仕事の辞め方を時系列で解説。円満退職のポイントや注意点も

仕事を辞めると決心しても、退職までの流れが分からないとスムーズに動けません。転職先が決まって退職するまでの手順と、円満退職のために意識したいポイントや注意点を解説します。例外的に電話で退職の意思を伝えるときの考え方も押さえておきましょう。

仕事を辞める前にしておきたいこと

資料を手にしている男性

(出典) photo-ac.com

退職の決心をしても、勢いだけで動くとスムーズに退職できません。実際に仕事を辞める前に済ませておきたいことを、2つ紹介します。

就業規則で退職のルールを確認する

法律(民法)では、雇用期間が決まっていない場合、2週間前までに退職を申し出れば会社を退職できるとされています。雇用期間が決まっているケースでも、やむを得ない事情があるか、契約終了の期限が未定の状態で5年を経過すれば退職が可能です。

「やむを得ない事情」の定義ははっきりと決まっていませんが、一般的には本人や家族の病気・ケガがあったり、労働環境に大きな問題があったりする場合が挙げられるでしょう。話し合いで会社との合意が得られたときも、有期雇用の途中退職が認められます。

また、法律による規定とは別に、就業規則で独自のルールを設けている企業は少なくありません。就業規則では一般的に、退職の1~3カ月前までに申し出るように規定されています。2週間前までに申告すれば法的に問題ないとはいえ、就業規則に従うのが無難です。

参考:民法 第626条・第627条・第628条 | e-Gov法令検索

転職先の内定をもらう

転職や次のキャリアを考えるために退職する場合は別ですが、会社を辞める前に内定をもらっておく方が安心です。転職活動は遅くとも、退職予定日の3カ月前までに始めるとよいでしょう。

先に転職先を決めておけば収入が途切れる心配がなく、上司から引き止められたときも強い意思を持って応対できます。ただ、在職中の転職活動は業務との兼ね合いもあって、非常に忙しくなるでしょう。在職中の転職活動には、効率的に求人を探せるスタンバイの活用がおすすめです。

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仕事を辞めるまでの流れ

デスクに置かれた退職届

(出典) photo-ac.com

退職の手続きを進める準備ができたら、辞める意思を実際に上司に伝えましょう。その後、退職届の提出や仕事の引き継ぎ、貸与物の返却などを全て済ませて、ようやく退職に至ります。

上司に退職の意向を伝える

転職先が決まったら、直属の上司に退職の意思を伝えます。最初は「仕事を退職したいと考えている」と相談の形で交渉をスタートさせると、流れをうまく作れるでしょう。

退職の意思を伝える時期は、就業規則で1カ月前までの申告とされているなら、退職予定日の2カ月前が目安です。

退職の交渉が始まると、上司から退職を引き止められる場合もあります。しかし、転職先への入社日が決まっていて退職日を変更できないことを伝えると、それ以上は引き止められなくなるはずです。

退職日が決定したら「退職届」を提出する

上司と退職を申告した後は、退職届を提出します。退職届の書式や提出期限に関しても、就業規則で規定されているケースがあることに注意が必要です。会社のルールに従って退職届を作成し、直属の上司に提出しましょう。

書式の規定がない場合は白地の封筒と用紙を用意します。封筒の表には「退職届」と書き、裏面には所属と氏名を書きます。退職届の書き出しは「私儀」とし、退職理由と退職予定日・提出年月日・所属と氏名・宛先を記載するのが基本です。

会社によっては退職届を提出する必要はなく、口頭で退職の意思を伝えるだけで十分な場合もあります。退職交渉がまとまるタイミングで、退職届が必要か上司に尋ねるとよいでしょう。

仕事の引き継ぎを済ませる

退職の3日前を目安に、これまで自分が担っていた業務の引き継ぎ作業を終わらせます。しっかり引き継ぎがずに退職すると、業務が途切れて会社や取引先に迷惑をかけてしまう可能性があります。スムーズな退職のためにも、引き継ぎ作業は大切です。

引き継ぎでは担当業務の段取りや注意点、進捗状況を書類にまとめます。業務の遂行に必要な書類の保管場所も記載しておくと丁寧です。書類にまとめるのはもちろん、業務を引き継ぐ社員には口頭でも伝えておきましょう。

貸与物を返却する

最終日には、貸与物を返却してから会社を後にしましょう。誤ってパソコンや重要書類を持ち出してしまうと、大きなトラブルに発展しかねません。

貸与物というとパソコンや社員証・制服を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、会社で発行した名刺や経費で購入したペン・メモ帳などの事務用品も会社に返却する必要があります。

社会保険証も返却し忘れないように注意が必要です。あらかじめ返却物のリストを作っておくと、返却の漏れがないでしょう。

円満退職のポイント

退職届に向き合う男性

(出典) photo-ac.com

「立つ鳥跡を濁さず」という言葉があるように、退職時もできれば会社と円満な形で関係を終わらせたいものです。円満退職を目指す上で気を付けたい3つのポイントを解説します。

ポジティブな印象の退職理由を伝える

会社への不満が理由で退職するとしても、円満退職のためにはポジティブな理由を伝えるのが無難です。ポジティブな理由には例えば、「実現したいキャリアのために」「ステップアップしたいから」などが挙げられます。

ポジティブな理由が特にない場合は、一身上の都合により退職するとだけ伝えればよいでしょう。詳しく理由を聞かれて答えに困るときは、健康や家庭の都合とするのも1つの手です。どちらも干渉しづらい事情なので、追求されにくくなるでしょう。

会社の繁忙期は避ける

会社の繁忙期を避けるのも、円満退職を成功させるために重要なポイントです。繁忙期は上司も業務で忙しいため、退職の意思を伝えても円滑に話が進まない可能性があります。結局はしっかり話し合えず、互いに不満を残して退職する形にもなりかねません。

また、忙しいと引き継ぎ作業が進みにくいため、退職後に会社に迷惑がかかり、印象が悪くなってしまいます。繁忙期のほか、人事異動の時期に退職するのも避けた方がよいでしょう。退職を切り出す時期には慎重な見極めが必要です。

挨拶回りをする

円満退職を目指すなら、退職が決まってから社内外の関係者に挨拶回りをしましょう。取引先へ挨拶に行くときは、早い段階から後任者を連れて行って紹介を済ませておき、少しずつ業務を移行していくことで相手方の担当者を困らせないよう配慮します。

社内の挨拶回りは、昼休憩が終わって午後の業務が始まるタイミングがおすすめです。出社して間もない時間帯だとメールやスケジュールをチェックする人が多いので、避けた方がよいでしょう。

昼休憩終わりなら比較的余裕のある人が多いため、このタイミングで声をかければ「気を遣える人だな」と好印象を与えやすくなります。

仕事を辞めるときの注意点

考え事をする男性

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退職の前後で気を付けたい言動や必要な手続きを把握していないと、思わぬデメリットを被ってしまいます。損をせず退職できるよう、注意したいポイントを押さえておきましょう。

転職活動について公言しない

在職中に転職先を探す場合、転職活動をしていることは上司や同僚に表明しないのが賢い選択です。退職の意思を伝える前に転職の予定を悟られてしまうと、早い時期から退職・転職を引き止めるためのアプローチが始まる可能性があります。

転職先が決まっていないうちに上司から引き止められると、つい気持ちを揺さぶられてしまい、結局退職しないという決断にもつながりかねません。

転職活動をしているかどうかは、在職している会社に伝える必要のないことです。つい会社で公言しないように注意しましょう。

有休をきちんと消化する

未消化の有休が残っているなら、全日数分を消化してから退職するのが理想です。有休のを残したまま退職すると、実質的に損をしてしまいます。

就業規則で有休の残り日数をチェックして、早めに申請しましょう。引き継ぎ業務との兼ね合いもあるため、退職直前になって焦らないようスケジューリングに注意が必要です。

また、会社によっては就業規則で有休の買取について規定しているケースもあります。有休を取得する暇がない場合は、買い取ってもらう選択肢も考えましょう。

公的な手続きも忘れずに

退職時は、税金や社会保険といった公的な手続きも抜け漏れなく済ませる必要があります。公的手続きのためにはまず、退職前に会社から必要書類を受け取ります。

雇用保険被保険者証と源泉徴収票の受け取りは必須です。会社に預けている場合は、年金手帳も忘れずに受け取るようにしましょう。

間を空けずに社会保険加入の仕事に転職するなら、転職先に源泉徴収票や年金手帳を提出するだけで、ほかに手続きは必要ありません。税金や社会保険の手続きは、転職先の会社が代わりに行います。

電話で退職を伝えるのはアリ?

電話をかけようとする手元

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退職の意思は、出社勤務であれば対面で伝えます。ただ、どうしても直接上司に伝えられないケースもあるでしょう。面と向かって退職の意思を伝えられないときは、電話で済ませてもよいのでしょうか?

やむを得ない事情があれば許容

大前提として、基本的には退職の意思は直属の上司に直接伝えるもので、電話で申告するのはマナー違反だと理解しておきましょう。とはいえ、顔を合わせて伝えられないほどの事情があれば、例外的に電話での申告が認められます。

例えば、重度の体調不良に陥っていたりひどいケガを負っていたりする場合です。心身の状態が出社で悪化してしまったり、親の介護や看護で離れられなかったりするケースでも、電話連絡が認められるでしょう。

電話で退職を伝えるときのポイント

電話で退職を伝えるときは、忙しい時間帯は避けるのがベターです。勤務開始時間の数分前に電話をかけると対応してもらいやすいでしょう。電話での相談になることをお詫びするところから入ると、上司もスムーズに話を受け入れやすくなります。

また、電話では声しか伝わらないため、退職の意思がはっきりと伝わるように言葉を濁さず話すことが大切です。

退職の意思を伝えられたら、貸与物の返却、必要書類の受け取りといった手続きを済ませます。会社に直接取りに行けない状態にあることが多いため、郵送でやり取りするのが一般的です。

必要書類はそれぞれの担当部署から、バラバラに送られてくる場合もあります。

流れを把握してスムーズな退職を目指そう

街を背に歩く男性

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仕事を辞めるときはまず就業規則をチェックして、退職に関する決まりを確認します。準備が整ったら上司に退職の意思を伝え、退職届を提出するのが基本の流れです。仕事の引き継ぎが完了して貸与物の返却が済んだら、無事に退職できます。

円満退職をしたいなら、退職を伝えるタイミングと理由に注意が必要です。繁忙期を避けたり挨拶回りをしたりする工夫もあると、よい関係のまま退職しやすいでしょう。有休消化や社会保険の手続きも、忘れずに済ませておくと損をしません。

流れやポイント・注意点を把握しておけば、スムーズな退職を目指せます。退職の交渉を切り出す前に、落ち着いて全体の流れをシミュレーションしておきましょう。

鬼沢健士
【監修者】All About 暮らしの法律ガイド鬼沢健士

慶應義塾大学卒業。平成24年、茨城県取手市「じょうばん法律事務所」を開設。主に労働者側の労働事件(不当解雇など)や、インターネット詐欺被害救済(サクラサイト、支援金詐欺など)を取り扱う。
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