履歴書の特記事項を、どのように書けば正解なのか分からない人もいるでしょう。何を書いたらよいか分からないまま適当に埋めてしまうと、選考で不利になる可能性があります。書き方のポイントや、記載すべき内容の例文などをチェックしましょう。
特記事項とはどんな意味か
履歴書には特記事項を書く欄が設けられている場合もあれば、そうでない場合もあり、書き方に迷う人もいるでしょう。間違った情報を書き込まないために、どんな意味を持つ欄なのか解説します。
特別に知っておいてもらうべき項目
履歴書の特記事項は、応募先に特別に知らせたい情報を記載する欄です。企業に採用の可否を判断してもらうために、履歴書にはさまざまな情報を記載します。
採用選考で何を重視するかは企業によって異なりますが、一般的には、学歴・職歴・志望動機などが重要な項目です。
特記事項には履歴書のメインとなる情報ではないものの、選考に当たって知っておいてもらった方がよいと判断した情報を記載しましょう。
履歴書の書式によっては、名称が「通信欄」や「本人希望欄」となっている場合もありますが、用途は同じです。
履歴書以外にも使われる
特記事項は、履歴書以外の書類にも出てくる言葉です。賃貸借契約書や報告書などでも使われるので、意味を覚えておきましょう。
ほかの項目に当てはまるものがない場合に、説明が必要な事柄や追記すべき事項を書く欄として使います。履歴書に書く場合と同様にメインの内容ではないものの、重要な情報に対して使用するのがポイントです。
似たような使い方をする言葉に「備考」がありますが、こちらはメインの内容を補助するためのもので、特記事項に比べると重要度が低い内容を記載します。
履歴書の特記事項に記載すべき内容
特別に知ってもらいたい情報といっても、具体的に何を書いたらよいか分からない人もいるでしょう。履歴書の特記事項に書くべき内容の例を紹介します。
入社可能日・希望職種に関する内容
人手不足に苦しんでいる企業にとっては、応募者がいつから働けるのかは、重要な情報です。企業が求める能力や人物像に大差がないなら、できるだけ早く働き始められる方を採用したいと感じるケースは少なくありません。
現職での引き継ぎにかかる時間や現在の状況などを考慮し、無理のない入社可能日を書きましょう。
また、複数の職種で人材募集している場合も、希望の職種を記載しておくと分かりやすくなります。職種名は省略せず、応募要項に記載されている正式名称を書きましょう。
【例】
・入社可能日:2022年8月31日より就業可能です。
・希望職種:営業職を希望いたします。
連絡可能時間帯
在職中に転職活動をする場合、連絡を取りづらい状態になりがちです。採用担当者がなかなか連絡が取れないという事態を避けられるように、連絡可能時間帯を記載しておきましょう。
勤務時間中に連絡をもらっても対応できない場合が多いなら、あらかじめ連絡可能時間帯や連絡先を書いておくと手間を取らせず親切です。
【例】
・連絡可能時間帯:在職中のため平日は13時~14時、17時以降であれば電話に出られます。留守電やメールをいただいたときは、できる限り速やかに確認し対応いたします。(連絡先:電話番号やアドレスなど)
転居予定・転居の意思
履歴書の住所欄には現住所を書きますが、履歴書の提出後に転居を予定している場合は、転居先を記載しておきましょう。詳しい住所が決定していない場合、○○市・○○区など分かる範囲で構いません。
人によっては、仕事が決定したら会社の近くに引っ越そうと考えている人もいるはずです。遠くから通勤するのは大変な上に交通費もかかるので、会社によっては通勤時間を気にする場合もあります。
転居の意思があると伝えることで、入社への意欲を示せるところもポイントです。通勤時間が現住所から1時間半以上かかる場合は、転居の意思を伝えると有利になる可能性があります。
【例】
・○年○月○日以降、○○(住所)に転居予定です。
・採用いただいた場合には、会社の近くに転居できます。
ブランクがある理由や転職理由
退職から転職までに長いブランクがあると、不安を感じる採用担当者は少なくありません。働いていない期間に何をしていたのかを、簡単に書いておくとよいでしょう。
転職回数が多い場合は、性格的な問題があるかもしれないと感じさせやすく、採用担当者が理由を知りたがる可能性が高いといえます。
自己都合以外の退職理由がある場合は簡単に理由を書き、身勝手な都合で転職したのではないとアピールしましょう。
【例】
・2017年11月から2018年8月までの期間は病気療養をしていました。現在は業務に支障はありません。
・○○業界からの撤退により業務内容が大きく変わったため、やむを得ず転職しました。
持病や家族の介護など
持病があり、通院しなければならない場合は、その旨も記載しておくとよいでしょう。通院に際して遅刻や早退などが必要であれば、そちらも知らせておきます。
問題なく業務ができるか判断してもらうために病名や通院の頻度を書き、業務に支障がない点もアピールしましょう。
隠していると、採用後に問題になる可能性があります。もし健康状態を記載する欄があるならば、そちらに記載して構いません。
家族の介護や病院への送迎などの必要があって転勤が難しかったり、勤務地が限定されたりする場合も特記事項に記載します。
【例】
・○○の持病があり、半年に一度の定期検診を受けています。検査に時間がかかるため、半日休暇をいただく予定です。現在の健康状態に問題はなく、業務に支障はありません。
・家族の介護があり現在の住居を離れられないため、○○店での勤務を希望します。
資格の取得予定
希望の職種に関連した資格を取得する予定がある場合、記載しておくと熱意を伝えられます。何も勉強をしていない人に比べ、向上心があると判断してもらえるので有利です。
資格取得のために学校へ通ったり、勉強するために職歴にブランクができたりした場合も、その旨を記載すると空白の期間中に何をしていたのかを明らかにできます。
【例】
・○○の資格取得を目指し、勉強しています。○月の試験に挑戦し、取得予定です。
アピール欄としても使える可能性がある
特記事項は冒頭に挙げたように備考欄として使うことが基本ですが、場合によっては自身の活動などをアピールすることもできます。
職種に関係のある資格を取得予定の場合
たとえば応募する職種によっては、資格が有利に働くこともあります。資格にはさまざまなものがあり、持っていると即戦力になったり、業務に役立ったりすると判断してもらえるものもあるでしょう。
取得済みの資格の場合は履歴書に別途記入する欄がありますが、取得を目指している段階では「特記事項」を効果的に活用できます。業務に関係のある資格を取るために勉強中であるなら、次のように記入しましょう。
【例文】
〇〇(資格名)取得のため勉強中です。
また、資格取得の試験を受ける予定がある場合は、次のように記入します。
【例文】
〇〇(資格名)の試験を〇月に受験予定です。
仕事に対する本気度・熱意が伝わり、アピールにつながるでしょう。
ユニークな経験
これは中途採用よりも、新卒採用や第二新卒採用のような、いわゆる「ポテンシャル重視」と呼ばれる場面に適している内容です。
たくさんの履歴書の中から、企業側に「この人物と会ってみたい」「詳しく話を聞いてみたい」と、興味を持ってもらえるようなユニークな経験をもししていれば、それを書くのも良いでしょう。応募先の企業に関連性のあるものや、自分を向上させることができた経験であるとより良いです。
- ボランティア経験がある
- 自転車で日本一周をしたことがある
- 海外留学をして学んだことがある
- 日本百名山を制覇した
ただし、これは書いたからといって必ずしもプラス評価になるわけではないので、無理に書く必要はありません。
特記事項の書き方のポイント
特記事項は、好きなように書けばよいわけではありません。間違った書き方をすると、悪い印象を与える心配があります。どんな書き方をすべきなのか見ていきましょう。
箇条書きで簡潔に記す
特記事項は、必要なことだけを簡潔に書きましょう。大量の細かい文字で欄を埋めてしまうと採用担当者が読みにくく、印象がよくありません。読み手のことを考えない書き方は、マイナスポイントです。
箇条書きで見やすく書き、一文が長くなりすぎないように注意します。要点を簡潔にまとめられないと、書類作成能力に問題があると判断されるでしょう。
採用担当者は多くの履歴書を目にするので、読み手に負担をかけない点を意識し、ひと目見て内容が分かるように書くことが大事です。
会社側に配慮した書き方を心掛ける
書き方に迷ったら、会社側がどう感じるかを考えてみましょう。伝え方を間違うと、悪い印象を与えます。採用面接の段階で、あれもこれもと要求が多い人を積極的に採用したいと思う人はいません。
採用しても何かと自分の都合を優先し、スムーズな業務が難しいのではと思われてしまう可能性があります。選考の初期段階であることを忘れず、できるだけ謙虚な書き方を意識するのがおすすめです。
希望だけでなく理由も簡単に書き、やむを得ない事情を理解してもらうことを忘れないようにしましょう。
特記事項の注意点
特記事項を書く際に、守りたい注意点があります。どんな点に注意すべきなのか見ていきましょう。
長文でのアピールはNG
特記事項はほかの項目に比べると比較的自由に書き込めますが、何でも自由に書いてよいわけではありません。意味を履き違えて、長文でアピールをするのはやめましょう。
特記事項の意味を理解しておらず、常識がない人物だと思われるリスクがあります。自分のアピールポイントは志望動機や自己PRで十分に伝えるようにし、特記事項には特別に知ってほしいことのみを書きましょう。
特記事項の意味を分かっていないと、フリースペースのように使ってしまいがちです。書くことが大量にあって長文になってしまう場合は、「余計な情報を書いていないか」「ほかの項目に盛り込むべき内容を書いていないか」をチェックしてみましょう。
身勝手だと思われてしまう希望は避ける
大した理由があるわけではないのに勤務地や勤務時間の希望などを書くと、身勝手な印象を与えてしまいます。特記事項に希望を書く際は、やむを得ない事情がある場合だけにしましょう。
どうしても譲れないのであれば給与や待遇に対する希望を書いても構いませんが、よい印象を与えない可能性があります。
特別な事情がないのに休日や勤務時間に関する希望を書くと、働く意欲を疑われかねません。待遇に関する不安があるならば、面接時に口頭で確認するとよいでしょう。
書くことがない場合の記載方法
特記事項に書くことがないケースもあります。何も書かずに提出してもよいのか悩んだ場合、どうすべきなのかチェックしましょう。
空欄はNG
履歴書の各項目は空欄にせず、何かしらを書き込む必要があります。書くことが思い付かない場合も、空欄にしたまま提出するのは避けましょう。
空欄のままだと「書き忘れているのではないか」と思われてしまい、書類作成能力に問題があると感じさせやすくなります。
空欄が多い履歴書は応募意欲が薄いと判断されるので、どうしても書くことがない場合は「特になし」と書くなどして、空欄のままにしないのがマナーです。
「貴社規定に従います」がベター
特記事項に何も書くことがない場合は「貴社規定に従います」と書きましょう。「特になし」でも間違いではないですが、そっけない印象を与えてしまう点が心配です。規定に従うと書けば、謙虚さを伝えられます。
持病や介護の必要など、知らせないことで後々会社に迷惑をかける可能性があるものや、どうしても伝えておいた方がよいと思える内容に関しては、書いても問題ありません。
しかし、選考が進んでいない段階であれもこれもと記載してしまうと、多くの条件をクリアしなければ働いてもらえない人というイメージを与えてしまいます。選考を次の段階に進めるという目的を忘れないようにしましょう。
どうしても譲れない条件は特記事項に書こう
特記事項には、どうしても譲れない条件を記載し、やむを得ない事情や理由を簡潔に添えましょう。特別に知ってもらうべき情報を記載する欄なので、長文でのアピールは避け、簡潔な内容にまとめます。
読み手を意識し、謙虚な気持ちが伝わるような書き方をすることが大事です。書くことがない場合は「貴社規定に従います」と書き、面接に進んでから細かい条件を擦り合わせるようにしましょう。