1年の途中で転職をすると、新しい職場から源泉徴収票の提出を求められます。源泉徴収票を提出すると、どこまでの情報を知られるかが不安な人もいるのではないでしょうか?源泉徴収票で休職がバレる可能性や、提出が求められる理由などを解説します。
源泉徴収票の提出で転職先にバレる情報
前提として、源泉徴収票には給与所得と退職所得の2種類があります。転職後に提出が求められるのは、主に給与所得の源泉徴収票です。
まずは、給与所得の源泉徴収票から転職先にバレる情報を紹介します。
1~12月にもらった給与・ボーナスの額
給与所得の源泉徴収票で確認できるのは、1月から12月に支払われた給与・ボーナスなどの総支給額です。総支給額は所得税・住民税・社会保険料などが天引きされる前の金額で、銀行口座に振り込まれる手取り額とは異なります。
転職活動の面接で、前職の年収について質問された経験がある人もいるのではないでしょうか?前職の年収を問われたときに、自分をよく見せるために実際よりも高い金額を答えるのは禁物です。
入社してから提出する源泉徴収票で年収をごまかしたことが分かり、信用を損なう可能性があるので注意しましょう。
1年間に払った所得税の額
源泉徴収票には、1年間に支払った所得税の額を表す「源泉徴収税額」が記載されています。年収が103万円を超えると、正社員・アルバイト・パートなどの雇用形態にかかわらず、所得税が発生します。
会社・店などから報酬をもらっている場合には、毎月の給与からおよその所得税が源泉徴収として天引きされるのです。
雇用主が作成する源泉徴収票には、すでに天引きされている源泉徴収税額を証明する役割があることを覚えておきましょう。
前の勤務先の名前・住所・電話番号など
源泉徴収票には、給与を支払う会社側の会社名・住所・電話番号などの情報が記載されています。
そのため、転職先に源泉徴収票を提出すると、転職する前に勤めていた会社の名前・所在地が伝わります。
また、給与を受け取る側の基本的な情報も書かれているので、氏名や住所、扶養している親族等個人情報も書かれています。
転職後に源泉徴収票を見られても困らないよう、前職の情報や自分の基本情報などは正確に答えるようにしましょう。
休職は源泉徴収票からバレる?
事情があり、休職中の転職活動を検討している人もいるのではないでしょうか?実際に転職活動をする前に、休職がバレる可能性をチェックしておきましょう。
短期間の休職ならバレる可能性は低い
源泉徴収票を見れば年収が分かりますが、その金額から休職していたことがバレる可能性があります。
もちろん、年収の額がそれほど変わらない1カ月程度の休職であれば、休職の事実がバレる可能性は低いかもしれません。
しかし、3カ月以上の休職期間がある場合には、月給30万円の人なら100万円近く収入が下がるため、転職先にバレる確率も上がるでしょう。
また、短期間の休職でも、転職先にバレない保証はありません。たとえバレなかったとしても、休職を隠して働き続けることをストレスに感じる人がいるのも事実です。
住民税の手続きでバレる場合も
源泉徴収票で休職がバレなくても、住民税の手続きで知られてしまう可能性もあります。
住民税の支払い方法には普通徴収と特別徴収の2種類があり、会社員の場合は特別徴収として給与から天引きされるのが一般的です。
住民税額は前年度の所得をもとに決められるため、税額が少ないことから休職を疑われるかもしれません。
休職中に転職活動をする際には、後々の余計なトラブルを避けるためにも、応募先の会社に休職している旨を伝えておくのがベターです。
採用する側にとっては「問題なく働けるか」が気になっているポイントなので、休職の理由と一緒に、転職後には問題なく働ける状態であることを伝えるとよいでしょう。
源泉徴収票の提出を求められる理由と対処法
なぜ、転職先から源泉徴収票の提出が求められるのでしょうか?理由とともに、提出したくない場合の対処法も解説します。
年末調整に必要だから
前提として、所得税は1~12月の給与・ボーナスなどの所得に課税されるものです。12月の給与・ボーナスの額が分かった段階で年間所得が確定するため、毎月の給与から天引きされている所得税額は、実は正確ではありません。
年の途中に転職した場合には、転職先の会社で年末調整を行います。前職の収入や天引きされている所得税等を踏まえて計算する必要があるので、前の職場が作成した源泉徴収票の提出が求められるというわけです。
年末調整を行い、実際の年間所得で納めるべき所得税額よりも、天引きした金額が多い場合には12~1月の給与にて還付、少ない場合には徴収されます。
自分で確定申告を行う方法も
年末調整ではなく、自分で確定申告をして、所得税の納税額を申告することも可能です。確定申告を選ぶ場合、2月16日から3月15日までの期間に、確定申告書を作成して管轄の税務署に提出する必要があります。
税務上では、年末調整・確定申告のどちらかで所得の申告をすれば問題はないので、どうしても転職先に源泉徴収票を見られたくない場合には、確定申告を利用するのも1つの方法です。
しかし、源泉徴収票の提出を渋ると「隠していることがあるのでは?」といらぬ誤解をうける可能性もあるでしょう。
源泉徴収票の入手方法と注意点をチェック
確定申告で提出する書類にも、源泉徴収票に記載された源泉徴収税額を記入する欄があります。
年末調整・確定申告のどちらの方法を選択しても源泉徴収票は必要なので、源泉徴収票の取得方法やもらえない場合の対処法を確認しておきましょう。
前の職場から退職後1カ月以内に渡される
源泉徴収票は、直近に在籍していた会社から、退職後1カ月以内に渡されるのが原則です。
所得税法の第226条では「会社は従業員が退職する際に、1月1日から退職時点までの所得額に応じた源泉徴収票を、発行する義務がある」とされています。
例えば、長い間勤めた会社を2022年6月20日付けで退職した場合には、2022年1月1日から6月20日までの総支給額・源泉徴収税額などが記載された源泉徴収票が、7月20日までに届きます。
年末まで勤めて退職した場合には、翌年の1月31日までに源泉徴収票を送付する決まりです。
紛失したら前の職場に再発行をお願いする
「源泉徴収票をもらった記憶はあるけれど、紛失してしまった」という人もいるのではないでしょうか?
源泉徴収票は再発行が可能な書類なので、紛失した場合には前の会社に連絡して、再発行をお願いしてみましょう。
再発行には少なからず手間がかかるため、紛失した事実や必要な理由を丁寧に説明してお願いすることが大切です。
会社によって多少の違いはあるものの、再発行を依頼してから1~3週間ほどで源泉徴収票が送られてくるでしょう。
催促してももらえない場合は税務署に相談
退職日から1カ月が経過しても、前の会社から源泉徴収票が送られてこないときは、経理担当者に連絡をするのも1つの方法です。
手違いがあって源泉徴収票が送付されていない場合は、電話をすることで担当者がトラブルに気付くきっかけになるでしょう。
催促をしても発行に応じてもらえない場合は、「源泉徴収票不交付の届出書」を作成して提出する方法もあります。
書類は国税庁のホームページでダウンロードでき、提出先は住所地を管轄する税務署です。届出うけた税務署が、会社に源泉徴収票を交付するように指導してくれるので、源泉徴収票が入手できないときに活用するとよいでしょう。
源泉徴収票でバレる内容を理解しておこう
源泉徴収票は、年間所得を税務署に報告する年末調整・確定申告の際に必要な書類です。1年の途中で転職をすると、年末調整が行われる12月ごろに、新しい職場から源泉徴収票の提出を求められるケースがほとんどです。
前の職場が作成した源泉徴収票からは、前職の総支給額・源泉徴収税額・勤務先の基本情報などが分かります。休職期間があったとしても、源泉徴収票自体に休職に関する情報は記載されていません。
転職先から源泉徴収票を求められても慌てないよう、退職後に受け取った源泉徴収票は大切に保管しましょう。
大学卒業後、銀行勤務を経て社会保険労務士資格を取得し独立開業。上場企業をはじめ数多くの企業の人事労務管理の相談指導、給与計算業務等に携わる。また年金問題についての執筆、講演も多数。
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