもったいないので、退職してから後悔しないためにも、有給休暇を全日取得しておきましょう。

退職前の1カ月間は、引き継ぎ業務をこなす必要があるため、有給休暇を取得するのは難しいものです。スムーズに退職できるように、有給休暇は早くから計画的に取得しておくことが大切です。

会社の繁忙期は避けよう

収入で損しない退職日を設定することはもちろん大切ですが、在職中の会社に迷惑をかけないように気を配ることも大事です。退職までの手続きをスムーズに進めるためにも、会社の繁忙期はなるべく避けて退職日を決めましょう。

忙しい時期に退職の意思を伝えると、上司も忙しいため、退職に向けた相談の時間を取ることが難しくなります。人手が急に減って本来の業務に迷惑をかけるほか、業務の引き継ぎや諸手続きもスムーズに進みません。

会社と自分自身の両方のメリットを考えると、繁忙期を避けて円満退職を目指すのがよいでしょう。

ステップアップに向けた転職のタイミング

ビジネス

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転職するタイミングには、何か目安となる指標はあるのでしょうか?今後のキャリアを考えたときのベストな転職タイミングや、転職の求人が増える時期について解説します。

25歳・32歳・39歳になるとき

一般的に、キャリア全体を通して転職に適した年齢時期は3つあります。各年齢において転職への適切な心構えは異なるため、それぞれの年齢に応じた転職活動を行うことが大切です。

最初に訪れるおすすめの転職年齢は『25歳』です。大学卒業後に就職して3年が経過した年で、社会人としてのビジネスマナーを一通り身に付けているでしょう。

まだ若いため、今後の成長を見込んで採用してもらえる可能性が高く、未経験の業界や職種に挑戦することも可能です。

次に訪れる転職のタイミングは『32歳』です。就職から10年が経過して、特定の分野で十分なスキルと経験が身に付いているでしょう。同じ業界でステップアップを目指すのに最適な時期です。

最後は『39歳』です。スキルのほかに、マネジメント能力も求められることが多いでしょう。

これまでの経験を生かして、年収アップにつながる会社への転職を狙えます。世間体よりも、実利を重視した転職活動が重要です。

スキルアップが望めないまま3年がたったとき

ルーティンワークが3年近く続いたときも、転職に適したタイミングです。仕事がルーティン化しているということは、現在の会社で吸収できるスキルは十分に身に付けたといえるでしょう。

そのまま同じ職場で勤務を続けても、市場価値が上がることは見込めません。市場価値が上がらないままだと今後の転職で不利になるほか、収入アップもなかなか期待できないでしょう。

現状に甘んじるのではなく、キャリアを長期的に捉えて新しい挑戦をすることが大切です。

転職活動は春先と秋口に

新卒採用やアルバイト採用を除くと、企業の採用活動は、新年度を迎える春先と下半期に突入する秋口に活発化します。求人数も春先と秋口に多くなり、1年の中で3月・10月がピークです。

魅力的な求人とマッチングするためには、求人数が多くて、企業も採用に意欲的な時期に転職活動を行うのが効率的です。転職活動の準備期間も考慮すると春先は『1〜2月』、秋口は『8〜9月』には転職活動に着手するとよいでしょう。

収入で損しない退職のタイミング

給与明細

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退職前には働いた分の対価として、もらえる報酬を漏れなく受け取っておきたいものです。収入面で損しないための退職タイミングについて解説します。

ボーナスを受け取った直後

収入面で損しないためには、ボーナス(賞与)を受け取った直後に退職するのがベストです。ボーナスの支給は、6〜7月・12月と年2回に分けて行われるのが一般的です。退職にかかる手続きを考えると、8月あるいは1月いっぱいで退職するのがよいでしょう。

ただし、会社によってはボーナスを受け取るには、ボーナス支給後に一定の期間は在職している必要があるケースも見られます。

支給の直後に退職の意思を伝えると、印象が悪くなる恐れもあるでしょう。事前に退職までの流れを、具体的にシミュレーションしておくことが大切です。

また、ボーナスを受け取るために、希望の転職先に入社できなくなってしまっては本末転倒です。ボーナス支給後の退職にこだわりすぎず、キャリアを第一に考えた上で退職のタイミングを決定しましょう。

退職の意思を伝えるタイミングに注意

ボーナスを受け取った直後に退職する場合は、退職の意思を上司に伝えるタイミングが重要です。ボーナス支給前に退職の意思を伝えると、退職日を早められてボーナスが支給されなかったり、ボーナスが減額されたりする恐れがあります。

ボーナスの支給額は、支給前の査定期間中に決められます。査定期間がいつになるのか確認し、査定期間が終わってから退職の意思を伝えるようにしましょう。ボーナス支給後に意思を伝えるのが、さらに無難です。

社会保険料で損しない退職のタイミング

電卓

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退職のタイミングによって、社会保険料の負担額が軽くなることはありません。しかし、被雇用者と無職では社会保険の仕組みが異なります。退職時は、社会保険料の負担が大きくならないように注意が必要です。

健康保険料は月末退職がベスト

会社員は健康保険料の半額を会社が負担してくれる一方で、無職は全額を自分で負担するため、無職期間の有無によって負担が異なってきます。

退職した翌日に転職先の会社に入社できる場合は、いつ退職しても問題ありませんが、無職の期間を挟む場合は『月末に退職』するのがベストです。

健康保険法の第36条では、『退職日の翌日に、会社の健康保険協会の被保険者としての資格を喪失する』と定められています。そして同法第156条では、『資格喪失日を含む月は、会社が保険料を負担する必要がないもの』となっています。

つまり、月の途中で退職して無職になると、その月の健康保険料は全額自己負担になるのです。

月末に退職すれば、資格喪失日は翌月の1日になるため、健康保険料を全額負担する月数が1月分だけ少なくなります。無職の期間を挟む場合は、健康保険料の負担を軽くするためにも、月末に退職するとよいでしょう。

参考:健康保険法第36条 | e-Gov法令検索

扶養家族がいるなら任意継続制度を利用しよう

扶養家族がいて、退職してから転職先に入社するまでに期間が空く場合は、国民健康保険に加入するのではなく、健康保険の『任意継続制度』を利用するのも1つの方法です。

国民健康保険には扶養の概念がなく、家族全員分の保険料を支払う必要があります。しかし、任意継続制度を利用すれば、会社の健康保険に継続して加入することができるのです。

保険料の全額を自己負担する必要があったり、2年間という制限があったりしますが、1人分の保険料で扶養家族分もまかなえるため、負担の軽減が可能になります。

任意継続制度で負担する保険料には上限があるため、一定以上の収入がある場合も任意継続制度がお得といえるでしょう。

任意継続制度は退職後20日以内に申請が必要なほか、退職前に2カ月以上被保険者の資格を有していることが条件です。スムーズな退職のために、任意継続制度の手続きや条件について確認しておくことが大切です。

参考:健康保険任意継続制度(退職後の健康保険)について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会

転職先が未定なら年金の手続きも

被雇用者かそうでないかによって、適用される年金の制度が異なることも覚えておきたいポイントです。会社員は厚生年金に加入している『第2号被保険者』ですが、離職期間中は国民年金に加入している『第1号被保険者』になります。

退職日の翌日に転職先に入社する場合や、退職月に再就職して厚生年金に加入する場合は、役所での手続きは不要です。

しかし国民年金は、役所で切り替え手続きをするほか、納付を自分で行う必要があります。国民年金が未納のままになると、将来もらえる年金額が少なくなるので注意が必要です。

なお、失業状態として認められた場合は納付が免除されるので、支払いが難しいときは免除申請を検討するのもよいでしょう。

税金の手続きが楽になる退職のタイミング

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税金の負担を軽くすることはできませんが、面倒な手続きをしないで済む方法ならあります。税金の手続きを簡単に済ませられる退職のタイミングについて解説します。

所得税は年内に再就職するなら手続きが簡単

会社で働いている場合、見込みの年収から所得金額を算出して、毎月の給与所得から源泉徴収されています。そのため、再就職する前に年をまたぐ場合は、実際よりも多くの所得税が引かれてしまうのです。

所得税で損をしないためには確定申告を行い、所得税を還付してもらう必要があります。しかし、確定申告は慣れていないと難しく、手続きに手間取ってしまうものです。

年内に再就職できれば確定申告の必要がないため、面倒な手続きを省きたいなら年内の転職を目指しましょう。

住民税は退職月によって納付方法が異なる

再就職までに期間が空く場合、住民税は退職月によって必要な対応が異なってきます。

1〜5月に退職した場合、退職月の給与から5月までの住民税がまとめて差し引かれるのが一般的です。給与よりも住民税の方が高い場合は、普通徴収として残りを自分で納付する必要があります。

一方で、6〜12月に退職した場合は、退職月までの住民税が給与から天引きされ、翌月以降は普通徴収として自分で納めます。会社に頼んで、翌年の5月までの住民税を、退職金などからまとめて天引きしてもらうことも可能です。

転職するならベストなタイミングを見計らって!

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転職するときは、会社の都合に合わせることはもちろん、自分が収入で損したり面倒な手続きをしたりすることがないように、退職のタイミングを調整することが大切です。

秋口に転職活動で内定をもらい、12月にボーナスをもらった直後の1月なら収入面ではベストな時期と言えるでしょう。末日に退職すれば、転職先に入社するまでに期間が空いても、社会保険や税金の手続きが比較的簡単なほか、余計な損失も抑えられます。

会社にとっても自分自身にとってもよい形で退職できるように、転職を考えている人は自分にとって最適な退職時期を念頭に置いて転職活動を進めましょう。