介護職の給料は上がる?処遇改善策と給与アップのための方法を知ろう

介護人材の離職を抑えるため、政府はさまざまな処遇改善策を打ち出しています。その中には給料アップも含まれていますが、この傾向は今後も続くのでしょうか?介護職の給料の現状や給料を上げる方法、さらには給料アップに有益な資格を紹介します。

介護職の給料、最近の動向は?

介護士の女性

(出典) photo-ac.com

「低すぎる」といわれ続けている介護職の給料について、すでに政府のテコ入れは始まっています。現在政府がどのような取り組みを行っているのかを見ていきましょう。

直近の処遇改善策は2022年2月から9月

2022年2月から9月まで「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」が交付され、福祉・介護職員の収入は3%程度(月額9,000円相当)程度引き上げられました。

交付金はまず対象事業所に交付され、事業所が職員の給与にプラスする仕組みです。このときの交付額は、事業所の月の総報酬に規定の交付率を掛けて算出されます。

ただし分配方法は事業所に一任されており、事業所は介護職以外を支給対象に含めることも可能です。職員が多い事業所なら、1人当たりの加算額が9,000円以下となるケースもあります。

なお交付金の対象となるのは、「処遇改善加算(1)~(3)」のいずれかを取得している事業所のみです。就業中の事業所が未取得であれば、介護職でも月額加算はありません。

とはいえ2021年度の現況では、取得(届出)している事業所は全体の94.1%に上ります。ほとんどの事業所が、交付金の対象になったと考えてよいでしょう。

参考:
福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金|厚生労働省
令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要|厚生労働省

2022年10月からも給与水準は維持

「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」の交付が終わる2022年10月からは、加算分がそのまま介護報酬に含まれました。特例交付期間が終わっても、介護職の給与水準は高いままです。

そもそも福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金は、福祉・介護職員の処遇改善のために実施されたものです。交付金の導入当初より「賃上げ効果が継続される取り組みを行うこと」が前提とされており、介護職の給与水準を下げることは想定されていません。

看護・介護・保育・幼児教育などの分野における賃上げは、岸田内閣が掲げる「分配戦略」の一部です。少なくとも現政権で、介護職の給与が下がる心配は少ないでしょう。

参考:
令和4年度介護報酬改定について|厚生労働省
分配戦略 | 首相官邸ホームページ

介護職の給料は年々上がっているのか?

お札と電卓と通帳

(出典) photo-ac.com

介護職の給料の低さは、給料の仕組みと無関係ではありません。介護職の給料の決まり方や、過去にどのような改善策が実施されてきたのかを見ていきましょう。

介護職の給料の決まり方

介護職の給料の出所は、自治体が介護保険から事業所に支給する「介護報酬」です。

介護報酬は厚生労働大臣によって定められ、報酬額は介護サービスによって異なります。対象事業所の「基本的なサービス提供にかかる費用」「事業所の体制」「利用者の状況」などによって、加算されたり減額されたりします。

すなわち介護職の給料は国によってコントロールされており、事業所の一存でどうにかできるものではありません。現場の職員が「給料を上げてほしい」と事業所に訴えても、改善は困難なのです。

参考:介護報酬について|厚生労働省

過去の処遇改善策

超高齢社会に突入している日本では、介護人材の確保が急務です。介護職の給与の低さが離職につながっていると考えられることから、政府はたびたび介護職の処遇改善のための施策を行っています。

例えば2009年度には、介護従事者の処遇改善に重点をおいた改定が行われました。加えて補正予算で処遇改善交付金も支給され、介護職の給与は月額2万4,000円のアップとなっています。

続く2012年度の介護報酬改定では月額6,000円、2015年は1万3,000円のプラスが実施されました。この他、2019年にも介護人材の処遇改善を目的とした介護報酬改定が行われており、介護職の給与は上昇傾向にあるといえます。

厚生労働省の発表によると、2021年度の介護従事者等の平均給与額は、2020年度と比較して7,380円のアップとなっていました。

参考:
介護人材の処遇改善について|厚生労働省
令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要|厚生労働省

自分でできる給料を上げる方法は?

男性介護士

(出典) photo-ac.com

介護職で給与をアップさせたい場合は、働き方を変えることが必要です。どのような方法があるのかを見ていきましょう。

手当が出る働き方をする

給与の大幅アップが期待できるのは、介護に関する専門資格を取得することです。具体的には「介護福祉士」「社会福祉士」「介護支援専門員」の資格があると、資格手当が加算されます。

「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」によると、有資格者と無資格者の平均給与月額には大きな差があることが分かりました。

  • 保有資格あり:31万9,460円
  • 保有資格なし:27万1,260円

またシフトに夜勤を組み込めば、夜勤手当がプラスされます。事業所にもよりますが、夜勤手当の相場は、1回につき4,000~1万円です。回数を増やせば加算額も増え、手取り分が多くなります。

参考:令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要|厚生労働省

役職に就く

フロアリーダーや主任などに昇格すれば、基本給のアップや役職手当の付与が期待できます。スキルや実績を積めば査定にも有利になり、昇給やボーナス増もあり得るかもしれません。

また責任ある職に就くことは、有益な実績となります。転職を考えたとき、魅力的なアピールポイントになるでしょう。

ただし役職に就くということは、責任も重くなるということです。人の上に立つからには、リーダーシップやマネジメント能力も求められます。

「役職に就いて給与を上げたい」という人は、介護スキルを磨くとともに、組織全体のパフォーマンスが上がるようマネジメントスキルも身に付けることが必要です。

給与の高い他の施設に転職

給与アップが期待できない場合は、給与の高い施設に転職するのも1つの方法です。

一般に介護職の給料は、規模の大きい事業所ほど高額になる傾向があります。同じ介護職でも、大規模な特別養護老人ホームや老人保健施設の方が高い給与を得やすいでしょう。

さらに日勤しかない事業所で働く人は、夜勤のある事業所に転職すると給料をアップしやすくなります。

また介護職員処遇改善加算を取得していない施設は、当然ながら給料の加算がありません。加算を取得している事業所に転職すれば、同じような働き方でも多くの給料を得ることが可能です。

給料アップのために取得したい資格は?

勉強する介護士の男性

(出典) photo-ac.com

介護職では、資格ありと資格なしでは給料に大きな差が生じます。取っておきたい資格の概要や、資格を取得した場合の平均給与額について紹介します。

介護福祉士

介護福祉士は、介護系では唯一の国家資格です。資格の取得は介護のスペシャリストとしてのスキルや能力を示します。介護職で介護福祉士資格を取得している場合、平均給与額は32万8,720円と高めです。

介護福祉士となった場合は、現場での介護以外に、リーダーとしてスタッフを指導する役割も求められます。入居者やその家族に介護のアドバイスをしたり器具の使い方を指導したりなど、さまざまな角度から介護に関わることになるでしょう。

参考:令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果|厚生労働省

社会福祉士

社会福祉士は、社会福祉の専門家であることを保証する国家資格です。介護職で社会福祉士資格を取得している人の平均給与額は36万3,480円となります。

社会福祉士の主な仕事は、相談援助です。介護が必要な人やその家族に対してアドバイスを行ったり、受けられる支援を提案したりします。

行政や医療機関との連絡・調整も行い、さまざまな面から社会的支援が必要な人をサポートするのが仕事です。社会福祉士資格があれば、老人ホームに常駐する「生活相談員」として働けます。

参考:令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果|厚生労働省

介護支援専門員

介護支援専門員は、「ケアマネジャー」とも呼ばれます。資格を取得するには、各都道府県で行われる「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格しなければなりません。介護職で介護支援専門員資格を取得している人の平均給与額は36万2,290円です。

介護支援専門員は、介護保険サービスの専門家です。介護が必要な人が適切に介護保険サービスを受けられるよう、さまざまな面から支援を行います。

主な仕事は、ケアプラン(介護サービス計画書)の作成です。プラン作成後は家族や関係各機関と連絡・調整を行い、スムーズな実施のための道筋を作ります。プランが実施された後は状況をチェックし、必要があればプランの修正や変更も行わなければなりません。

参考:令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果|厚生労働省

各資格の取得方法もチェック!

介護士の男女

(出典) photo-ac.com

介護職で高給を得るには、資格の取得が必要です。今後のキャリアプランを見据えながら、どのような資格を取るべきか考えましょう。各資格の取得方法について、詳しく紹介します。

介護福祉士

介護福祉士の国家試験を受けるためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 養成施設・養成校での履修
  • 福祉系の高校での履修
  • 3年以上の実務経験と450時間の実務者研修

養成施設・養成校から国家試験を目指す場合は、2年以上の学習が必要です。一方福祉系の高校で学ぶ場合は、定められた単位・科目を履修することで受験資格が得られます。

すでに現場で働いている場合は、3年以上の経験があれば「介護福祉士実務者研修」の修了により試験を受けることが可能です。

なお、2022年に行われた第34回介護福祉士国家試験の合格率は72.3%でした。

参考:
介護福祉士資格の取得方法について|厚生労働省
第34回介護福祉士国家試験合格発表|厚生労働省

社会福祉士

社会福祉士試験も、受験資格の要件をクリアすることが必要です。受験資格取得ルートは主に以下の3つです。

  • 福祉系大学ルート
  • 短期養成施設ルート
  • 一般養成施設ルート

4年制の福祉大学卒で「指定科目」を履修した人は、そのまま試験を受けられます。それ以外の人は1~2年の実務経験が必要です。

短期養成施設ルートは、指定科目未履修の福祉系大学の人や、社会福祉主事養成機関の人、児童福祉司・身体障害者福祉司・知的障害者福祉司・査察指導員・老人福祉指導主事の4年以上の実務経験がある人が対象です。「基礎科目」の履修後や実務に就いた後に短期養成施設で学べば受験可能です。

一般4年制大学卒や短大卒の人・相談援助実務4年以上の人は、1年以上一般養成施設で学ぶと受験資格が得られます。ただし短大卒の人は、1~2年の実務経験も必要です。

2022年に実施された第34回社会福祉士国家試験の合格率は31.1%でした。試験の難易度は比較的高いといえます。

参考:第34回社会福祉士国家試験合格発表|厚生労働省

介護支援専門員

介護支援専門員試験の資格を得るには、介護支援専門員実務研修受講試験に合格しなければなりません。受験資格を得るためのルートは、以下の2つです。

  • 医療福祉系の国家資格を保有していて、実務経験が通算5年以上かつ900日以上
  • 所定の施設に勤務し、実務経験が通算5年以上かつ900日以上

試験に合格しても、すぐに介護支援専門員になれるわけではありません。「介護支援専門員実務研修」を修了して都道府県に登録申請を行い、「介護支援専門員証」の交付を受ける必要があります。

さらに資格を得ても、5年ごとに更新しなければなりません。更新には研修を受ける必要があり、要件を満たさない場合は資格が失効します。

なお、2021年に行われた第24回介護支援専門員実務研修受講試験の合格率は23.3%でした。

参考:介護支援専門員/ケアマネジャー - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))

参考:第24回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について|厚生労働省

給料アップの期待とニーズが高まる介護職

介護士と高齢者の女性

(出典) photo-ac.com

介護人材の不足が深刻化している現在、介護職の処遇については改善の動きが顕著です。「給料が低い」と言われることが多々ありますが、介護業界の給料は上昇傾向にあると考えられます。

ただし同じ介護職でも、「介護職員処遇改善加算」や「介護職員等特定処遇改善加算」を取得していない事業所は給料アップを期待できません。規模が大きく安定した事業所への転職も視野に入れましょう。

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