障害者雇用は手帳なしでも利用できる?制度について詳しく解説!

就職を希望する時点で、障害者手帳が手元にないという人もいるでしょう。手帳を持っていなくても、障害者雇用枠への応募はできるのでしょうか?手帳の申請方法や働き方の選択肢、障害者手帳がない状態で働く方法を紹介します。

手帳なしでも障害者雇用は利用できる?

障害者手帳

(出典) photo-ac.com

障害の診断を受けてから間もない場合、希望の求人を見つけたときに障害者手帳が手元にないかもしれません。まずは手帳を持っていない状態で、障害者雇用枠に応募できるのかどうか確認しましょう。

結論は「できない」

障害者手帳を持っていない場合、障害者雇用枠には応募できません。障害者雇用枠とは、企業が障害者雇用率制度の条件を満たすために設けているものです。

障害者雇用率に算定されるのは、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳を持っている人と定められています。

まだ手帳を取得していない場合、申請・取得できてから応募しましょう。障害の状態により手帳の申請が通らない場合は、障害者雇用でない選択肢を見つける必要があります。

参考:事業主の方へ|厚生労働省

障害者手帳の種類と申請方法

申請のイメージ

(出典) photo-ac.com

手帳の交付を受ける障害の範囲は、主に身体的障害・知的障害・精神障害の3種類に分けられます。それぞれの手帳の申請方法や、必要書類について確認しましょう。

参考:障害者手帳について|厚生労働省

身体障害者手帳

身体障害者手帳の取得条件と申請の流れは、以下の通りです。

  • 取得条件:身体に一定以上の障害があると認定された人(13種類の障害に分けられる)
  • 申請窓口:市町村の福祉担当窓口
  • 必要書類:申請書・診断書・本人の写真・マイナンバー確認書類

居住地を管轄する福祉事務所または役所の障害福祉担当課で、手帳交付の申請をします。通常、申請から交付までの期間は約1カ月です。

診断書は、都道府県知事の指定医が作成したものに限られます。かかりつけ医が指定医かどうか、申請窓口で確認しておくとよいでしょう。

参考:身体障害者手帳について 東京都福祉保健局

療育手帳

療育手帳は、知的障害がある人を対象としています。取得条件と申請の流れは以下の通りです。

  • 取得条件:判定機関により知的障害があると判定された人
  • 申請窓口:市町村の福祉担当窓口
  • 必要書類:申請書・本人写真・マイナンバー確認書類・印鑑(母子手帳など)

18歳以上の判定は、知的障害者更生相談所で行われます。18歳未満の場合は、児童相談所です。自治体によっては、母子手帳のように幼少期の状態が分かるものを提出することもあります。

申請から交付までの期間はおおむね2カ月です。なお、療育手帳とは異なる名称が付けられている自治体もあり、東京都と横浜市では「愛の手帳」と名付けられています。

参考:
療育手帳の交付手続き/新富町
愛の手帳 東京都福祉保健局
愛の手帳 (療育手帳) の交付 横浜市

精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳の取得条件と申請の流れは、以下の通りです。

  • 取得条件:該当する疾患の初診日から6カ月経過後、かつ診断書作成日から約3カ月以内で、一定の精神障害の状態にあると認定された人
  • 申請窓口:市町村の福祉担当窓口
  • 必要書類:申請書・診断書・本人写真

初診日から6カ月が経過していないと、手帳交付の対象とならない点に注意が必要です。診断書に関しても、ほとんどの自治体で約3カ月以内に作成されたものと指定されます。

診断書を作成するのは精神保健指定医、もしくはかかりつけの精神科医です。ただし、てんかんや発達障害・高次脳機能障害で他科で治療を受けているケースでは、精神科以外の医師が作成することもあります。

参考:
精神障害者保健福祉手帳 東京都福祉保健局
精神障害者福祉手帳|治療や生活へのサポート|メンタルヘルス|厚生労働省

障害を持つ人が選べる働き方

オフィス

(出典) photo-ac.com

障害を周囲に打ち明けるかどうかは、本人の判断に委ねられます。働き方に関しても、紹介するような3種類の方法があると知っておきましょう。

オープン就労

障害があることを周囲に明かして仕事に就くことを、オープン就労といいます。基本的に障害者雇用枠での就労です。

障害者雇用枠だと、一般枠より採用されやすく、定着率も高い傾向にあります。周囲からのサポートを受けやすいため、職場でうまくやれるか不安を感じている人にとっては、安心して働ける形といえるでしょう。

その反面、選べる仕事の幅は狭くなり、給与が低く設定されるケースも少なくありません。やりたい仕事がある人や一般枠での就労経験がある人は、もどかしく感じることもあるでしょう。

なお、一般枠で障害を打ち明ける形のオープン就労もありますが、障害者雇用に比べて配慮を得にくくなると懸念されます。

クローズ就労

障害があることを隠したまま仕事に就くことを、クローズ就労といいます。企業に障害について伝えないため、一般枠で就職を目指すことになります。

障害による制限を受けることはなく、待遇も仕事の選択肢も、条件は周囲の人々と変わりません。仕事が自分にマッチしていれば、理想通りのキャリアを積めるでしょう。

ただし、周囲からの配慮をほとんど得られず、疲労やストレスを感じやすい環境になりがちです。うまく折り合いを付ける柔軟さや困難を乗り切るタフさがないと、仕事がつらくなると考えられます。

セミオープン就労

一般枠で応募し、一部の人にのみ障害を明かす方法をセミオープン就労といいます。就職後は障害を公開する範囲を、直属の上司・部署内の同僚など限定した人にしか公開しません。

部分的にではあっても障害に対する理解を得られるため、無理なく仕事を続ける環境を得やすいでしょう。クローズ同様、給与が低く設定されることはなく、仕事でも周囲と同じ経験を積んでいけます。

ただし、障害者雇用と比べると採用されにくく、就職までに時間がかかるかもしれません。また一般枠で雇用されるため、基本的には周囲と同じ業務をこなし、会社に貢献する努力が求められます。

手帳なしで働く方法はある?

考え事をする男性

(出典) photo-ac.com

障害者手帳を持ちたくない、何らかの事情で取得できないという人もいるでしょう。障害者手帳を持たない人が、必要な配慮を得て働く方法を紹介します。

一般枠で事前に申告する

セミオープン就労であれば、障害者雇用枠ではなく一般枠で応募するため、障害者手帳は不要です。ただし、企業の考えをしっかり把握して必要な対策をしない限り、簡単には採用を勝ち取れません。

希望の職種・業界が決まっているなら、まず自分の状態やスキルとマッチしそうな求人を探して、企業研究をしてみましょう。

複数の求人を比較検討するには、取扱い件数の豊富な求人サイト・スタンバイがおすすめです。職種・勤務地を指定して、希望に合う求人を絞り込めます。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら

就労移行支援事業を使って就職を目指す

障害を抱える人にとって、満足のいく仕事を見つけるまでのハードルは、社会的にも気持ち的にも決して低くはないでしょう。そのような人々を最長で2年間、就職までサポートするのが就労移行支援事業です。

就労系障害福祉サービスの1つで、65歳未満の障害を持つ人を対象にしています。就職活動の相談はもちろん、事業所へ通って心と体の準備を整えたり、実際に職場体験をしたりすることも可能です。

障害者手帳は必要ありませんが、「障害福祉サービス受給者証」がなければ利用できません。相談してみたい場合は、医師の診断書を市町村の担当窓口へ提出し、受給者証を発行してもらいましょう。

参考:就労移行支援について|厚生労働省

継続には就労定着支援事業も

就職に成功しても、働き出してから新たな悩みを抱えることは珍しくありません。職場に配慮を求めたくても、なかなか自分から言い出すのは難しい人も多いでしょう。

就労定着支援事業は、こうした人々と会社の間に入り、問題解決をサポートしてくれるサービスです。専門のスタッフが仲介役を担うため、トラブルが起きたときも1人で抱え込まずに済みます。

就労定着支援の対象者は、就労移行支援をはじめとした障害福祉サービスを利用して就職し、仕事を始めてから6カ月が経過した人です。最長で3年間利用できます。

参考:障害者の就労支援について P.36|厚生労働省

無理をしすぎない働き方を選ぼう

障害者手帳

(出典) photo-ac.com

障害者雇用枠で就職するには、障害者手帳が必要です。しかし手帳がなくても、障害をオープンにして職場の理解を得る方法はあります。

ハンデがあっても、その人のスキル・人柄を買ってくれる企業もあるでしょう。求人サイトを利用して多くの情報を集めれば、自分に合う仕事を探せます。

ただ、無理をして調子を崩してしまっては元も子もありません。もし不安が強いようなら福祉サービス・支援を活用しつつ、自分のペースで仕事を探しましょう。