転職に際して、「保険証はどうなるの？」という疑問を感じる人もいるのではないでしょうか。
特に、最近はマイナ保険証の普及で「マイナンバーカードに登録した保険情報は、転職によって変更されるのか」「家族の保険証はどうなる？」といった疑問を持つ人も増えています。
いざ病院にかかる際になって保険証が使えないことが分かると、慌ててしまいます。家族の健康を守るためにも、保険証の切り替え期間を乗り切る正しい知識を身に付けましょう。
この記事のポイント
- ・転職時にマイナ保険証の切り替え手続きは必要か
- 転職して健康保険が変わった場合でも、マイナ保険証の登録が済んでいる人は自分で情報を更新する必要はありません。
- ・転職による保険の切り替え中に病院にかかる場合
- 保険の切り替え手続きが終わるまでは治療費を全額負担しますが、新しい保険の反映後に払いすぎた分を取り戻せます。
- ・扶養家族がいる場合の手続き方法
- 新しい勤務先に扶養家族の情報を記載した書類の提出が必要です。扶養から外れる家族がいる場合も、自動では切り替わらないので、勤務先に申し出て手続きをしましょう。
マイナ保険証は転職しても再登録不要
マイナ保険証の登録をしている人は、転職後も切り替えの必要がなく、そのまま使用できます。マイナ保険証の基本情報や、新しい情報に切り替わるまでの期間、注意点などを確認しましょう。
マイナ保険証と従来の保険証の違い
健康保険証としての機能を持たせたマイナンバーカードを、マイナ保険証と呼びます。従来の健康保険証との違いは、カード自体に保険情報が記録されているわけではなく、オンライン上で資格を確認する点です。
医療機関に設置された顔認証付きカードリーダーにマイナンバーカードをセットすると、保険資格情報がオンラインで照会され、瞬時に確認できます。
また、従来の保険証とは違い、医療費が高額になった場合も限度額適用認定証なしで自己負担限度額までの支払いで済み、手続きが簡略化されます。
これまで使用されていた紙の健康保険証は2024年12月2日以降、新規発行が停止されましたが、手元にある健康保険証は有効期限内までは引き続き使用可能です。
転職時のマイナ保険証情報の自動更新システム
転職先の企業が健康保険の加入手続き（資格取得届の提出）を行うと、その情報が医療保険のオンラインシステムに反映されます。このとき、個人でマイナ保険証の再登録手続きを行う必要はありません。
ただし、新しい保険情報がマイナ保険証に反映されるまでには約10日間かかります。この期間中に医療機関を受診する場合は注意が必要です。
情報が更新されていない場合は保険資格の確認ができず、医療費をいったん全額自己負担する場合があります。
加入手続き後は、「資格情報のお知らせ」が会社から配布されます。扶養家族がいる場合も同様に全員分の情報が更新されるので、大切に保管しておきましょう。
保険情報がなかなか反映されないことも
10日間という期間は固定ではなく、手続きの混雑状況や書類処理の遅延などにより、もっと時間がかかることもあります。
特に、前職の健康保険の資格喪失処理に時間がかかると、新しい情報の反映が遅れる原因となります。
反映待ちの期間中に医療機関を受診する必要がある場合は、マイナポータルで保険情報の更新状況を事前に確認しましょう。
保険情報を確認できない状態では治療費が保険適用されず、全額自己負担となります。この場合は、後日払い戻し請求を行いましょう。
転職に伴う健康保険証の切り替え手続きの流れ
転職で健康保険証が切り替わる場合、基本的に会社側が手続きをしてくれます。切り替えの流れや必要書類などをチェックしましょう。
退職時の健康保険証返却と資格喪失日
前職の健康保険証は退職日の翌日から無効となるため、速やかに会社に返却します。もし無効となった保険証を使用してしまうと、後日追加医療費の請求がくるでしょう。
会社は退職者の資格喪失届を5日以内に提出する決まりです。退職日当日の返却が望ましいところですが、郵送する場合は退職後2〜3日以内に到着するよう発送しましょう。
郵送の場合、簡易書類やレターパックプラスなどの対面受け渡しを選択し、郵便事故などのトラブルを防ぐことが大切です。返却が遅れれば、新しい保険への加入手続きも遅延する恐れがあります。
転職先での健康保険加入手続きと必要書類
転職先での健康保険加入手続きは基本的に会社側が行うため、個人が手続きをする必要はありません。会社は新たな従業員が入社すると、健康保険への加入手続きをするための書類「被保険者資格取得届」を日本年金機構に提出します。
この手続きにはスピード感が必要です。提出書類は、従業員が被保険者になった日から5日以内に、事業所の所在地を管轄する年金事務所に提出しなければなりません。
また、従業員に扶養家族がいるときは別途申請が必要となります。必要な場合は速やかに提出しましょう。
扶養家族がいる際の注意点
扶養家族がいる場合の保険証切り替え手続きは、被保険者本人の手続きと同時に進めることが基本です。転職により扶養家族の健康保険も新しいものに変わるため、「健康保険被扶養者異動届」の提出が必要になります。
この届出では、扶養家族との続柄を証明する戸籍謄本や、収入状況を確認できる書類の添付が求められます。また、配偶者を扶養に入れる場合は「第3号被保険者関係届」も同時に記入すると、厚生年金の切り替え手続きがスムーズです。
扶養家族が就職した場合、自動的に保険証の資格が切り替わるわけではない点に注意しましょう。扶養削除の手続きを行わないまま病院にかかると、後日医療費の返還義務が発生するケースもあります。
保険証が切り替わるまでの医療機関受診方法
転職後、新しい健康保険への加入手続き中に病院へ行きたいときは、どのような流れになるのでしょうか。受診から医療費を返金してもらうまでの流れや、必要なものなどを紹介します。
保険証なしで病院を受診するには
転職後に保険証がない状態で病院を受診する必要がある場合、まず医療機関の窓口で「転職して保険証を切り替えている最中」と、伝えましょう。多くの場合、全額自己負担となりますが、診療は受けられます。
後日、新しい保険情報が反映されたら、マイナ保険証や資格確認書を速やかに提出しましょう。診療日と同月内なら、医療機関に新しい健康保険証と領収書を提出すれば、返金してもらえます。
月が変わり、医療機関から返金されなかった場合は、「療養費支給申請書」と「診療報酬明細書（レセプト）」と「領収書（原本）」を保険者に提出することで、後日払い戻しを受けられます。
レセプトは通常の診療明細書とは異なるため、窓口で「健保組合に申請するためのレセプトが必要」と伝えて発行してもらいましょう。
資格確認書の取得方法と活用のコツ
資格確認書は、マイナンバーカードがない人や、マイナ保険証の利用登録が済んでいない人などに交付される書類です。
転職後の新規加入者の場合、会社が提出する資格取得届の「資格確認書発行要否」欄にチェックを入れることで申請できます。届出から約2〜3週間で事業所に交付されるので、担当者から受け取りましょう。
資格確認書の有効期限は最長5年で、退職した場合は必ず返却する必要があります。ただし、有効期限が切れている場合は返却の必要はありません。
すでに健康保険に加入していてマイナ保険証を利用していない人には、2025年9月頃から順次、資格確認書が交付される予定です。
「マイナ保険証の登録が済んでいない」「マイナンバーカードが未取得」などの場合、資格確認書を医療機関の窓口で提示すれば、保険診療を受けられます。
転職による保険の空白期間とその対策
転職を決めた後、すぐに働き始めない場合は、保険に未加入とならないように注意が必要です。空白期間ができてしまいそうなときの対処法や、入社日を調整する方法などを見ていきましょう。
保険に入らないリスクと空白期間の防止法
転職時に健康保険の空白期間がある場合、医療費の負担が増えるリスクにさらされます。
特に注意したいのは、未加入期間は保険が適用されず、後から保険料をさかのぼって支払っても自己負担のままである点です。たとえ1日の空白でも、その日に病気やけがをすれば全額自己負担となります。
空白期間を避けるには、前職の退職日の翌日が次の会社の入社日になるよう調整するのがベストです。それが難しい場合は、任意継続・国民健康保険・家族の扶養に入るなどの選択をしましょう。
空白期間がある場合の保険選択肢
日本には国民皆保険制度が設けられているため、全ての国民が公的医療保険に加入しなければならない決まりです。転職で退職と入社の間に空白期間ができてしまう場合、健康保険の選択肢は大きく3つあります。
- 任意継続：最長2年間、従来の健康保険を継続できるが、保険料は会社と折半されず全額自己負担。退職日から20日以内に手続きが必要
- 国民健康保険：退職日の翌日から2週間以内に住所地の役所で手続きする
- 家族の扶養に入る：配偶者などが社会保険に加入している場合、その扶養に入るのが経済的には有利。年収が130万円未満であり、被保険者と生計を同一にしている場合に適用される
保険に加入しなければならない期間や保険料などを考慮し、自分の状況に合った保険を選ぶことが重要です。無保険の状態を避け、安心して医療サービスを受けられるよう適切に対応しましょう。
入社日を調整する方法
保険の継続性を確保するには、転職時のタイミング調整が重要です。理想的なのは前職の退職日の翌日が、新しい会社の入社日となるよう設定することです。
転職先に交渉する際、面接時や内定が決まった時点で「健康保険の継続のため、〇月〇日付での入社を希望します」と具体的に伝えると、多くの企業は柔軟に対応してくれます。
また、入社日を4月や10月に設定できれば、社内の組織変更のタイミングと重なり、職場になじみやすくなることがメリットです。
さらに、賞与の査定期間（通常、上期4〜9月、下期10〜3月）をフルに活用できる可能性が高まり、年収アップにもつながります。
マイナ保険証情報が更新されない場合の対処法
マイナ保険証の情報が更新されないままでは、新しい保険に切り替えたことを証明できません。情報が更新されない場合に考えられる理由や、対処法などを見ていきましょう。
情報更新の遅延やエラーが発生する主な原因
マイナ保険証の情報更新に遅延やエラーが発生する主な原因は複数あります。転職先の会社が健康保険組合に届出を提出していないと、健保側でも資格情報が登録できず、マイナ保険証での確認ができません。
また、マイナンバーの未登録や会社に提出した書類に不備があると、情報更新ができないため、心当たりがある場合は早急に確認しましょう。
情報が更新された後でも、カードリーダーの不具合やマイナンバーカード自体の問題などで読み取りができないパターンも考えられます。
例えば、カード券面の汚損やICチップの破損、利用者証明用電子証明書の有効期限切れなどが該当します。こうした場合は再発行や更新手続きが必要です。
問い合わせすべきケース
転職後、10日以上経過してもマイナポータルで情報更新が確認できない場合は、転職先の担当者に連絡しましょう。前職での資格喪失処理が遅れている場合、前職の担当者にも確認を取ります。
扶養家族の情報が更新されない場合も、同様の確認が必要です。特に配偶者や子どもの情報が反映されていないケースは、扶養認定に関する書類不備の可能性があります。
また、マイナンバーカードの電子証明書有効期限切れの場合や、カード自体に問題がある場合は、自治体の窓口での更新手続きが必要となります。
電子証明書の有効期限が切れる2〜3カ月前に有効期限通知書が届きますので、忘れずに更新しましょう。
扶養家族のマイナ保険証を管理するポイント
扶養家族の申請をしている場合、転職後に家族の保険情報が正しく更新されたのかどうかも確認しなければなりません。家族のマイナ保険証を管理するポイントをチェックしましょう。
扶養家族のマイナ保険証情報の確認方法
家族が自分で保険情報の確認ができない場合は、マイナポータルの「代理人」の設定を活用します。
まず、管理が必要な家族のマイナンバーカードを用意し、マイナポータルで代理人登録を行いましょう。この設定により、世帯主は家族全員の保険資格情報を一括確認できるようになります。
代理人登録ができたら、家族の保険情報を見てみましょう。健康保険の切り替え時は、無事に更新されるまで「資格情報のお知らせ」を家族分も含めて持参することがおすすめです。
医療機関受診時には、家族それぞれのマイナンバーカードが必要ですが、子どもが小さい場合は保護者が代理でカードを預かり提示できます。
扶養から外れるケースと手続きの方法
社会保険の扶養から外れる主な条件は、年収が「106万円の壁」と「130万円の壁」を超えた場合です。
106万円超の場合は、勤務先が51人以上、週20時間以上勤務などの特定条件を満たすと社会保険加入が必要になります。130万円超の場合は条件にかかわらず全員が対象です。
家族が扶養から外れる際、扶養者側は「健康保険被扶養者異動届」を会社に提出し、扶養から外れる家族の保険資格を取り消してもらいます。扶養状況が変化したタイミングで、スムーズな手続きが必要です。
扶養から外れる家族は、自分の勤務先で社会保険の加入手続きをします。フリーランスや自営業の場合は、自分で国民健康保険などに加入する手続きをしましょう。
扶養から外れて勤務先の社会保険に加入したときのメリットは、保険料の負担が生じる一方で傷病手当金などの給付を受けられる点などです。
従来の保険証廃止と移行期の対応策
紙の保険証が新しく発行されなくなり、マイナ保険証の普及が進められています。従来の保険証の廃止後の流れや、マイナ保険証をまだ持っていない人の対処法を見ていきましょう。
従来の健康保険証廃止のスケジュールと移行の流れ
2025年12月2日から従来の健康保険証が使えなくなります。マイナ保険証の利用登録をしている人は、マイナ保険証で受診しましょう。
マイナンバーカード未所持者やマイナ保険証未登録者には、保険証の有効期限が切れる前に資格確認書が送付されます。資格確認書の申請は不要で、保険者から自動的に送られてくるので受け取りましょう。
国民健康保険や後期高齢者医療制度加入者の多くは、2025年7〜8月が期限です。有効期限の記載がない場合は、2025年12月1日まで使用できます。
マイナ保険証の利用登録がされているかどうかを知りたいときは、マイナポータルから確認が可能です。医療機関や薬局などの顔認証端末を利用して確認と登録をしてもよいでしょう。
マイナ保険証未取得者向けの登録方法
まだマイナ保険証の利用を開始していない人は、従来の保険証が使えなくなる前に登録を済ませておきましょう。
マイナンバーカード自体がない場合、交付申請書を使用してオンライン申請や郵送などで申請します。交付申請書が手元にない場合は、市区町村窓口で発行してもらいましょう。
その後、マイナポータルなどから保険証の利用登録を行い、マイナ保険証として使えるようにします。マイナンバーカードの読み取りに対応しているスマートフォンやパソコンがない場合、医療機関や薬局の受付でも登録可能です。
また、セブン銀行ATMを使用したマイナ保険証の申し込みもできます。スマートフォンやパソコンの操作に自信がない人は、活用するとよいでしょう。申請時はマイナンバーカードと、4桁の利用者証明用パスワードが必要です。
マイナ保険証の具体的な管理方法
マイナ保険証の管理はマイナポータルで行えます。スマートフォンやパソコンから情報を確認するための、具体的な方法や手順を見ていきましょう。
マイナポータルで保険資格を確認する方法
マイナポータルを活用すれば、いつでもどこでも自分の健康保険資格情報を確認できます。
保険情報が正しく反映されているかを確認するには、まずマイナポータルアプリを起動してログインしましょう。ログイン後、画面に表示される「健康保険証」をタップすると資格情報が記載されたページを見られます。
マイナポータルで「登録状況の確認」画面を確認し、健康保険証が登録済になっていることを確認できれば、マイナ保険証が使える状態です。
新しい保険への加入や変更があった後は、新しい情報に更新されているか確認しましょう。医療機関受診前にマイナ保険証の登録状況を定期的にチェックすれば、保険証のトラブルを未然に防げます。
診療情報や処方薬の確認方法
マイナ保険証を使って、過去の診療情報や処方された薬剤の情報をチェックする方法を紹介します。マイナ保険証があれば複数の病院にかかっている場合も、いつどの病院へ行ったのかが一目瞭然です。
マイナポータルにログインし「医療情報・健診等情報」セクションから「受診履歴・薬剤情報」を選択し、確認してみましょう。
健康保険の切り替え時に通院の必要がある際は、受診日や診療内容をスマートフォンのメモアプリなどに記録しておくと、返還請求の必要があったときに便利です。
また、医療機関によってマイナ保険証の対応状況が異なる場合もあるため、初診時には必ず利用可能かを確認しましょう。
転職時の保険証の切り替えへの不安をなくそう
転職時、基本的には勤務先で保険証の切り替え手続きが進められますが、前職の保険証を返却しないと、新しい保険に切り替えられません。スムーズな切り替えを実現するには、退職日に確実に返却することが大切です。
マイナ保険証が登録済みの場合、会社側が手続きを済ませた後に自動で更新されます。自分で再登録や申請などをする必要はありません。
マイナ保険証が使えるようになるのは、勤務先での手続きから約10日後です。10日以上たっても更新されない場合、勤務先に問い合わせてみましょう。
資格確認書はなくさないように大切に保管し、転職後も安心して保険証を使えるように準備しましょう。
