セクハラの悩みを相談できる窓口11選。相談する前に行うべき準備も

職場でセクハラの被害に遭っているのなら、さまざまな相談先があることを知っておくのがおすすめです。自分に合った窓口で悩みを打ち明ければ、状況が改善されるかもしれません。問題の解決を図れるおすすめの相談先を紹介します。

セクハラの悩みを聞いてもらえる相談先

パソコンを前に悩む女性

(出典) photo-ac.com

セクハラの悩みを誰かに聞いてもらいたいときにおすすめの相談先を紹介します。いずれも無料で利用できますが、具体的な解決に至る可能性は低めです。

法務局「インターネット人権相談受付窓口」

人権に関するさまざまな相談を受け付けているのが、法務局のインターネット人権相談受付窓口です。差別や虐待といった人権問題の相談が可能であり、セクハラの悩みに関する話も聞いてもらえます。

電話や面談による相談ができるほか、インターネットでも相談窓口を利用可能です。相談フォームに必要事項を記入して送信すれば、電話・メール・面談で回答を受けられます。

インターネット人権相談受付窓口に相談すれば、法務局の職員ができる範囲で問題解決を図ってくれます。ただし、法務省は労災判定ができないため、話を聞いてもらうだけになる可能性が高いでしょう。

インターネット人権相談受付窓口へようこそ!|法務省

厚生労働省委託「ハラスメント悩み相談室」

ハラスメント悩み相談室は、ハラスメントに関する悩みを無料で相談できる、厚生労働省の委託事業です。職場でのさまざまなハラスメントで困っている場合に、電話・メール・SNSで話を聞いてもらえます。

ハラスメントに特化した相談窓口となっているため、悩みを理解してもらいやすいでしょう。メールやLINEを使えば、電話では話しにくい内容も気軽に相談できます。

ハラスメント悩み相談室は厚生労働省委託事業であり、ハラスメントに該当するかどうかの判断はしてもらえません。とりあえず話を聞いてもらった上で、何らかのアドバイスが欲しい人におすすめです。

職場でのハラスメントに悩んでいませんか?|ハラスメント悩み相談室

厚生労働省「こころの耳」

厚生労働省が運営するこころの耳は、労働者のメンタルヘルスに関する情報提供や相談受付を行っているポータルサイトです。職場のセクハラに関する相談も受け付けています。

メンタルヘルスのさまざまな情報を得られることが大きな特徴です。簡単なストレスセルフチェックでストレスレベルも測定できます。セクハラ被害により精神的な不調に陥ったときに利用するのがおすすめです。

こころの耳を利用して問題解決に至る可能性は低いものの、セクハラを受けて弱ったメンタルが回復する可能性はあります。悩みの相談方法としては、電話・メール・SNSが利用可能です。

働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト|こころの耳

セクハラ被害の社内での相談先

バインダーに記録する女性

(出典) photo-ac.com

セクハラの悩みを社内で相談すれば、第三者を介さず早めに解決できる可能性があります。依頼コストがかからないこともメリットです。セクハラ被害の社内の相談先を紹介します。

信頼できる同僚や上司

セクハラの相談ができる同僚や上司がいるなら、悩みを打ち明けてみましょう。できる範囲で何らかの対応をとってくれる可能性があります。

例えば、上司なら当事者と話し合いの場を設けたり、セクハラを受けないように部署を変えてくれたりするかもしれません。同僚に相談すれば、セクハラ被害を受けていることの証人を引き受けてくれることもあるでしょう。

ただし、相談相手は信頼できる人に限ります。悩みを打ち明けたことで同僚や上司にうわさを広められてしまうと、二次被害を受けることにもなりかねません。

人事部やコンプライアンス窓口

企業にはハラスメント相談窓口の設置義務があります。人事部やコンプライアンス窓口に相談すれば、会社として問題解決に向けて動いてくれる可能性があるでしょう。

ハラスメント相談窓口の設置義務は、労働施策総合推進法第30条の2で定められているものです。企業はできるだけ早期にハラスメントの存在を察知し、対策を施さなければなりません。

対面での相談だけでなく、電話やメールなど相談しやすい方法で構わないとされています。秘密厳守も法律で規定されているため、うわさが広まってしまう可能性は低いでしょう。

参考:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第三十条の二 | e-Gov法令検索

労働組合・ユニオン

会社の労働組合に加入している場合、セクハラ対策担当者がいるなら相談するのもおすすめです。労働組合として労働者の立場に立ち、会社を相手に解決を図ってくれるでしょう。

ただし、会社側が実質的に実権を握っている労働組合の場合は、相談することで会社から不利益を受ける恐れがあることに注意が必要です。

ユニオンに加入しているなら、セクハラの相談ができないか調べてみましょう。ユニオンとは企業の枠を超えた労働組合です。ユニオンによっては、セクハラをはじめとしたハラスメント対策に力を入れているケースもあります。

会社への働きかけを行ってくれる相談先

電話する女性

(出典) photo-ac.com

単に悩みを聞いてもらうだけでなく、話すことで何らかのアクションを期待できる相談先もあります。セクハラ被害について会社に働きかけてくれる窓口を見ていきましょう。

法務局「女性の人権ホットライン」

法務局が運営する女性の人権ホットラインでは、セクハラ・DV・ストーカーなど、女性の人権に関する悩みを無料で相談できます。電話での相談が可能です。

電話をかけた場合は法務局につながり、女性の人権問題に詳しい職員や人権擁護委員が対応してくれます。人権侵害の疑いがある場合、救済手続きが行われるケースもあることが特徴です。

救済手続きでは最初に法務局が調査を行い、侵犯事実が認められるかどうかを判断します。救済のための措置には援助・調整・勧告などがあり、場合によっては関係行政機関への通告や刑事訴訟法の規定による告発が行われることもあります。

女性の人権ホットライン|法務省

労働基準監督署・労働局「総合労働相談コーナー」

さまざまな労働問題の相談にのってくれる行政機関が労働基準監督署や労働局です。総合労働相談コーナーが設けられており、セクハラ問題の個別相談にも応じてもらえます。

労働基準監督署や労働局で相談した場合、被害の内容によっては企業に対し助言や指導が行われます。ただし、企業が助言や指導に従わなくても罰則はないため、早急な改善は見込めません。

助言や指導でも改善が見られない場合は、当事者同士での解決を仲介してくれる「あっせん」の対象になることもあります。あっせん制度を利用する際に料金はかかりません。

個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん) |厚生労働省

社労士による「職場のトラブル相談ダイヤル」

職場のトラブル相談ダイヤルは、全国社会保険労務士会連合会が運営する相談窓口です。電話をかければ社労士が相談にのってくれます。相談料は無料です。

職場のトラブル相談ダイヤルでも総合労働相談コーナーと同じく、基本的にはあっせんで解決を図る流れになります。労働問題に精通した社労士があっせん委員になるほか、内容次第では弁護士が同席することもあるため、適切な和解案を提案してもらえるでしょう。

総合労働相談コーナーでのあっせんは無料ですが、社労士によるあっせんは有料になることがほとんどです。どちらの場合も和解の成立を目指すのが最終目標であり、基本的には和解契約に法的強制力はありません。

職場のトラブル相談ダイヤル|全国社会保険労務士会連合会

法的決着を望む場合の相談先

弁護士

(出典) photo-ac.com

セクハラにより実害を被り、会社と法的に争いたいと考える場合は、弁護士への相談を検討しましょう。警察に相談するとどうなるのかも解説します。

弁護士

弁護士への相談は最も解決力が高い方法です。精神的苦痛で働けなくなるなど、セクハラによる実害が発生した場合は、弁護士に相談すれば慰謝料や損害賠償金を請求できる可能性があります。

行政指導やあっせんには法的な強制力がなく、会社やセクハラ加害者に開き直られてしまうと、問題の根本的な解決は困難です。さまざまな窓口に相談しても状況が改善しないのなら、弁護士への相談を検討してみましょう。

弁護士に依頼すると約10~30万円の着手金がかかります。相談料が有料になるケースもあるでしょう。慰謝料や損害賠償金を相手に支払わせた場合は、約20~30%の成功報酬も発生します。

警察

セクハラ自体は犯罪行為ではないため、民事不介入の原則から警察がセクハラ問題に介入することはありません。ストーカーや借金の問題で警察が動いてくれないのと同じ考え方です。

ただし、セクハラにより違法性の強い行為を受けている場合は、被害届を出すことで警察が動いてくれるケースもあります。お金で被害を回復するだけでなく、犯罪として処罰してもらえる可能性もあるのです。

犯罪に該当するものとしては、強制性交等罪・強制わいせつ罪・暴行罪・傷害罪・名誉棄損罪・侮辱罪などがあります。犯罪として認めてもらうためには、証拠をしっかりと確保しておかなければなりません。

セクハラの一般的な判断基準

職場で泣く女性

(出典) photo-ac.com

厚生労働省はセクハラの定義を定めており、3条件を満たせばセクハラになるとしています。各条件の内容を理解し、自分が受けている行為がセクハラなのかを確かめましょう。

参考:職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!! | 厚生労働省

職場で行われているか

セクハラかどうかの判断基準の1つに、職場で受けている行為であることが挙げられます。この場合の「職場」に該当する場所は、自分がメインで働くオフィス内に限りません。

取引先の会社・出張先・社用車の中・顧客の自宅といった場所も「職場」に該当します。労働者が業務を行っていれば、どこにいようが「職場」の条件を満たすのです。

会社が主催する飲み会や宴会も、実質的に仕事の延長とみなされるなら「職場」に該当します。ただし、強制参加ではないケースでは、セクハラに当たらない可能性もあります。

自分が不快に感じているか

セクハラとして認められる条件の1つには、相手から受ける行為を自分が不快に感じることもあります。被害者の主観も判断基準となっているのです。

上司からセクハラを受けている場合は、お互いの立場の関係上、嫌なことを嫌だと言えない状況になることも多いでしょう。その場で拒否反応を示していなくても、受けていた行為が意に反するものであったのなら、セクハラとして認められる可能性があります。

加害者がどのように考えていたのかは問題視されません。「セクハラをしているつもりはなかった」は通用しないのです。

言動が性的なものか

相手の言動が性的な要素を含むことも、セクハラになる条件の1つです。性に関する事実を聞いたり、食事やデートにしつこく誘ったりする行為は、性的な発言に該当します。

性的な行動に当てはまる主な例は、性的な関係の要求や体への無意味な接触、わいせつな画像を見せることなどです。

なお、女性だけでなく男性もセクハラの被害者になり得ます。女性の上司が男性の部下に対し、「男のくせに」といった発言をした場合は、セクハラとして認められるでしょう。条件を満たしていれば同性間のセクハラも成立します。

セクハラの相談をする前に行うべき準備

ノートとペン

(出典) photo-ac.com

行政機関や弁護士に相談する場合は、セクハラの事実を証明できるものを集めておきましょう。労働審判や裁判による解決を図る場合の準備について解説します。

被害内容を時系列でまとめる

セクハラの相談をする際は、被害を受けている状況を時系列でまとめておきましょう。時系列メモを用意しておけば、相談時に事実経緯をスムーズに伝えられます。

メモに記載しておくべきことは、受けていた行為の内容・回数・時期・期間や、当時の自分の気持ちです。心身の不調を覚えた時期があるなら、健康状態や診断回数などもできるだけ詳しく書いておきましょう。

会社に相談した時期や相談相手を記載しておくことも大切です。時系列メモはセクハラを客観的に証明するものではないものの、相談時の重要な資料となります。

拒否行動を記録する

セクハラとして認められるためには、自分が不快に感じていたことを示さなければなりません。行為を受けた際の拒否行動を記録していれば、セクハラ被害の認定を受けやすくなります。

拒否行動を記録するためには、実際に明確な拒否の姿勢を見せなければなりません。拒否したシーンを録音・録画しておくことで、受けた行為の内容も含んだ大きな証拠になります。

相手に対してあいまいな態度をとると、その場面を記録していても証拠としての価値は下がるでしょう。受けた行為が意に反するものであったことを客観的に示せないためです。

証拠を集める

セクハラの相談時には、証拠の提示が何よりも重要です。証拠が有効なものであるかどうかはともかく、証拠を集めて相談することで真実味を持った説明を行えます。

労働審判や裁判による解決を目指す場合も、有効な証拠が多いほど有利です。できるだけ多くの証拠を集めた上で、行政機関や弁護士に相談しましょう。

セクハラ問題を相談する前に集めておきたい証拠は、発言の録音や行為の録画、メールやビジネスチャットでのやりとりです。セクハラを目撃した同僚の証言も証拠になります。

医師の診断書を取得する

セクハラ被害により心身の不調が生じて医療機関を受診した場合は、医師の診断書を取得しておきましょう。実害を被ったことを証明する有力な証拠になります。

セクハラが原因で精神障害を発病した場合、労災保険の対象となることもポイントです。労災認定を受けるためには、特定の精神障害を発病していることが条件となるため、医師の診断書が必要です。

裁判で慰謝料の金額を決める際にも、医師の診断書が参考資料として使われます。セクハラが原因で病院に行った場合は、必ず診断書を出してもらいましょう。

セクシャルハラスメントが原因で精神障害を発病した場合は労災保険の対象になります|厚生労働省

相談してもセクハラがなくならない場合は?

悩む女性

(出典) photo-ac.com

さまざまな窓口で相談しても状況が改善しない場合の考え方を紹介します。セクハラの悩みが解消されないときの参考にしましょう。

環境を変えるために転職を検討しよう

相談しても状況が変わらない場合や、そもそも相談自体がどうしてもできない場合は、環境を変えるために今の職場を辞めて転職するのも1つの方法です。セクハラ被害を我慢し続けると、今は大丈夫でもそのうち本格的に体調を崩してしまいかねません。

ただし、転職は自分の人生に大きく関わるものでもあるため、簡単に考えるのはNGです。できる範囲であらゆる手を打った上で、今のままではどうしても無理だと感じた場合に、転職を検討しましょう。

転職先を探してみようと思う場合は、国内最大クラスの規模を誇る求人サイト「スタンバイ」を使うのがおすすめです。全国の豊富な求人が掲載されているため、自分に合った転職先がすぐに見つかるでしょう。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら

転職理由を伝える際の注意点

転職活動を行う場合、転職理由を伝える際にセクハラについて触れないようにするのが無難です。ネガティブなことを転職理由にすると、マイナスな印象を与えてしまう恐れがあります。

転職活動中に転職理由を正直に伝える必要はありません。応募する企業のハラスメント対策について質問するのも、余計な勘繰りをさせてしまいかねないため控えましょう。

転職理由はポジティブな内容を考えておくのがおすすめです。生かしたいスキルや今後のキャリアビジョンなどを絡めた内容にすれば、前向きな転職理由になるでしょう。

セクハラの悩みは我慢せずに相談を

電話をかける女性

(出典) photo-ac.com

セクハラ問題はさまざまな窓口で相談できます。話を聞いてもらうだけでなく、状況の改善を図るために具体的なアクションをとってもらうことも可能です。

セクハラの悩みを1人で抱え込んでいると、相手の行為がエスカレートしていく恐れもあります。我慢し続けて体調を崩してしまう前に、勇気を出して相談しましょう。