教員はやりがいも大きい反面、苦労も大きい仕事のため、辞めたいと感じたことがある人も少なくないでしょう。教員を辞めたいと思ったときにすべきことや、退職までの流れについて解説します。また、異業種に転職する際のポイントも、併せて紹介します。
教員を辞めたいときにすべきこと
教員を辞めたいという気持ちになったときに、まず確認すべき点が2つあります。辞めてから後悔することのないよう、退職を決める前にきちんと確かめておきましょう。
辞めたい理由を明確にする
まずは、なぜ教員を辞めたいのかという理由を明確にすることが重要です。
例えば、上司や同僚、生徒・保護者との人間関係が原因の場合は、勤務先を変えれば問題が解決する可能性があります。また、学校の方針が自分と合わない場合なども、職場を変えることで解消できる可能性が高いでしょう。
一方で、生徒を指導したい気持ちがなくなったなど、教員の仕事そのものに嫌気が差したのであれば、転職が最善の道なのかもしれません。
解決方法があるはずの原因なのに衝動的に辞めてしまうと、将来的に後悔する可能性も否定できません。まずは辞めたい理由と、その理由が解決できない事項なのかどうかをはっきりさせましょう。
辞めても生活は大丈夫か確認する
仕事を辞めたいという気持ちが高まっているときは、先のことまで考えが及ばないケースも少なくありません。とにかく辞めたい一心で退職を進めてしまうと、退職後の生活や転職活動に困る可能性もあります。
退職後にすぐに仕事が見つからない場合も想定し、数カ月分の家賃や生活費くらいの貯蓄があると安心でしょう。
また、転職を考えている場合は、退職前に次の仕事についての方向性もある程度決めておく必要があります。
退職したはいいものの、今後の方向性が定まらずただ時間だけが過ぎ去ってしまうという事態にならないよう、「次はどのような職場で働きたいか?」「どんな仕事をしたいのか?」も事前に考えておきましょう。
教員を辞める前に試せること
教員を辞めたいと思う原因が解決できるものである場合、ちょっとした試みで問題が解決する可能性もあります。退職を決める前に、次のことを試して状況が改善されるかどうか様子を見てみましょう。
周りに相談してみる
自身が抱えている問題や課題に対して、第三者に話を聞いてもらうのは有効な手段です。1人で悩んでいると、ネガティブな感情が膨らんでしまったり自分を責めてしまったりする恐れがあります。
仕事を辞めたいと感じたら、まずは家族や友人・同僚など、信頼できる人に相談してみましょう。自分では見出せなかった解決策やアドバイスをもらえるかもしれません。
また、悩みや不満を吐き出すことで、気持ちがすっきりする効果もあります。1人で抱え込まず、積極的に周りの人と気持ちを共有するのがおすすめです。
仕事以外の部分でストレス発散
仕事でストレスを感じたら、仕事以外でリフレッシュできる時間を作ることが大切です。例えば以下のようなことを試してみましょう。
- おいしいものを食べる
- 旅行に行く
- 温かい湯船に浸かる
- 友達と遊ぶ
- ゲームや漫画を楽しむ
- 運動する
重要なのは、自分にとってのストレス解消法を見つけることです。仕事終わりにカフェに寄るなど、ささいなことでも構いません。
仕事のことを忘れられるような自分だけのリラックス時間があると、翌日の仕事への活力になります。
一時的に休暇を取る
仕事が忙しすぎて肉体的・精神的に疲弊している場合は、退職を決める前に休暇を取るのも1つの手段です。
担任を持っている教員などは特に、なかなか休みを取りづらいというケースもあるでしょう。それでも思い切って休暇を取得し、しっかり休んで頭をクリアにしてから、もう一度退職について考えることをおすすめします。
公立校の教員であれば、公務員であるため、休暇などの制度も充実している場合が多いものです。制度を活用するのは労働者の権利なので、心身の健康を守るためにも休暇を取得してリフレッシュしましょう。
年度途中でも退職できる?
例えばクラス担任を任されている場合でも、年度途中の退職は可能なのでしょうか?理想的な退職のタイミングについて解説します。
理想は年度末の退職
担任の有無にかかわらず、教員の退職時期は基本的には年度末が理想的です。年度途中に退職すると、ほかの教員や生徒への影響も大きくなってしまいます。
ただし、年度末でないと退職できないというわけではなく、各学校の就業規則にのっとっていれば、いつの時期でも退職自体は可能です。肉体的や精神的に年度末まで持たないという場合は、年度途中であっても退職に向けて動きましょう。
ただし、年度途中での退職は周りに負担をかけてしまう可能性も高いという点を忘れず、早めの引き継ぎや挨拶など、周囲への配慮も重要です。
教員が退職する際の流れは?
教員を辞めることを決意したら、どのように行動すればいいのでしょうか?退職までの流れについて説明します。
退職の意思を伝える
一般の企業と同様に、退職を決意したら、まずは直属の上司に退職の意思を伝えます。教員の場合は、校長に伝えるのが一般的です。
就業時間の前後や休み時間など、相手が忙しくなさそうなタイミングを見計らって話をする時間をもらいましょう。
タイミングとしては、仮に年度末での退職を予定している場合は、遅くとも3カ月前の12月までには伝えましょう。
ただし、多くの学校では、次年度の人事の希望を取るのが10月頃であるとされています。できれば10月頃までに伝えられると、学校側も人員配置を考えやすいでしょう。
引き継ぎを行う
学校側との話し合いがまとまり退職時期が決定したら、次は後任への引き継ぎを行います。円満退職を実現するためにも、引き継ぎは丁寧かつ念入りに行いましょう。
特に年度途中で退職する場合は、授業の進行具合や年度内の出来事、残りの期間にやるべきことなどを細かく共有する必要があります。
また、教員という仕事は、個々の生徒に対する責任を負っています。業務上の引き継ぎはもちろん、生徒の情報や状況などの共有も欠かせないポイントです。
備品・資料の返却
引き継ぎも済んだ段階になったら、荷物の整理を始めます。事務用品などの備品や授業で使用した資料など、学校の所有物は速やかに返却しましょう。
なお、生徒の個人情報を含むものについては、返却ではなく処分が必要な場合もあります。
管理不足により、万が一生徒や関係者の個人情報が漏洩すると、お世話になった学校に迷惑をかけてしまう重大事態になりかねません。返却か処分かの判断に迷ったら、先輩や上司に相談しましょう。
教員を辞めた後はどうする?
教員を辞めた後の道には、主に2つの選択肢があります。今の職場を辞めたいのか、教員自体を辞めたいのかによって、次に進む方向を決めていきましょう。
ほかの学校に教員として転職
退職の理由が勤務先に起因するものである場合は、教員としてほかの学校に転職する選択肢がベストでしょう。
同じ公立校でも、学区や地域が違うだけで学校の雰囲気はまったく異なります。教員の仕事自体は続けたいという人は、勤務先の学校を変えることで問題が解決する可能性が高いでしょう。
また、公立から私立、私立から公立へ転職する例も少なくありません。私立の学校は公立に比べて学校のカラーや方針がはっきりしているケースが多いため、人によって合う合わないが明確に分かれます。自分のやりたいことや理念に合った学校を選ぶのも1つの方法です。
異業種へ転職
教員から離れ、別の仕事に転職するケースも珍しくありません。特に多いのは、以下のような教育関係の他業種へ転職するパターンです。
- 塾や予備校の講師
- 教材の作成や編集
- 教育機関の事務
これらの職種は、教員の経験を生かせるため人気があります。そのほかにも、生徒や保護者など多くの人と接してきた経験を生かして営業職に挑戦する人や、事務スキルやパソコンスキルを生かしてデスクワークの仕事に就くケースも多いでしょう。
自分のやりたいことや得意なことに合わせて挑戦するのがおすすめです。国内最大級の求人サイト「スタンバイ」であれば、全国の豊富な求人が掲載されているため、教育関係の仕事もすぐに見つけられます。
異業種に転職する際のポイント
教員の仕事は、一般企業での仕事とは大きく異なる部分も多いため、異業種に転職する際には事前の準備も重要です。3つのポイントを押さえて、転職を成功させましょう。
自己分析をしっかりと行う
教員になるためには、大学や短大で必要な科目を履修し教員免許を取得する必要があります。多くの人は教員になることを目指して努力を重ねてきたため、いざ異業種に転職してから「やっぱり教員がよかった」と後悔する可能性もゼロではありません。
転職後に後悔しないためにも、転職前に自己分析をしっかりと行う必要があります。
- なぜ転職したいのか?
- 転職先でどうなりたいのか?
- 自分には何ができるのか?
- どんな人生を送りたいのか?
など、自己分析を通して今後の目的や目標を明確にすると、ブレることなく次のステップに進めるでしょう。
ビジネススキル・マナーの勉強
利益を上げることが目的である一般企業と比較すると、学校は生徒に教育の場を与えることをミッションとしています。そのため、学校での常識が一般企業では非常識であるケースも少なくありません。
また、社外の人と接する機会も多い一般企業に対して、閉鎖的な空間の学校では、校内でやりとりが完結する場合も多いのが特徴です。
存在意義・働く意味・考え方・マナーなどがまったく異なるため、異業種に転職するのであれば、一般的なビジネスマナーやスキルを勉強しておく必要があるでしょう。
教員におすすめの業種
教員から異業種に転職する場合は、どの業界であっても未経験からのスタートです。教員時代に培ったコミュニケーション能力や事務スキルなど生かせるスキルはあっても、就業経験としては未経験扱いになります。
そのため、未経験歓迎の業種や採用率の高い業種を狙うのがおすすめです。飲食業や小売業などのサービス業、また観光業などの人と接する仕事や、IT業界などは比較的未経験でも採用されやすいでしょう。
また、エンジニア職や資格を生かした事務職など、専門的な知識を生かす仕事に就くと長期的なキャリアを築くことが可能です。
毎日笑顔でいられる仕事を探そう
どんなにその仕事に就きたいと思っていたとしても、実際にやってみたら合わなかったというのは、どんな仕事においてもあり得ることです。
教員になるまでの過程や公務員であることを理由に、辞めるのはもったいないと感じたり、周りに言われたりする場合もあるでしょう。
しかし、辞めたいと思いながら働き続けるのは、精神衛生上あまりおすすめできません。自分の本当にやりたいことや働きたい職場を見つけ、笑顔で生き生きと働ける場所を見つけましょう。
教師歴22年の小学校や幼稚園・保育園に精通した子育て・教育の専門家。神奈川県、埼玉県の公立小学校に22年勤めた後、短大、大学での教員養成、保育者養成に移り、現在に至る。現在は、大学での講義を中心に、保護者向けに子育て・教育、教員向けに授業方法・学級経営などのテーマで執筆、講演などに幅広く活躍中。
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著書:
子どもの心と体のストレスを緩和する リラックス学級レク75
オンライン、ソーシャルディスタンスでできる 学級あそび&授業アイスブレイク