異業種への転職を成功させるコツとは?知っておきたい注意点も

異業種への転職は、同業種とは何か違うところがあるのでしょうか?現在とは別の仕事をしてみたいと考えているなら、挑戦の時期や心構えも重要です。業界未経験者を採用する企業の心理や、異業種転職しやすい業種についても紹介します。

異業種転職の基本的な考え方

パソコンで作業をする手元

(出典) photo-ac.com

異業種転職をする場合、何が重要になるのでしょうか?同業種での転職と比べて違うポイントともに、必要とされるスキルや特徴について解説します。

「ポータブルスキル」が物を言う

違う業種に転職を進める異業種転職では、同業種の会社へ転職するときと求められるものが異なります。「業種」は製造業・小売業などの大分類だけではありません。電子機器メーカー・システム開発業など、文脈によっては細かく分類されることもあります。

業種が違う企業への転職では、事業の分野が違っても発揮できる「ポータブルスキル」が役立つでしょう。

ポータブルスキルとは、業種を問わず持ち運び可能なスキルのことです。例えば、効率的な仕事の進め方やコミュニケーション能力などが挙げられます。

年齢によって求められるスキルは変わるものの、業種に関わらず役立つスキルが多ければ、業種が変わっても活躍できるはずです。履歴書や面接では、過去の実績に加えてポータブルスキルのアピールが重要になってきます。

異業種転職の難易度

履歴書とペンと封筒

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異業種転職は、年齢によって難易度が変わってきます。新たな分野へのチャレンジを考えている場合、どのくらいの年代までに転職を考えればよいのでしょうか?一般的な目安を紹介します。

20代はチャレンジしやすい

若いうちであれば、異業種転職のハードルは高くはありません。20代なら、未経験の業界でも採用の可能性が高いでしょう。

特に、20代前半のうちは即戦力として期待されることは少ないでしょう。25歳くらいまでの第二新卒と呼ばれる時期に転職を決める方が、スムーズに進みます。

最初に就職した業界が合わず、異業種転職を考えるのはよくあることです。転職を希望する業種で働きたい理由がはっきりしていれば、評価が下がる可能性は低いでしょう。

20代半ばまでは新卒と同様にポテンシャルが評価される傾向が強いため、業種が変わってもそれほど大きな差はありません。事業の分野が合わず新たな業種への転職を目指すなら、20代でも早い方がよいでしょう。

年齢が上がるほど難しくなる

雇用対策法では、求人に年齢制限を設定しないことを原則としています。若手のキャリア形成をはじめとした例外事由はありますが、いつ転職にチャレンジするのも自由です。

しかし、年齢を重ねると同業種での経験が長くなり、異業種よりも同じ業界の方が評価されるようになります。さらに、同業種で働いてきた中途採用者のスキルレベルが20代よりも高くなるため、ハードルが高くなるでしょう。

30代・40代での転職は、同業種または同職種を意識することをおすすめします。現在とは違う職に就きたいとしても、ある程度は仕事内容が似通っている方が実務経験を生かせるはずです。

参考:募集・採用における年齢制限禁止について |厚生労働省

業界未経験者を採用する企業の心理

権威のありそうな面接官

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企業の体質によって、業界未経験者を採用する割合は変わってきます。未経験者を積極的に採用する企業は、どのような考え方をしているのでしょうか?主な心理について解説します。

経験よりも将来性を評価したい

将来性を重視する企業では、未経験者を積極的に採用します。特に若い世代では育成期間が長く設けられていることから、経験よりも将来性を重視するパターンが多いでしょう。

同じ業界を経験している人は、自社ではなく別会社のやり方で仕事を覚えてしまっていることもあります。未経験者なら、まっさらな状態で自社に合う指導ができるでしょう。

意欲的な人を採用し今後活躍する人材に育て上げたいという目的で、未経験者も分け隔てなく評価したいという心理もあります。

特に、若いうちから経験者で即戦力になる人材はほとんどいません。未経験であっても将来性が期待できるなら、採用したいと考える経営層は多いでしょう。

応募者の数を増やして人材を見極めたい

実際に採用の場面で経験者を優遇するか、経験の有無を問わず人柄を重視するかは、企業の体質によるでしょう。

ただ、未経験者を受け入れると、応募者の絶対数はやはり増えます。経験者に絞って募集するよりも多くの人材が集まるのが、業種未経験の人に門扉を開くメリットです。

特に人手が欲しい企業は、業種経験者にこだわらず募集をかけることが多いでしょう。急激に成長している、これから新規分野を開拓するといった企業がこのパターンに当てはまります。

未経験者を歓迎する理由が人手不足の場合、採用人数が多くなり面接に通る可能性も高くなります。企業がどのような目的で未経験者を歓迎しているか、背景を探ってみましょう。

新しいアイデアを取り入れたい

業種未経験者の多くは、その分野の慣習にこだわらず新しいアイデアを出す力を持っています。別業界での経験を生かした案や、先入観のない意見を求める企業は多いものです。

同じ考えや経験を持つ人材ばかりだと、斬新なアイデアが生まれにくくなります。硬直化した組織に新しい風を入れ、従業員全体に刺激を与える目的もあるでしょう。

面接や履歴書で新鮮な視点をアピールできれば、評価が高まる可能性もあります。企業研究を重ね、今後の展望や企業が重視していることを理解しましょう。

営業で異業種転職しやすい業界

パソコンを前に会話する二人

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営業職は違う事業分野からでも転職しやすい職種です。営業で異業種転職を考えたとき、転職しやすい業種はあるのでしょうか?おすすめの業種を3つ紹介します。

人材業

人材業には求職者と企業をマッチングする人材紹介業、求人広告や人材派遣の法人営業などがあります。どちらも求職者と企業の両方に関わる大切な事業です。

人材紹介業には、求職者のカウンセリングから企業との面接調整まで幅広い仕事があります。求人広告・人材派遣の法人営業は、サービス利用の提案を通して、求職者と企業を結び付ける仕事です。

より求職者に寄り添う形で仕事をしていきたいなら、営業で培ったコミュニケーションスキルを生かせるキャリアアドバイザーとして働く道もあります。

人材業のような無形商材では、商品知識より営業のスキル自体が重視されやすいため、業種の経験がなくても採用される可能性が高いでしょう。特別な知識がなくても、コミュニケーション能力や説得力があれば早いうちから成果を期待できます。

保険業

保険業は、自社または提携先の保険を法人・個人に販売する事業です。既存顧客のアフターフォローや、新規開拓まで幅広い仕事があります。

保険業界は、実力が求められる業界です。長期的に在籍するには一定の成果が必要となり、適正によっては離職する人もいるでしょう。しかし、コンスタントに保険を販売する難しさによる人手不足もあり、未経験者の積極的な採用が期待できます。

営業の実力が十分にあれば、販売する商材や販売の手法が明確になっている分、高収入も狙えるでしょう。

広告・メディア業界

広告・メディア業界は、他業種での営業経験だけでも転職しやすい業界です。広告業の営業では、主に法人に対して営業をかけます。広告を掲載したい広告主と、掲載側のメディアを取り持つ役割です。

メディア関連の営業も、広告を出すスポンサーとの交渉を取り持つことから、広告営業と大きな違いはないでしょう。広告掲載を希望する広告主は法人が多いため、法人営業の経験を生かせます。

営業部門でキャリアを積むこともできますが、マーケティングやデザイナーなど幅広い分野への進出も期待できる業界です。

異業種転職を成功させるポイント

面接の様子

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異業種転職の前に、転職理由やキャリアプランについて考えることも大切です。転職を成功させるコツやポイントを解説します。

異業種に転職したい理由を明確にする

異業種への転職の場合、志望動機を詳しく聞かれます。なぜ経験のある分野を離れたのか、明確に答えられるようにしておきましょう。前向きな思いを伝えることがポイントです。

理由を明確にすることは、転職を後悔しないためにも必要になってきます。転職先が異業種でなければならない理由を整理しましょう。現在の仕事が何となく嫌だからというだけでは、転職後も不満が募る可能性があります。

まずは新たに飛び込む事業分野に対して、思いや熱意・適性があるか、じっくり考えてみましょう。どうしてもやりたい仕事であれば、入社してからも新しい環境になじむための努力ができるはずです。

転職後のキャリアプランを考える

異業種に転職するからには、今後のキャリアプランも考える必要があります。業種経験を捨てて未経験の分野に飛び込むとなると、5年後・10年後のビジョンも見据えておかなければなりません。

それまで経験してきた業種に未練はないか、改めて自分に問いかけることが大切です。もし迷いがあれば、転職を後悔する可能性もあります。強い意志がないなら、同業種を転職先として視野に入れることも考えましょう。

まず現在の仕事とはどこが変わるのかと、チャレンジしたい理由を明確にします。業種を変えてチャレンジしたい方向性が分かれば、その後に目指すべき姿も見えてくるはずです。

生かせる経験やスキルを棚卸しする

異業種転職では、現職・前職との共通点を洗い出す作業と、転職後に生かせる経験・スキルのアピールが欠かせません。

同じ業種であればそのまま資格・経験をアピールできますが、異業種では「経験がなぜ転職先で生かせるのか」まで説明する必要があります。

自分が持つポータブルスキルや、転職先で生かせる経験を見つけましょう。例えば、営業職で培われたコミュニケーション能力や顧客の要望をくみ取る力は、業種が違っても大きな強みとなるスキルです。

求人内容をよく調べる

求人広告には、求める経験・スキルなど詳しい内容が掲載されています。「業種未経験OK」と書かれていても、企業ごとに社風や求めている人物像はさまざまです。自分が求められる人材に当てはまるかを見極めるためにも、求人情報をよく読み込みましょう。

「未経験者歓迎」「経験不問」「明るくコミュニケーションが取れる方」など、さまざまな文言が求人広告に使われます。1つの求人で多用されている言葉があれば、その要素が重視されるポイントです。

また、多くの求人を見ることも、業界の傾向をつかんで成功につなげるコツです。Web公開されている求人情報を豊富に収集・掲載するスタンバイなら、異業種転職の仕事探しに役立つでしょう。

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異業種転職の注意点

パソコンとスマホを手に調べ物をする人

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異業種転職には、同業種とは違う注意点があります。経験がなく知らない業種へ転職するときに気を付けておきたいことや、デメリットも知っておきましょう。

同じ異業種転職でも、全く知らない職種を目指すのと業界だけ変えるのでは難易度が異なる点にも注意が必要です。

給与が下がる可能性がある

業種未経験者と経験者では、多くのケースで給料に差があります。勤めてきた企業の給料が極端に低くない限り、転職によって給料が下がることも覚悟しましょう。

経験がある業種の方が異業種よりもスキルを評価されるため、給与面ではメリットがあります。応募前に業種未経験での年収を確認し、納得できる賃金の企業を選びましょう。

とはいえ、給与は企業の規模や成長力によっても変化していきます。入社した当初は前職より年収が下がっても、将来的に昇給が見込めるのであれば大きなデメリットにはなりません。

業界をよく知らないとミスマッチが起こる

異業種転職には業界研究が必須です。中途半端に調べるだけでは、入社後のミスマッチが起こる可能性があります。

うわべだけのイメージで決めるのではなく、業界の仕事内容や雰囲気をしっかり調べましょう。業界研究の上、自分の適性や興味が薄れないようなら転職後もうまくいくはずです。

「必ず異業種に転職しなければならない」という固定観念は持たず、同業他社も候補に入れて転職活動を進めるのがよいでしょう。

職種も変えると難易度が大きく上がる

業種だけでなく営業・事務職といった職種まで変えようとすると、転職の難易度は上がります。

例えば、飲食店のホールスタッフを担当していた人が、アパレルの販売職に転職した場合、勤める企業の業種は変わっても接客という職種は同じです。お客様と対話するスキルや他の店員と連携を取るスキルがあれば、採用される可能性が高いでしょう。

しかし、飲食店の店員からアプリ開発企業のITエンジニアに転職するという場合、業界も職種も大きく変わります。たとえ独学でプログラミングを勉強していたとしても、やはりITエンジニア経験者に転職活動で勝つのは至難の業です。

経験とは何も関係がない業界・職種にチャレンジするには、何らかの強い動機やスキルを習得する姿勢が求められます。業界についてよく知らず職種の知識もない場合、転職活動が長期化すると考えましょう。

ポイントや注意点を押さえて業種の転向を

手帳に書き込む人の手元

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20代のうちは比較的異業種への転職がしやすいといえます。現在働いている企業の事業分野が合わないと感じるときは、早めの決断も必要です。年齢が上がるにつれて、全く経験がない業種での活躍は難しくなります。

未経験の業種に転職するときは、しっかり業界研究をしてミスマッチが起きないよう心がけましょう。面接でアピールする際はポータブルスキルを重視し、新しい仕事への熱意を伝えることが大切です。

また、異業種転職には業界のみの転向と業界・職種の両方の転向があります。職種も変えると難易度が高くなると考えましょう。

小寺良二
【監修者】All About キャリアカウンセラー/起業・経営ガイド小寺良二

若者の就職支援を専門とするキャリアカウンセラー。アメリカの大学を卒業後、アクセンチュアを経てリクルートに入社し100社以上の新卒・中途採用のコンサルティングを経験。独立後は採用と就職活動の双方を知る「若者就職支援のプロ」として官公庁や人材企業の若年就労支援プロジェクトに携わる。全国の大学で教員やキャリアカウンセラー向けの研修を行うなど、若者支援者の養成にも力を入れている。
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著書:
美文字履歴書の書き方&マナー