育休中も給料はもらえる?手当と免除を活用して安心して子育てを

育休を取得して子育てに専念したいと思っていても、育休中に生活費を捻出できるか不安で、取得に踏み切れない場合もあるでしょう。育休中は各種手当や免除制度を利用することが大切です。各種手当や制度の条件、給付額、申請方法、注意点を説明します。

育休と給料の関係

赤ちゃんをあやす男性

(出典) photo-ac.com

まずは育休制度の仕組みと、最新の改正案の注目ポイントについて解説します。育休中における、給料の支給の有無についても確認しましょう。

育休とは

育休(育児休業)とは子育てを行う労働者が取得できる休業です。産後57日目から子どもが1歳を迎えるまで、休業できる制度です。労働者からの申し出があった場合に、取得させることが義務付けられています。

育休について定めた育児・介護休業法は、2021年6月に改正されました。改正法案の中で、特に注目すべきポイントは以下の点です。

1つ目に育休の取得条件が緩和されたこと、2つ目に男性の育休取得を促進するために、出生時育児休業(産後パパ育休)が創設されたことが挙げられます。育休の分割取得が可能になった点に加えて、育休取得状況の公表を義務付けたことも注目に値します。

育休(育児休業)と混同しやすいものとして、育児休暇が挙げられます。育児休暇は努力義務として規定された制度で、対象も就学前の子どもを持つ労働者と、育児休業と比べて対象が広いものです。

育児休暇では給料を補償する仕組みが整っていないこともあるため、取得時は注意が必要です。

参考:育児・介護休業法について|厚生労働省

育休中は基本的に無給

育休中は金銭面で生活に不安を覚えるものです。しかし企業は育休中に給料を支払う義務がありません。実際に育休中は給料を支給されないことが一般的です。

一部の企業では育休中でも給料が出ます。ただし育休前と同額の給料が支払われるのはまれです。仮に十分な給料が出ても、育休前の8割以上の賃金が支払われている場合は、育児休業給付金を受給できなくなります。

8割に満たない額でも賃金の支給額に応じて、育児休業給付金が減額されるため、最適な賃金の支給額がいくらになるか、個別のケースで判断する必要があります。

育児休業給付金は最大で賃金の67%

給料袋と電卓

(出典) photo-ac.com

育休中に受給できる主な給付金に、育児休業給付金があります。育児休業給付金を活用すれば、最大で賃金の67%に当たる金額を育休中にもらうことが可能です。

支給される条件

育児休業給付金は育休中に、雇用保険から支給される給付金です。受給するには、雇用保険に加入して保険料を支払っていることに加え、下記の4つの条件を満たしている必要があります。

  • 育休後に退職の予定がないこと
  • 育休前の2年間で、11日以上働いた月が12カ月以上あること
  • 育休中の1カ月当たりの就業日数が10日以下であること
  • 育休中に、育休前の賃金の8割以上が支給されていないこと

育休中に10日以上勤務していても、月の労働時間が80時間以下なら受給資格を得られます。さらに正規雇用に限らず、条件を満たしていれば、非正規雇用でも給付を受けられます。

給付額

育児休業給付金の給付額の計算方法は、育休開始から180日目までと181日目以降で異なります。育休開始から180日までの給付額は、以下の式で求められます。

育児休業給付金の給付額=育児休業開始時賃金日額×支給日数×0.67

支給日数は基本的に30日です。180日までは育休前の賃金の67%をもらえますが、181日目以降は50%に減ります。

給付額には上限と下限があり、毎年8月に改定されます。2021年8月1日から2022年7月31日までは、育休前の賃金の上限額が45万600円、下限額は7万7310円です。

第2子以降でも受給は可能ですが、第1子の育休取得後に11日以上働いた月があり、賃金が減っていると給付額が下がってしまいます。

給付期間と給付タイミング

育児休業給付金の給付対象となる期間は、育休の開始日から子どもが1歳の誕生日を迎える前日までです。ただし保育園に入園できない場合や、養育を行う配偶者による養育が困難になった場合は、最長で2歳まで延長が可能です。

育児休業給付金を受給できるまでに、長くて3カ月かかります。2回目以降は2カ月ごとに申請を繰り返し、2カ月ごとに給付されます。

申請方法

育児休業給付金の申請は、勤務先を通して行います。「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」を記入して勤務先に提出します。勤務先を通して、電子申請で届け出ることも可能です。

初回2カ月分の申請は、育休開始から4カ月を経過する日の属する月の末日までに済ませる必要があります。給付金の受給開始が遅れないように、出産予定日と育休を取得したい旨を勤務先にあらかじめ伝えておくことが大切です。

1度の申請だけで育休中に継続して給付金がもらえるわけではありません。給付が始まってからも、2カ月ごとに再申請が必要です。勤務先から追加で必要書類の提出を求められる場合もあるため、きちんと勤務先からの連絡を確認するようにしましょう。

月額1万5000円の児童手当

貯金額のイメージ

(出典) photo-ac.com

育休中に限らず、児童手当も受け取り家計の足しにするといいでしょう。児童手当の支給条件や支給額と支給時期、申請方法について解説します。

支給される条件

児童手当は子どもがいる家庭の家計を援助するためのものです。原則として日本国内に住んでいて、中学校卒業までの子どもがいる全ての家庭に支給されます。

子どもが産まれたときから、15歳の誕生日を迎えた後の最初の3月31日まで受給可能です。子どもの出生後からすぐに受給でき、収入の有無にかかわらず、育休中も継続して受給できます。

給付額

3歳未満の子ども1人につき、月額で1万5000円の給付を受けられます。育休中にもらえる児童手当も同額です。

児童手当はあらゆる家庭が受給できますが、養育者の収入が一定以上の場合は給付額が下がります(特例給付)。特例給付の対象となると、年齢に関係なく月額が5000円となり、もちろん育休中も同額です。

給付期間と給付タイミング

児童手当は申請を行った月の翌月から、支給の対象月として扱われます。ただし、出生日や転入日が月末に近いケースでは、申請日が翌月になっても異動日の翌日から15日以内であれば、申請月分から支給されます。

支給月は毎月ではなく2月、6月、10月の年に3回です。一度の支給で4カ月分、つまり育休中であれば1度に6万円、年間で18万円がもらえます。

例えば4月に申請を行った場合は、5月分から支給が開始され、最初の支給は6月に行われます。

申請方法

児童手当の申請は必要書類をそろえ、居住地の自治体で行います。公務員の場合は、勤務先が申請先です。

申請に当たって必要なものは以下の6点です。「申請者名義の振込先口座が分かるもの」はキャッシュカードや通帳を用意します。

「申請者とその配偶者の個人番号(マイナンバー)が分かるもの」は、マイナンバーカードかマイナンバー通知カードを用意します。印鑑は認め印で問題ありません。

  • 児童手当認定請求書
  • 申請者の健康保険証の写し
  • 申請者名義の振込先口座が分かるもの
  • 申請者とその配偶者の個人番号(マイナンバー)が分かるもの
  • 申請者の印鑑
  • 本人確認書類

育休中の社会保険料と税金

メモを取りながら計算する女性の手元

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育休中は給付金と手当がもらえるほか、給付金や児童手当には所得がないため所得税がかかりません。所得税以外の社会保険や税金の取り扱いはどうなるのでしょうか。育休中の社会保険料の支払いと、住民税の納付について解説します。

社会保険料の支払いが免除される

育休中は社会保険料の支払いが免除されます。会社員の社会保険には健康保険と厚生年金があり、育休中は両方とも支払う必要がありません。支払いが免除されるのは、育休の開始月から終了月の前月までです。

支払いが免除されても被保険者の資格は剥奪されません。未納扱いにはならず、年金の納税期間として扱われ、老後に受給できる年金額に影響しないため安心です。

加えて雇用保険料は所得に応じて支払うものなので、雇用保険料も支払う必要がありません。

住民税は自分で納める必要がある

住民税は前年の所得額に対して課税され、納付するものです。育休中は所得がありませんが、前年の所得は通常通りあるため、住民税の納付義務があります。

会社員の場合、住民税は賃金からあらかじめ天引きされますが、育休中は引きされません。育休中は自治体から送付される納付書を基に、銀行やコンビニで納付が必要です。

一方で育休中は無給であることから、翌年は住民税を支払う必要がありません。

手当以外に給料を補塡する方法

封筒に入った万札

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育児給付金と児童手当をもらえるとしても、元の給料が低いと、育休中の生活を不安に感じるものです。給付金と手当以外に、収入を補うための方法を紹介します。

育休中に副業する選択肢も

育休中の生活に不安を感じて、育休中に少しでも働きたいと考える場合もあるでしょう。育休中でも条件を満たしていれば、勤務先で働けるほか、勤務先が認めている場合は、勤務先以外のアルバイト・パート・業務委託でも就業可能です。

育休中に働く場合は、育児休業給付金の条件を満たしていれば、給付金も受け取れます。つまり1カ月に10日以内の就業日数、あるいは11日以上の場合は1カ月に80時間以下の就業時間であることが必須です。また、就業は臨時的・一時的な業務であることが条件です。時間の条件を満たしていても、決まった時間や曜日に就業していればそれはすでに復職しているといえるため、育児休業給付金の需給もできなくなります。

育休中に勤務先で時短勤務する場合は、受け取る賃金の額に応じて育児休業給付金の額が減額される恐れがあるため、注意が必要です。

一方で副業をする場合は、収入によって育児休業給付金が減額されることはありません。ただし、育休に該当しないとみなされないように注意しましょう。

育休中は手当や免除を上手に活用しよう

育児のイメージ

(出典) photo-ac.com

育休中は無給となるのが一般的ですが、育児休業給付金や児童手当を活用することで収入の補填が可能です。さらに所得税や翌年の住民税が課されないほか、社会保険料と雇用保険料を支払う必要がないため、十分に安心して生活を送れます。

勤務先以外の会社や業務委託で副業をして、育休中の生活費の足しにするのも1つの手です。育休中は給付金や手当、免除制度を上手く活用して、安心して子育てができるように準備しましょう。

渋田貴正
【監修者】All About 企業経営のサポートガイド渋田貴正

トリプルライセンスの税務・労務・法務ワンストップサービサー。 税理士、司法書士、社会保険労務士。会社設立から、設立後の税務、労務などのサービスを行う。窓口が同じというだけでなく、実際にすべてのプロセスを行う、真のワンストップサービスを提供。
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著書:
はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 '22~'23年版 (2022~2023年版)