履歴書を作成する際、「特記事項」という欄を見て何を記載するのか迷った経験はないでしょうか。特記事項は、採用担当者が見る重要なものです。書き方を誤るとマイナスの印象を与えてしまうため、特記事項の重要性や書き方のコツを把握しておきましょう。
この記事のポイント
- 特記事項の役割
- 入社可能日や引っ越し予定、持病やブランク期間など、入社する前に企業と共有しておきたい特別な事柄を書くための欄です。
- 記載を避けた方がよい内容
- 給与・休日などの待遇面に関する希望、特記事項に該当しない内容は、企業にマイナスの印象を与えます。
- 何も書くことがない場合の対処法
- 空欄のまま提出するのはマナー違反となるため「貴社の規定に従います」と一言添えましょう。
特記事項とは?
特記事項は、重要な事柄や事情を記載するための項目です。よく目にするのは履歴書・職務経歴書ですが、それ以外の書類にも使われています。
はじめに、特記事項の概要を履歴書とその他に分けて解説します。書類ごとの使い方を把握しておきましょう。
履歴書における特記事項
履歴書では、業務や採用に関係する特別な事柄を記載するために使われます。「本人希望欄」や「通信欄」と書かれることもあり、表記は履歴書により変わります。項目名にどれが使われているとしても、基本的な役割は変わりません。使用する履歴書に特記事項欄がない場合は、類似する項目がないか確認しましょう。
特記事項欄の場所は、一般的な横型の履歴書であれば右側のページの下辺りです。履歴書にある項目の中では、比較的大きいスペースが設けられています。履歴書でいう特別な事情とは、入社可能日や取得が見込まれる資格、持病の有無などです。これらを記載することで入社後のミスマッチだけでなく、選考もスムーズになります。
履歴書以外でも使われる
履歴書以外では、主にビジネスシーンで用いられます。例えば、契約書・報告書・日報などが挙げられ、特記事項のある代表的な契約書は不動産の賃貸契約書や業務委託契約書です。
業務委託契約書では、業務に関する特筆事項が記載されます。代表的なものは個人情報取り扱いに関する特記事項、情報セキュリティーに関する特記事項です。報告書では、業務報告書や会議議事録などに欄が設けられます。報告内容において、特に重要な点や補足情報を記載するのが一般的です。
その他にも診療報酬明細書のような申請書など、日常生活からビジネスで使われるものまで幅広く用いられます。記載内容は書類によって変わりますが、重要項目である点は変わりません。
特記事項とは?記載する内容と記入例
特別な事柄に該当するのは入社可能日や引っ越し予定、連絡可能日など業務や採用に関することです。「特記」のため、単純な希望ではない内容を記載します。
具体的な内容と記入例を解説します。注意点も併せて紹介しますので、基本をマスターしましょう。
入社可能日や希望職種がある
入社可能日や希望職種は、企業側が採用計画を立てる上で重要な情報となります。明確に伝えることで入社後のミスマッチを防ぎ、スムーズなスタートを切れるでしょう。
【記入例】
- 2025年5月31日以降の入社を希望いたします。
- 入社可能日:2025年6月1日より就業可能です。
- 簿記の資格を貴社での業務に生かしたいため、経理部への配属を希望いたします。
入社可能日や入社希望日を書く際は、具体的な日付を提示するようにしましょう。明確な日付が分かることで、企業側も調整しやすくなります。
希望職種や希望部署に関しても同様です。スキルや経験がどのように生かせるのか、具体的な部署名や職務内容を記載することで、企業側に熱意を伝えられます。
「貴社のご希望に沿います」といった文面を末尾に書くことで、柔軟な姿勢を示せます。丁寧な印象も与えられるため、締めの言葉として用いるようにしましょう。
連絡希望時間がある
企業からの連絡を受けられない時間帯が分かっている場合は、事前に知らせておくとスムーズです。「午前」や「昼」などは幅が広いため、相手が判断しやすいように明確に書きましょう。
【記入例】
- 在職中のため、平日の12~13時、17時以降であれば対応可能です。
- 火曜日のみ19時以降でないと電話に出られません。それ以外の曜日であれば、終日対応可能です。
時間に加え曜日も制限される場合は、両方を細かく記します。万が一電話に出られなかったときのために、折り返しをする旨も記載しておきましょう。
折り返しについては、末尾に「留守電やメールをいただいたときは、速やかに対応いたします」と書きます。電話番号やメールアドレスを添えておくと、より丁寧になります。
転居の予定がある
地元に戻る、配偶者の転勤について行くなど、近い将来住所が変わる場合は、事前に知らせておきましょう。これにより、通勤に関する問題を事前に解決できます。
【記入例】
- ◯月◯日に(都道府県および市区町村)へ転居を予定しております。
- 採用となりましたら、通勤圏内へ転居いたします。
引っ越しの時期や引っ越す場所がはっきりしている場合は、それぞれを具体的に記載しましょう。また、新住所が決まっている場合は末尾に住所も記載します。
履歴書の住所欄は現住所となるため、企業側は現住所を見て勤務地を決めることもあります。引っ越したにもかかわらず通勤時間が長くなるという事態にならないよう、忘れずに記載しましょう。
また、引っ越しの予定を伝えることで入社の意欲を示せます。引っ越しが採用後であっても、引っ越しの意思がある場合は必ず伝えましょう。
ブランク期間がある
職務経歴にブランクがある場合は、誤解を与えないように理由を明確に説明しましょう。理由が分かることで、企業側もブランクに対しての不安を解消できます。
【記入例】
- 2024年10月から2025年6月まで、母の介護に専念するため休職しておりました。
- 2024年9月から2025年3月まで、療養のため休職しておりました。
特記事項に書くブランクの理由は、やむを得ない事情があったことを伝えるものです。そのため、期間・理由どちらも正直に書きましょう。
例文のように介護や病気で休職している場合は、末尾に現在の状況を書いておくと業務への影響がないことを伝えられます。その際は「現在は業務に支障ありません」と記載します。
持病や家族の介護がある
持病がある、家族の介護をしているなど業務に影響を与える可能性がある場合は、特記事項に書いておくと安心です。応募時点で伝えておけば、理解と協力を得やすくなります。
【記入例】
- ◯◯の持病があり、定期検診のために午前休を半年に一度いただきたく思っております。
- 祖父の介護により現在の住所から通勤したいため、◯◯店への配属を希望いたします。
持病がある場合は、病名と通院の有無を記載します。通院により休暇や早退、遅刻が予想される場合は、分かる範囲で頻度や時間帯を記載しましょう。
企業が知りたいのは、特記事項に書かれた事情が日常業務へどう影響するかです。持病の有無を伝える必要があるときは、業務を行う際にどのような影響があるのかを記載しておくと、採用後のトラブルが起こりにくくなります。
特記事項とは?アピールにも使用可能
特記事項は、ネガティブな情報だけを記載する欄ではありません。資格取得の予定など、入社後に生かせるスキルや意欲をアピールする場としても活用できます。
【記入例】
- 日商簿記1級の資格取得に向けて学習中です。2025年6月に受験を予定しております。
- 学生時代にカナダへ留学をしておりましたので、日常会話程度の英語を話せます。
資格欄はすでに取得しているものしか書けないため、資格取得に向けて学習している場合は特記事項欄で伝えましょう。資格のないスキルに関しても、書いておくことをおすすめします。
しかし、過剰なアピールはマナー違反となり、かえって悪印象を与えてしまいます。特記事項は補足情報を伝えるための場であることを理解し、必要な情報のみを記載するよう心がけましょう。
特記事項に記載しない方がよい内容
特記事項は、伝えたいものであれば何でも書けるというわけではありません。内容によっては印象を悪くすることもあります。
ここでは、記載を避けた方がよい内容を解説します。履歴書の基本ともなるため、しっかりと理解しておきましょう。
休日や給与への希望
自分にとっては重要でも、給与・待遇面を書くことでマイナスの印象を与えてしまいます。希望欄でないこともあり、仕事内容よりも条件面を重視していると勘違いされてしまうでしょう。
給与に関しては、転職であれば交渉可能です。しかし、給与交渉は面接の中で行うもののため、書面で使えるのは好ましくありません。
休日に関しても同様です。持病などやむを得ない事情がある場合は仕方ありませんが、理由のない個人的な要望であれば自分勝手な人だと思われてしまいます。
譲れない条件がある場合は、交渉するよりも条件を満たす企業へ応募する方が効率的です。求人情報を確認した上で不明な点があれば、面接で質問するようにしましょう。
必要のない内容
履歴書に設けられた欄はそれぞれに役割があります。趣味や特技といった自己PR、業務に関係のない個人的な情報は、特記事項にそぐわないため記載を控えましょう。
また、希望の書き過ぎも良くありません。何らかの理由から特定の職種・部署を希望する場合は記載した方がよいですが、書き過ぎることでそこに執着していると思われてしまいます。
趣味や特技をアピールしたい場合は、趣味・特技の欄、もしくは自己PR欄に記載しましょう。入社の意気込みに関しては、職務経歴書やエントリーシートに記載できます。
面接では希望職種を聞かれる場合があります。特記事項に書くほどでもないが、希望を伝えたいという人は、面接でその思いを伝えるのも一案です。
特記事項を書く際の注意点
特記事項は、企業に自身の状況を理解してもらうために存在します。しかし、だらだら書いたり、要望ばかりを並べたりするのはおすすめできません。
ここでは、記載時の注意点を2つ解説します。マナーを守りながら、必要なことをしっかりと伝えましょう。
箇条書きで簡潔に記載する
採用担当者が短時間で内容を把握できるよう、簡潔に記載することが大切です。長文でだらだら書くのではなく、短い一文にまとめ、箇条書きで並べましょう。
採用担当者は、履歴書にある全ての項目に目を通さなくてはなりません。箇条書きにすることで見やすくなり、文章よりも要点を伝えやすくなります。
特記事項欄が狭い履歴書では、狭い枠の中に文字が羅列することで読みづらくなります。読みにくさから見落としがあっては書く意味がなくなるため、短く簡潔に書くことを心がけましょう。
会社側に配慮する
特記事項に要望や希望を書くことは失礼に当たりませんが、書き方を誤るとマイナスの印象を与えてしまいます。中でも注意したいのは、断定的な表現です。
「通院のため水曜日は遅刻します」などのように、一方的な言い方は好ましくありません。企業の協力や理解を得るために特記事項があるため、企業側に配慮した表現を使いましょう。
また、配属先を希望する際も、ただ「希望します」だと主張するだけになってしまいます。企業の方針に従うことを前提とした上で希望する、と伝わる文章を考えましょう。
特記事項に書くことがない場合は空欄でもよい?
履歴書は、全ての欄を埋めてから提出するのがマナーです。特記事項欄に書くことがないとしても、空欄のままでの提出は避けましょう。
空欄があると書くことがないのか、書き忘れなのかが即座に判断できません。不備ではないことを伝えるためにも、何らかの情報を記載するようにしましょう。
最も無難な表現は「貴社規定に従います」です。「特になし」「特にありません」はマナー不足を疑われるため、特記事項欄に限らずどの欄でも使わないようにしましょう。
特記事項は条件を簡潔に記載しよう
引っ越しの予定がある、持病があるなど何らかの事情を抱えている場合は、企業と共有するために特記事項欄へ記載します。書くことが何もなかったとしても、空欄のまま提出するのは控えましょう。
自己PRなどとは違い、特記事項は簡潔に分かりやすく書くのが基本です。また、企業からの理解を得られるように、言葉遣いにも注意しましょう。
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