測量士になるには資格が必要!学びのルートと仕事内容に見るやりがい

測量士とは、建設・土木工事を行う土地について、位置・距離・面積を測量する仕事です。業務独占資格の国家資格となり、測量業者は資格保有者の配置が義務付けられています。測量士になるには、大きく分けて「学校で知識や技能を修得する方法」と「試験に合格する方法」の2つです。

測量士・測量士補になるには

測量士

(出典) photo-ac.com

測量士と測量士補

測量士の資格には、測量士と測量士補の2つがあります。いずれも測量法に基づく国家資格で、技術者として基本測量・公共測量に従事できます。測量士は測量計画を作成できますが、測量士補は測量計画の作成はできず、測量士の作成した測量計画の指示に従って測量業務を行うことになります。試験の合格率は測量士補の方が高いものの、最初から測量士の資格を受験する人が多く、測量業の現場でも測量士の方が多いのが特徴です。

測量士、測量士補の資格

測量士、測量士補になるには、それぞれいずれかの条件を満たす必要があります。

測量士補
  1. 文部科学大臣の認定学校で測量に関する科目を修め卒業する
  2. 国土交通大臣の登録を受けた測量に関する専門の養成施設で1年以上、必要な専門知識と技能を修得する
  3. 測量士補試験に合格する
測量士
  1. 文部科学大臣の認定大学で測量に関する科目を修め卒業し、1年以上の実務経験を積む
  2. 文部科学大臣の認定短期大学、高等専門学校で測量に関する科目を修め卒業し、3年以上の実務経験を積む
  3. 国土交通大臣の登録を受けた測量に関する専門の養成施設で1年以上、必要な専門知識と技能を修得し、2年以上の実務経験を積む
  4. 測量士補で、国土交通大臣の登録を受けた測量に関する専門の養成施設で必要な専門知識と技能を修得する
  5. 測量士試験に合格する

免許の登録について

測量士、測量士補になるには「資格」だけでなく「免許登録」も必要です。資格保有だけでは測量士、測量士補として認められません。資格保有者は国土地理院の「測量士及び測量士補登録に関する案内」から登録申請書をダウンロードして国土地理院総務課試験登録係に提出すると、測量士としての免許が発行されます。登録免許税として測量士補は15,000円、測量士は30,000円の納付が必要です。

測量士の仕事内容

測量器具

(出典) photo-ac.com

求められる役割

測量士とは、あらゆる建設・土木工事が安全で確実な工事計画となるように、測量法に則った測量計画を立てて実際に現場で測量を行う仕事です。ダムやトンネルなど社会にとって重要な工事計画も測量から始まります。測量は工事計画の基礎となるため、測量士が担う役割はとても重要です。

測量にあたる仕事

一般的な測量には、建築工事における柱や壁の仕上げ位置をしるす「墨出し」など、資格なしで行える測量も含まれます。しかし、測量法における「測量」とは土地の測量です。建設・土木工事を行う土地について、位置・距離・面積を測ります。

測量機器にはさまざまなものが存在しますが、大きな三脚に置かれた「トータルステーション」という機器が有名です。ヘルメットや作業服を身につけた建設関係の人が、道路上で測量機器をのぞく姿はよく見る光景でしょう。

外業と内業について

測量士の仕事には、大きく「外業」と「内業」の2つがあります。

外業とは、建設・土木工事の現場で実際に測量する仕事です。野外作業となるので測量に適した時間帯や天候を選びます。早朝に出発しないと手元が暗く作業ができなくなる現場もあるため、まず外業のスケジュールを決めてから残り時間で内業を行うのが一般的です。

内業とは、予算管理・機器調達・測量計画・製図・測量データ分析など、デスクワーク全般を指します。近年はパソコンを使った業務が増えています。

測量士の就職先

測量士の就職先は、「測量業務を提供する会社」や「官公庁」です。主な就職先としては、「測量会社」「建設コンサルタント会社」「不動産会社」などが挙げられます。測量士の就職先は、多様な業界に広がっています。測量会社は他社と連携し、測量業務を提供する会社です。測量士は依頼のあった測量に対応します。

建設コンサルタント会社は、建設や工事をプロデュースする会社です。測量士は、会社がコンサルティングした建設工事の測量を行います。不動産会社や地図作成を行う会社にも、測量士が勤務することがあるでしょう。官公庁では、土木課や上下水道に携わる部署が就業先に該当します。

測量士の将来性

測量士

(出典) photo-ac.com

測量士の仕事は減少傾向?

日本では、バブル時期に公共工事が数多く行われ、建設業界がうるおっていました。1990年代前半には建設業に携わる人も多く、測量士の需要も多かったと考えられます。しかし近年は景気の低迷に従い、工事の数が減ったことにより測量士の仕事も減少しています。とはいえ、2010年以降は公共工事、民間工事どちらも工事数が増加傾向にある状況です。

ピーク時と比べると仕事自体は減少していますが、建設や工事は将来にわたって必要とされる仕事です。今後も景気の波はあっても、測量士の需要は引き続きあると考えられます。

国土交通省が実施する「測量業における測量士・測量士補に関する実態調査(2018年度)」によると、採用時に何らかの資格を求める測量会社の割合は70%を超えています。
測量会社で働く上で、測量士の資格は強い味方となるでしょう。

資格を増やす方法もある

測量士は関連資格を取得することで、さらに仕事の幅を広げられます。例えば、「土地家屋調査士」は測量だけでなく登記手続きも代行できる資格です。不動産や土地の測量には、不動産登記も関わってくるでしょう。登記手続きが代行できれば、依頼者の手間も省けます。

土地家屋調査士が活躍するのは、「土地の境界線を決める」「相続で土地を分割する」などの場面です。そのほか「建物を壊して駐車場に変える」といった、利用方法の変更でも登記が必要になります。資格を取得することで会社や個人から調査を請け負い、幅広い仕事ができるでしょう。

また、「行政書士」も登記手続きが可能となる資格です。行政書士は法律の知識を生かして、多くの書類作成代行に対応できます。土地の登記だけでなく、遺産分割や契約書の作成など対応できる仕事は多様です。測量士としての価値を高めるには、測量士資格のほかにも、いくつかの資格取得も検討しましょう。

求人の給与情報から集計した測量士の年収帯

厚生労働省が発表する「賃金構造基本統計調査(2021年度)」によると、測量技術者の平均年収は440万円程度です。日本人の平均年収は男性で532万円・女性で293万円、男女を合わせると433万円(2020年の「民間給与実態統計調査」より)です。測量士という職種は、平均的な給与水準と同程度の職業であると類推できます。

出典:
測量法
公益社団法人 日本測量協会「測量士・測量士補の資格のページ」
国土地理院「試験合格による測量士・測量士補登録の方」
国土交通省「建設業を取り巻く情勢・変化 参考資料」
内閣府「最近の公共投資の動向について」
国土地理院「平成30年度 測量業における測量士・測量士補に関する実態調査 報告書」
国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査」

測量士経験者の口コミ

測量士

(出典) photo-ac.com

現役測量士・測量士補経験者にアンケートを実施。測量士・測量士補の仕事の口コミ・評判を集めました。

Q1.測量士に必要な学歴(学部)は? 独学での合格は可能?

M.K.さん (男性 / 東京都)
測量士 勤続年数2年 (職業 : 測量機器等販売)

工学部を卒業することで取得できました。建築・土木学科で受講できる学科の測量に関する科目を修め、大学を卒業後、申請をすることで技術士補になることができます。その時の授業内容は、基準点測量、水準測量の実施が大半だったように感じます。

必要単位の取得に対する中間・期末試験内容は特に難しい内容ではなかった(私が通っていた大学では)ので、文部科学大臣の認定した大学または短期大学、高等専門学校、専門の養成施設で技術士補を取得することをおすすめします。独学での合格に関しては、私が勤務していた測量会社では、普通高校卒業または、専門外の大学を卒業された社員は大変苦労していました。実務ができても学科試験には、試験対策も必要になると言っていました。

S.T.さん (男性 / 佐賀県)
測量士 勤続年数5年以上 (職業 : 土地家屋調査士)

建築学科卒業後直ぐに取得できます。基本的に実務経験は必要なく、学科のみで取得できます。 もし、これから測量の世界を目指す方がいらっしゃるなら、就職するにあたって測量士の資格取得は大切ですが、測量士に何故なりたいかを明確にすることも大切だと思います。測量という技術を通して、どのような人々の役にたち、自分の能力をどのように発揮できるかを真剣に考えながら働くことで、これからのキャリアパスが明確になるのではないでしょうか。

F.N.さん (男性 / 東京都)
測量士 勤続年数1年 (職業 : エンジニア)

必要な学歴は特にありません。私は受験当時、高卒資格を持っていませんでしたが、それでも問題なく受験できました。ある程度、独学での勉強方法が身についている人であれば、専門学校に通う必要は特にないと思います。

私の場合、参考書で2ヶ月程度の独学で知識を身に付けました。 (実際に使用した参考書は『測量士補合格ナビゲーション基本テキスト』)

具体的な勉強方法は、まず参考書をひたすら暗記して詰め込む方法でした。また、国土地理院のサイトで公開されている過去問を5回分やっておくと頻出問題の傾向がある程度わかるので、過去問をとにかく繰り返し解いて対策しました。数学力は必須なので、特に重点的に演習問題を繰り返しました。

Q2.測量士試験に合格するために努力したことは?

M.K.さん (男性 / 東京都)
測量士 勤続年数2年 (職業 : 測量機器等販売)

測量士試験に合格するために努力したことは地道に実務経験を積んだことです。実務経験の年数を積んだ後は、登録申請書と成績証明書、測量に関する実務の経歴証明書、そして卒業証明書が提出できれば、国土地理院から問題なく登録通知書が届くでしょう。

そういった意味では最初から「測量士になるぞ」と将来を見定め、文部科学大臣の認定した大学などに通い、測量会社で実務経験を積んだことが吉となったと思います。

とにかく、実務経験が必要な資格だと感じていますので、早い段階で測量士に興味を持った場合は、大学や専門学校などできちんと勉強することがオススメです。チャレンジを諦めずに頑張っていただきたいです。

S.T.さん (男性 / 佐賀県)
測量士 勤続年数5年以上 (職業 : 土地家屋調査士)

測量士という資格取得の勉強だけにとらわれず、測量に関連する幅広い情報を将来性も考えながら調べてみることが大切だと思います。資格取得だけであれば、1日1時間、3ヶ月ほど本気で勉強すれば取得できる資格だと思いました。

しかし、資格取得が目的であれば、お勧めできる資格ではないかもしれません。これからの業界の変化を考えると、測量に関連する周辺資格の取得も重要だと思います。手に職をつけるために、資格取得を考える方もいるかもしれませんが、資格取得を目標とせず、どのようなスキルを身につけるべきかを考えることが一番大切な事だと思います。

F.N.さん (男性 / 東京都)
測量士 勤続年数1年 (職業 : エンジニア)

とにかく暗記問題に力を入れました。その他にも、数学の復習にはかなり力を入れました。測量士補では図形問題の出題頻度が高いので、三角比の問題など(高校の数学程度の知識で大丈夫ですが)を徹底的に復習し、マスターしました。

参考書などの図解だけでは実践的な理解が難しいので、磁気探査の補助員などのバイトをしながら測量士補の実務を観察し、実際の測量がどのような流れで行われているのかを実地で学びました。参考書に書かれている理論だけでは理解しづらいところがどうしてもあったので、その疑問を補完していくような感覚で取り組みました。測量士補の仕事の原理を自分の目で見て学べるので、具体的に理解を深めることができたと思います。

Q3.測量士のやりがいと将来性についてどう思いますか?

M.K.さん (男性 / 東京都)
測量士 勤続年数2年 (職業 : 測量機器等販売)

PCの前でデスクワークをするだけでなく、現場で地域の人と触れ合いながら、その地域に貢献する仕事をしたいと思う人にはオススメです。また、測量士の業務は建築の仕事でも、土木の仕事でも基礎となる知識や経験だと思いますので、自分自身の能力開発をしていきたい人にはぜひ取得を目指していただきたいと思っています。

将来性に関してはテクノロジーの進化に伴い、Google MapやGoogle Earthなどの精度が非常に高く、今後このようなテクノロジーの精度が上がると、小さい測量会社は淘汰されてしまうかもしれないと思っています。AIやWebの情報、測量はビッグデータが中心になっていくと思うので、ITと測量のどちらの知識もある人は将来性を見出せると思います。

S.T.さん (男性 / 佐賀県)
測量士 勤続年数5年以上 (職業 : 土地家屋調査士)

将来的な展望は、AIやIoTの発展により測量技術がなくても測量ができるようになり、測量技術という概念が無くなるかもしれないと思っています。

しかし、測量士の資格を取得しておくことで、これからの測量法の変化について情報を得られ、測量士の役割が変化するときでも、時代の変化に合わせた仕事を得られる可能性が高いと期待しています。そのためには、日々の自己研鑽が必要であり、これからも更に自分を磨くという覚悟があるならば、必ず意味のある資格になる可能性は高いと思います。

F.N.さん (男性 / 東京都)
測量士 勤続年数1年 (職業 : エンジニア)

実際に自分が測量して打った点を指標にして建造物が出来上がっていく場面を見ている時にやりがいを感じます。

測量の仕事は建造物を建てるにあたっての最初の作業になるため、自分の打ったマーカーに沿って建造物が造られていく様子が目に見えて実感できたのが、とても面白かったです。建造物を造る土台的な役割を果たしていると強く感じました。

将来性については、測量という技術は建造物を建てるにあたっての最初の重要な工程になるので、IT技術がこの先どれほど普及しても最終的に残る職業だと思っています。また、土地家屋調査士の試験の一部が免除となるのも利点の一つだと感じます。 しかし、これからはIT技術を身につけないと、測量だけの仕事を続けていくのは難しいかもしれません。