退社と似た言葉に退職があります。両者は混同して使われるケースが多く見られますが、意味の違いはあるのでしょうか?定義や使い方の注意点について解説します。履歴書における、退社と退職の記載ルールについても見ていきましょう。
退社と退職の違いは?
履歴書を作成する際、退社と退職のどちらで書けばよいのか迷う人は少なくないでしょう。まずは、退社と退職の定義を解説します。
「退社」には2つの意味がある
退社には、2つの意味があります。1つ目は、「仕事を終えて会社のオフィスから出る」という意味です。2つ目の意味では、「会社を辞めること」を指します。会社から出るという点では共通していますが、全く違った意味を持っています。
単に「退社した」と伝えるだけでは、オフィスを出ただけなのか会社を辞めたのか、どちらの意味で使っているのか判断がつきません。退社という言葉を使うときは、相手に誤解を与えないように配慮して伝えることが重要です。
「退職」は会社を辞める意味のみ
退社には2つの意味がある一方で、退職には1つの意味しかありません。退職は、「会社を辞めること」を表します。退社とは違い、「会社のオフィスから出る」という意味はありません。
会社を辞めたことを伝えるときは、誤解を生まないよう退社ではなく、退職を使うのが無難です。転職のために会社を辞めたときも、定年を迎えて会社を辞めたときも退職を用いましょう。
退社は使い分けに注意
退社は、誤解して伝わることがないように、注意して使い分ける必要があります。退社という言葉を単体で用いるのではなく、意味合いが伝わるような工夫をすることが重要です。
退社は誤解を与えないよう注意が必要
退社には会社を出ることのほかに、会社を辞めるという意味もあるため、誤った意味で伝わらないように注意が必要です。会社を出ることを示すときは「退勤」、会社を辞めることを伝えるときは「退職」を使うのが無難です。
ただし退勤は、正確には退社と同義ではありません。退社は会社から出ることを意味するのに対して、退勤は勤務を終えることを指します。
例えば、15時に外回りに行き、18時に直帰した場合は、15時に退社して18時に退勤したことになるのです。
帰宅したことを伝える例文
帰宅したことを伝えるときは退勤を使うのが無難ですが、退社を使う場合は、以下のように伝えると誤解を生む心配がありません。
- 本日、○○はすでに退社しております。明日は9時に出社予定です。
- 恐れ入りますが本日は退社いたしましたので、また明日折り返しご連絡差し上げます。
退社を使って帰宅したことを伝える場合は、単に会社から出たことだけではなく、翌朝の出社時間も伝えると分かりやすくなり、相手も対応を考えやすくなるでしょう。
退職したことを伝える例文
会社を辞めたことを伝えるときは、退社ではなく退職を用いるとすんなりと意図が伝わりやすくなります。しかし、退社を使って「会社を辞めたこと」を言い表したい場合は、以下のように伝えましょう。
- ○○は、先月をもって退社いたしました。
- 恐れ入りますが、○○は2カ月前に退社いたしました。
会社を辞めた時期を付け加えることで、会社にはもういないことがスムーズに伝わりやすくなります。
履歴書の職歴欄についてのよくある疑問
履歴書の職歴欄では、入社時期と併せて会社を辞めた時期についても記載します。履歴書では退社と退職のどちらを用いるのが適切なのでしょうか?会社を辞めた時期の書き方についてパターン別に紹介します。
退社と退職どちらを使ってもOK
履歴書では会社を辞めたことを示すのに、退社と退職のどちらを使っても問題はありません。ただし、退社には会社を辞めること以外の意味もあるため、一般的には「退職」を使うのが適切です。
退職は会社を辞めたときだけでなく、研究所や官公庁を辞めたときにも使えるため、使い勝手のよい表現です。
なお、研究所を辞めたときは「退所」、官公庁を辞めたときは「退庁」と記載することもできます。悩んだときは、思わぬミスを避けるためにも、退職を使うのがよいでしょう。
退職理由も書くべき?
新卒で入社してから一度も退職した経験がない場合を除き、基本的には退職理由を書きます。
通常は具体的な理由を書く必要はなく、自己都合で退職した場合は「一身上の都合により退職」と記すだけで十分です。会社からの要請に応じて退職した場合は「会社都合により退職」と記入します。
ただし、転職回数が多い場合や職歴の一貫性が分かりにくい場合は、退職理由を具体的に書くことで印象アップにつながります。
例えば、転職回数が多い場合は「出産・育児のため退職」「配偶者の転勤に伴い退職」のようにやむを得ない事情に触れたり、「海外移住により退職」「スキルアップのため退職」とポジティブな理由を書いたりするとよいでしょう。
退職予定の場合の書き方は?
退職予定の場合、職歴欄の最後に「在職中」あるいは「現在に至る」と書きますが、退職予定日がすでに決まっている場合は、その横に「(○年○月○日 退職予定)」と日付を記入します。最後の行には、右詰めで「以上」を書いて締めましょう。
【例】
○○株式会社 入社 ○○部配属
○○の業務に従事
現在に至る(○年○月○日 退職予定)
以上
退職予定日が決まっていない場合は、「在職中」あるいは「現在に至る」と書いた上で、改行して右寄せの「以上」で締めるだけでOKです。現在も働いていることをきちんと示して、アピールにつなげることが大切です。
契約社員の職歴欄の書き方は?
契約社員として職歴を書く場合は、契約社員であることを明記する必要があります。「A株式会社 入社(契約社員)」のように書くと分かりやすくなるでしょう。
退職について書くときは、契約期間を満了したかどうかで書き方が異なります。契約期間を終えているときは「契約満了につき退職」あるいは「契約期間満了につき退職」と書きます。
自己都合で契約途中で退職した場合は「一身上の都合により退職」とするのが正しい記載方法です。契約満了後に、更新を打診されたにもかかわらず更新を断ったときは、契約満了の扱いになります。
契約期間を終えていれば自己都合ではないため、記入時は間違えないように注意しましょう。
アルバイト・パートでも退職は使える?
正社員としての職歴が不足している場合、アルバイト・パートの経験を職歴に書くことも可能です。アルバイト・パートの場合でも、通常と同じように入社時期を書いた後に退職時期を記します。
アルバイト・パート勤務の場合は誤解のないように、きちんとアルバイト・パートであることを明示することが必須です。「A株式会社 入社(アルバイト)」のように書くのが一般的です。
アルバイト・パートとして働いていたことを明示しないと、経歴詐称としてトラブルになる恐れがあるため気を付けなければなりません。
退社と退職は誤解を与えない使い方を
退社と退職には、どちらにも会社を辞めるという意味があります。ただし、退社には会社から出て帰宅するという使い方もあるため、誤解のないよう十分に気を付けることが大切です。
状況に応じて退勤や退職を使うようにすると、スムーズに伝えやすくなるでしょう。
履歴書では退社と退職のどちらを使っても問題はありませんが、伝わりやすさを重視して退職を用いるのが一般的です。履歴書で退職について触れるときは、退職の理由や時期、勤務形態に応じてルールを守って記載しましょう。