自己都合退職の理由には、「一身上の都合により」と書くのが一般的です。しかし、全ての理由を「一身上の都合」としてもよいのでしょうか?シーン別の具体的な使い方や、「一身上の都合」を使えないケースを例文とともに紹介します。
「一身上の都合」を使うのはいつ?
「一身上の都合により」という言葉を、聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?「一身上の都合」はどのような場面で使うのか、具体的に見ていきましょう。
自己都合で退職するとき
自己都合で会社を退職するときは、「一身上の都合」という表現を使います。自己都合による退職には、転職・結婚・家庭の事情などさまざまな理由があるでしょう。
しかし、会社に退職理由を詳しく伝えなければいけない決まりはないため、どのような場合であっても「一身上の都合」とするのが一般的です。
特に退職願・退職届を書くときは、自己都合の具体的な理由を書くことはありません。
履歴書に記載するとき
履歴書の職歴欄に書く際も、「一身上の都合により退職」とします。履歴書の職歴欄には、会社を辞めた具体的な理由を書く必要はありません。
ただし、面接では詳しく聞かれる可能性があります。面接で聞かれたときは、具体的に答える方が印象はよくなるでしょう。
また、何度も転職していたりブランクがあったりする場合は、「一身上の都合」ではなく、具体的な理由を書いた方が余計な推測をされずに済むこともあります。
内定辞退するとき
内定を辞退するときの理由にも、「一身上の都合」を使えます。「他企業への入社を決めた」と本当の理由を伝えるほうが相手も納得してくれる可能性がありますが、詳しい理由を言いたくないときは「一身上の都合により」だけでOKです。
企業側にとっても、応募者が他社を選ぶケースは珍しくないため、詳しい理由を聞かれることもそれほど多くはないでしょう。
内定辞退の場合は詳しい理由より、なるべく早く連絡することや、内定を出してもらえたことへのお礼を伝える方がマナーとして大切です。
「一身上の都合」の例文
「一身上の都合」は、自己都合退職や内定辞退などの理由として用いる表現ですが、実際にはどのような使い方をするのでしょうか?使い方のポイントと例文を、シーン別に紹介します。
退職願・退職届の例文
自己都合で会社を辞めるときは、退職願・退職届のどちらにも「一身上の都合」と書きます。1行目に「退職願」または「退職届」と記入し、2行目の行末に「私事、」と書いてから、3行目に理由を記載するのが基本です。
【退職願の例文】
退職願
私事、
このたび、一身上の都合により、勝手ながら、
来る令和××年〇月〇日をもちまして、退職いたしたく
ここにお願い申し上げます。令和××年〇月〇日
〇〇支店営業部
〇〇〇〇(氏名)捺印株式会社〇〇商事
代表取締役社長 〇〇〇〇殿
【退職届の例文】
退職届
私事、
このたび、一身上の都合により、勝手ながら、
令和××年〇月〇日をもちまして、退職いたします。令和××年〇月〇日
〇〇支店営業部
〇〇〇〇(氏名)捺印株式会社〇〇商事
代表取締役社長 〇〇〇〇殿
履歴書への書き方と例文
履歴書の職歴欄に書くときは、個人的な理由による退職は全て「一身上の都合」と書きます。スキルアップを目指したポジティブな理由でも自己都合による退職のため、「一身上の都合」とするのが一般的です。
【例文】
平成〇年〇月 〇〇株式会社 入社
IT事業部 首都圏営業課に配属令和〇年〇月 一身上の都合により退職
内定辞退する場合の例文
内定辞退の場合は決まった書類がないため、電話かメールで連絡します。電話の場合は、最初に出た人に自分の氏名を名乗り、採用内定の件で連絡した旨を伝えて、担当者に取り次いでもらいましょう。
【電話の例文】
「お世話になっております。先日内定をいただいた〇〇と申します。このたびは内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。
大変恐縮ですが、一身上の都合により内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。貴重なお時間を割いていただいたにもかかわらず、申し訳ありません。ご了承のほど、よろしくお願いいたします。」
また、メールの場合は、件名に内定辞退のメールである旨と自分の氏名を明記します。
【メールの例文】
件名:内定辞退のご連絡 〇〇〇〇(氏名)
株式会社〇〇
人事部
〇〇様お世話になっております。
先日、内定のご連絡をいただきました〇〇です。このたびは、採用していただき誠にありがとうございました。
せっかく内定をいただいたところ大変恐縮ですが、一身上の都合により、
内定を辞退させていただきたく存じます。〇〇様には面接で貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございました。
ご期待に添えず誠に申し訳ありません。本来なら直接お伺いしてお詫びを申し上げなければならないところですが、
メールでのご連絡となったことを重ねてお詫びいたします。末筆ながら、貴社の益々のご発展をお祈り申し上げます。
__________
〇〇〇〇(氏名)
電話番号
メールアドレス
__________
「一身上の都合」以外の例文
退職理由に「一身上の都合」を使わないケースもあります。「一身上の都合」以外の場合は、具体的な理由を書くのが一般的です。ケース別の書き方と例文を紹介します。
業績不振による退職の場合の例文
会社の業績不振によって退職せざるを得なくなった場合は、退職届にも「業績不振のため」と理由を書きます。また、自己都合ではないので「私事」は入れません。
【例文】
退職届
このたび、貴社業績不振に伴う〇〇支店閉鎖のため、
令和××年〇月〇日をもって退職いたします。令和××年〇月〇日
〇〇支店営業部
〇〇〇〇(氏名)捺印株式会社〇〇商事
代表取締役社長 〇〇〇〇殿
退職勧奨された場合の例文
会社から説得されて退職する「退職勧奨」の場合は、必ずしも退職届を出す必要はありません。しかし、会社側から退職届を提出するよう求められることもあります。
退職勧奨は、労使の合意のもとに行われるため、解雇とは異なります。基本的に自己都合退職ではないので、促されたとしても「一身上の都合」と書くのは避けた方がよいでしょう。
【例文】
退職届
このたび、貴社の退職勧奨に伴い、令和××年〇月〇日をもちまして、退職いたします。
令和××年〇月〇日
〇〇支店営業部
〇〇〇〇(氏名)捺印株式会社〇〇商事
代表取締役社長 〇〇〇〇殿
「一身上の都合」が使えないケース
退職理由に「一身上の都合」を使えないケースもあります。原則として自己都合退職以外の場合は、「一身上の都合」は使いません。
「一身上の都合」が使えないケースについて、具体的に見ていきましょう。
会社都合で退職する場合
倒産・リストラ・退職勧奨など会社都合で退職する場合、理由は「一身上の都合」にはなりません。退職するに至った理由を、具体的に書くのが基本です。
「一身上の都合により」と書いてしまうと、たとえ会社都合による理由でも自己都合退職として手続きされ、失業保険の受給が遅れたり、転職で不利になったりすることもあるので注意しましょう。
履歴書に記載する際も「一身上の都合」とせず、会社都合であることを明記します。
契約期間満了で退職する場合
雇用期間が決まっている有期雇用のケースでは、契約期間満了後に契約更新をせず退職すると「雇止め」となります。この場合は、自己都合退職にも会社都合退職にもなりません。
本来退職届は不要ですが、会社から提出するよう求められることもあるでしょう。その場合の理由は「一身上の都合」ではなく、「契約期間満了のため」になります。
なお、契約期間満了の前に自ら辞めた場合は、自己都合退職となります。
「一身上の都合」を詳しく聞かれたら?
退職や面接の際に、「一身上の都合」について詳しく聞かれることもあります。もし聞かれたら、どのように答えたらよいのでしょうか?退職時と面接時、それぞれの答え方を見てみましょう。
退職時には詳しく伝える必要はない
退職する際は、原則として理由を詳しく伝える必要はありません。たとえ答えなかったとしても、退職が不利になることもないでしょう。
しかし、上司から直接聞かれて、答えないわけにはいかない状況になることもあるかもしれません。
そのようなときは、「家庭の事情です」のように、相手がこれ以上踏み込んで聞けない理由を伝えればよいでしょう。
面接では具体的でポジティブな答えを
面接の場合、面接官から退職理由を詳しく聞かれる可能性もあります。面接官からすると、退職理由によっては「採用後、すぐ辞めてしまうのではないか」という不安があるためです。
詳細な理由を伝える必要はありませんが、ウソの理由を言うのは好ましくありません。「キャリアアップをしたかった」「新しい環境で自分を試したかった」など、ウソのない範囲で前向きに答えるとよいでしょう。
病気・ケガで退職した場合も、事実を話した上で、現在は完治して仕事に差し支えないことを伝えるのが大切です。
自己都合退職の理由は一身上の都合でOK
自己都合で退職する場合、理由は全て「一身上の都合」でOKです。しかし、会社都合によって退職を余儀なくさせられた場合は、「一身上の都合」を使いません。
「一身上の都合」が意味することをしっかり理解しておかないと、退職後に損をすることもあります。
本当は会社都合なのに、会社に促されたからといってうっかり「一身上の都合」と書いてしまってはいけません。自分が退職する理由をしっかり把握して、正しい理由を記入しましょう。