難易度の低い国家資格はある?独学で取れる資格を難易度別に紹介

国家資格には、数多くの種類があります。受験資格を設けず独学で取得できるものもあり、働きながらでもチャレンジしやすいでしょう。主な国家資格を、それぞれ難易度別に紹介します。国家資格の概要と、民間資格との違いも確認しましょう。

国家資格の取得は難しい?

勉強をする女性

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国家資格は医師や弁護士など難関資格のイメージが強く、難しいと考える人は多いでしょう。実際のところ、国家資格の難易度はどの程度なのでしょうか?一般的な難易度について解説します。

国家資格の難易度は高いとされる

国家資格は、国の法律に基づいて設けられた、知識やスキルを証明するための資格です。取得することにより、仕事に直結するものが多いでしょう。

資格保有者のみが対応できる業務を持つ「業務独占資格」や、保有者のみが名称を名乗れる「名称独占資格」がよく知られています。「設置義務資格」は一定の基準で設置が義務付けられるもの、「技能検定」は技能・知識を評価する資格です。

独占業務のある業務独占資格は、国家資格の中でも特に難易度が高いといえるでしょう。ほかの資格も知識や技能の評価を重視し、全体的に難易度が高く設定されています。

比較的取得しやすい国家資格もある

国家資格の中には、取得しやすいものもあります。業務独占資格・名称独占資格の大半は、大学・専門学校・実務経験により受験資格が得られるものが大半ですが、受験資格がないものであれば、独学での受験も可能です。

ITパスポートやFP技能士など、技能検定に分類される資格は、比較的受験・取得しやすい資格といえるでしょう。

国家資格の難易度は、合格率や一般的な勉強時間から判断できます。合格率は資格試験の公式発表により分かります。

資格取得に向けて教材や講座を提供する会社の情報を活用すれば、一般的な勉強時間も判断できるはずです。短時間の勉強で取得可能な資格もあるため、チェックしてみましょう。

国家資格は民間資格より優れている?

考え事をする男性

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国が認める国家資格と、民間団体が運営する民間資格は、何が違うのでしょうか?基本的な違いと、国家資格の特徴を解説します。

国家資格と民間資格の違い

国家資格は、法律に基づいて国が定める機関が試験を実施します。一方、民間資格には法律上の定めがありません。

基本的には「国が認めている」か「民間団体・企業などが資格試験を実施している」かの違いです。国家資格と民間資格、どちらが優れているというものではありません。

民間資格の中にも企業からの評価が高い資格は多数あり、仕事をする上で評価の対象になります。

国家資格だから取得するのではなく、自分が必要とする知識・技能に合うものを検討しましょう。資格によっては、1級・2級・3級とランクがあり、級が上がるほど必要な知識が幅広く・深くなっています。

国家資格を取得すると仕事の幅が広がる

国家資格には業務独占資格や名称独占資格があり、資格を持たない者が業務を行ったり名称を名乗ったりすることを法律で禁じています。業務独占資格には医師・弁護士・税理士などがあり、資格を持たない者は業務に従事できません。

名称独占資格には、保健師・介護福祉士・理学療法士などがあります。名称を独占することで周囲に対する信頼性を高め、業務独占資格と似たような効果が期待できるでしょう。

業務独占資格・名称独占資格を取得すると、仕事を探す上で可能性が広がります。資格によっては、独立も目指せるはずです。

国家資格には社会的信用がある

国家資格を取得すると、社会的な信用が得られます。国が知識・技能を証明していることからも、信頼性は高いでしょう。キャリアアップや仕事の幅を広げるのであれば、国家資格の取得が有利です。

難易度の高い資格試験にチャレンジし合格すれば、努力も認められます。ただし、やみくもに資格を取るのではなく、目指す仕事に必要なものを選択しましょう。

多くの資格を持っていても、業務に無関係なものや資格取得だけを目的にしていると判断されると評価の対象にならない可能性があります。

比較的難易度が低めの国家資格5選

資格を勉強する

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国家資格の取得を目指すなら、まずは難易度の低いものを検討しましょう。転職に役立つ資格も多く、働きながらでも取得をねらえます。一般的に難易度が低いといわれている資格を確認しましょう。

衛生管理者

衛生管理者は、労働者の健康を守るために、一定規模以上の事業所に設置が義務付けられている資格です。職場の衛生管理を担当し、労働者の健康被害や事故を防ぎます。

衛生管理者には第一種・第二種がありますが、2021年の合格率はどちらも40%台です。衛生管理者の資格試験を受けるには、学歴に応じた労働衛生の実務経験が必要となります。また労働衛生や関係法令の学科試験が行われるため、法令に関する知識も必要です。

勉強に必要とされる期間は、4~6カ月程度とされています。1日の勉強時間が多く取れる場合は、比較的短期間での取得が可能となるでしょう。すでに労働衛生業務に携わっている人に限るものの、今後のキャリアアップを目指すなら取得しておきたい資格です。

ITパスポート

ITパスポートは「技能試験」に分類される資格です。資格取得を通してIT全般の知識について学び、基礎的な能力を証明できます。

近年、ITやセキュリティの知識は仕事をする上で必須です。ITパスポートの取得を推進している企業もあり、職種を問わず役立つでしょう。

勉強期間は、3~4カ月程度が目安です。ITパスポートの取得を目指す問題集も多く販売されており、独学での勉強もしやすいでしょう。

すでに持っているITの知識によっては、さらに短期間での取得を目指せます。合格率は40~50%程度で推移しており、難易度はそれほど高くないと考えられるでしょう。

2級ボイラー技士

2級ボイラー技士は、ボイラーの維持管理を担当する資格です。ボイラーは製造業や施設の空調設備に使用される熱源で、ボイラー技士は運転・管理を行います。

2級ボイラー技士の受験資格は、特にありません。実務経験がない場合は、合格後に講習が必要です。試験自体は筆記のみで、合格率は50〜60%を推移しており、比較的難易度は低いでしょう。

勉強期間は、3〜4カ月ほどが目安です。一般社団法人日本ボイラ協会では4カ月の通信講座を実施しており、受講修了者の9割程度が試験に合格しています。

調理師

調理師免許を持っていると、飲食店の経営・勤務に役立ちます。飲食店開業に必須の資格ではありませんが、調理の基本を学ぶため実務に生かせるでしょう。

調理師免許は、対象の学校でも取得できます。自力で資格取得を目指す場合は、調理師試験を受験しましょう。学校に通わない場合は、2年以上の実務経験が必要です。

試験内容は、公衆衛生学・食品学・栄養学・食品衛生学・調理理論・食文化概論です。実技試験はありません。合格率は60〜70%程度で推移しており、勉強時間は3〜4カ月程度が多いようです。

ファイナンシャルプランナー3級

ファイナンシャルプランナー3級は、日常に役立つお金と暮らしに関する知識が学べます。合格率は70〜90%と高く、難易度は低めです。

就職・転職の実務では2級以上が求められるものの、一般常識的な金融知識はどの業界でも役立つでしょう。

基本的には一般常識レベルのため、勉強にはそれほど時間がかかりません。まずは過去問や問題集を見てみましょう。

3級を足がかりに上級資格を取得すると、金融業界での転職やキャリアアップにつながるはずです。

なお、「AFP」「CFP」は民間資格で、AFPはファイナンシャルプランナー2級相当、CFPは取得すると1級の学科試験が免除されます。

難易度アップ!中難易度の国家資格3選

試験勉強の様子

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やや難易度は上がるものの、業務に直結する資格はキャリアアップに役立ちます。勤務先や転職予定の企業で生かせる資格があれば、チャレンジしてみましょう。すでに業務に携わっている場合は、中難易度の国家資格でも取得しやすいはずです。

3級フィットネスクラブ・マネジメント技能士

フィットネスクラブ・マネジメント技能検定は、フィットネスクラブの経営者やインストラクターに役立つ内容を網羅しています。

3級はインストラクター向けで、16歳以上であれば誰でも受験が可能です。すでにフィットネスクラブで働いている人はもちろん、転職を検討している人にも向いています。

学科と実技があり、全体の6割以上が合格基準です。合格率は40%台のため、きちんと学習しておけば問題はないでしょう。

公式テキストが販売されており、過去問も公開されています。まずは公式教材を読み込むのが大切です。

危険物取扱者乙種4類

危険物取扱者乙種は、危険物を取り扱う職種で役立ちます。エネルギーメーカーなど、石油や化学薬品などを扱う職場では、重宝されるでしょう。

危険物取扱者の試験は甲・乙・丙がありますが、乙種は受験しやすく合格した種別の危険物のみ取り扱いが可能です。1~6類の中でも、4類は高い人気を誇ります。4類に合格すると、特殊引火物・アルコール類・石油類など幅広い危険物の取り扱いができるためです。

合格率は30〜40%程度と、比較的取得しやすいといえるでしょう。勉強期間は元々の知識によっても異なりますが、3〜4カ月程度が目安です。通信講座でも人気があり、効率的に学習を進められます。

キャリアコンサルタント

キャリアコンサルタントは、就職・転職希望者のアドバイザーとして働くコンサルティング業です。国家資格を取得すると、名称を名乗れます。

厚生労働省が定める150時間の講義を受けると、実務経験がなく、国が定める試験を合格していない人でも受験が可能です。試験には学科と実技がありますが、実技部分は講義を受けている人なら理解しやすいでしょう。

学科部分の勉強には2~3カ月程度の時間を取り、テキストのおさらいや過去問を解くのが基本です。150時間の講義は休日にまとめての受講も可能なため、働きながら取得を目指す人も多いでしょう。

挑戦する価値あり!高難易度の国家資格3選

分厚い問題集を解く

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国家資格の中には、合格率が低く高難易度の資格もあります。独立を目指せる資格も多いため、挑戦する価値があるでしょう。すでに関係する会社で働いている場合には、評価アップも期待できます。

マンション管理士

マンション管理士は、管理組合や住民のアドバイザーです。大規模修繕計画の提案や、マンション保持に関する相談に対応し、コンサルティング業として活躍できるでしょう。

マンション管理士の合格率は、8〜9%程度で推移しています。勉強の期間は、半年程度が目安です。

試験内容はマークシート式の50問で、8割以上の正答率が合格基準といわれています。合格を目指すには、テキストや過去問のチェックが大切です。自分に合うテキストを探すだけでなく、通信講座を活用するのもよいでしょう。

宅地建物取引士

宅地建物取引士(宅建士)は、不動産取引のスペシャリストです。契約時の説明、押印は宅建士に任されており、不動産業界で活躍できる資格といえます。管理会社や建築業界など、選択肢は豊富です。

特別な受験資格はないため、誰でも挑戦できます。合格率は15〜17%程度です。不動産取引の法律を中心に学びますが、弁護士・司法書士・税理士を含む法律系資格の中では、難易度が低くなっています。

勉強期間は半年程度と考えておくと、余裕を持って受験を目指せるでしょう。試験は宅建業法や民法など、法律系の問題が多くを占めます。

行政書士

行政書士の資格を取ると、官公庁に提出する書類の作成代行や提出手続きができます。法律事務所での勤務や、独立して事務所を開くのも可能です。

行政書士試験の合格率は10%前後で、難易度は高いといえます。合格基準がはっきりしており、各分野で一定の点数を取ると合格です。特別な受験資格もありません。

行政書士になるためには、テキストや問題集を読み込み内容を理解しましょう。資格試験のサイトでも、過去の問題と正解が公開されています。

法律に関する問題のため、基本的な内容を理解し応用ができれば合格に近づくでしょう。通信講座を利用して、効率的に学ぶのもおすすめです。

独学だと取得できない国家資格も

パソコンを見ながらノートを取る

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国家資格の中には、専門学校や短大、大学での学習が必須とされる資格もあります。目指す業界によっては、働きながら学校に通う必要も出てくるでしょう。主なケースを紹介します。

卒業と同時に受験資格を取得するケース

専門学校や短大、大学卒業と同時に受験資格を取得する資格には、看護師・歯科衛生士・美容師などがあります。

どの資格も数年間学校に通う必要があり、受験資格を得るまでの難易度は高いでしょう。しかし、夜間や土日に学べる専門学校もあり、働きながらの勉強も可能です。また社会福祉士のように、通信教育の学校で学べる資格もあります。

どの資格も学校卒業だけでなく、最終的に国家試験に合格しなければなりません。ただし、学校で学んだ内容が出るため、看護師資格・歯科衛生士資格の合格率を見ると90%を超えています。

卒業と同時に取得するケース

学校を卒業すると同時に資格が取得できるものもあります。栄養士・保育士・教員免許などは、必要な単位を取得し対象の学校を卒業するだけで取得が可能です。夜間・通信制大学で学べるケースも多く、社会人でも比較的勉強がしやすいでしょう。

学校に通う必要がある資格は、保有人数が少なく仕事に直結します。募集には限りがあるものの、向いていそうな職業があれば早めに学校へ通い、転職を検討しましょう。

資格取得のための勉強方法

通信講座のイメージ

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国家資格を勉強する上で、効率のよい方法はあるのでしょうか?働きながら資格取得を目指す場合は、できるだけ短時間で合格に近づく方法で勉強したいはずです。おすすめの勉強方法を紹介します。

通信講座で勉強する

国家資格にはメジャーなものが多く、通信講座の取り扱いも豊富です。スクールに通うことなく、自宅で好きなときに勉強ができます。特に働きながら資格取得を目指すなら、活用しやすいでしょう。

通信講座独自の受験対策で、効率的に学習できるのが強みです。質問への回答や模擬テストの実施など、独学では難しいコンテンツも多数用意されています。

通信講座の料金がかかるのはデメリットですが、独学でも問題集などの購入は必要なため、効率を重視するなら通信講座がおすすめです。講座によっては、独学での受験に比べて高い合格率を実現しているケースもあり、一発合格を目指す人にも向いています。

過去問を解く

資格試験では、過去問と同じタイプの問題がよく出題されます。たくさんの過去問を解くだけでも、合格に近づくはずです。多くの過去問を解いておけば、本番でまったく同じ問題が出る可能性もありえます。

ただし、過去問を重視して対策する場合は、試験の傾向をチェックしておきましょう。資格によっては、過去問対策だけでは突破できないように考えられているものもあります。

基本のテキストを読み込むのに加え、過去問や新しい情報をバランスよく取り入れて合格を目指しましょう。

国家資格でキャリアアップを目指そう

パソコンに向かい考える男性

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国家資格を取得すると、独占業務や名称独占によって仕事を有利に進められます。技能検定の資格もあり、企業からの評価につながるでしょう。

現在の仕事でキャリアアップするだけでなく、転職にも役立つはずです。まずは難易度の低い資格からチャレンジし、上位資格へのステップアップを考えるのもよいでしょう。