介護の仕事を休職するときは?収入や手当金の手続きを紹介

ハードワークになりがちな介護職で不調が出てきたら、できるだけ早く心身を整える必要があります。しかし、休職に当たっては収入面の不安を覚える人が多いはずです。休職中の収入や受け取れる可能性がある手当金、必要な手続きをチェックしましょう。

介護職の人が休職を考える理由

介護

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介護職の人が休職を考える理由として、仕事の忙しさや負担の大きささなどが挙げられます。どのような理由があるのか見ていきましょう。

仕事量が多く負担が大きい

介護業界は人手不足なので、激務になる場合が少なくありません。精神的・肉体的な疲労をためこんでしまうと、休職を考えるような状態につながります。

厚生労働省の「一般職業紹介状況(2022年7月分)」を見ると、介護サービスの有効求人倍率は3.7と高い数値です。求職者1人に対して4件近い求人がある状況で、人手不足が深刻だといえます。

公益財団法人介護労働安定センターによる2021年度の「介護労働実態調査」では、「労働条件等の悩み、不安、不満等」について「人手が足りない」と回答した人が、全体の52.3%に上りました。

また、30%の人が腰痛や体力的な不安など体への負担も訴えており、介護職は肉体的な負担が大きいことが分かります。

参考:
一般職業紹介状況(令和4年7月分)について 参考統計表[PDF形式:562KB]参考統計表7-1|厚生労働省
令和3年度 介護労働実態調査結果について イ  労働者調査「介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」(pdf)P.62 | 介護労働安定センター

人間関係がつらい

介護の仕事は、職場の先輩・同僚・利用者などとコミュニケーションを取る機会が多いので、人間関係につらさを感じて休職する人もいます。

介護労働実態調査(2021年)では、「職場での人間関係等の悩み、不安、不満等」について「自分と合わない上司や同僚がいる」と回答した人が 20.2%、「部下の指導が難しい」と回答した人が 19.2%でした。

「ケアの方法等について意見交換が不十分である」も 18.3%と、コミュニケーションの難しさを感じている人がいることが分かります。

「利用者及びその家族についての悩み、不安、不満等」を見ると、「利用者は何をやってもらっても当然と思っている」が 21.0%、「良いと思ってやったことが利用者に理解されない」が13.6%となっており、利用者とのすれ違いに悩む人もいるようです。

介護の職場で何らかの人間関係の悩みを抱えることは、珍しくないと考えてよいでしょう。

参考:令和3年度 介護労働実態調査結果について イ  労働者調査「介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」(pdf)P.63〜64 | 介護労働安定センター

夜勤があり生活リズムが乱れやすい

介護職には夜勤が付き物です。勤務時間が長く肉体的につらい上に、生活リズムが乱れ、体を壊してしまう場合もあります。人手不足が深刻な職場に勤務していると、十分な睡眠時間を確保できないケースも少なくありません。

介護労働実態調査(2021年)の調査によると、「労働条件等の悩み、不安、不満等」について「休憩が取りにくい」と回答した人が21.1%、「夜間や深夜時間帯に何か起きるのではないかと不安がある」が15.1%、「労働時間が不規則である」が9.3%となっています。

休息が取りにくく疲労を回復できない状態では健康上の不安が起きやすくなり、休職につながるでしょう。

参考:令和3年度 介護労働実態調査結果について イ  労働者調査「介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」(pdf)P.62 | 介護労働安定センター

休職の考え方や手続き方法

休職届

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介護職をしていてさまざまな理由から不調を感じるなら、できるだけ早めに回復できるように休むことが大切です。

とはいえ、給与や手続きがどうなるのか気になって休職に踏み切れない人も多いでしょう。給与がもらえるのか、どんな手続きが必要なのかを紹介します。

給与はもらえない場合が一般的

休職は、働く意欲はあるのに労働者側に何らかの事情があって働けないときに、労働契約を結んだ状態のまま労働が免除されたり一時的に停止されたりする制度です。

自己都合による休職は業務災害とは違って法律上の定めがないので、会社によって規定が異なります。会社側に給与を支払う義務はなく、休職中は会社から給与が出ない場合が一般的です。

休職制度がある場合、労働契約書や就業規則で内容を確認できます。休職を考えている人は、労働契約書や就業規則をチェックしてみましょう。

参考:
労働基準法 第15条 | e-Gov法令検索
労働契約締結時における労働条件の明示義務について 11|厚生労働省

勤務先に相談し書面を提出

休職制度がある場合、労働契約書や就業規則で申請方法を確認できます。一般的には申請書や診断書を提出した後に、人事担当者と面談して休職を決める流れです。

診断書を提出しなければならないかどうかは通常、就業規則に記載されています。不明な場合は上司に相談しましょう。必要に応じて、かかりつけ医や産業医に診断書を書いてもらいます。

個人の都合で休職する際は、診断書の発行費用は自己負担となるのが基本です。費用は病院によって異なりますが、3,000〜5,000円程度と考えておきましょう。

休職中に受け取れる可能性がある「傷病手当金」

お札

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給与がもらえないと知って、休職をためらっている人もいるかもしれません。ただ、一般的には休職中に給与は出ませんが、条件を満たすと傷病手当金を受け取れる可能性があります。どのような条件を満たせばよいのかを見ていきましょう。

傷病手当金を受け取れる条件

傷病手当金はケガや病気で労務不能と判断されたときに、本人や家族の生活を保障するための制度です。被保険者を対象として、加入している健康保険から支給されます。

仕事以外でのケガや病気が原因で、療養のために4日以上休んでいることが条件です。最長で1年6カ月間にわたって受給できます。

休んでいる間に給与の支払いがある場合は対象となりませんが、休職中の給与額が傷病手当金よりも少ない場合は、差額を受け取れる決まりです。

ただ、自動的に支給されるわけではないので、医師の診断書を基に自分で請求しなければなりません。加入している健康保険のホームページで手順をチェックしましょう。

参考:病気やケガで会社を休んだとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

支給額は給料の約2/3

受け取れる傷病手当金の1日当たりの支給額は、次の計算式で導き出せます。

  • 支給開始日から過去12カ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)

「標準報酬月額」とは、毎月の給料などの月額を、区切りのよい幅で区分したものです。給与明細や加入している健康保険組合のホームページなどで確認できます。

例えば、標準報酬月額の平均が24万円だった場合、1日当たりの支給額は「24万円÷30日×(2/3)=約5,333円」です。

休職し始めた日から3日分は、待期期間として除いて計算します。そのため、連続で1年間休職した場合に受け取れる金額は「約5,333×362日=約193万546円」です。

参考:
傷病手当金 | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
標準報酬月額・標準賞与額とは? | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

状況次第で退職後も受給が可能

不調があって休職しても回復しなかったり職場の環境が改善されなかったりして、そのまま退職するケースも少なくありません。

一定の条件を満たせば、退職後も傷病手当金を受け取れます。休職後に退職するときは、以下の条件に当てはまっていないか確認してみましょう。

  • 退職日まで健康保険の被保険者期間が継続して1年以上ある
  • 傷病手当金を受けている、もしくは退職日までに支給条件を満たしている

退職して健康保険の資格を喪失したとしても、支給開始から1年6カ月以内であれば、引き続き残りの期間の傷病手当金を受け取れる決まりです。なかなか回復せず仕事復帰が難しいとき、傷病手当金があると生活の助けになるでしょう。

キャリアチェンジや転職も視野に入れよう

履歴書に書き込む

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休職中は心身を休めることが大事ですが、体調が落ち着いてきたら職場に求める条件を見直し、キャリアチェンジや転職も視野に入れることをおすすめします。介護職からの転職で、押さえておきたいポイントを見ていきましょう。

介護のキャリアを生かせる仕事

介護職で身に付けた知識を生かせる分野なら、比較的スムーズに転職できます。例えば、生活指導員・介護教員・介護事務などは、これまでの経験や知識を生かして働きやすい仕事です。

生活指導員は、介護職の人や施設の利用者とその家族のサポートをする職種で、経験を生かして双方に寄り添った働きができます。

介護教員は介護職を目指す人を指導する仕事で、原則として5年以上の実務経験が必要です。介護事務は介護報酬請求業務を担当するほか、来客対応や電話対応といった事務作業を通じて施設運営を支えます。

これまでに培ってきた体力やコミュニケーション力を生かして違う業種で働きたいなら、営業職や接客業もおすすめです。

参考:介護福祉養成施設等の教員の要件について|厚生労働省

別の施設への転職も考える

介護職自体は続けたいなら、職場を変えることでうまくいく可能性があります。施設ごとに経営方針や全体的な雰囲気などが異なるためです。

どんな職場であっても人間関係のトラブルは付き物ですが、たとえ合わない人がいたとしても、職場全体の雰囲気がよければ続けやすいでしょう。

勤務形態や休暇についての考え方は、面接でできるだけ詳しく確認します。精神的・肉体的な疲労が原因で休職を考えたのであれば、新しい職場を決める際に残業や休日出勤の有無はチェックしておきたいポイントです。

焦って転職先を決めようとすると失敗の原因になるので、複数の施設を比較検討して決めましょう。

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職場の休職制度をうまく利用しよう

介護職の女性

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介護職は人手不足が起きやすくハードワークとされる職業です。休職が必要だと思ったら、まず労働契約書や就業規則を確認してみましょう。休職制度には法律の規定がないので、会社によって扱いが異なります。

健康保険の加入者がケガや病気で休む際は、条件を満たせば傷病手当金を受け取れるので、収入がゼロにならず安心して休めます。職場の休職制度をうまく利用すれば、心身を休めて仕事への復帰・転職がしやすくなるでしょう。