転職時の保険証切り替え方法とは。手続きと注意点を解説

転職に当たっては、加入している健康保険証の切り替えが必要です。通院の予定があるなら、被保険者の資格を喪失する前に受診を検討しましょう。転職後に保険証を受け取れる時期の目安や手続きの流れ、保険証が手元にないときの対応について解説します。

退職日までに保険証の返却が必要

健康保険証

(出典) photo-ac.com

企業に勤めている人は、会社を通して社会保険に加入しています。退職が決まったときは、健康保険証の返却が必要です。資格喪失のタイミングや、返却する時期について解説します。

退職と同時に被保険者資格を喪失

職場を退職すると、辞めた翌日に健康保険・厚生年金保険といった社会保険の資格を失います。それまで使っていた保険証が使えなくなるため、間を空けず転職するケースを除いて自分で切り替えるための手続きが必要です。

社会保険に加入できない間は、国民健康保険に切り替えましょう。加入手続きができていない間は無保険となり、医療費を実費(10割負担)で払うことになってしまいます。

健康保険・国民健康保険に入っていた場合、医療費負担の割合は1~3割です。一定以上の高額療養費は返還されることもあり、大きなケガ・病気のときに役立ちます。

万が一高額な治療を受ける必要が出てきたときのためにも、手続きを早めに済ませることが大切です。

扶養家族の分も含めて退職後に返却

退職の際は本人だけでなく、扶養している家族の分も保険証を返却します。基本的には、退職日に会社に渡すとスムーズです。

最終出勤日の後に有給休暇を取って遠方に行っていたり当日に用事があったりする場合は、資格を喪失した後に郵送で返却しても問題はありません。ただし、返却が遅れると手続きが遅れる可能性があるため、退職の翌日には速やかに返すようにしましょう。

また、間違って古い保険証を使ってしまうと、医療費の返還を求められることになります。勘違いを防ぐためにも、資格を失った後はすぐに返却した方が安心です。

単身赴任・子どもの大学が遠いなどの事情で扶養家族と離れて住んでいる場合は、退職スケジュールを早めに共有しておきましょう。退職の次の日には返却手続きを進められるよう、準備が必要です。

転職先で保険証を受け取る流れ

資料を手に考え事をする男性

(出典) photo-ac.com

転職が決まっているケースでは、転職先で新しい保険証を受け取る手続きが行われます。退職後の手順や流れを知っておきましょう。

転職先で社会保険の手続きを進める

すぐに転職する場合は、転職先の会社で社会保険の再加入手続きを行います。前の会社から受け取った「健康保険資格喪失証明書」は特に必要はありませんが、念のために手元に保管しておきましょう。健康保険制度への再加入手続きはすべて転職先の会社が行ってくれます。
転職まで日が空いて国民健康保険への切り替えが必要なら、早めに切り替え手続きを済ませましょう。国民健康保険の加入期限は、退職の翌日から「14日以内」とされています。
会社を退職しそのまま転職をしない場合は、健康保険の任意継続被保険者となるか、配偶者等が加入する健康保険制度に被扶養者として入るケースがありますが、自身で国民健康保険に加入することもできます。国民健康保険の被保険者になる場合は、「健康保険資格喪失証明書」を退職する会社で受け取っておけば手続きがスムーズです。

参考:国民健康保険の加入資格|厚生労働省

社会保険の加入手続きを待つ

社会保険の切り替え手続きをするのは、転職する本人ではなく会社側です。実際に保険証が発行されるまでは数週間かかるため、手続きが完了するまで待ちましょう。

扶養家族がいる場合は、家族の分も申請が必要です。本人・家族分のマイナンバーカードや必要書類を事前に準備しておきます。

入社前には、社会保険以外の必要書類についても併せて通達があるのが通常です。面接に合格した後、入社時に必要な書類について確認しておくと、保険の手続きもスムーズに進むでしょう。

保険証の切り替えに関する注意点

パソコンを見ながら資料を記入する男性

(出典) photo-ac.com

保険の切り替えに伴って、一時的に保険証が手元にない期間が発生します。通院を考えているなら、発行までの期間を考えて早めに切り替える・保険証がない場合の対処法を知っておくといった工夫が必要です。

保険証が届くまで時間がかかる場合がある

一般的に健康保険(協会けんぽ)では、年金事務所等を通じた加入手続きの申請から実際に保険証が事業所に届くまでに1週間から10日ほどかかります。特に転職先が繁忙期であれば手続きが遅れる可能性もあり、すぐに保険証がもらえるとは限りません。

保険証が届かないうちに通院することになった場合は、原則として10割負担での受診になってしまいます。保険証が届かないうちに通院することになった場合は、原則として10割負担での受診になってしまいます。ただし、あとで療養費として自己負担分を差し引いた金額が返金されます。

立て替えた分のお金を返してもらうには、医療機関の領収書が必要です。新しい保険証が届く前に病院へ受診したときは、忘れずに領収書を受け取り、保険証が届いて手続きができるようになるまで保管しておきましょう。

健康保険被保険者資格証明書を使う方法も

保険証が届くまでの間に通院したときは、原則として全額を自己負担で払い、後日返金を受ける仕組みです。

しかし、一時的に多くの医療費を支払うのが難しい場合は、「健康保険被保険者資格証明書」を発行してもらい、保険証の代わりとする方法もあります。

健康保険被保険者資格証明書は、保険証に代わって被保険者の資格があると証明してくれる書類です。証明書は管轄の年金事務所で発行できます。

状況により資格証明書の発行が遅れる可能性もあるため、事前に年金事務所へ確認し、窓口での発行を依頼するとスムーズでしょう。

ただ、健康保険被保険者資格証明書は、全ての病院で使えるわけではないようです。証明書でも保険適用での受診ができるかどうか、事前に問い合わせておきましょう。

退職日から入社日まで日が空く場合

退職日から入社日まで空白期間があるときは、主に3パターンの方法があります。

1つ目は退職した会社の社会保険を、辞めた翌日以降も継続する方法(任意継続)です。一定の条件はありますが、退職の翌日から「20日以内」に、会社の保険を担当する団体に申し込むことで継続できます。

ただ、任意継続を選ぶと、在職中は折半になっていた分も全額自分で支払うことになります。自己負担の金額が退職前の2倍になってしまう点には注意しましょう。

2つ目は、国民健康保険に切り替える方法です。居住地の役所で退職翌日から「14日以内」に手続きを済ませます。国民健康保険料は、前年度の収入や退職による収入の減少などを考慮して判定されます。

ほかには、すでに社会保険に加入している家族がいる場合、転職までの期間は家族の扶養に入る方法も選択肢の1つです。

転職したら保険証の切り替えが必要

健康保険証のイメージ

(出典) photo-ac.com

転職するときは、健康保険の切り替えが発生します。辞めた会社に保険証を返却し、新しい会社で保険証を受け取りましょう。会社側が行う切り替えの手続きには時間がかかることもあるため、書類は早めに提出する必要があります。

転職までに期間が空くときは、国民健康保険への切り替えや任意継続の申し込みといった対処が必要です。被保険者資格を喪失すると、医療費が全額自己負担になってしまいます。ケガや急病にも対応できるよう、期限までに手続きを済ませましょう。

本田和盛
【監修者】All About 企業の人材採用ガイド本田和盛

あした葉経営労務研究所代表。特定社会保険労務士。法政大学大学院経営学研究科修了(MBA)、同政策創造研究科博士課程満期修了。人事・労務・採用に関するコンサルティングに一貫して従事。マネジメント向けの研修やeラーニングの監修も行う。
All Aboutプロフィールページ

著書:
厳選100項目で押さえる 管理職の基本と原則 精選100項目で押さえる 管理職の理論と実践