内定後に身元保証書の提出を求められた場合、「身元保証人」を立てることが必要です。企業の条件を満たす人を探し、署名・押印を依頼しましょう。身元保証人の役割や企業が身元保証人を求める理由、さらには身元保証書の書き方・記入例を詳しく紹介します。
この記事のポイント
- ・身元保証人とは、新規雇用者(被保証人)の身元や社会的信用を保証する第三者
- 新規雇用者が就職・転職後に不正やトラブルで企業に損害を与えた場合、身元保証人に損害賠償責任が生じます。
- ・就職・転職では、身元保証書の提出が求められる
- 採用した人の信頼性の確認・不正リスクの抑制・緊急連絡先の確保のため、企業は身元保証人の設定および身元保証書の提出を求めます。
- ・身元保証書を書くとき・身元保証人を選定するときは、企業の様式や基準に従う
- 身元保証書は、企業が作成した様式に署名・押印をするのが一般的です。また身元保証人の条件も企業ごとに異なるため、企業の基準を満たす人を選定する必要があります。
身元保証人とは

身元保証人は、転職・就職時に「身元保証書」の提出を求められた際に必要です。
身元保証書に記載する身元保証人とはどのようなものなのか、役割や責任範囲・有効期間を紹介します。
もしものときに本人に代わって責任を負う人
身元保証人は、新規雇用者(被保証人)の身元や社会的信用を保証する第三者です。万が一新規雇用者が労働契約に違反したり、企業に損害を与えたりした場合、企業は身元保証人に責任の一部を問うことができます。
新規雇用において、身元保証人の設定は、法律で定められた義務ではありません。雇用契約とは別に扱われるものですが、企業が新規雇用者に対し身元保証人の設定を求めることも法律では認められています。
日本の雇用慣行では、企業が新規雇用者に対して身元保証書の提出を求めることは、ごく一般的です。
身元保証人の責任範囲
被保証人が企業に何らかの損害を与えた場合でも、原則として身元保証人が無制限に責任を負うことはありません。企業への損害賠償責任が発生した場合は、裁判所が状況を総合的に判断し、身元保証人の責任範囲や賠償額を決定します。
身元保証人の責任範囲を決定する際は、「身元保証ニ関スル法律第5条」に基づき、以下の事由が勘案されるのが一般的です。
- 従業員の監督について、企業の過失がなかったか
- 身元保証人が保証をすることになった理由や、どれだけ注意義務を果たしていたか
- 従業員の職務内容が契約当初と比べて大きく変化していたり、責任が大きくなったりしていないか など
従業員が企業に損失を与えた場合でも、企業側に何らかの不備や怠慢があると認められるときは、賠償額が減額されるケースもあります。
なお、身元保証人に損害賠償責任が発生する場合、企業は速やかにその旨を通知する決まりです。企業が通知を怠った場合も、損害賠償請求が制限される可能性があります。
出典:昭和八年法律第四十二号(身元保証ニ関スル法律)|e-Gov 法令検索
身元保証人の有効期間
身元保証人の有効期間は、特に定めがない場合、原則として契約成立から3年です。有効期間を定める場合でも、5年を超えることは認められていません。企業と従業員とで5年以上で合意した場合であっても、法律に従って5年間に短縮されます。
身元保証人の期間が切れた後に企業が保証契約を継続したい場合は、再契約が必要です。身元保証人の設定については、自動更新が認められていません。従業員は身元保証人の合意を受けて署名・押印をもらい、再度身元保証書を提出する必要があります。
とはいえ実務では、身元保証書の提出を入社時のみとする企業が多いのが実情です。期間満了後に再度身元保証書の提出を求められるケースは、そう多くありません。
出典:昭和八年法律第四十二号(身元保証ニ関スル法律)|e-Gov 法令検索
採用企業が身元保証人を求める理由

企業が新規雇用者に対して身元保証人の設定を求めるのは、主に「信用の確認や本人証明」「不正の抑止」「緊急連絡先の確保」のためです。
転職・就職時に身元保証人が必要になる理由を詳しく見ていきましょう。
信用の確認や本人証明
企業が身元保証人の設定を求めるのは、新規雇用者について「本人が実在するか」「信用できる人物か」を「経歴に偽りがないか」を間接的に証明してもらうためです。
企業が採否の判断に活用する履歴書や職務経歴書・面接などは、応募者自身で作成されています。情報の客観性・正確性が担保されにくく、身元詐称や経歴詐称があっても把握しにくいのが現実です。
企業は新規雇用者に身元保証人を立ててもらうことで、本人性や信頼性を担保したいと考えています。
不正の抑止
「自分が何かしたら、身元保証人に迷惑がかかるかもしれない」という状況になれば、勤務態度に気を付けようとする人が大半です。企業は身元保証書が、従業員の不正行為や規律違反への心理的な抑止力になることを期待しています。
特に機密性の高い情報や現金を扱う仕事では、従業員の不正が企業に大きなダメージを与えかねません。不正トラブルへのリスクヘッジとして、従業員には身元保証人の設定および身元保証書の提出が求められます。
緊急連絡先の確保
新規雇用者に身元保証人を設定してもらうことで、企業は信頼できる連絡先を確保できます。従業員が無断欠勤したり本人と連絡が取れなくなったりした場合、身元保証人を通じて状況の把握や適切な対応を取ることが可能です。
災害や事故、業務中の急病など緊急事態が発生した場合、企業としては早急に本人と連絡を取る必要があります。緊急連絡先を確保しておくことは、企業が初動対応を迅速かつ適切に行う上で必須です。
企業に提出する身元保証書の書き方と記入例

就職・転職時の身元保証書の内容は、企業によって異なります。企業が指定する様式で、必要な事項を抜け漏れなく記入しましょう。
身元保証書の書き方や記入例を紹介します。
雇用される本人(被保証人)の情報を記入する
雇用される本人が記入するのは、自身に関する基本情報です。身元保証書には、以下の内容を記入しましょう。
- 入社予定日
- 現住所
- 生年月日
- 署名・押印
住所は、住民票と同じ住所を記入します。引っ越しなどによって住民票と現住所が異なる場合は、企業に事情を説明し早急に住民票を異動させましょう。住民票と現住所が異なると社会保険の手続きができない恐れがあり、遅かれ早かれ移動が必要です。
身元保証人の情報を記入してもらう
身元保証人に記入してもらう情報は、以下の通りです。
- 氏名
- 現住所
- 電話番号
- 被保証人との関係
- 勤務先
身元保証人が遠方に住んでいる場合は、身元保証書を郵送して記入してもらいましょう。
身元保証書の記入例
身元保証書は必要な項目を埋めるだけでよく、記入に悩むところはさほどありません。様式は企業によって異なるため、項目を確認しながら必要な情報を記入しましょう。
以下は、父親を身元保証人に立てた場合の身元保証書の例です。
【身元保証書】
株式会社◎◎
代表取締役 □□□殿現住所 東京都千代田区×××1-2-3
氏名 山田 太郎 印
生年月日 平成◎年◎月◎日上記の者が貴社に入社するにあたり、貴社の就業規則ならびに諸規定を順守し忠実に勤務することを保証します。
万が一、本人が故意または重大な過失により貴社に損害を与えた場合、本人と連帯して◎◎万円まで損害額を賠償いたします。
本書による保証期間は、令和◎年◎月◎日より5年間といたします。
令和◎年◎月◎日
【身元保証人】
住所 東京都杉並区×××4-5-6
氏名 山田 次郎 印
勤務先 ×××株式会社
生年月日 昭和◎年◎月◎日
本人との関係 父
電話番号 03-1234-5678以上
上記の身元保証書で記入が必要なのは、本人および身元保証人の住所や氏名欄です。内容について疑問・不満があるときは、記入する前に企業に確認を取りましょう。
企業に身元保証書を提出するときの注意点

企業に身元保証書の提出を求められた場合は、様式や身元保証人の選定・正しい書き方に注意が必要です。
身元保証書を提出するとき、注意すべきポイントを紹介します。
企業が指定する様式を使用する
身元保証書を提出するときは、指定された様式を使用しましょう。
企業側が身元保証書の様式を準備するのは、企業によって想定されるリスクや損害賠償の上限額が異なるためです。
身元保証書は、各社の事情やガバナンス方針に合わせて作成されています。保証期間や書式の細部も企業側の意向が強く反映されるため、基本的に新規雇用者が身元保証書を一から作成することはありません。
損害賠償の極度額が明記されているか確認する
2020年4月に民法が改正され、身元保証人を立てるときは、原則として、損害賠償の極度額を定めることが義務化されました。
損害賠償の極度額が記載されていない身元保証書は、法的な効力がありません。身元保証書の様式を受け取ったら、損害賠償の極度額が記載されているかどうかを必ず確認しましょう。
身元保証人の責任が制限されない場合、損害賠償によって身元保証人が重大な不利益を被るリスクがあります。改正民法では保証人への過大な負担や予測不能なリスクを防ぐため、保証人が「どこまで責任を負うか」を明確にすることが求められるようになりました。
出典:2020年4月1日から保証に関する民法のルールが大きく変わります|法務省
企業が指定する条件を満たす人を選ぶ
身元保証人の選定条件については、多くの場合企業が独自に設定しています。条件は企業によって異なりますが、一般的には「損害賠償責任を負えること」「経済的に自立していること」が重視される傾向です。
企業によっては、「採用する本人と生計を共にしている人は不可」「年金受給者は不可」などと細かい規定を設けているケースもあります。身元保証人の条件をきちんと確認し、適切な人を選びましょう。
なお現状、身元保証人の選定について、法律的な基準はありません。特別な事情がない限り、親・兄弟姉妹・親戚などを身元保証人に立てるのが一般的です。
自著による署名・押印を行う
代筆や無断記入で作成された身元保証書では、企業が身元保証人に損害賠償責任を問うことは難しくなります。
身元保証書の法的な有効性を担保するためには、本人が自筆で記入し、署名・押印することが必要です。身元保証書を作成するときは、新規雇用者・身元保証人とも、本人が内容を確認し、納得した上で署名・押印しましょう。
また印鑑については、スタンプ印の使用や本人と身元保証人が同じ印鑑を使うことは認められていません。本人と身元保証人それぞれが、スタンプ印以外の印鑑を準備することも大切です。
多くの場合、印鑑は認め印でも問題ないとされますが、企業によっては実印と印鑑証明書の提出を求めることがあります。実印と印鑑証明書を求められた場合は、企業の指示に従いましょう。
身元保証人についてよくある質問

身元保証人が必要になる場面は、日常でそう多くはありません。身元保証人について、多くの人が感じる疑問や不安とその回答を紹介します。
身元保証人と連帯保証人の違いは?
身元保証人と連帯保証人の違いは、主に「責任の範囲・重さ」「有効期間」です。
身元保証人は、契約で定められた範囲・期間内で責任を負います。有効期間は最大5年で、自動更新もありません。また被保証人によって損害賠償責任が発生した場合でも、責任範囲は損害の一部や法的上限額までとなります。
一方、連帯保証人は、債務者が債務を履行できない場合に債務を履行する義務を持つ人です。責任の範囲は債務者本人と同等であり、債務額には上限がない場合が多く見られます。
さらに連帯保証人の有効期間は債務の返還が終わるまでと決められており、債権者は債務者本人を飛び越えて連帯保証人に直接損害賠償を請求することも可能です。
身元保証人と連帯保証人を比較した場合、課される責任・負担は、連帯保証人の方が非常に大きいといえます。
身元保証人がいない場合はどうすればいい?
身元保証人がいない場合は、企業に事情を説明して相談することが大切です。企業によっては、代わりの手段を提案してくれることがあります。
相談しにくい事情がある場合は、身元保証代行会社を利用することも検討しましょう。
身元保証代行会社とは、保証人を立てることが難しい人に対し、身元保証人の役割を代行してくれるサービスです。就職・転職時はもちろん、賃貸契約・老人ホームへの入居など、他の場面でも使用されるシーンが増えています。
注意したいのは、身元保証代行会社の利用について、否定的な企業もあることです。身元保証代行会社を利用したい場合も、まずは企業の担当者に相談しましょう。
身元保証書を提出しない場合、内定取り消しになる?
身元保証書の提出は、法律で定められた義務ではありません。拒否することは可能ですが、場合によっては内定取り消しになる可能性があります。
例えば内定の条件として身元保証書の提出が明記されていた場合、提出を拒否する人は採用条件を満たしません。企業による内定取り消しが認められる可能性が高くなります。
一方、すでに労働契約を結んでいる場合、内定取り消しはすなわち解雇です。労働基準法の制約があり、「身元保証書の提出を拒否しただけ」で企業が内定を取り消すことは難しくなります。身元保証書の提出を拒否しても、内定取り消しになる可能性は低いでしょう。
とはいえ採用された以上、従業員はその企業の方針に従う必要があります。特段の事情がない限り、身元保証書を提出するよう努めましょう。
転職が決まったら身元保証人を選ぼう

企業が身元保証人の設定を求めるのは、新規雇用者の信頼性・本人性を証明するため・不正やトラブルを抑制するためです。就職・転職した場合、入社手続きの1つとして身元保証書の提出を求められます。
身元保証書の提出を拒否しても違法ではありませんが、状況によっては内定取り消しもあり得るかもしれません。
企業に身元保証書の提出を求められた場合は、自著による署名・押印をした上で提出しましょう。