派遣から正社員になる方法とは?正社員のメリット・デメリットも紹介

就業規則にしっかり目を通す

民法では、雇用期間が決まっていない場合、2週間前までに退職を申し出れば会社を退職できるとされています。雇用期間が決まっているケースでも、やむを得ない事情があるか、契約終了の期限が未定の状態で5年を経過すれば退職が可能です。

「やむを得ない事情」の定義ははっきりと決まっていませんが、一般的には本人や家族の病気・ケガがあったり、労働環境に大きな問題があったりする場合が挙げられるでしょう。話し合いで会社との合意が得られたときも、有期雇用の途中退職が認められます。

また、法律による規定とは別に、就業規則で独自のルールを設けている企業は少なくありません。就業規則では一般的に、退職の1~3カ月前までに申し出るように規定されています。2週間前までに申告すれば法的に問題ないとはいえ、就業規則に従うのが無難です。

参考:民法 第626条・第627条・第628条 | e-Gov法令検索

派遣社員としての立場に不満があったとしても、どう動き出せばよいのか分からない人もいるはずです。派遣から正社員を目指す方法を知っていると、理想の働き方に近づける可能性が高まります。正社員のメリットやデメリットも、併せてチェックしましょう。

派遣から正社員になる方法は?

社員証を見せる女性

(出典) photo-ac.com

派遣社員から正社員になる方法には、いくつかの方法があります。自分に合うやり方を検討するために、どのような道があるのか見ていきましょう。

派遣先企業で正社員登用を目指す

派遣先の企業に正社員登用制度がある場合、現在は派遣社員でも正社員として採用してもらえるケースがあります。正社員登用制度は、アルバイトや契約社員などの非正規社員を正社員へ雇用転換する制度です。

とはいえ、希望すれば誰でも正社員になれるわけではなく、実績や能力を認めてもらわなければなりません。派遣先の企業に「正社員として雇いたい」と思わせるような働きができれば、正社員になれる可能性はあります。

ただし、派遣社員はあくまでも派遣会社と雇用関係を結んでいるので、派遣社員と派遣先の企業の間で勝手に話を進めてしまうとトラブルになるでしょう。

派遣会社と派遣先の間で結ばれた契約期間の終了後に、正社員として契約を結ぶ流れが基本です。

「紹介予定派遣制度」を利用する

紹介予定派遣制度とは最長6カ月の派遣期間後に、正社員や契約社員になるかどうかを選べるようになる制度のことです。社員になるには、本人だけでなく派遣先企業の同意も必要になります。

派遣期間が終われば自動的に社員になれるわけではなく、派遣社員として働く期間が試用期間の役割を持つのが特徴です。

本人と派遣先の合意によって社員になることを決めるので、実際に働いてみて仕事内容や職場の雰囲気などに問題点を感じ、社員になりたくないと思った場合は断ることもできます。

企業側も同じく、その人の能力や勤務態度に問題を感じれば社員として採用しません。派遣先の企業は紹介予定派遣制度を利用するとき、社員になることを前提とした人材を求めるので、一般的な派遣と違って事前に面接や書類選考を設けるケースが大半です。

一から正社員求人に応募する

派遣先の企業が、必ずしも正社員登用制度を用意しているとは限りません。紹介予定派遣制度を利用しても、希望通りにいかない可能性もあります。正社員を募集している企業に一から応募する方が手っ取り早いともいえるでしょう。

派遣先の企業が「この人に正社員になってもらいたい」と思っても、派遣元との兼ね合いで、うまくいかないケースもあります。正社員を求めている会社に自分で応募する方が、フローとしてはスムーズです。

ただ、派遣から正社員登用される方法とは違って、転職活動のタイミングによっては収入面の不安が出てくることも考えられます。転職活動は派遣期間が終わる前に始めた方が安心です。

派遣の契約期間が満了した後に入社できるよう、うまくスケジュールを管理しつつ進めましょう。

派遣から正社員になるコツ

デスクで仕事をする女性

(出典) photo-ac.com

派遣から正社員への転職活動は難しい部分もありますが、コツを分かっていると成功に近づけるでしょう。正社員を目指すために、どのような行動をすればよいのかを紹介します。

行動を起こすなら早めに

基本的には年齢が若いほど、正社員として採用される可能性が高まります。正社員としての転職を目指すなら、早めの行動がおすすめです。

ミドルの中途採用と違って、20代から30代前半なら伸び代が大きいと判断され、就業経験が派遣やアルバイトだけでも採用されやすいでしょう。年齢を重ねるほどに経験やスキルに対する期待度が上がるため、実績が少ない場合は採用されるのが困難になってきます。

ただし、急いで転職しなければと焦ってしまうと失敗しやすくなります。焦りすぎると就職先が決まらないときに、最も大切な条件を妥協してしまう原因にもなりかねません。

責任感を持って仕事に取り組む

派遣社員は正社員とは違って、契約が満了すれば退職する立場です。どうせ辞めるのだからと考えて手を抜くと、勤務態度が不真面目だと判断されてしまいます。

派遣先の企業で正社員になりたいと思っているなら、責任感のない態度は大きなマイナスとなるでしょう。仕事への意欲を見せる働き方が重要です。

ほかの企業で正社員になりたい場合も、これまでの職場でどれだけ責任感を持って仕事に取り組んでいたかが重視されます。

面接で「前職で積極的に取り組んでいたことは?」と聞かれて、何も思い浮かばないような働き方をしていては、正社員への道は遠のくでしょう。

転職に向けて資格・実績を積む

入社してから活躍できそうだという根拠がない人を、正社員として雇う企業は少ないでしょう。仕事をする上で有利になる資格を取ったり、実績を積んだりすることは大事です。

安心して仕事を任せられるような専門的なスキルや資格を持っていれば、正社員として採用される可能性は高まります。

職種によって求められるスキルや資格は変わるので、希望の職種と関連性が高いものをアピールできるように準備しましょう。

また、どんなに能力が高く仕事ができる人でも、コミュニケーションがうまく取れず、環境になじもうとする努力に欠ける人だと魅力を感じてもらえません。能力だけでなく人間性もチェックされている点を忘れないようにしましょう。

派遣の経歴は転職で不利になる?

スマホを手に悩む女性

(出典) photo-ac.com

派遣の経歴が転職で不利になってしまうのではないかと考える人もいます。企業は派遣社員の経歴がある人に対して、どのような考え方をするのでしょうか。

派遣で働く目的が重要

派遣社員としての経歴自体が、正社員の転職に不利になることはありません。しかし、目的もなく楽そうだからという理由で派遣の働き方を選んでいる人に、魅力を感じる企業は少ないでしょう。

派遣社員として働いている人でも、即戦力として期待できるスキルや能力を持っているのであれば、積極的に採用したいと考える企業は多いはずです。

スキルアップのためといった目的を持って派遣として働いていると分かれば、入社後の意欲にも期待されて有利に働きます。

ただし企業によって考え方に違いがあり、残念ながら派遣社員のことを「誰にでもできるような仕事をする人」と思っているような場合もあります。面接では、自分のスキルや経験をしっかりとアピールすることが重要です。

正社員への志望動機が「安定」だけはNG

企業が正社員を募集するに当たって、重視するものの1つに志望動機があります。自社にどんなメリットをもたらしてくれるのかが分からない志望動機は、魅力的に映りません。安定して働きたいからという理由だけを書くのはNGです。

たしかに安定して働けるところは正社員のメリットですが、「安定して働ける企業はほかにもあるのに、なぜうちを選んだのか?」と思わせてしまいます。

自身の都合だけを伝えるのではなく、採用すれば自社に貢献してくれそうだと思ってもらえる内容にするのが面接の基本です。

例えば、

これまでに培ってきた〇〇のスキルを生かして、〇〇に貢献したいので応募しました

というような内容がふさわしいといえます。採用担当者は採用した後のイメージがわくだけでなく、企業とのマッチ度も測れるでしょう。

履歴書に派遣の職歴はどう書く?

履歴書に記入する

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就業経験が派遣だけの人や、正社員と派遣社員両方の経歴を持つ人は履歴書の職歴欄の書き方に迷うでしょう。派遣の経歴の書き方について、基本を紹介します。

基本の書き方

履歴書に派遣社員として働いた経歴を記載するときは、派遣会社(派遣元)に登録した日付と派遣先の企業で働いた経歴を分けて書きましょう。

どの派遣会社に登録し、どんな企業に派遣されたのかを明確にしないと、直接雇用なのか派遣契約なのか判断できず採用担当者を混乱させかねません。以下のように整理して書くことをおすすめします。

令和2年4月 株式会社A(派遣元)に登録

令和2年4月 株式会社B 営業部第一営業課に営業事務として派遣(令和3年3月まで)

令和3年4月 株式会社C 商品開発部に一般事務として派遣(令和4年3月まで)

令和4年3月 派遣期間満了につき退職

派遣会社から登録を抹消したり途中で派遣会社を変えたりした場合、その旨と年月日も記載しましょう。

正社員の経歴・応募先に関係ある職歴を優先

正社員の経歴がある場合、派遣社員の経歴よりも優先して書きます。応募先への関連性が高い実績がある場合は、アピールになるので積極的に書きましょう。

営業事務として営業用資料の作成・業務フローの改善提案・作成も担当

このようにアピールしたい内容を具体的に書けば、正社員としてどんな仕事をしたのか明確にできます。

また、派遣で働いていたことを隠すとブランクがあるように誤解される原因にもなるので、省略はせず1社ごとに書くのが基本です。

さまざまな企業に派遣されていて職歴欄に内容が収まりきらない場合は、職務経歴書にまとめて書いても構いません。

正社員になるメリット

デスクワークをする女性

(出典) photo-ac.com

正社員には、派遣社員にはない多くのメリットがあります。どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

安定した働き方ができる

正社員になるメリットは、やはり安定した働き方ができる点です。派遣社員は長く働きたいと思っても、基本的に最長3年の縛りがあるほか、派遣先や派遣会社の合意が得られなければ本人の意思とは関係なく関係が断たれてしまいます。

もちろん派遣先の企業に気に入ってもらえれば、引き続き契約し続けてもらうことは可能ですが、派遣社員は会社の経営に問題があるときに解雇されやすい立場です。正社員になれば、現在の契約期間が終わった後に働く場所について悩まずに済みます。

できる仕事の幅が広がる

派遣社員の場合、あらかじめ決められた範囲内の仕事しかできません。しかし正社員になると、本人の能力や実績次第で新しい業務や責任のある仕事にチャレンジさせてもらえる可能性が出てきます。

どのように人材を育成していくかは企業によって差がありますが、さまざまな仕事を経ていずれはマネジメントを任せられるようにと、将来的なビジョンに向かって業務を割り振るのが一般的です。

将来的に転職することになったとしても、幅広い業務に携わってきた経験は強みになるでしょう。

正社員になるデメリット

悩む女性

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よい面ばかりに見える正社員にも、デメリットはあります。転職を後悔しないために、派遣社員と比べてどのような問題があるのかを見ていきましょう。

会社を辞めづらくなる

正社員になって契約期間が定められなくなるということは、契約期間が終わったときに辞める選択肢がなくなるということです。

もちろん退職しようと思えばできますが、派遣社員とは違って新しい仕事を紹介してもらえるわけではありません。自分の力でまた一から就職先を探すことになります。

責任ある立場になっていると、会社を辞めることへのハードルはより高くなります。残業が多くプライベートが犠牲になっていたとしても、簡単には辞められずに大きなストレスを抱える可能性もあるでしょう。

働き方の自由度が下がる

正社員の場合、転勤や異動も十分に考えられます。特別な事情があるときには申し出れば配慮してもらえますが、基本的には会社の方針を基に勤務時間や勤務地などを決められるので、働き方の自由が下がる点はデメリットです。

企業によっては残業・休日出勤が頻繁に発生することも珍しくありません。派遣社員は基本的に契約した通りの勤務時間内で働けますが、正社員は退社時間を過ぎても必要であれば残って仕事をします。

派遣で働いている場合、例えば終業後の時間に習い事をしたくなったら、次は残業がない仕事を選んで働き方に変えることも可能です。

しかし残業がある会社の正社員として働いていると、プライベートを充実させたくなったからといって、定時で帰れるように働き方を変えるのは難しいでしょう。

正社員を目指す転職活動のポイント

資料に書き込む女性

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正社員を目指して転職するなら、押さえておきたいポイントがあります。転職を成功させたい人が知っておくべき、活動のポイントを見ていきましょう。

キャリアの棚卸しをする

まずは自分の強みを知るために、キャリアの棚卸しから始めましょう。派遣社員として勤務してきた経験を振り返って、身に付けたスキルを全て書き出します。

応募先にマッチしそうなスキルが見つけられれば、強みとしてアピールしましょう。どのような経験をしてきたかを振り返るときは、それぞれの派遣先で具体的に何をしていたのかを整理して書くことをおすすめします。

例えば、営業事務なら営業部の規模やサポートしてきた営業担当の人数など、詳しい内容まで書き出すとより効果的です。

キャリアの棚卸しをすることで自分のスキルを客観的に見つめ直せるため、力量に合った企業に応募しやすくなります。

転職サイトを活用する

派遣会社を退職してから応募先を探そうとすると、すぐに採用されなかったときの経済的な負担が大きくなります。在職中に応募先を探し始めた方がよいでしょう。

転職サイトを活用すれば、なかなか時間を取れない在職中の転職でも手軽に応募先を探せます。転職エージェントを利用する方法もありますが、面談の時間を設けるのが大変という人もいるはずです。

転職サイトを使う最大のメリットは、自分の好きな時間に応募先を検討できることです。スタンバイでは、希望の職種や年収などの条件やフリーワードから、正社員を求める企業を検索できます。効率的に転職先を探したい人は活用しましょう。

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正社員を目指してできることから実践しよう

後ろから見た働く女性

(出典) photo-ac.com

派遣から正社員になるのは敷居が高いと感じる人は多いものの、若いうちに行動に移せば正社員として採用される可能性は高くなります。

ただ、若い年代でも一定のスキルや経験は重視されるので、派遣社員としてどのような働きをして何を身に付けたのかをアピールできるように準備しておきましょう。

キャリアの棚卸しをすると、自分の強みが見えてきて採用担当者へのアピールがしやすくなります。転職サイトも上手に活用しながら、理想の仕事を探しましょう。