入社時に身元保証人が必要な理由とは?頼む相手と注意点を紹介

会社に入社する前には多くの書類を用意し提出します。企業によっては、身元保証人に関する書類があることがあります。保証人と聞いて、誰に頼めばよいのか、誰も引き受けてくれないのではと心配する人もいるでしょう。身元保証人の意味や、誰に頼めばよいかを解説します。

身元保証人って何?

身元保証書類

(出典) photo-ac.com

身元保証人とは、一体どういう人を指すのでしょうか。まずは身元保証人の意味や仕組みを解説します。なお、本見出しの内容は「身元保証ニ関スル法律」に沿って解説しています。

参考:昭和八年法律第四十二号(身元保証ニ関スル法律) | e-Gov法令検索

文字通り身元を保証する人を指す

身元保証人とは、文字通りその人の身元を保証する人のことをいいます。身元保証人を設ける目的は、社員の信用を担保することです。

採用される社員は、選考を受ける前は赤の他人です。選考過程で信用するに足る人物だとある程度分かっているものの、短い期間では十分な信用を得ることが難しいこともあります。

そういった場合に身元保証人をつけることで、その人の信用を補っているのです。企業によって、身元保証人をどれだけ重要視するかは異なります。身元保証人を求めない企業もありますが、その有無は実際に入社手続きを行ってみないと分かりません。

身元保証人が負う責任

身元保証人は、信用のお墨付きを与えるだけでなく、さまざまな責任を負います。具体的には、身元本人の行為によって生じた損害を補償する責任を負います。しかし、どのような損害を補償することになるかは、そのときになってみないと分かりません。

場合によっては、身元保証人に著しく大きな補償責任が発生する可能性があります。そのようなリスクを回避するために、身元保証人には期限が定められています。

身元保証人の期限は原則3年、長くても5年です。期限が切れたら更新できますが、その際も5年が限度です。身元保証人は大きな責任を負う可能性があるため、誰にでも依頼できるものではないといえるでしょう。

身元保証人は解除も可能

身元保証人は、以下の条件下では自ら解除することもできます。

  • 身元本人が業務上不適任・不誠実で保証人の責任問題を引き起こす恐れがある場合
  • 身元本人が重職に就き、責任が大きくなった場合
  • 身元本人が保証人の目の届かない遠隔地で勤務することになった場合

上記のいずれかの状況が発生したとき、会社は身元保証人にその旨を通知する義務があります。この通知を受け、保証人の責任が大きくなりすぎることが懸念される場合は、解除することが可能です。

誰になってもらえばよい?

資料に印鑑を押す男性

(出典) photo-ac.com

身元保証人は、いざというときに自分以外の人の責任を負う立場にあります。そのような重要な役目を、誰に頼めばよいのでしょうか?身元保証人を依頼できる人と、依頼するときの注意点を解説します。

一般的な身元保証人の条件

身元保証人の条件は法律で決まっているわけではなく、企業が独自に設定しています。しかし、多くの場合は経済的に自立している成人であることが条件です。

一般的には、両親や配偶者に設定するケースが多くなっています。ただし、専業主婦・主夫や年金受給者の場合は、認められない場合もあるので注意が必要です。

そのほかには、きょうだいや親戚が挙げられます。友達が身元保証人になることも可能でしょう。この場合、親密度は関係ありません。

保証人を頼む際の注意点

身元保証人を頼む際は、本人の同意を得ることが最重要です。万が一のときに責任を負う立場なので、勝手に名前を借りるとトラブルの元になります。

保証人が遠方にいて直接サインをもらえない場合は、代筆してもよいか会社に相談しましょう。また、家族に保証人になってもらう場合は、自分と違う印鑑でないと受け付けてもらえない場合があります。

友人に頼むときは、身元保証人の責任範囲や期間をしっかりと説明し、正しい情報を伝えた上で同意を得ることが重要です。「保証人」という言葉に、抵抗を示す人もいるかもしれません。無理強いをするのではなく、きちんと納得してもらうことが大切です。

引き受け可能な人がいない場合

デスクで相談する二人の女性

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自分の周りに身元保証人を頼める人がいない場合の対処法を解説します。落ち着いて対処することが重要です。

会社に相談する

どうしても頼める人がいない場合は、まずは人事にその旨を相談しましょう。場合によっては、身元保証人なしで了承してくれる場合もあります。やむを得ない事情があることを話せば、きっと解決策を考えてくれるはずです。

しかし、業界や業種によってはどうしても身元保証人を設定しなければならないケースもあります。その場合は別の対処法を考える必要があるでしょう。

身元保証人代行会社を利用する

どうしてもあてがない場合は、身元保証人代行会社を利用するという選択肢があります。その名の通り、数万円の費用を払って、自分の身元保証人を引き受けてくれる業者のことです。

近年では家族のあり方も多様化しているため、保証人代行会社を利用する人も増えています。

転職・就職の際の身元保証の代行だけでなく、賃貸や借金の保証人も引き受けてくれることが特徴です。法人が身元を保証している分、信頼度が高いと考える企業も存在します。しかし、代行会社の利用が認められていないケースもあるので、人事に相談してから利用しましょう。

身元保証人代行会社の選び方

身元保証人代行会社は数多く存在するので、慎重に選ぶことが大切です。主なチェックポイントは、下記の2点です。

  • 弁護士や社会保険労務士などの有資格者が運営している
  • 料金が明確で、相場との乖離が小さく、追加料金もない

身元保証人代行会社の中には、誰が運営しているか分からない実態不明の会社も存在します。そのため、弁護士の資格を持っているなど、信用のある人が運営している業者を選ぶのがポイントです。

また、保証人代行のサービス料の相場は5~10万円です。料金がそこから大きく乖離する場合は、避けた方が無難でしょう。

身元保証人に関するQ&A

連帯保証人のサイン欄

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身元保証人に関してよくある質問に回答します。ここで疑問点を解消し、身元保証人についてしっかりと理解しましょう。

連帯保証人との違いは?

身元保証人と似た言葉に、連帯保証人があります。両者の違いは、責任範囲の広さです。連帯保証人は、基本的に借金の肩代わりをする責任を負います。身元本人が借金や損害額を支払えない場合、連帯保証人はその全額を支払わなくてはなりません。

一方で、身元保証人は、身元本人が起こした損害全般を補償する義務を負うのが特徴です。しかし、身元保証人が損害の100%を補償することはほとんどありません。損害に対する責任度合いや事情を考慮した上で、賠償額が決定します。

また、2020年の改正民法により、身元保証書には保証限度額を明記することが義務付けられています。そのため、身元保証人が限度額以上の金額を支払うこともないでしょう。

参考:保証に関する民法のルールが大きく変わります | 法務省

自分で書いた場合のリスクは?

頼みにくいからと、人の名前を勝手に身元保証人として使うのは避けましょう。身元保証書を自分で書くのはルール違反であり、最悪の場合内定取り消しや、入社後でも解雇される恐れがあります。

また、会社によっては、身元保証人に確認の連絡を入れることもあります。

身元保証を頼みたい人がいても、気軽に依頼できる関係性でないこともあるでしょう。しかし、勝手に書いたときの方がトラブルが大きくなるリスクがあります。同意を得た上で身元保証人になってもらいましょう。

転職活動終了まで気を抜かずに頑張って

履歴書を書く女性

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内定をもらい一安心しても、入社までに準備すべきことはたくさんあります。身元保証人の設定もその1つです。会社によってどれだけ重視するかは異なり、場合によっては身元保証人を必要としない会社もあります。

身元保証人は自分の行為によって発生した損害の責任を負う人のことで、通常は配偶者や両親に依頼します。頼れる人がいない場合は、保証人代行会社を使うのも手です。

身元保証人を依頼する際は、必ず本人の同意を得るようにしましょう。