転職理由を伝えるコツは?ポジティブに表現するポイントを解説

転職の際、「転職の理由は何か」を聞かれることがあります。以前の会社に不満があり辞めた場合、どう伝えればよいのでしょうか?応募先企業が転職理由を聞く目的や、答え方の例文をケース別に紹介します。納得感のある理由を伝えるコツも見ていきましょう。

企業が転職理由を質問してくる目的とは?

応募書類を見る女性

(出典) photo-ac.com

面接では、転職の理由を聞かれることがよくあります。退職した理由によっては、答えに悩むこともあるでしょう。

なぜ、企業は転職理由を知りたがるのでしょうか?よくあるパターンを紹介します。

入社後に定着してくれるか判断するため

企業は、雇うからには長く定着してほしいと考えています。すぐに辞めてしまう人材を採用するのは、企業にとって大きなデメリットです。

前職を辞めた理由を聞くことで、企業は定着する人材かどうかを確認しています。担当者が理由を聞いて、「すぐに辞めてしまいそうだ」と感じた場合、採用を見送ることも考えられるでしょう。

特に短期間で前職を辞めている場合、転職しても同じようにすぐ辞めてしまわないか、採用担当者は不安を抱いています。納得できる理由であれば、採用への影響は少ないでしょう。

自社で活躍できるか確認するため

転職の理由によっては、今後の活躍度も判断できます。前職と同じ理由で退職したり、社風が合わなかったりなどのミスマッチを防ぐために、転職理由を確認するのです。

例えば、「前職では残業が多く、プライベートの時間が取れなかった」という理由で退職したケースで考えてみましょう。応募先に全く残業がなければ不安要素にはなりませんが、繁忙期に残業が増える会社では不安が残ります。

応募者が許容できる残業時間数や、繁忙期の残業時間を共有することで、ミスマッチの可能性が減るはずです。ネガティブな言い回しでない限り、正直な転職理由を伝えることは、応募者側にもメリットがあります。

転職理由を伝えるときのポイント

パソコンを前に考え事をする男性

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転職理由を質問されたときは、答え方によって印象が変化します。採用担当者によい印象を与えるためにも、答え方は工夫しましょう。言いづらい理由の場合、どう答えるのかも重要なポイントです。

前向きな表現に言い換える

退職の理由は、できる限りポジティブに伝えましょう。「同じような理由で退職してしまうかも」と思われないよう、マイナスイメージの強い発言は避けることをおすすめします。

同僚とのコミュニケーションがうまくいかなかった場合、「新しい環境に飛び込んでみたいと考えた」など新しい業界への希望に言い換えるのもよいでしょう。

評価や待遇が悪いといった理由であれば、「自分の能力を発揮できる会社で働きたい」とも変換できます。

うそをつくのはNG

面接でうそをつくと、ほかの部分とつじつまを合わせなければなりません。転職理由についても、基本的には本当のことを伝えましょう。

企業によっては前職の会社への確認や、離職票の提出を求められる可能性があります。後日、本当の転職理由が発覚するよりも、面接で正直に答える方が好印象です。

「リファレンスチェック」と呼ばれる会社への確認は、応募者本人の同意を取ることになっていますが、断ることで印象が悪化することもあり得ます。

退職理由を伝えるときに避けるべきことは?

スーツの男性

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退職の理由によっては、採用担当者に不安を与える可能性があります。避けた方がよい理由と、その理由を知っておきましょう。

職場や同僚への愚痴

職場や同僚に対する愚痴は、転職先の採用担当者に「入社しても同じことを言うのでは?」と捉えられる可能性があります。会社に対する誹謗中傷をする人・コミュニケーション能力不足などと判断されないためにも、前職の会社を悪く言うのは避けましょう。

「自分が悪いのではなく、会社や同僚に問題があった」と言いたいとしても、愚痴や悪口は聞いていて気分のよいものではありません。

応募者の話だけでは、前職の会社に本当に問題があったのかも判断できないため、ネガティブな発言はできるだけしないことがマナーです。ただし、ハラスメントが退職理由になった場合は、愚痴にならない程度で事実を話すことは問題ないでしょう。

能力や人柄に不安を持たれる内容

採用担当者は、自社で活躍し、うまくコミュニケーションが取れる人材を求めています。採用に不安を感じる発言は、できるだけ避けましょう。

例えば、「成績が悪く解雇された」と直接伝えると印象がよくありません。改善への努力や、会社全体の業績不振がありやむを得ないなど、ほかにも伝えられることはあります。

できる限り、「新しい仕事への意欲」に言い換えるなど、前向きな印象に切り替えましょう。

また、人間関係のトラブルや「苦手な仕事はしたくない」といった発言も、人柄に疑問を持たれる可能性があります。

転職理由の具体的な伝え方

ラフな雰囲気で面接をする二人

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転職理由は、どのように伝えると面接での評価が高くなるのでしょうか?理由ごとの具体例や、伝えるときのポイントを解説します。

給料をアップしたい場合

給料が安いことが原因で転職を決意した場合、実力不足と判断されないよう注意が必要です。昇給がないのは本人の努力不足と捉えられると、評価が下がってしまいます。

会社が悪者にならないようやむを得ない理由を説明するか、「キャリアアップを目指している」や「いずれ責任のある立場で働きたい」など書き方を工夫しましょう。

【例文】

世界的な情勢の影響で業界全体の業績が悪化しており、前職の会社でも今後当分昇給が見込めない状況です。評価につながるよう売上目標達成など努力してきましたが、賃金への反映は難しい状況もあり転職を決めました。

家族を養っていることもあり、成果が待遇に反映される会社で働きたいと考えています。

 

待遇や働き方を改善したい場合

残業や仕事量の問題で転職を決意した場合は、応募先の条件を意識した上で回答を考えましょう。前職への批判や、就労意欲が低いと捉えられないよう、柔らかい言い方で伝えることがポイントです。

ただし、介護や育児など事情があり勤務できる時間が制限されているときは、事前に伝えておく方がミスマッチを防げます。

【例文】
前職は夜勤や深夜までの勤務が多い業種でもあり、規則的な生活が難しい環境でした。体力のあるうちは働けるのではないかと悩んだものの、今後のキャリアを考えると早い決断が必要と思い、転職を決意しました。

社内の人間関係を改善したい場合

社内の人間関係を話すときは、愚痴にならないよう配慮が必要です。入社後、同じように人間関係でトラブルを起こす可能性を心配され、評価を下げる恐れがあります。

「新しい環境で、よい人間関係を築きたい」というように言い換えましょう。過去の人間関係には触れず、今後の展望を重視することで、前向きな印象を与えられます。

【例文】

以前の職場では基本的に1人作業が多く、チームで協力し合う機会が少ない環境でした。自分本来の性質として、周囲と協力し合い、1つの仕事を成し遂げることに魅力を感じます。

仕事仲間とコミュニケーションが取れる環境を作りたいという気持ちが大きくなり、転職を決意しました。

 

現在の仕事がつまらない、合っていない場合

仕事が合わず転職する場合、新しい仕事に対する前向きな気持ちをアピールしましょう。「仕事がつまらないので転職を決めた」と直接伝えると、労働意欲が低いと受け止められます。

応募先で生かせるスキルがあるときは、「スキルを生かして活躍したい」と自分の強みを伝えるのもよいでしょう。

【例文】

現職では、事務の仕事を担当しています。人事の都合で異動があり配属となりましたが、もともと○年間営業として勤務していました。

今の会社では業務縮小もあり、今後営業職として働ける可能性は低いとのことです。悩みましたが、お客様の生の声が聞ける仕事をしたいという思いが強くなり、転職を考えました。

 

【ケース別】こんな場合はどう伝える?

スーツの男性

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退職の理由によっては、伝え方に気を配る必要があります。応募者自身の問題と捉えられないよう、配慮しましょう。離職までの期間が短い場合や、会社に問題があったときの伝え方を紹介します。

短期間で退職した場合

短期間での退職は、「自社でもまたすぐに辞めてしまうのでは?」と採用担当者に不安を与えます。

病気や家庭の問題など、やむを得ない理由の場合はそのまま正直に伝えましょう。この場合は応募時に、退職に至った問題が解決されていることをアピールするのが大切です。

環境や仕事内容が合わずに短期退職した場合は、言い訳に聞こえないよう注意しましょう。短期退職の事実は消えないため、正直に「自分の覚悟や下調べが足りなかった」と話しても問題はありません。

ただし、会社の批判はネガティブな印象を与えるため、避けましょう。「今回は同じことにならないよう対策している」と、熱意や努力をアピールすることが重要です。

パワハラやセクハラなどの被害を受けた場合

上でも紹介したとおり、パワハラやセクハラなど、上司や同僚に問題があり退職に至った場合、退職理由として伝えること自体に大きな問題はありません。ただし、悪口や愚痴に聞こえないよう、遠回しな表現にとどめるか、客観的な事実のみを簡潔に伝えましょう。

人間関係の問題はどちらに非があったのか判断しにくいため、伝え方によっては本人の問題と捉えられる可能性もあります。前向きな転職理由があれば、ハラスメントの問題は簡潔に伝え、ポジティブな印象にまとめましょう。

「仲間とコミュニケーションを取りながら、仕事がしたいと考えた」など、人間関係に問題があったことを前向きに表現する方法もあります。

会社都合で退職になった場合

会社都合での退職は、事情によって印象が変わります。倒産または業績不振による人員整理であれば、能力不足と取られないよう配慮が必要です。

会社側の問題で、労働者の判断により退職となった場合は、ある程度そのまま伝えても問題はないでしょう。給与の支払い遅延や、会社都合による大幅な賃金カットなど、本人に非がないケースが大半です。

しかし、会社都合の中でも、本人が就業規則違反やトラブルを起こし「懲戒解雇」となった場合は、採用に影響する可能性があります。理由や経緯を丁寧に伝え、反省の意思を示すことが重要です。

どのような理由であっても、会社都合の退職を「自己都合」と偽るのはやめましょう。前職の会社への確認や離職票で本当の退職理由がバレると、トラブルにつながります。

転職理由をポジティブに伝えるコツ

ミーティングをしている3人

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転職理由をポジティブな方向に言い換えるには、いくつかのポイントがあります。何を伝えると採用担当者に受け入れられやすくなるのか、押さえておきたいコツを知っておきましょう。

改善のために努力したことを伝える

退職に至るまで、自分なりに努力したことを伝えると共感を得やすくなります。問題が起きたとき、解決に向けて動いたことが評価の対象にもなるでしょう。

人間関係の問題であれば、自分からコミュニケーションを取るために働きかける行動も大切です。条件や待遇の不満は、成果を上げて上司に相談することで解決につながる可能性もあります。

何らかの行動を取ったものの、やむを得ない状況で退職を決めた場合は、ポジティブに受け止めてもらえるでしょう。

自分にも責任があることを自覚する

退職理由を伝えるとき、「会社や同僚だけに原因があった」としてしまうと、責任を押し付けているように見えてしまいます。誰かのせいにせず、自分の責任も自覚しましょう。

もし、退職の理由がネガティブなものだったとしても、今後意識を変えてやっていく姿勢を見せると前向きな印象です。

退職に至る過程で学んだことがあれば、一緒に伝えましょう。コミュニケーション不足が原因であれば、入社後はチームワークを意識して仕事をしていきたいなど、今後につなげる姿勢が大切です。

志望動機と一貫性を持たせる

転職理由と志望動機がかけ離れていると、意志が定まっていないように見えてしまいます。

例として、人間関係のトラブルで転職したケースで考えてみましょう。転職理由が「チームワークが取れない職場への不満」にもかかわらず、志望動機が「個人で自由に仕事ができる環境に引かれた」という内容であれば、違和感があります。

前向きな表現に言い換える場合、志望動機と一貫性が出るよう意識しましょう。上記の例では、「本来1人作業が得意だが、業務上細かな調整が必要で、周囲に気を遣う場面が多かった」とすれば、違和感が少なくなります。

転職のきっかけと志望動機がつながる方が、説得力が増すでしょう。言い換えの問題だけでなく、発言に整合性があるか面接前に最終確認が必要です。

転職理由を前向きに伝えよう!

頭を下げているスーツの男性

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面接などで転職理由を聞かれたときは、ポジティブに表現しましょう。内容によっては、そのまま伝えない方がよい理由もあります。前職への不満や愚痴は避け、「転職によって問題が解決される」ことをアピールしましょう。

基本的には、ウソをつかずポジティブに言い換えるのがコツです。誠実に伝えることで、入社後のミスマッチを防ぐこともできるでしょう。

小寺良二
【監修者】All About キャリアカウンセラー/起業・経営ガイド小寺良二

若者の就職支援を専門とするキャリアカウンセラー。アメリカの大学を卒業後、アクセンチュアを経てリクルートに入社し100社以上の新卒・中途採用のコンサルティングを経験。独立後は採用と就職活動の双方を知る「若者就職支援のプロ」として官公庁や人材企業の若年就労支援プロジェクトに携わる。全国の大学で教員やキャリアカウンセラー向けの研修を行うなど、若者支援者の養成にも力を入れている。
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著書:
美文字履歴書の書き方&マナー