同業他社への転職はできる?スムーズな転職のコツと注意点を解説

転職に抵抗がある人でも、同業他社への転職ならハードルが低く感じるでしょう。しかし、同業他社への転職はできないという話も耳にします。同業他社への転職の実態に加えて、メリット・デメリットや成功のコツ・注意点を解説します。

同業他社への転職は禁止されている?

履歴書を持った人

(出典) photo-ac.com

転職先として、同業の会社を選ぶのは禁止されているという話を聞いたことがある人も多いでしょう。実際、同業の会社は転職先として選べないのでしょうか?基本的な考え方と、注意したい規定について解説します。

原則として職業選択の自由がある

職業選択の自由は、日本国憲法の第22条で全ての国民に保障された権利です。憲法は日本の最高法規であり、どの法律や規則よりも優先されます。公共の福祉に反しない限り、日本では誰もが自由に仕事を選べるのです。

同業他社に転職する場合にも、当然ながら職業選択の自由は保障されています。実際に同業他社へ転職している人、さらには業界内でのヘッドハンティングで転職する人も少なくありません。

転職先を探すときに同業他社を選択肢から外す必要は、基本的にないと考えてよいでしょう。

参考:日本国憲法 第22条 | e-Gov法令検索

「競業避止義務規定」がある場合は注意

転職先として同業他社を選ぶ権利は誰にでもあります。ただ、「競業避止義務」が会社で規定されている場合は注意しましょう。競業避止義務は従業員に対して、会社に不利益を与える競業行為を禁止するものです。

就業規則に競業避止義務規定の記載がある場合、同業他社への転職で前職の会社に不利益を与えることになれば、規定違反を問われるケースもゼロではありません。

とはいえ、競業避止義務規定の内容そのものに問題がある場合は、取り決めが無効になる場合もあります。規定がの有効・無効は、違法ではないか・企業の利益を守るために本当に必要かなど、さまざまな視点から判断されます。

2009年の判例では、転職後で活用した知識やスキルが前職の会社以外でも得られるものなら、競業避止義務違反には当たらないという見解が示されました。

参考:
労働契約法 第3条第4項 | e-Gov法令検索

競業避止義務契約の有効性について|経済産業省

同業他社に転職するメリット

話をする面接官

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同業他社への転職には、一般的な転職とは違った特徴があります。同業他社に転職する場合に感じられるメリットとして、何が挙げられるのでしょうか?

他の応募者と差別化できる

転職先として競合他社を選ぶと、業界特有の事情や知識・経験が豊富という点が評価され、選考を有利に進められる可能性が高くなります。面接時には入社してからの活躍を具体的かつ魅力的にアピールできて、他の応募者との差別化を図れるでしょう。

同じ業界で培った基礎知識が十分にあれば、転職後もつまずきにくく、すんなりと仕事に順応しやすいのも大きなメリットです。転職後に業務内容が合わず、すぐに辞めてしまうという失敗のリスクは少ないでしょう。

待遇の改善が期待できる

即戦力としての活躍が期待できて、会社に大きな利益をもたらしてくれる存在を採用したいと、多くの会社は考えています。同業他社からの優秀な転職者は、転職先の会社が喉から手が出るほど欲しい存在です。

会社側からの需要が高いため、転職後はスキルによって収入アップも見込めます。最初に提示された条件では待遇の改善につながらなくても、交渉次第では好待遇で受け入れてもらえるケースもあるでしょう。

転職先の待遇をチェックするとき、額面収入以外にも見ておきたいポイントがあります。家賃補助や通勤手当・資格取得補助などの各種手当や福利厚生の他、経営状態も長期的に安定して働くために大切です。

キャリアプランを描きやすい

同じ業界だとキャリアをステップアップさせる流れが似ているため、比較的簡単に将来の予測を立てられます。

転職活動中の面接では、将来の目標やビジョンに関する質問をされる機会が少なくありません。同業他社への転職であれば具体的に回答しやすいため、面接官に好印象を与えられるでしょう。

転職した後は即戦力と見なされて、さまざまな仕事を任されます。中にはより難易度の高いものや、前職とは違ったやり方の業務があるでしょう。以前の経験を生かしてスピーディな成長を望めるのも、同業他社へ転職するメリットです。

同業他社に転職するデメリット

怪訝な顔をしている女性

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同業他社への転職には多くのメリットがあるとはいえ、転職してから後悔しないためには、デメリットも把握しておく必要があります。同業他社への転職で生じうる2つのデメリットを解説します。

大幅な収入アップは望みづらい

それぞれの業界にはスキルや経験・役職に応じて、一定の給与相場があります。転職によって収入アップが見込めるとはいえ、同業他社への転職だと大幅な収入アップにはつながりにくいのが実情です。

ただ、現在の会社で正当な評価を受けていないと感じている人なら、同業他社でも転職で待遇の向上を目指しやすいでしょう。転職活動を通して自分自身の実際の市場価値を知り、正当な対価を与えてくれる会社に出会えれば、大幅な給与アップも期待できます。

人脈に悪影響を及ぼす恐れがある

同業他社に転職した場合は、転職後もセミナーや研究会を通じて、前職の上司や同僚と顔を合わせる可能性があります。しかし、中には会社を辞めて同業他社に移ったことを快く思わない人もいるのが現実です。

同業他社への転職を機に、それまでに築いてきた人脈や人間関係が終わりを迎える恐れもあることは頭に入れておきましょう。親密な間柄なら問題なく交友関係を維持できますが、一部の人とは疎遠になるかもしれないという覚悟が必要です。

同業他社への転職を成功させるコツ

転職のイメージ

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同業他社への転職は一般的な転職より進めやすいものの、漫然と取り組んでいてはせっかくのアドバンテージを生かせません。特に大切なポイントを押さえて、しっかり経験をアピールできる転職活動を目指しましょう。

転職の目的を明確化する

転職活動中は、面接で転職の目的をよく聞かれます。質問されたときに明確な回答ができないと、面接官によくない印象を与えかねません。同業他社への転職だけに限ったことではありませんが、転職の目的は自分の中で明確にしておきましょう。

同じ業界内での転職を目指すとき、業種に焦点を当てて回答するのは適切とはいえません。前職では自身のキャリア目標を達成できなかった理由を説明して、業界は同じでも志望先の会社だからこそ感じられる魅力を伝えるのがベストです。

等身大のスキル・能力をアピールする

転職活動中は少しでも待遇のよい会社に転職したいという思いから、自分を実際よりも大きく見せようとするものです。

しかし、特に同業他社への転職時は、志望先の会社の人も業界内の事情に精通しています。繕った姿をアピールしても、すぐに実際とは違うと気付かれるでしょう。

たとえ十分な能力があると偽って入社できたとしても、入社後にミスマッチが発生してうまくいかない可能性があります。会社側も自分もメリットが得られません。転職を本当の意味で成功させるには、繕わず等身大の姿で勝負する誠実さが大切です。

円満退職を目指す

同じ業界内での転職だと、転職後にも前職の関係者と付き合いを持ち続けた方がメリットが大きくなる場合が多いでしょう。円満退職していれば、転職後に顔を合わせる機会があったとき、気まずい空気が流れる心配もありません。

適切な手順を踏んで十分な時間をかけ、円満退職に向けた努力をしましょう。円満退職のためには、ポジティブな退職理由を用意するのがポイントです。根本にネガティブな理由があったとしても、上手に言い換えることでわだかまりを残さずに済みます。

前職のやり方を過度に引きずらない

同じ業界だと転職後も環境になじみやすいとはいえ、会社ごとに社内の文化や業務の進め方はさまざまです。スキル・能力面で問題がなくても、前職での仕事の仕方をそのまま踏襲していると、転職先にうまくなじめない恐れがあります。

業界内での転職では、仕事内容には詳しい分だけ考え方が凝り固まってしまっている人もいます。一度まっさらな状態から業務を捉え直して、これまでのやり方に固執しすぎないスタンスを意識しましょう。

同業他社に転職するときの注意点

退職届と履歴書

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同じ業界に転職するからこそ、注意が必要なポイントもあります。一般的な転職と同じように考えていると足をすくわれかねません。大きなトラブルを防ぐために、あらかじめ注意点を確認しておきましょう。

退職時に転職先の情報は伏せる

転職活動は、前職の在職中に始めるパターンが多いでしょう。しかし、まだ辞めていないからといって、これから去る会社に転職活動を報告する必要はありません。

転職しようとしていることを上司に気付かれると、引き止められるケースもあります。社内では公言しないのが無難です。

内定が出て退職の交渉に入ってからも、転職先の会社名は上司に伝えない方がよいでしょう。同業他社だと分かると引き止め交渉が激しくなる可能性があり、円満退職が難しくなるかもしれません。

前職の機密情報の漏えいに注意する

同業他社への転職時は、前職の機密情報を漏らさないように注意が必要です。面接時はもちろん、転職後に同僚から前職について聞かれたときにも、うっかり機密情報を漏らしてしまう恐れがあります。

競業避止義務規定がある場合、会社の機密情報を漏らすと訴えられる可能性があります。競業避止義務規定がない場合も、不正競争防止法に触れるだけでなく、前職・転職先の会社からの信用を失ってしまうでしょう。

参考:不正競争防止法 第2条第1項第4〜10号 | e-Gov法令検索

スムーズに同業他社へ転職しよう

資料を調べる男性

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同業他社への転職はできないという噂もありますが、基本的には同業他社にも問題なく転職は可能です。

これまでの経歴が転職活動でのアピールポイントになったり、待遇改善が期待できたりするというメリットがあります。一方で、人脈への悪影響といったデメリットへの理解も必要です。

業界内での転職を成功させるには、目的の明確化や適切なアピールが欠かせません。円満退職をするよう心がけたり、転職後に柔軟に対応したりといった努力も求められます。

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水野順子
【監修者】All About 女性の転職・女性のキャリアプランガイド水野順子

官公庁、企業人事、人材紹介会社勤務を経て、キャリアカウンセラーとして独立。こころとキャリアの専門家として、女性のキャリアデザイン、ダイバーシティ、女性の働き方を中心に幅広く活動中。今までに20000人以上をカウンセリング。
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