やりがい搾取かもと思ったら。働き続けるリスクと改善策を紹介

やりがい搾取は、さまざまなよくない問題を生み出しますが、仕事を頑張る気持ちが大きい人は、搾取を受けていることに気付かず頑張り続けてしまう心配があります。やりがい搾取のリスクや、対処法についてチェックしましょう。

やりがい搾取ってどういう意味?

在宅ワーク

(出典) photo-ac.com

やりがい搾取は、従業員の気持ちを利用した悪徳行為です。意味を知らずに仕事を続けていると、さまざまなリスクを負うことになってしまいます。

自分がやりがい搾取の被害者になっているのか知りたくても、正しい意味が分からず見分けるポイントを理解できていない人もいるはずです。まずは、どんな意味なのか見ていきましょう。

やりがいを利用して不当な働き方を強いること

やりがい搾取とは、企業が「仕事へのやりがい」につけこんで、従業員に対して道理に反した働き方を強いることです。やりがいとは満足感・達成感などがあることを意味し、頑張った分だけの見返りがある仕事なら、やりがいがあるといえます。

やりがい搾取をする企業は仕事へのやりがいを理由に、従業員に以下のような働き方を強いることが特徴です。

  • 業務量に見合わない低賃金で雇う
  • 残業代を支払わない
  • 長時間労働を強いる

賃金は労働の対価として支払われますが、やりがい搾取は本来もらえるべきものを受け取れない状態となっています。

やりがい搾取が常態化している企業は「未経験でも責任のある立場になれる」「若い世代が中心に活躍中」などの魅力的な言葉を使い、人を集めようとする傾向があります。

人件費を抑えたい企業が行いがち

経営の悪化やモラルの低下などが問題となっている企業は、やりがい搾取をしがちです。極限まで人件費を抑えないと利益を出せない状態に陥っていたり、利益を重視して従業員を大切にしない考え方をしたりしていると、起こりやすいといえます。

また、従業員を守ることは考えず、上層部だけが生き残ることができればよいと考える企業でもよく見られます。

「従業員が頑張ってくれたから企業が成長できた」という謙虚な気持ちを持っていない身勝手な経営者は、やりがい搾取をする傾向にあるので注意しましょう。

やりがい搾取に遭いやすい人の特徴

パソコンで作業する女性

(出典) photo-ac.com

しっかり者の人でも、被害に遭う可能性があるのがやりがい搾取の怖いところです。被害を受けやすい人の特徴を見ていきましょう。

人のために働きたいという思いが強い人

仕事やプライベートで「自分が頑張らないといけない」と思い込みやすい、自己犠牲精神のある人はやりがい搾取の被害者になりがちです。やりがい搾取をしようとする企業は、こうした人の性質を見抜いて利用します。

本人は付け込まれている自覚がないまま、低賃金・劣悪な環境でもやる気を失わずに頑張り続けてしまうのです。

人のために働きたいという思いが強い人は、状況が悪くても何とかしようと考える責任感の強さも相まって、無理をしてしまいます。感謝の言葉を言われると満足して余計に頑張るタイプなので、やりがい搾取されていることになかなか気付きません。

社会人経験が少ない若者

社会人経験が少ない若者も、やりがい搾取のターゲットになりやすいといえます。ほかの企業で働いた経験が十分にあれば、これまで雇われていた会社と待遇・環境を比較して異常だと気付きますが、経験がないとおかしな状況に置かれているとは思いません。

周囲に指摘してくれる人がいれば、自分が搾取されていると気付くチャンスはありますが、会社を信頼していると問題を見過ごしてしまう心配があります。

社会人経験が少ない人は、適正な労働時間や賃金などが法律で決められていると知らないケースもあり、被害者になりやすいのです。

自己評価が低い人

「自分なんて大した能力がない」と思っている人も、やりがい搾取の対象になりやすいでしょう。

十分な賃金を得られず、満足に休暇をもらえないような状況であっても、自分はそれくらいの待遇で満足しなければならないと思ってしまいがちです。

自己評価が高い人は会社のやり方が間違っていると思えますが、自己評価が低く自信に欠ける人は自分が間違っているのだと感じて、現状を受け入れてしまいます。

謙虚さを美徳だと感じる人は多いものですが、あまりにも自分を安売りすると付け込まれる原因となるのです。

起きやすい業界の特徴

カフェのウエイター

(出典) photo-ac.com

どんな業界でもやりがい搾取が起きるわけではありません。事前に特徴が分かっていれば、対策を立てやすいといえます。やりがい搾取が起きやすい傾向がある、業界の特徴を見ていきましょう。

憧れの対象となる業界

憧れを持つ人が多い職業は、やりがい搾取が起きやすいといえます。募集人員に比べ応募者が多い仕事は、劣悪な条件であっても人が集まりやすく、問題があっても放置されがちです。

例えば、映像制作・アニメ業界などのクリエイティブな職業や、アパレル業界などは自分の夢として憧れる人が多く、その職業に就けるだけで幸運だと感じやすいでしょう。

「好きなことを仕事にしているのだから、賃金が安く休みがなくても構わない」という思考に陥りやすく、雇用主も同じ思考でいるケースが多いのです。

企業の体質として劣悪な労働条件を改善しようとしないことが当たり前であり、異を唱える人を無視したり困った人物扱いしたりするのが普通なのであれば、注意が必要です。

人を雇い入れやすい業界

働き手を簡単に雇える業界は、労働環境を問題視する人がいても、状況が改善しないままになりやすいでしょう。

条件が悪くて辞める人が多かった場合でも、働き手が集まる場合は業務が立ち行かなくなる可能性が低いので、経営陣が問題を解決しようとしないのです。

塾講師・コンビニ・飲食店などの学生アルバイトが集まりやすい業界や、大量のアルバイトを採用するケースが多いレジャー業界などは、人の入れ替わりが激しいこともあり、労働環境を改善する機会がないまま突き進むことが多いといえます。

営業時間が長いサービス業

コンビニや営業時間が長い飲食店などのサービス業は、アルバイトを多く雇い入れます。しかし、早朝や深夜などの働き手が集まりにくい時間帯は、正社員がシフトに入って調整することが大半です。

営業時間が長いサービス業は、もともと労働時間が長い上に残業時間も多くなりがちで、やりがい搾取が起きやすい環境になっています。

立ちっぱなしで労働するので肉体的な負担が大きく、ノルマが決まっている企業の場合は、心理的なプレッシャーを負うことも珍しくありません。

自費で自社の製品を購入しなければならないルールを強要される企業もあり、生活の質を維持することが難しいケースもあるでしょう。

やりがい搾取のリスク

悩む男性

(出典) photo-ac.com

働いている本人が問題を感じていない場合もありますが、やりがい搾取が続くことはリスクが大きいといえます。どんなリスクがあるのか、チェックしましょう。

給料が上がらず生活が苦しくなる

やりがい搾取が起きている職場は、最低賃金のルールが守られていなかったり、時間外労働や深夜労働などに対する割増賃金が支払われなかったりといった、違法行為が横行しています。

本来は受け取れるはずの賃金や残業代が支払われないままになっており、金銭的な余裕のある生活ができないケースが珍しくありません。

給料が上がることもほとんどないか、上がっても微々たる金額である場合が多いので、生活が苦しくなっていきます。どんなに好きな仕事でも、満足に給料をもらえないのであれば、やがて生活できなくなってしまうでしょう。

心身の健康を害する

どんなにやりがいがある仕事でも、金銭的な余裕もなく長時間の労働を続けていくことが当然の状態になっていると、心身の健康を害してしまうでしょう。

長時間労働で肉体的な疲労が蓄積した状態では、慢性的に疲れていたり気持ちが沈んだりしやすいのです。満足のいく給料を得られないことで、仕事に対する自信も失われていきます。

何のために仕事を続けているのか分からない状態になれば、モチベーションが著しく低下してしまうでしょう。心身の健康を害すれば、憧れだった仕事を諦めざるを得ない事態になることもあり得ます。

やりがい搾取だと感じたときの対処法

悩む女性

(出典) photo-ac.com

やりがい搾取されていると感じたとき、何もアクションを起こさないままでは状況が改善しません。どんな対処法があるのか、見ていきましょう。

健康を守るために休息を取る

やりがい搾取が横行している企業では、有給休暇が取りづらい雰囲気になっていたり、休日出勤が当たり前の状態になっていたりしますが、自身の健康を守るには休息が必要です。

疲労が蓄積した状態では正常な思考ができず、まともな対応が困難になってしまいます。まずは、休むことを考えましょう。

劣悪な環境でも仕事を続けられる人は「自分が頑張らないと」と思い無理しがちですが、健康を損ねてしまっては結局仕事を続けられなくなります。

また、休まずに頑張り続けると、経営陣が問題に気付かないままになってしまうことも懸念されます。現状のままでは業務に支障を来すと分かれば、経営陣が対応方法を考え始める可能性もあるかもしれません。

第三者機関に相談する

やりがい搾取が続くと、心身ともに疲弊していきます。労働環境の改善を訴えても、会社側が全く聞く耳を持たず状況が改善しないことは珍しくありません。

困ったときは弁護士や労働組合など、第三者機関への相談を視野に入れることをおすすめします。給与明細や勤務状況などの資料を集め、自分が置かれている状況を客観的に説明しましょう。

専門的な立場から、やりがい搾取をなくすためにできることや、法律的なアドバイスを受けられます。有給休暇の利用を拒否されたり、残業代の未払いがあったりすることが明らかなら、損害賠償請求することも可能です。

転職活動を始める

個人でできる活動には限界があるため、頑張っても状況が改善しない場合は転職する方法があります。体を壊して働けなくなる前に、転職することは正しい選択です。

無理し続けて倒れてしまえば、長い間働けなくなってしまう心配があります。すぐに体調が回復すればよいですが、深刻なダメージを負ってしまう可能性はゼロではありません。

会社を変えれば労働環境も変わり、状況がよくなるはずです。残業時間が少ない職種や、待遇面をしっかりと確認しましょう。

スタンバイではさまざまな職種の求人情報を扱っており、ニーズに合った求人がきっと見つかります。ぜひ、利用しましょう。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら

やりがい搾取には注意しよう!

仕事をする女性

(出典) photo-ac.com

やりがい搾取が横行している職場では、本人が気付かないうちに頑張り過ぎてしまい、限界が来て初めて問題に気付くパターンが少なくありません。

労働環境が悪く残業代の未払いが起きているなら、やりがい搾取である可能性を疑ってみましょう。

好きな仕事をやりたい気持ちに付け込むような低賃金・劣悪な労働環境を許していると、続けたくても続けられない人が増えてしまい、業界全体が衰退する原因にもなりかねません。

労働時間が長すぎる場合は、心身の健康を害する可能性もあります。環境を変えたい場合は第三者機関に相談したり、転職したりする方法がおすすめです。